都築卓司 著『マックスウェルの悪魔ーーー確率から物理学へ』を読みました。

講談社のブルーバックスです。










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今日の本のお供はリビングデッドドールズのロキシーちゃんとガブリエラちゃんにお願いしました。

悪魔っぽいかなー?って思って。

この子達も着たきり雀ちゃんなので、いいかげん新しいお洋服を作ってあげたいところです。






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『マックスウェルの悪魔なら火にかけたヤカンの水を凍らせる!

タイムマシンを実現させて過去よみがえらせ、永久機関を動かして、世間をアッといわせてみせる。
人類が滅び、宇宙に終焉が訪れるとすれば、マックスウェルの悪魔こそ、救世主か?
この不思議な悪魔に目をつけながら、時間の向きをきめているという「エントロピー」を、他に類を見ない面白さとわかりやすさで解決する。』
(カバー裏より)







1970年に刊行され、2002年に新装版として再刊された本です。
今から50年も前に書かれた本ですが、今なお売れているとは、かなりのロングセラーですね。




この本は以前に私が読みました↓


『熱力学で理解する化学反応のしくみーーー変化に潜む根本原理を知ろう』読書感想


↑この本の巻末にオススメの本として挙げられていたので、買ったのです。





そしたらたまたま、これまた最近読みました↓


『四次元の世界ーーー超空間から相対性理論へ』読書感想


↑この本と同じ著者の本でした。






『四次元の世界』はとても面白くて、今年の私のベストブック・ノンフィクション部門の1位がほぼ確定しております。
同じ著者の本ですから、かなり期待して読みました。



今回は統計力学の本です。
エントロピーについてのお話ですよ。

熱力学第二法則のパラドクス、マクスウェルの悪魔のお話です。




マクスウェルの悪魔については、すでに↓


『エントロピーとは何かーーー「でたらめ」の効用」読書感想


↑こちらの本を読んだときに、触れられていたのでどんな悪魔かは知っていました。

マクスウェルの悪魔は、自分は仕事をせずに気体分子を動きの早いものと遅いものに選り分けるだけでエントロピーを減らすことができる(架空の)存在のこと。
この悪魔が現実に存在するとしたら、熱力学第二法則は崩れてしまうことになるのです。

本書ではこの悪魔の話をメインにして、さまざまなエントロピーに関するお話をわかりやすく解説してくれております。
永久機関の問題、エルゴード仮説、相転移、自由エネルギーなどなど。






今まで読んできた他のエントロピーの本と比較して本書の読みどころは…

一つ目。
本の最初の方の、永久機関のお話によってエネルギーとエントロピーについての解説をしてくれているところ。
第一種永久機関は熱力学第一法則に反するから存在せず、第二種永久機関は熱力学第二法則に反するから存在しない。
この辺りの解説が面白かったです。
一見実現しそうな永久機関の試作品がどれもこれもダメで、ではなぜダメなのかってことを考えるのがたのしかったです。

二つ目。
私達が普段普通に使っている「温度」という言葉、この言葉の定義の移り変わりが本書全体を通してわかるところが面白いです。
最初は体感からくる暑い寒いを測るためのものだったのが、気体分子の運動エネルギーの平均となり、さらにはエネルギーとエントロピーの関係となり、定義され直すごとにこの世界の成り立ちの根本に迫っていくようでワクワクしました。

また、それに伴って。
暑い寒いと感じている温度が実はただの分子の運動でしかないってことも初めて知ったときは不思議でしたが。
そこからさらに進めて、では今この瞬間に全ての分子の運動を逆にしたら時間が遡ることになるのか?とか、そこまで考えが及ぶことになるのかと思うと、前に読んだ『四次元の世界』での一般相対性理論のお話なんかも思い出して、時間というものの不思議がますます大きく感じられるようになりました。
物事に因果関係だとか時間の流れはなく、人間の意識が作り出してるだけだってのをどこかで読んだことがあって、その時はそんなわけないじゃんなんて思ってたんですけど。
今はむしろそういう風に考えた方が自然なんじゃないかと思える様になってきました。

三つ目。
物理法則を身近な事象に例えてくれるお話が面白いです。
マクスウェルの悪魔についても、最初のとっかかりはちょっとした寓話みたいな物語を作ってそれを読むことでどういうものか理解できるようにしてくれてますし。
そんな感じだから本書の挿絵も(流石に絵柄は古いですが)物理法則を面白く例えて絵にしたもので、小難しい理論に対してもリラックスさせてくれます。













本書も、他の都築卓司の作品と同じで、あいかわらずとても読みやすくて、全体的には古さを感じさせない内容で面白かったです。

ただし、最終章の『カタストロフィー』という題名の未来予想だけは、これはさすがに時代を感じますね。
熱力学第二法則を人間社会に応用した未来予想なんですけど、作者の予想は外れてますね。
こんな風にはならなくて良かったですが、この先人類がどうなるかはまだまだわかりませんね。
作者は人間こそマクスウェルの悪魔だと例えてますけど、そういう意味でなら、これからはAIの方が悪魔になっていくんじゃないかしら?


それから、マクスウェルの悪魔について調べてみると、最近は情報熱力学というものにおいてマクスウェルの悪魔が実現したなんて書かれているネット記事を見つけました。

熱力学第二法則が破れたのか?ってビックリして読んでみたら、どうやら本書で語っていたマクスウェルの悪魔とは解釈が変わってきたみたいですね。



新しいマクスウェルの悪魔は情報をエネルギーとしてエントロピーを減らしているようで、それを悪魔と呼ぶなら元の悪魔の「仕事をしない」ってところはなくなってるのかな?

なんだか面白そうなので次は情報熱力学の本を読んでみたいと思ったんですが、まだ一般向けの本は出ていないみたいですね。
ブルーバックスからでもそのうち出してくれないかしら?























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