TRIPLANE 9thアルバム「unanimous」レビュー
TRIPLANE 8thアルバム「THETA never ending fantasy」レビュー
「やれることはもっとあったんだけど、今回はあえて卵かけごはんのような、塩むすびのような、TRIPLANEという素材を生かしたシンプルなアルバムを作った。」
前作「1/4802のすべて」
(レビューはこちらhttps://ameblo.jp/beatles41/entry-12337664675.html)
リリース時、そう語っていたソングライターの江畑兵衛さん(Vo/Gt)。
当時の私はその言葉を半分理解して、半分飲み込めずにいた。
「確かにとても聴きやすいけれど、こんなに具だくさんなアルバムが、どうして卵かけご飯なのか。塩むすびなのか。」と。
それから約1年。
兵衛さんが語った言葉の意味を、僕は肌で味わう事となった。
8thアルバム
「THETA never ending fantasy」
“TRIPLANEというジャンルの集大成”と冠されたそのアルバムを、一曲ずつなぞっていきたい。
※以下は個人の感想です。
1.アンセム
今回の楽曲の中では特に躍動感があり、流れるようなメロディーの起伏に日本語の響きが絡み合う、TRIPLANEらしさが凝縮された一曲。
この「流れるようなメロディーの起伏」と「日本語の響き」は時としてぶつかり合い、聴き辛さを招くこともあるのだが、そこはTRIPLANEのお家芸。サラッと華麗に聴かせてくれるので素晴らしい。違和感がなさすぎて歌詞が流れていくこともあるが、歌詞カードを見たときに初めて「こう言っていたのか!」という答え合わせができるのも楽しみの一つ。特に2番サビの後半などは、この文脈をこのメロディーに乗せられるのかと驚くばかりである。(同じような感覚を味わうのならばアルバム「君に咲くうた」の「around my life」の2番サビをオススメしたい。)
2.夜空の風になって
「ONE PIECE」(Dear friends)や「メジャー」(心絵)、「レスキューフォース」(ココロハコブ)など、アニメや戦隊ヒーローのテーマソングも手がけてきたTRIPLANE。この曲はタイアップこそないものの、頭サビ後の間奏にタイトルが浮かび、AメロBメロでスタッフロールが表示され、サビで楽曲情報が…と想像せずにはいられないほど、歌詞を含めキャッチーで爽快な曲だ。(僕の世代的には「デジモン」とかで使われているイメージ。笑)
この曲だからこそ、「ときめきたい」というパワーワードが生き生きと輝き、等身大に受け取ることができる。
アレンジは川村健司さんが奏でるギターが限りなくフューチャーされ、ギターキッズ(もう28歳ですが)にはこの上なく堪らない。TRIPLANEはアルバムを出すごとに最速BPMを積み上げているように感じるが、この曲も「更新しているのでは?」と感じるほど広田周さんが叩く活き活きとしたドラムが冴え渡っている。
3.冬の街
本作のリードトラック。言わずと知れた札幌出身のバンドだからこそ打ち出せる、凍てつく中に温かさを描いた冬の叙情歌だ。前作のリードトラックである「サクラのキセツ」然り、季節感をアレンジで“可視化”させることができるのはTRIPLANEの強みであると断言できる。サビのメロディーも、音階の低いところから始まり徐々に抑揚を伴って高音へと突き抜けていき、まるで雪景色の道を一歩一歩踏みしめながら歩くような感覚さえ覚える。生まれた街の風が、追いかけている「本当の理想」を胸に打ち付けてくれる。地元北海道を愛し、東京というフィールドを軸に全国で歌い続けるTRIPLANEのアイデンティティーが溢れた一曲だ。
YouTubeではミュージックビデオが公開されているので、ぜひともチェックしてみてほしい。https://www.youtube.com/watch?v=TvV3z1KIDGM
4.モスキート
一聴すると「つれづれのマイナーナイナー」や「Let us」などの系譜にある曲だと感じるが、それらの楽曲と明らかに違うのは「色気」ではないだろうか。これまでソリッドなサウンドに歌詞が詰め込まれた楽曲には鋭利な印象を受けたが、今回は武田和也さんのベースの動きや兵衛さん歌い方がとても大人な雰囲気で、滑らかな妖しさを纏っている。
また、よく兵衛さんが「あのアルバムはセールスが…」と冗談っぽく自虐する、2014年に発表された実験的アルバム「Design」で打ち出されたエレクトロニックな指向がより熟度を増して表出されている。「後世の評価」という言葉があるが、Designが明らかに分岐点となったアルバムであることがこの曲からも証明されている。個人的には寺尾聰の「ルビーの指輪」を彷彿とさせるようなサビのさりげない転調部分がものすごく好みである。
5.シナリオ
HTB系列のスポーツ番組「FFFFF」テーマソングとして書き下ろされた楽曲。昨年6月に配信限定としてリリースされていた。特記したいのは、かつて無いほど長尺でエネルギッシュな前奏のアレンジである。「バンドとして」音を出すことの喜びが爆発するかのようなこの前奏に、TRIPLANEの14年間の歩みと未来への決意が表れているようで心が躍る。楽曲全体のアレンジは複雑で緻密な音の重なりで構成されているが、個々の楽器の主張がバランスよく、すっと聞き流すこともできればじっくりと音を探す楽しみも味わえる。二度美味しいとはまさにこのことであろう。歌詞の内容もいわゆるポジティブ一辺倒ではなく、喜怒哀楽があるからこそ前に進むことができると気づかせてくれる、毎日のどんな感情の中でも背中を押してくれる曲だ。
6.祈り
配信シングルの合間にすっと添えられたこの曲は、前作では身を潜めていたパーソナルな思想が強く打ち出された楽曲だ。「優しい嘘」や「ゲルニカ」に通ずる、社会風刺を音に託したいわゆる「メッセージソング」ともとれる様相だが、どの曲にも共通するのはメロディーのキャッチーさであり、特にこの曲は限りなくポップソングだ。ポップだからこそ等身大の僕らの心に訴えてくるものがある。「音楽を始めた頃は、曲にメッセージを乗せて歌うことはしていなかったし、どちらかと言えばしたくなかった。和音の構成やメロディーの動きだけで聴いてくれる人の心を揺さぶりたいと思っていたから。」そんな兵衛さんの根底はきっと今も変わらない。
個人的な話ではあるが、クリスチャンである僕にとってこんなにも物悲しい「God bless you(あなたに神様の祝福がありますように)」を耳にすることは初めてであった。同時に、この混沌とした社会をまだ諦めてはいない。諦めたくない。そんな切なる祈りが込められているようにも思えた一節であった。
7.The garden ー五稜星の夏ー
さっぽろビヤガーデンのテーマソングとして書き下ろされた楽曲で、こちらも昨年7月に配信されている。イントロから真夏の夜空の下、にぎわう街の情景が浮かんでくる。個人的にはこのアルバムにおいて最も重要なポジションを担った曲のように感じる。僕が特に好きなアルバム「V」の、「書置き」~「ヨワキモノタチ」~「優しい嘘」~「つれづれのマイナーナイナー」というダークでパーソナルな曲からの「友よ」に似た感覚。前者4曲の役割を一手に引き受けたような「祈り」から、救いの「The Garden」へ。抱え切れないような憂いがあるからこそ、希望に現実味が増すのだということをこの曲が教えてくれる。
そして、最後の4小節に変化球のようなコード進行が並ぶのがいかにもTRIPLANEらしくてたまらなく好きである。
8.ミルク
アマチュア時代のTRIPLANEをはじめ、札幌内外のミュージシャンが数多く足を運ぶスタジオ併設の喫茶店「ミルク」での情景が綴られた一曲。回顧的な物語を小説で読んでいるかのように映像が浮かんでくる。
TRIPLANEの数あるアレンジ感をカラーに例えるなら、一番好きな色である。「未来」「Jelly」「麦色」「オレンジ」「東京ヒロイン」...胸がキュッとなるようなピアノの響き、走馬灯のように過ぎ去っていく軽快でいてセンチなオルガン。それが4人のアンサンブルに溶け込んだ時に生まれる独特な音像は唯一無二であり、TRIPLANEの真骨頂であるようにも感じる。
9.新世界
トヴォルザークもついつい「Hey!」と言ってしまいそうな、新しいアプローチのアッパーチューンだ。そのアプローチは楽曲の構成もさることながら、歌詞の内容からも見て取れる。
「保たれない秩序と倫理で絶望を飼い慣らすように/絡まり合う欲望の線でこの世界は固結びさ」
憂いともがきに溢れたこの歌詞を、どこまでも跳ねる爽快なギターロックで聴かせる。ライブで僕たちはこの歌詞をかみ締め、それぞれがどのような思いを抱きながら身体を揺らし、拳を突き上げるのだろうか。
アレンジの好きな点を挙げるとキリがないが、2つ挙げるとすれば1番と2番の間奏や曲の後奏で楽器がリズムをユニゾンさせるところ、2番のサビ前のギターチョーキングが何度聴いても心躍る。
10.君もいますか
バラード曲でありつつストリングスアレンジも控えめに、バンド4人の音が強調された楽曲。左右別々のギターリフの絡み合いが美しい。
TRIPLANEはアルバム発売を控えた今年1月、14年間を共にしたギタリスト川村健司さんが脱退。そのとき発信されたメッセージには「それぞれがより輝ける場所に向けて歩むために」という言葉があった。
この曲には
「孤独の中自分を試したりして/余計な妄想が降ってきたって/もっと自分が輝いた場所を探せるように」
という歌詞がある。アルバムの完成と脱退の発表までには数ヶ月の間があるため、意図して書かれたものであるかは分からないし、この曲と脱退の件を関連付けることを良く思わない方もいると思うので、そこは先に謝っておきたい。しかし、大衆に向けた「応援歌」で始まったこのアルバムは、君と僕への「アンセム」で幕を閉じる。同じ道を歩んでいても、別々の道を歩んでいても、輝ける場所を共に探していく僕らは仲間として背中を押し合えるのだと。そう伝えているように感じてならないのである。
~番外編~
昨年6月から4ヶ月連続で配信リリースされた楽曲の中から、アルバム未収録の配信限定曲をレビュー
・apricot
TRIPLANEの楽曲の中でもここまで大幅に「日本的な夏」に振り切ったメロディーとアレンジは存在しなかったのではないだろうか。主旋律は和的でありながらピアノのアレンジがジャジーで、その裏で響くギターはどこかレゲエチックで。そんなオケの上に被さる兵衛さんの歌声もまた、気だるさを纏って。様々な文化が混ざり合う夏祭りの人ごみの中で、冷静さと情熱が行き来する感情をぐっと引き立てるように感じた。
・かなでるまんま
渋谷の音楽イベント「渋谷ズンチャカ」のテーマソングとして書き下ろされた楽曲。兵衛さんがミックスまでを手がけている。2番の歌詞にあるアラフォー世代の等身大な思いが衝撃的でもあるが、ラジオなどでもよく話している「聴く人に寄り添う音楽」へと舵を切っている兵衛さんのスタンスが垣間見られるようで、心が温かくもなる不思議な歌詞である。アレンジは久しぶりにアコースティックギターが前面に押し出されており、渋谷の街に溢れる音楽の輪が広がり、たくさんの人が声を合わせる様子が目に浮かぶようである。
「僕にとってはライブよりもまず、製作自体が喜びで。音を重ね、メロディーを生み出していくことが幸せでそれが一番強いんだよね。」
3年ほど前だろうか。宮城県気仙沼市で行われた「僕らの街から 番外編」で、曲作りについてそう語る音楽職人としての兵衛さんの姿が印象的であった。
そして先日のラジオ番組では今作が「ライブを見据え、意識した作品」で、「聴いてくれる人をいかに非日常へと誘い楽しませることができるか」というコンセプトのもとで制作されたという話があり、今月からスタートする全国ツアー「never ending fantasy」ではそんな新しいTRIPLANEの世界を体感できると思うと、期待が溢れ出して止まない。
また、同じ番組では「製作意欲が半端なくて、年内にもう一枚出せたらいいなと考えている。」といった注目発言が飛び出した。2017年にavexから独立後EZOGASHIMA LABELを立ち上げ、今作からはIVY record、コロムビアマーケティングとダッグを組んで再びメジャーのフィールドで戦い始めたTRIPLANE。常に「次の一手」を見据えて進み続けるそのフライトに胸を躍らせ、その終わらない夢を僕らも追いかけていきたいと思う。
TRIPLANE 7thアルバム「1/4802のすべて」レビュー
「逃げも隠れもしないさ 紛れもないさ 僕でしかない
今を瞬いて 過去を紐解いて 無知を遊んでたあの日のように」
TRIPLANE/Evergreen
アルバム「1/4802のすべて」の真髄が、この歌詞に表れているような気がした。
2002年結成、04年にシングル「スピードスター」でデビューした北海道札幌市出身の4ピースロックバンド、TRIPLANE。
今年7月、13年間所属したavexから独立し、自身のレーベル「EZOGASHIMA LABEL」を立ち上げて発売した記念すべき最初の全国流通盤が、このアルバムだ。フルアルバムとしては7作品目となり、これまで他にシングル16枚、ミニアルバムを2枚とシングルA面集を1枚リリースしている。
TRIPLANEはデビュー以来、その楽曲のキャッチーさ、緻密なアレンジと演奏、多彩な歌声が聴く人の心を掴み、コアなファンを着実に増やし続けてきた。また、多くの楽曲がCMやアニメのタイアップ、プロスポーツチームのテーマソングに起用されるなど、業界での評価も高い。一方でこれだけ大衆に受け入れられる音楽性でありながら、知名度的に伸び悩んできた側面もある。リーダーであり、ドラムの広田周さんはライブで「もっとこのバンドを大きくしたい」と語り、バンドが上を目指していく「攻め」のパワーに僕たちファンはいつも心躍らせてきた。
アルバムのタイトルに記された「4802」はTRIPLANEがデビューした日からアルバム発売日前日までの日数を表している。
「嬉しいことや楽しい事ばかりじゃなく、辛いこと、嫌なこと、悲しいこと、音楽をやめたいと思ったこともあった。でも、その日々一つ一つが意味を持っていて、一つでも抜けていたら全く違う今だったと思うと、すべての日々を愛おしく思えた。」
バンドのギターボーカルであり、ほぼ全ての楽曲を手がけている江畑兵衛さんはラジオでこう語った。
13年間同じメンバーで音楽を続けてきた軌跡。その中にある光と影のコントラスト。
すべてを未来への道しるべとして落とし込んだ、最高のアルバムが届いた。
僕は音楽ライターではなく、
ただTRIPLANEの音楽を愛するファンの一人にすぎないが、
一曲ずつ、でき得る限り丁寧に、感謝を込めて楽曲をレビューしていきたいと思う。
以下はあくまで個人の感想です。
1.はじまりのうた
A面集、ミニアルバムを含めた10枚のアルバム。それぞれに1曲目を彩った曲がある。その中でもこの「はじまりのうた」は群を抜いた高揚感があり、アルバムが始まる期待感を増幅させる。静かに始まり、胸の奥底にスッと入ってきて満を持して一気に突き上げてくるイメージだ。アウトロになると武田和也さんが弾くベースの音階が徐々に上がっていきパッとハジけ、川村健司さんのソリッドなギターリフとデジタルエッセンスが新たな冒険の歩みを連想させる。幕開けに相応しい曲。
2.bridge
16枚目のシングル(会場限定)「SPOTLIGHT」収録のこの曲。かつて兵衛さんは番組で「視覚で楽しめる音楽を作りたい」と話していたが、個人的にこの曲と「遠く吹く風(4thアルバム「リバーシブル」収録)」は僕にとってその代名詞だ。歌詞が描く期待に満ちた朝の情景が、開放感のあるコードワークと躍動感溢れるビートで切り開かれ、目の前に広がっていく。根底で鳴り続けているシンセの音も清々しい。「はじまりのうた」にはじまり、そして歩みだす2曲目にぴったりな曲だ。
3.サクラのキセツ
今作のリード曲であり、TV番組やラジオなどで特に流れた曲である。PV(YouTubeで公開中)がスタジオアルタの街頭ビジョンで放映されたことも記憶に新しい。普遍的で、日常に溶け込ませながら聴ける曲でありつつ、ハッと引っかかるメロディラインが散りばめられている。2番のサビが「君ドロップス(リバーシブル)」の1番とリンクしているように思えるが、真相やいかに。曲中に自然と織り込まれる転調も鮮やかで、胸に迫る回顧的な切なさを一層引き立たせる。「歌詞よりもまずコードの鳴りやアレンジ、メロディーの動きで音楽を楽しんでもらいたい」という、兵衛さんがバンド結成当初から語っているブレない音楽性がここにも垣間見える。
4.ラブソング
初聴きで「これぞTRIPLANE!」という感想を抱いた方は多いのではないだろうか。王道のミディアムバラードだ。個人的に大好きな「六畳リビング(5thアルバム「V」に収録)」を彷彿とさせる。特に1番と2番のつなぎ、ピアノとアコギのユニゾンの儚さは絶品。
そして最後のサビでメロディを崩しにいくところが本当にずるい。ここでこんな歌詞を当てられては困る。
個人の推測でしかないが、「君」が恋人から人生のパートナーへと変わっていく。その過程を端的にドラマチックに描いた兵衛さんの詩的センスに脱帽するばかりである。
5.東京ヒロイン
こちらもシングル「SPOTLIGHT」収録の一曲。この曲は「オレンジ(1stミニアルバム「イチバンボシ」収録)」や「麦色(V)」の世界観と同じイメージがある。どれも人が生きていく上での儚さや脆さ、愛おしさをノスタルジックな音像に昇華させた名曲であり、この東京ヒロインもまた然りであった。「すれ違うすべての人に人生のストーリーがあり、何かと戦って生きている」。兵衛さんがそこにスポットを当てたのがこの東京ヒロインだ。ハモンドオルガンのグリッサンド一つとっても、切なくて愛おしくてたまらない。
6.アンブレラガール
STV「熱列!ホットサンド!」オープニングテーマとして書き下ろされた楽曲。バンド史上最速BPMとのことでドラムが冴えに冴えている。
シングル「ゲンジボタル」のような勢いのある甘酸っぱいサウンドでありつつ、緻密な動きをするギターの刻みやベースのうねりが心地よい。これまで聴く人を勇気付ける曲としては「帰り道(シングル「君ドロップス」収録)」、「友よ(V)」、「Running Star(6thアルバム「non no」収録)」などが挙げられるが、男女のストーリーという視点で書かれた”応援歌”は類を見ないのではないだろうか。よりダイレクトに身に刺さる。常に後ろ向きな彼女に対して「皮肉にも僕はそんな君がちょっと愛おしいんだ」とありのままを受容し、「僕から手を差し出して、いつも笑いを君にあげよう」と勇気付ける。そんな包容力を自分も身に付けたいと切に願う。
7.浴衣の君
季節感を表現するアレンジが斬新な一曲。実験的でありつつも、「漠然と ただ漠然と」の箇所のような日本的メロディーラインが琴線に触れる。「三十一文字(和歌の意)」など、兵衛さんの日本語に対するリスペクトも垣間見ることができる。1stアルバム「home」の同じく7曲目に収録された「夏の夢」にも通ずる、夏の終わりの空虚感を裏腹でポップなアレンジで聞かせてくれる一曲だ。
8.Evergreen
個人的に今作で一番気に入っている曲である。TRIPLANEの楽曲の魅力のひとつに、「日本語の畳みかけ」があると思う。「タイムカプセル(リバーシブル)」に端を発し、これまで「優しい嘘(「V」)」、「light(2ndミニアルバム「Design」収録)」、「ゲルニカ(non no)」「HUTCH(non no)」など、細かい譜割のメロディに日本語の響きを流れるように当てていった曲がいくつか存在するが、今回はサビでその魅力がいかんなく発揮されている。「日本語のシャワー」を浴びているような感覚だ。これまではマイナー調の曲に多かったが、この曲では疾走感に加えて挑戦的なメッセージを畳み掛けているため、聴いていてとても清々しくなる。そして何より、このクセになるイントロギターのフレーズが堪らなく好きだ。
9.星空のメリーゴーランド
今までにないほどのファンタジックな歌詞と、真冬のイルミネーションを連想させるような煌びやかなアレンジ。実験的という意味で「浴衣の君」と兄弟のような印象を覚えた。TRIPLANEの音楽が僕たちをまだ見ぬ世界へ連れ出してくれる。その片鱗を感じることができる。一方で「今度は僕の知らない世界へ 君が手を引いて連れて行ってよ」と締めくくっているように、これからは聞き手である僕たちも一緒にその未来を切り開いていこうという心強いメッセージも込められているように感じた。
10.スポットライト
今作の最後を彩るのは、シングル「SPOTLIGHT」のリード曲として独立後初めて発表された楽曲である。「詞を書き進めるうちに、歌詞に出てくる「君」がバンドメンバーやファンに思えてきた。」とライブで述べていた兵衛さん。僕たちファンにとっても大切な一曲である。「胸を張って僕らの信じる音楽を届けるから、ともに手を繋いで明日を迎えにいこう」。個人の受け取り方ではあるが、そんなメッセージを僕は確かに手渡されたと感じている。
兵衛さん自身が「やれることはもっとあったんだけど、今回はあえて卵かけごはんのような、塩むすびのような、TRIPLANEという素材を生かしたシンプルなアルバムを作った」と述べたように、前作、前々作にあった攻撃性(良い意味での)やパーソナルな部分が身を潜め、ポップで聴きやすいアルバムに感じた。兵衛さんは「もう次のアルバムのことを考えている」とのことなので、今から待ち焦がれていこう。まずは来年のツアーを心ゆくまで楽しみながら。
TRIPLANEはメジャー1stアルバム「home」の一曲目でこう歌っている。
「僕らの音種を蒔いて 光を探して行く旅 迷わずに信じていれば良い
先は長いけど 輝く未来への道」
TRIPLANE/ライナーノート
2017年12月6日。
デビューから4803日。
記念碑となる新たなアルバムをリリースし、その先の日々へと歩み始めたTRIPLANE。
その歩みが向かう先の景色を、僕たちも期待に胸を膨らませながら追いかけていこう。



