気まぐれ厨房「親父亭」落語編29~味噌蔵 | 気まぐれ厨房「親父亭」

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落語に見る食の風景「味噌蔵」~木の芽田楽・味噌田楽
     けちん坊の旦那の留守にご馳走を     
     ドガチャガ・・・帳面をごまかすこと

 
落語の登場人物というと、ドジで間抜けでお人よしというのが多いようですが、中にはそうでない人がいます。
しっかり者であると同時にしみったれ所謂けちん坊ってのも結構います。
有名なところでは「しわいや」に「片棒」に「位牌や」上方では「始末の極意」など。
食の世界が覗ける噺っていいますと「味噌蔵」でしょうか。
けちん坊では人後に落ちない味噌屋の主人は金がかかることは大嫌いってんで嫁さんも貰わずにいましたが、親類一同嫁さんを持たないなら今後一切付き合いを断るし商売の取引もしないと言われ、しぶしぶ嫁を貰います。
子供ができると金がかかるってんで夫婦同衾を拒み、カミサンを二階に上げたままでの家庭内別居状態でしたが、寒さの大変厳しい夜にせんべい布団での寒さに耐え切れず、嫁入り道具の温かそうな布団を思い出して二階へ。
温まったおかげで、その温まりの塊がカミサンのお腹に宿ります。
早々にカミサンを実家に帰しますが、十月十日を経て男の子が産まれたという知らせが入り、お祝いの席を設けるというので、小僧の定吉をお供にカミサンの実家に泊りがけで出かけることになります。
けちん坊は出かけるときから凄いですね。
提灯を持っていくけれどもローソクは向こうでもらう、粗末な下駄を履いて行って立派なやつをはいて帰ってくる、宴席のごちそうを定吉に持たせた重箱こっそり詰めてくる・・・なんてえことを算段しています。
出かけるときには番頭に「もし近所から火事が出たら大変なので、味噌蔵の目塗りをするように」言いつけます。
旦那が出かけると、奉公人一同はこんなチャンスは滅多にないことだってんで、飲んだり食ったりして日頃のうっぷんを晴らそうと番頭に申し出ます。
この家では、朝飯のお付け(味噌汁)が薄くて実が入っていないとか、お付けに自分の目玉が映っているのをタニシと間違えたとか、日頃の食べ物の恨みを吹き出します。
勘定は番頭が帳面をごまかして(ドガチャガ、ドガチャガと表現しています)何とかするというので、みんな大喜びで店は早仕舞いです。
お酒もたっぷりと用意して、寿司に刺身、鰻に鯛の塩焼きにと、銘々が好物を注文します。横丁の豆腐屋に木の芽田楽、味噌田楽も注文してどんどん届けさせることにして、飲めや歌えの大宴会の始まりです。
その晩は風が強く、火事でもあったら大変ということで、旦那はお泊りをやめて定吉と一緒に店に戻ることに。
定吉に小言を言いながら町内に戻ってくると、大騒ぎをしている家があります。
「ああいうのは旦那の心がけが悪いから」なんてえことを定吉に言っていたら、なんと大騒ぎしているのは自分の店じゃありませんか。
「おい、あたしだ。開けなさい」と旦那の声に店の者一同、酔いもいっぺんに醒めてしまいます。
「ドガチャガなんぞさせてたまるか」と怒っているところへ店の戸をたたく音がして「ええ、焼けてきました」
旦那は火事だと思って「ほーら言わんこっちゃない、どこから焼けてきました」
「横丁の豆腐屋から焼けてきました」
「どれくらい焼けましたか」
「五、六丁焼けてきました。これからどんどん焼けてきます」
旦那が慌てて戸を開けると、プーンと田楽の味噌が焦げた匂いが・・・。
「いけねえ。うちの味噌蔵に火が入った」
という噺です。

木の芽田楽は豆腐に山椒の木の芽をすりこんだ味噌をつけて焼いたもので、当ブログでもかつて紹介しています。
http://ameblo.jp/bendream/entry-11228465858.html