落語に見る食の風景~おから
「うの花」「きらず」などともいわれます
豆腐を作る過程でできた豆乳の搾りかす・・・理想的なヘルシー食品
百人一首でもおなじみ、色男の代表・在原業平が作った「千早振る神代もきかず龍田川からくれないに水くぐるとは」という歌の意味を娘から訊ねられた無学な父親。答えられないとは親の沽券にかかわるので「床屋から帰ったら教えてやる」と言って家を飛び出して、自称物知りの隠居のところへ訊きに行きます。
隠居も実はわからないので、ごまかそうとしますが引き下がりません。
隠居は苦しまぎれに「龍田川というのは相撲取りの名だ」と言ってしまいます。
さてそれから、隠居の珍解釈が始まります・・・
田舎から出てきて相撲取りになった龍田川は一心不乱に稽古に励み、酒も女もやらずに相撲道一筋でついに大関まで出世。
ある時客に連れられて吉原に夜桜見物に出かけ、当代一と名高い千早太夫の花魁道中に出くわすんだな。
龍田川は千早太夫に一目ぼれし、早速茶屋に呼んで言い寄ろうとするが「あちきは嫌でありんす」と振られてしまう。
「それじゃあ」と言って代わりに妹花魁の神代太夫に口をかけるが「姉さんが嫌な人は、わちきも嫌でありんす」とこれまた振られてしまう。
つくづく相撲取りが嫌になった龍田川は、そのまま廃業して故郷に帰って豆腐屋になってしまうんだな。
「なんで相撲取りが豆腐屋に」
「好きでなるんだからいいじゃないか。実家が豆腐屋だったんだ」
両親に家を空けた不孝をわび一心に家業にはげんで5年後のこと、龍田川が店で豆を挽いていると店の前にはボロをまとった物乞いの女が一人。
「空腹で動けないので、オカラを恵んでください」と言うんだな。
気の毒に思ってその顔を見ると、なんと千早太夫のなれの果て。
思わずカッとなった龍田川・・・大関にまでなった相撲をやめて草深い田舎で豆腐屋をしているのは元はといえばお前のせい、オカラはやれない」
と言ってドーンと突き飛ばしちゃった。
三日三晩何にも食べていない千早、それを元大関が突いたんだからたまらない。
千早はその弾みで井戸まで飛んでいって、そのままブクブクブクと沈んでしまった・・・
「これがこの歌の解釈だ」と隠居がすまして言います。
「えー、その長い話は、歌の説明をしていたの」
「千早に振られたから『千早振る』神代もいうことをきかなかったから『神代も聞かず龍田川』となるじゃないか。オカラをやらなかったから『からくれないに』となるじゃろう」
「じゃ、水くぐるとはってえのは?」
「井戸へ落っこっちゃって沈んでしまえば、水をくぐるじゃねえか」
「じゃ、最後の『とは』ってえのは何なんです?」
「それは、うーん、千早の本名だった」
なんともくだらないおなじみの噺です。
豆腐が一般的に食べられるようになったのは江戸時代中期以降といわれますが、それと同時にオカラは庶民の重要な食材になったことがうかがえます。
オカラが出てくる落語は他にもあります。
甲府から江戸に出てきた善吉が、浅草で財布をすられて空腹のあまりにオカラを盗み食いするところが幕開きの「甲府ぃ」。
奈良で鹿が店先のオカラを食べるのを犬と勘違いし、追い払おうとして投げた棒切れが命中してしまうところが幕開きとなる「鹿政談」。
講談でもおなじみ「徂徠豆腐」は、仕官前で貧窮の荻生徂徠が豆腐屋に毎日オカラの差し入れをしてもらったという噺。
ご存知のとおりオカラは豆乳を搾ったカスですから家畜の餌などにもされ、人前で「オカラを食べている」と口にするのは憚られたものだそうです。
しかし過食や運動不足などによる生活習慣病が取り沙汰されるようになった今日、まず低カロリーで栄養豊富な豆腐が注目されるようになりました。
そして豆腐の製造過程の残渣といってもよいオカラが、栄養素に加えて食物繊維が豊富であることから優良なダイエット食品として見直されています。
オカラ料理の定番といえば、炒り煮ですね。
親父亭風オカラの炒り煮を紹介します。
<材料>
オカラ 300g、人参 1/2本程度、油揚げ 2枚、竹輪(小) 2本、ゴボウ 1本、ネギ 適量、サラダ油 大さじ3、ダシ 500cc、醤油 大さじ2、白だし 大さじ2、砂糖 大さじ3、みりん 大さじ3、ごま油 少々
<作り方>
人参は細く千切りにします。
ネギは小口切りにします。
油揚げは湯通しして小さめの短冊に切ります。
ゴボウは笹がきにします。(決して水にさらさない、軽くすすぐ程度に)
フライパンに油をひいて人参とゴボウをしっかりと炒め、ある程度火が通ったらオカラを加え更に炒めます。

オカラ全体に油が回ったら、油揚げ、竹輪、ネギを入れダシをを加えます。
醤油、白だし、砂糖、みりんを加え、最後に香り付けでごま油少々をたらして煮汁が少なくなるまでコトコトと煮てできあがりです。
オカラは餃子やハンバーグ、クッキーなどに応用されることが多くなりました。
かつてはつなぎ程度に利用されていましたが、最近はメインの食材としてオカラを多量使っての調理も目立ちます。
メタボリックシンドロームなどが取り沙汰される昨今、ヘルシーな食材の代表格といえます。
ダシたっぷりで煮ているので、パサパサしていません。