人材ビジネスコンサルタント奮闘記 -2ページ目

リーマンショック後の人材ビジネス業界の惨状

不毛な競争が続く人材ビジネス業界

日本の人材派遣市場は、世界的に見ても異質な存在である。約83,000もの事業所がひしめき、リーマンショック以後は、競争激化による「買い手市場」が続いている。そこには、2つの理由があると考える。


1.自由化業務解禁によるロースキル業務の存在

  自由化業務解禁により、日本の派遣市場は大きな発展を遂げた。バブル崩壊後の日本経済低迷期を支えてきた裏側には、人材派遣市場の活用があったことは間違いない。右肩上がりの経済成長を前提とした「終身雇用制」「年功序列制」から、社会環境に応じた柔軟な労働力に転換することで、人材派遣事業は日本経済の回復に大きく貢献した。しかし一方では、自由化業務解禁により、専門職のみならず、単純なロースキル業務でも人材派遣の活用が可能となった。それにより、サービスの差別化が難しくなり、目に見えやすい「コストダンピング競争」に向かったのは自然の流れだと言える。


2.特定労働者派遣制度の未整備

  自社社員を派遣社員として、派遣元先に提供するのが「特定労働者派遣」である。登録型派遣と比べ、労働者保護されるとの理由で、許認可基準も比較的容易である。しかしながら、ここ最近の各労働局の行政指導をみると、特定労働者派遣事業者に対するものが数多く存在している。登録型派遣に対する規制強化もさることながら、本来労働者保護が行われるべき「特定労働者派遣制度」整備が、派遣市場の適正な競争につながると考える。


①不毛な価格競争、②一部事業者のモラルハザードにより、本来社会的意義の高い労働者派遣事業が、労働者を不当に扱うネガティブな業界として捉えられ、今般の労働者派遣法改正案につながっている。改正案の個別内容を精査すると、必ずしも実情を理解しているとは言い難いが、人材派遣ビジネスが内包する課題を解決するには、労働者派遣法改正は必要であり、中長期的な視点での抜本的な改革を期待する。また、それにより、本当の意味で“生き残り”をかけた戦いが始まり、業界として自浄作用が働くと言えよう。



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物流現場のアウトソーシングが業務請負に向かう理由①

管理者の絶対的な不足により、全部の業務は直接雇用化できない

右肩上がりの高度経済成長期は、「作ったものはすべて売れる」の売り手市場の論理で社会経済が動いていた。しかし、バブル崩壊後の経済低迷で、「作ったものがすべて売れる」は幻想であり、「売れる分だけ作る」という買い手市場主義に転換を余儀なくされた。それにより、従来は、正社員活用を前提としていた労働力も、社会環境の変化に応じて柔軟に対応できるパート・アルバイト、そして人材派遣に一気にシフトした。


社会環境の大きな変化により、物流業務も、①小ロット、②多アイテム、③多頻度というキメ細かい物流管理が求められるようになった。そして、その物流業務の最大の特徴は、“業務波動”“単純作業”にある。「必要なときに必要なだけ」の労働力を、いかに需給調整できるかが、現場収益のポイントであり、スポット派遣が台頭してきた理由である。しかし、「日雇い派遣禁止」「派遣抵触日」をはじめとした“派遣規制強化”により、物流現場の労働力活用は大きな転換期を迎えている。


「派遣抵触日」を契機に、常用派遣スタッフを自社に転籍させ、直接雇用化は一見成功するかのように見える。しかし、日々の業務波動に対する人員調整では、いまだにスポット派遣に依存している物流現場が大半である。物流現場における労働力の担い手は、パート・アルバイト・派遣スタッフといった非正規雇用労働者であり、少ない現場管理者が、荷主対応・収益管理から、人材マネジメントまで現場運営をすべて行わなければならない。


特に、常用労働者と比べ煩雑な労務管理が必要とされるスポット・シフト労働者の管理を自社で行うノウハウをもつ物流企業は少なく、波動調整機能を自社で構築できる物流企業は一握りである。一方で、物流現場は管理者不足にさいなまれており、現場運営のすべてを自社で行うのは難しいといえる。


私のもとにも、メーカー系物流子会社・自家物流会社の経営層の方から相談をうける機会が増えている。スポット派遣活用を前提としてきたアウトソーシング活用戦略を、今後どのようにしていけばよいかという相談が大半である。人材会社からは、「日々紹介」「労務管理代行」「採用代行」などの提案が持ち込まれるが、有用なものかどうか、コンプライアンスとして問題がないかという不安を抱えている。スポット派遣の代替としての活用を想定しているようだが、人材会社・物流会社による二重管理が発生し、間接コストを含めると、トータルコスト負担増となり、物流企業のデメリットが大きい。したがって、上記のようなサービスが、スポット派遣の代替サービスとして根付く可能性は当面のところ低いと考える。「給与直接払いの原則」を逸脱した運用を行う人材会社もあり、労務コンプライアンスの面からも難しいといえる。


人材会社の目線でだけ物事を考えていると、ビジネスがうまくいかない。顧客である物流企業、そこで働くスタッフ、社会環境などを俯瞰して判断しなければ、中長期的に発展するビジネスモデルは作れない。物流企業がとれるべき選択肢を、ひとつひとつ丁寧につぶしていけば、おのずと「物流請負事業」の可能性が見えてくる。



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人材ビジネス市場の栄枯盛衰を思ふ

人材ビジネス市場の栄枯盛衰を思ふ

就職活動コンサルティングを手掛ける株式会社ワイキューブが、3月30日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。
 
ワイキューブといえば、『千円札は拾うな』の著書でも有名な安田佳生氏が代表をつとめる人材ビジネスベンチャーの雄である。企業の採用活動支援という独自の人材サービスを手掛け、人材ビジネス業界を目指す大学生の就職ランキングでも常に上位にある人気企業であった。
 
リーマンショック後の景気減退期において、労働市場は「売り手市場」から「買い手市場」に急変し、該社の業績圧迫につながった。いわば、人材ビジネスが右肩上がりで上がり続ける、「売り手市場」が続くことを前提としたビジネスモデルであり、景気減退期において、現在の状況に陥ることは自明の理であったといえる。
 
社会環境の変化や法改正などの影響を大きくうける人材ビジネス業界において、中長期的なビジョンでビジネスモデルを確立していくことはきわめて難しい。今後、派遣規制強化などにより、人材会社は従来のビジネスモデルの転換を余儀なくされる可能性が高い。そういった意味でも、中長期的な視点でビジネスモデルを確立できる人材会社が勝ち残っていく時代がくるといえよう・・・
  
   
2011/03/30(水) 就職活動コンサルティング
『千円札は拾うな』など代表著書多数
株式会社ワイキューブ
民事再生法の適用を申請
負債40億円
TDB企業コード:581345641
「東京」 (株)ワイキューブ(資本金8775万円、新宿区本塩町21、代表安田佳生氏、従業員88名)は、3月30日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。

 申請代理人は大澤康泰弁護士(港区南青山3-13-18 、電話03-5770-8282。監督委員には笠井直人弁護士(中央区銀座3-11-18、電話03-3546-2033が選任されている。

 当社は、1990年(平成2年)11月に設立された人材コンサルティング会社。代表の安田氏は、『採用の超プロが教える』(サンマーク出版)、『千円札は拾うな。』(同)など多数の著者として知られているほか、ワインセラーやバーを設置したオフィスがメディアで取り上げられ一時は大手企業にまじり、雑誌の就職人気ランキングで上位に入るほどの知名度を有していた。

 学生に対する合同就職イベントなど採用関連業務を手がけ、特に人材確保に苦労しているベンチャー企業への新卒採用支援に強みを有していた。知名度や積極的な広告宣伝活動もあって、コンサルティング活動、中小企業向けのセミナーが好調となった2007年5月期には年収入高約46億1400万円を計上していた。

 しかし、急激な業容拡大にともなう借入金が膨らんでいたうえ、事業の多角化にともなうコンサルタント費用が嵩むなど収益確保に苦しみ、2008年秋頃までに金融機関と返済条件変更に合意していた。ところが、直後にリーマン・ショックが発生し、2009年3月期の年収入高は約30億4000万円に減少していた。このため、リストラを進めていたが、その後も人材ビジネス業界が低迷、2010年3月期の年収入高は約14億8000万円にとどまるなど苦しい経営が続いていた。

 負債は債権者約150名に対し約40億円
  
帝国データバンク大型倒産速報より転載





いま何故、物流請負なのか?

派遣規制の影響が大きいスポット派遣業界

一昨年前、当時スポット派遣業界最大手であったグッドウィル・フルキャストの不祥事に端を発した「日雇い派遣禁止」問題。一時は過熱気味であった「派遣パッシング」も最近は息をひそめ、「登録型派遣禁止・製造業派遣禁止は行き過ぎではないか?」という論調も徐々に広がっている。


では、スポット派遣は、このまま続けていくことができるのか?
私の意見は「NO」である。理由は、以下の2つにある。
1つめは、多くの現場で、いまだに労働者保護がなされていないという点
2つめは、有識者が「日雇い派遣禁止」の影響は軽微だと考えている点


物流現場をはじめ、業務波動の大きい現場では、業務量に応じた柔軟な人員調整機能として、スポット派遣を多く活用している。繁忙期では、どこの現場からもひっぱりだこになるが、閑散期になると波が引いたように声がかからなくなる。学生や主婦、副業などで働きたい人にとっては、スポット派遣という、自分のライフスタイルにあわせて働けることは大きなメリットである。一方で、スポット派遣という働き方が常態化している労働者が多く存在していることが問題を一層複雑にしている。いわゆる「給与日払い」を目的に、スポット派遣を選択している労働者である。そういった労働者が一定の収入を、安定的に得ることができないことには、「ワーキングプア」問題解決はない。


また、派遣労働市場における主たる業務は、オフィス事務や製造業務など、比較的期間が中長期的な業務が主体である。物流業務をはじめとしたスポット業務は、派遣市場全体からみれば数パーセント足らずであり、社会的な影響は軽微であると有識者は唱えており、派遣法改正案が見直しとなった場合でも、「日雇い派遣禁止」が除外される可能性は低いといえる。


東北地方太平洋沖地震による社会混乱や不安定な政局運営により、猶予期間があるにせよ、スポット派遣を主体としてきた人材会社は、いずれビジネスモデルの転換を余儀なくされることは自明の理である。



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淘汰されない人材会社とは?

人材会社生き残り3つのパターン

現在、日本には、数多くの人材会社が存在している。人材派遣業においては、約83,000事業所が乱立し、世界全体の約半分を占めている。一方で、派遣労働者数は約110万人と、アメリカの約半分ほどでしかなく、いかに日本の人材派遣会社数が、世界的にみても供給過多なのが分かる。(「世界の労働者派遣事業主要統計調査(2009年)」/CIETT)


日本の派遣労働市場は、大手総合人材サービス会社と、中小零細派遣会社に大きく二極化している。そして、派遣許認可基準の厳格化・派遣法改正などの派遣規制強化により、人材ビジネス業界再編がまさに現実的なものとなりつつある。一部の資本系人材会社などでは、すでに買収・統合も進んでおり、多くの人材会社が今後大きな岐路を迎えることとなる。


それでは、どういった人材会社が今後生き残っていくであろうか?
私は3つのパターンに大別されると予測する。
1つめは、規模のメリットを活かした総合人材会社【A.リーダー戦略】
2つめは、他社の追随を許さないサービスの差別化が図れる専門人材会社【B.ニッチ戦略】
3つめは、サービスの差をくつがえす営業力の強い人材会社【C.営業リーダーシップ戦略】


ただし、現実的にリーダー戦略をとれる総合人材会社は限られている。では、それ以外の人材会社がとるべき選択肢は、B.専門的アウトソーサーとなるニッチ戦略、C.営業力を強化した営業リーダーシップ戦略である。しかし、現実的には、どちらか一方で圧倒的な競争優位性を築くのは難しく、ニッチ戦略+営業リーダーシップ戦略のバランス(B+C)により、自社の人材ビジネス領域を模索していくものと推察される。

 


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