七味唐辛子・・・和食に欠かせない薬味の一つ
味の脇役ながらしっかりと自己主張
「浅草・やげん掘 中島商店」の七味
おそばやうどんには刻みネギや七味唐辛子、寿司や刺身にはワサビやショウガや大根に大葉、納豆やおでんには練辛子・・・これらを私たちは薬味と呼びます。
そもそも薬味とは何でしょう。
諸説ありますが、それらの多くが元来クスリとしての役目があったからに他なりません。
ネギ、ショウガ、紫蘇などは今日でも漢方薬の構成生薬として用いられています。
医療機関でも漢方エキス剤が処方されますが、その中にも八味地黄丸とか加味逍遙散など「味」という文字がついた薬方があります。
八味地黄丸は地黄を含む8種類の生薬で構成された薬方であり、加味逍遙散は逍遙散という薬方に牡丹皮(ボタンピ)と山梔子(サンシシ)という2種の生薬を加えてできています。
したがってこの場合の「味」という文字は「生薬」ということになります。
昔から医院や薬局で生薬を入れるものを「百味箪笥」といいますが、これもたくさんの薬味(生薬)を入れることから、そう名付けられています。
料理でいう薬味とは、料理の香りや風味をよくして味を引き立たせるための香辛料や香味野菜のことをいい、狭義では日本料理で使われる言葉だそうです。
しかし料理に添えるレモン、ピザやパスタに加えるタバスコ、餃子や麺類に用いるラー油など、またバジリコやクレソンなど各国の料理に用いるハーブや野菜類も含めて、広義の薬味といえるでしょう。
今回は「七味唐辛子」についてお話します。
「七味」と省略して呼ばれますが、7種の薬味で構成された香辛料で、主たる薬味は唐辛子です。
「鷹の爪」は唐辛子の1品種です。
「一味」というと唐辛子1種です。そばやうどんのお店では、好みで選べるように両方置いてある場合があります。
辛さは「一味」のほうが上ですが、「七味」は他の薬味が組み合わさることによって辛さだけではなく、味わい深さを楽しむことができます。
しかし「七味」といいながらも、製造元によってその構成する薬味が異なるのをご存知ですか。
主役となる唐辛子の原産地は南米アマゾン流域とされ、コロンブスがヨーロッパに持ち帰った後にアジアに伝わったといわれます。
名前から判断すると中国から日本に渡ってきたように思えますが、明確ではありません。歴史的には16世紀後半から17世紀にかけてと考えられます。
他の薬味をブレンドして七味唐辛子として普及したのは江戸時代の初期で、中島徳右衛門という人が、江戸両国薬研堀に店を開いて売り出し、以後全国に広まりました。
今日、やげん堀・七味家・八幡屋磯五郎の3銘柄が、日本三大七味唐辛子と称されています。「やげん堀・中島商店」は前述の中島徳衛門が創業したもの、「七味家」は京都の清水で、「八幡屋礒五郎」は長野の善光寺前で江戸時代から代々七味唐辛子を製造販売しています。
(左)京都清水・七味家の店頭にて (右)京都祇園・原了郭の店頭にて
さて、いずれも「七味」といいますが、それぞれ構成する薬味が少しだけ違うのです。
浅草薬研掘の中島商店のものは<生唐辛子、焼唐辛子、胡麻、山椒、陳皮、ケシの実、麻の実>。京都清水の七味家本舗は<唐辛子、山椒、麻の実、白胡麻、黒胡麻、青のり、青紫蘇>。長野善光寺の八幡屋礒五郎は<唐辛子、山椒、生姜、麻の実、胡麻、陳皮、紫蘇>となっています。
ちなみにハウス食品の七味は<唐辛子、陳皮、胡麻、山椒、麻の実、ケシの実、青のり>でヱスビー食品は<唐辛子、山椒、黒胡麻、ケシの実、麻の実、青のり、陳皮>で微妙に違っています。ハウスとエスビーでは圧倒的にエスビーの方がシェアが高いそうです。
麺類だけではなく、味噌汁や煮物、焼き物、漬物、きんぴら、サラダ・・・いろんなものに一振りするだけで、味がうんと引き締まるのが七味です。
京都祇園、八坂神社下にある原了郭は「黒七味」で有名で、私のお薦めの一品です。
黒七味は、唐辛子、山椒、白胡麻、黒胡麻、ケシの実、麻の実、青のり、青紫蘇を炒った後、手で丁寧にもみ込んで香りを引き出し、濃い茶色に仕上げたものです。
他の七味とは香りが全く違い、ヒリリとした山椒の辛みが特徴で、手でもみこんでいるので、原料の油分がにじみ出てしっとりしているのも特徴です。
江戸時代からの一子相伝の手作りのために、生産量に限りがありデパートでも限られたところでしか入手できません。
原了郭の黒七味と一味・・・どちらもお薦めです。京都旅行の際のお土産には、軽くて小さくて手頃な値段なので、これが一番だと思っています。

