ミョウガ(茗荷)と物忘れ・・・とんでもない迷信です

俗に「ミョウガ(茗荷)を食べると物忘れがひどくなる」といわれ、もっとひどい話では「バカになる」なんていわれます。
彼の墓の周りに生えていたのがこの草で、名前を荷(にな)っていた彼にちなんで「茗荷」と呼ぶようになったとのこと。
※落語の登場人物はこんな人ばっかり・・・。「堀の内」「粗忽の使者」「粗忽長屋」なんて、全部こんな人が主人公です。
さて、物忘れをするという俗説をストーリーに取り入れたのが「茗荷宿」という噺です。
町はずれにあって、閑古鳥が鳴いている「茗荷屋」という宿屋の夫婦は毎日「客が来ない!」と嘆いています。
ある日のこと、江戸と京都を月に三度も往復するという健脚自慢の飛脚が、石につまづいて走れなくなってしまいました。おまけに雨が降ってきたので、宿場まで行くのも諦めます。
持ち合わせの薬を貼っておけば明日には治ると思い、見回したところ「旅籠 茗荷屋」という看板が目にとまったので、仕方なく決め込んだのがこのお宿。
声をかけると真っ暗な宿の中から気のない返事が・・・。ところが客だと分かると主人も女房もガラリと態度が変わります。
まずは客の足をすすごうとします。つまづいて転んだところが随分腫れています。飛脚は持ち合わせの薬を出して、主人に練ってもらい、足首に手ぬぐいで縛りつけました。
お風呂には入らず食事をしてすぐに寝るからといって、挟み箱(飛脚が肩に担いでいる棒のついた入れ物)を預かってほしいと言います。
かなり重いので主人が飛脚に訊ねると、50両が2つで100両入っているという答。
ここで宿屋の夫婦が考えました。ミョウガを食べると物忘れが激しいとやら。
屋号にちなんでミョウガをたくさん食べさせて、100両預けたことを忘れさせようという算段です。
何でも食べるという飛脚に出したミョウガ料理の数々・・・まずは漬け物から出して「美味い」と誉められ、味噌汁の具もミョウガ、甘酒の中にも刻んで入れて、ご飯にもミョウガを炊込みました。
ミョウガ料理をたらふく食べた翌朝、飛脚が「おはよう、何だかぼーっとしているんだ」と言うので、ほくそ笑む主人。
「急いでるんで、早く食事にしてくれ」と飛脚が言うので、またまた味噌汁から始まって次々とミョウガ料理が出てきます。
「お客様のお発ちだよ」と主人が女房をせき立てると、これまたぼーっととしているではありませんか。
「だって残り物がもったいないから、アタシがみんな食べちゃった」
「お前は食べなくてもいいんだよ、バカだねえ」
飛脚には「新しいワラジも出しておきました。どうぞ道中お気を付けて」と言って、無事に送り出しました。
「案の定、挟み箱忘れて行っちゃったよ」と夫婦揃って喜んでいると、飛脚が戻ってきます。
「いや、いけねえいけねえ。うっかり忘れるところだった」と挟み箱を受け取るとパッと駆け出して、あっという間にいなくなってしまいました。
「何か忘れていった物はないかねえ」
「あっ、宿賃もらうのを忘れた」・・・という噺です。
ミョウガはショウガ(生姜)の仲間で、日本全国に自生する多年草の香味野菜で、食用に栽培しているのは日本だけだそうです。
味噌汁、素麺、冷奴などの薬味として用いられたり、天ぷら、炊込みご飯、甘酢漬け、糠漬け、サラダ、和え物・・・いろんな料理に用いられます。
栽培物は年中出回っていますが、旬は6月頃から10月の夏から秋にかけて。
清涼感を覚える独特の香りはアルファピネンという精油成分で、松脂やヒノキの香りと同じ成分です。
リラックスさせて脳からのアルファ派の発生を増加する効果があり、食欲を促進し消化を助けるなどの効用や発汗を促し体温を下げる効果があるといわれています。
ミョウガを食べると忘れっぽくなるなんてことはありません。
逆にアルファピネンの成分が働いて、気分がすっきりして物覚えがよくなるはずです。
