―  第六章  「初恋?」  ―




私は放心状態で家に着いた。


こんな夢のようなことがあっていいものだろうか・・・。


先輩の言ってた、「もう少し一緒にいたかった」的な発言は、


私の幻聴だったのだろうか・・・。


いや、もぅ夢でもなんでもいい。


こんなに幸せなら・・・



今までそれなりに恋愛はしてきた。


好きな人もいたし、付き合った人もいる。


でも、こんなに強く「好き」と思えるのは初めてだった。


一目見ただけで恋に落ち、


目と目が合っただけで、血圧が上昇し、


くだらない会話でも、腹筋が痛くなるまで笑えて、楽しくて、


ただ一緒にいるだけで、死ぬほど幸せと思える・・・。


こんな気持があるなんて、初めて知った。


ある意味、これが私の「初恋」だったのかもしれない。





気持を落着かせた私は、幼馴染のモモにTELし、事の経緯を話した。




「奈央もやっとわかったか~。本当の恋愛というものを。」


「そうなのかねぇ~。んじゃ、タクミの時のアレは何だったのかねぇ?」


「気の迷いじゃん?笑」




タクミとは、元彼で、モモの友達だった。




「まぁ、タクミとは押しに負けて付き合ったって所もあったしねぇ。今回は自分から好きになったんだから。


 しかも、何だか良い感じそうじゃない~~??」


「ちょっと!気を持たせるような事言わないでよ!今日初めてあったのにそんなわけないでしょ!」


「そんなことないよ~。奈央が一目ぼれしたように、先輩だって奈央に一目ぼれしたのかもしれないじゃん」


「絶対それはない!!もぅやめて~~~!!」




モモの言葉を間に受けて調子に乗ってはダメ。


先輩も私を気に入ってくれた???


そんなはずない。


だって今日初めて会って、初めて話したんだもん。






・・・そう頭で考えてても、先輩のあの言葉を思い出すと、顔がニヤけちゃう・・・



あぁ、明日も会えるといいな~!

―  第六章  「ふたりきり」  ―


「大丈夫?」


ずっとうつむいて黙っているだけの私に、先輩は心配そうに言った。


「あ、大丈夫です。」


「さっき、オレ笑いすぎちゃったよね、ごめんね?


 オレさぁ、昔から調子に乗りすぎちゃうところがあるから・・・」


「いえ、そんなことありません!ただ、緊張しちゃって・・・」


「そんなに緊張することないよ~!年だって1つしか変わらないんだし。


 地元同士、仲良くしようぜ!」


「ありがとうございます・・・。」



「・・・あ、そうだ!今度の文化祭でさぁ、オレのバンド出るんだ!


 ギターやってるんだけど、見に来てよ!」


「いいんですか??」


「もちろん!浩一のバンドも出るんだけど、あっちのバンドは有名じゃん?


 だから人も結構集まると思うんだけど、オレらのバンドは無名だからさぁ。


 奈央ちゃんが来てくれたらすげぇうれしいよ!


 浩一のバンドより盛り上げて、調子に乗ってるあいつらの鼻へし折ってやろうぜ!」


「はい!絶対香菜の応援に負けないくらい応援します!!」


「マジで??!!すげぇうれしいよ!奈央ちゃんをファン1号に任命しよう!!」


「やったぁ!!」


先輩はいろんな話をして、私の緊張をほぐしてくれた。


クラスメイトの話、バンドの話、中学の時の話・・・


私は、今までこんなに笑ったことがあっただろうかと思うくらい、


涙が出るほど笑っていた。




私には夢の様な30分だった。


いつも長く感じる30分が、あっという間に感じた。


あぁ、このまま時間が止まってくれたらいいのに・・・


本気でそう思った。


しかし、この時間が永遠に続くことはもちろんなく、


ついに駅についてしまった。





「いやぁ、今日は本当に楽しかったよ!


 浩一に感謝しないとな。・・・すげぇしゃくだけど・・・」


「しゃくって・・・ 笑」


「でもまぁ、今回ばかりは本当にアイツに感謝するよ。


 あいつがいなかったら奈央ちゃんとも知り合えなかったわけだしね!」






あぁぁ、私はもぅ思い残すことはない・・・


もし今この世が終わったとしても、悔いはない・・・


人生ってすばらしい・・・!



「こちらこそ、木村先輩とこんなに仲良くなれるなんて思ってもいなかったから、


 今日は最高の日になりました!ありがとうございました!」


「え?オレのこと前から知ってたの?」





ヤバイ・・・


興奮しすぎて余計なこと言っちゃった!!


私は頭をフル回転させて言い訳を考えた。


「こうちゃんからいろいろ話し聞いてて、面白そうな人だなぁと思ってたんで・・・」


「アイツ、また変なこと言ってたんだろ~。アイツが言うことほとんどウソだからね!


 アイツ、オレの事なんて言ってた??」




どうしよう、どうしようっ!!


ヤバイヤバイ!!!




「いろいろ~!ヒミツです!!」


「何だよ~!ひでぇぇ~~ 笑」




ふぅぅぅぅ~


何とか切り抜けた・・・





「奈央ちゃん、家どのへんなの?もう遅いから送っていこうか?」




あぁ、なんて優しいの・・・。



「いえ、そんなの悪いので大丈夫です!まだ明るいし・・・」




「そっかぁ・・・。もう少し奈央ちゃんと話したかったんだけど・・・」








??????????!!!!!!!!!!!!!








「え・・・・??」




「あ、いや、別に深い意味はないんだけど・・・。」


「・・・・。」


「あ、じゃ、オレこっちだから・・・。またね。」


「あ、はい・・・。ありがとうございました・・・。」

―  第五章  「初対面」  ―


「はいよ~、んじゃね~」


こうちゃんは電話を切った。




「なんだってっ!!!!???」


香菜・智子・愛、3人が口をそろえて言った。


「・・・・・・・・・・・・・・来るってっっ!!!」


「やったぁ~~~~!!!」



3人は立ち上がってガッツポーズ。


私は、先輩に会えるうれしさと、恥ずかしさ、緊張とで


何が何だかわからなくなってた。


「今、そこの交差点だから、多分もうすぐ来るよ。」


こうちゃんがニヤニヤしながら言った。


「あ、来たっ!」


香菜が立ち上がって言った。





も、もう!!!???





あの時、私は多分、半分気絶していたと思う。


それ位、うれしくて、緊張して、頭が真っ白だった。


「オ~ッス!」


私の頭の後ろから、低めの少しハスキーな声が聞こえた。


「ウィッス~、キムキム~~」


こうちゃんがおどけて言った。


木村先輩は、こうちゃんの隣、私の目の前に座った。






あわわわわわわわわわわわわわ・・・・・






私の精神状態はすでに限界を超えていた。


「先輩、こんな遅くまで何してたんですか?補習??」


香菜が言った。


「いや、飯食って図書室で寝てた」


「またぁ~?お前いっつも図書室で寝てるよなぁ~」


「いやぁ、あそこエアコン効いてて快適なんだよねぇ~」


木村先輩は少しはにかんだ様に笑った。


笑うと右だけえくぼができ、やいばが少し見えた。


「あ、香菜ちゃんの友達??」


木村先輩が私を見て言った。


目と目が合った瞬間、私はもぅ、大声で叫んで、走り出しそうだった。


「そう、彼女、奈央ちゃん。」


「は、は、は、は、はじめめした!」


緊張のあまり、噛んでしまった・・・。




「ぷっ!はじめめしたって何だよ~!超ウケル 笑」



恥ずかしさのあまり、私はその場から逃げ出したくなった。