春というと、まず思い出すのはオレンジクリーナーです。

オレンジクリーナーには2種類あります。
春の終わりと、春の始まり。


春が他の季節と違うところは、まず最初に終わりが来て、そのすぐ後に始まりが来るところでした。
今の高校ではどうなっているか分からないけれど、高校生のころは学期の始まりと終わりの前後10日くらいは短縮授業になります。2時間くらいで帰れる。
短縮授業といってもほとんど通常の授業はありません。
球技大会をやったり、期末テストが返されたり。
だんだん暖かくなってくる窓の明かりを浴びながら、そんな非日常を過ごす短い時間が。とても好きでした。
最後の日にやることは、ちょっとした話を聞いて、通知表を受け取って、そして大掃除。

うちの高校では、大掃除のときには変わったものを使っていました。
誰かが通販で大量に買ってくるというオレンジクリーナーとオレンジワックス。
教室や廊下の床、机や窓、トイレなんかの水回りにすら使っていました。
汚れはじつによく落ちました。
使ったモップやら雑巾までもがきれいになりました。
校内のそこかしこで漂うオレンジの香りは、洗い流しても落ちません。
時間はたっぷりあるからとゆっくり掃除をしながら、すべてを終えた後でオレンジの香りの中を通って帰って行きました。

オレンジの香りは暖かな風でふわりと舞って、どんどんその密度を高めていきます。
まだまだ膨れ上がっていく春の陽気の中、本当に帰るべきなのか分からなくなります。


その2週間後には、今度は始まりの大掃除があります。
終業式の大掃除と違うところは、オレンジクリーナーの香りが強すぎて2・3日間は消えないということです。



大掃除でいちばん印象に残っているのは、
校舎に誰もいなくなった中、日曜日に二人だけでやった掃除です。

映画だか何だかでありそうな美しいシチュエーションです。空もよく晴れていたし。
ちなみに、一緒に掃除をしたもうひとりは担任の教師でした。

卒業式の後でホームルームが長引いて大掃除ができなかったので、後日時間がある人は大掃除しに来てくださいと言われました。
で、行ったら他には誰もいなかった。みんな時間がなかったみたいです。
あまりに誰も来なかったので、帰りにラーメンをおごってもらいました。半ライスつきでした。
定年を間近に控えた英語教師はあまり口数が多くなく、それまであまり話をしたことはありませんでした。
その大掃除のときも、いっぱい話したというわけでもなかったけれど。
ゆっくりと掃除をするのも良いなと思いました。
穏やかな日で、窓の向こう側に見えた飛行機雲はいつまでも残っていました。

あまりに誰も来なかったので、その大掃除はオレンジクリーナーもワックスも使わず、から拭きだけで終わりました。
下の学年はまだ終業式を終えていなかったので、そもそも校舎内にオレンジクリーナーが用意されていませんでした。
整然と繰り返していたはずの終わりと始まりの循環は、その年には終わりを迎えることができませんでした。
春はその時に途切れて、それ以降、戻ってくることはありません。

春は好きな季節です。
この季節になるとまず頭に浮かぶのはこの曲。
http://www.youtube.com/watch?v=aB15dH18B3Q
谷川俊太郎の詩の中でもいちばんくらいに好きだし、書きたいのはこういう文章なのです。
これがカラオケに入ってるのには驚きました。
合唱は良いものだと思いました。ぜひまた歌いましょう。次は楽譜が欲しい。


春にはいろいろなことがありました。
木漏れ日というよりも、強くあたたかい雨の翌日、新しく生まれてきた太陽みたいな。春はそういう季節なのです。
なのですが。
実際に思い返そうとしてみると、具体的に何があったのかをあんまり思い出せません。
靄がかかったというよりも、多分、太陽がまぶしすぎて。
ですので、それを思い出すために。
そして文章の練習のために。
春の印象をつらつらと書いていきます。

これはスケッチです。
☆こどもブロイラーのある世界

輪るピングドラムは、既に語られているように愛の話です。
しかし、世界は間違っているとして世界をピースしようとした人たちがいるように、視点をちょっとだけずらしてみると、そこにあるのはただひたすらに冷たい氷の世界。



このアニメのキーワードであり、それでいて最後まで意味を語られなかった言葉の一つに「きっと何者にもなれない」が挙げられます。
何者にもなれないとは何なのか。
運営の人間に言わせると、それは、「粉々になって、誰が誰だか分からなくなる」ということなのですが。
その延長線上にあるものは無個性のピクトグラムにしか思えません。どうしても。

あの世界に存在するのは2種類の人たちだけです。
「世界を救う者」か、または無個性のピクトグラムか。

私は何者にもなれなかったピクトグラムです。



世界に存在する人たちは、一体何者になれたというのでしょう。
きらきらとした光の破片を振り撒いて、
それから後は、その名前を誰が覚えているのでしょうか。