―  第六章  「ふたりきり」  ―


「大丈夫?」


ずっとうつむいて黙っているだけの私に、先輩は心配そうに言った。


「あ、大丈夫です。」


「さっき、オレ笑いすぎちゃったよね、ごめんね?


 オレさぁ、昔から調子に乗りすぎちゃうところがあるから・・・」


「いえ、そんなことありません!ただ、緊張しちゃって・・・」


「そんなに緊張することないよ~!年だって1つしか変わらないんだし。


 地元同士、仲良くしようぜ!」


「ありがとうございます・・・。」



「・・・あ、そうだ!今度の文化祭でさぁ、オレのバンド出るんだ!


 ギターやってるんだけど、見に来てよ!」


「いいんですか??」


「もちろん!浩一のバンドも出るんだけど、あっちのバンドは有名じゃん?


 だから人も結構集まると思うんだけど、オレらのバンドは無名だからさぁ。


 奈央ちゃんが来てくれたらすげぇうれしいよ!


 浩一のバンドより盛り上げて、調子に乗ってるあいつらの鼻へし折ってやろうぜ!」


「はい!絶対香菜の応援に負けないくらい応援します!!」


「マジで??!!すげぇうれしいよ!奈央ちゃんをファン1号に任命しよう!!」


「やったぁ!!」


先輩はいろんな話をして、私の緊張をほぐしてくれた。


クラスメイトの話、バンドの話、中学の時の話・・・


私は、今までこんなに笑ったことがあっただろうかと思うくらい、


涙が出るほど笑っていた。




私には夢の様な30分だった。


いつも長く感じる30分が、あっという間に感じた。


あぁ、このまま時間が止まってくれたらいいのに・・・


本気でそう思った。


しかし、この時間が永遠に続くことはもちろんなく、


ついに駅についてしまった。





「いやぁ、今日は本当に楽しかったよ!


 浩一に感謝しないとな。・・・すげぇしゃくだけど・・・」


「しゃくって・・・ 笑」


「でもまぁ、今回ばかりは本当にアイツに感謝するよ。


 あいつがいなかったら奈央ちゃんとも知り合えなかったわけだしね!」






あぁぁ、私はもぅ思い残すことはない・・・


もし今この世が終わったとしても、悔いはない・・・


人生ってすばらしい・・・!



「こちらこそ、木村先輩とこんなに仲良くなれるなんて思ってもいなかったから、


 今日は最高の日になりました!ありがとうございました!」


「え?オレのこと前から知ってたの?」





ヤバイ・・・


興奮しすぎて余計なこと言っちゃった!!


私は頭をフル回転させて言い訳を考えた。


「こうちゃんからいろいろ話し聞いてて、面白そうな人だなぁと思ってたんで・・・」


「アイツ、また変なこと言ってたんだろ~。アイツが言うことほとんどウソだからね!


 アイツ、オレの事なんて言ってた??」




どうしよう、どうしようっ!!


ヤバイヤバイ!!!




「いろいろ~!ヒミツです!!」


「何だよ~!ひでぇぇ~~ 笑」




ふぅぅぅぅ~


何とか切り抜けた・・・





「奈央ちゃん、家どのへんなの?もう遅いから送っていこうか?」




あぁ、なんて優しいの・・・。



「いえ、そんなの悪いので大丈夫です!まだ明るいし・・・」




「そっかぁ・・・。もう少し奈央ちゃんと話したかったんだけど・・・」








??????????!!!!!!!!!!!!!








「え・・・・??」




「あ、いや、別に深い意味はないんだけど・・・。」


「・・・・。」


「あ、じゃ、オレこっちだから・・・。またね。」


「あ、はい・・・。ありがとうございました・・・。」