「那智と同胎4胎子」第3回目の今回は、那智の滝号の同胎犬のメス達に焦点をあてて、那智ファミリーをご紹介して参ります。
今回で本テーマは完結となりますのでもう少々お付き合いください。
■四胎子の表現は偶然か必然か
【虎月号×鳳春女号】四胎子のカラーは黒毛/サク(那智の滝),赤胡麻毛/襟巻き(春雪女),胡麻毛/大斑(新雪女),胡麻毛/大斑(美雪女)でした。
こういった毛色の発現に関して言えば、私もはっきりと予測する事はできません。偶然この組み合わせで発現したといえます。
ただ、虎月と鳳春女の血統をそれぞれ辿ってみると、黒も斑もそしてサク襟巻きも居ますのでこの4頭の毛色はどういった組み合わせになるかわかりませんが、ある確率をもって発現したことは必然であったはずです。
作出にあたっては、自分の欲しているイメージに近い表現の子ができるように交配の組み合わせを考える訳ですが、それはこの“確率”を上げる作業でしかありません。
ここがブリーディングの難しく、また奥深いところではないかと思っています。
実を申しますと【虎月号×鳳春女号】の組み合わせでは虎月に入っている他系統の影響がありましたので、生まれてくる子の表現を予想することはかなり困難でした。
■セレクトそしてマッチング
3頭のメスのうちセレクトしたのは2頭です。春雪女は新居浜の、新雪女は福山の(那智の飼い主とは別の方です)四国犬愛好家の下で台メスとなりました。
美雪女は一般の方のお宅で暮らしましたが、他系統の表現が気になりましたので作出には使いませんでした。那智については子を見たいと思っていましたが、直子の話が聞かれなかったことは残念でした。
春雪女と新雪女はどちらも現在の展覧会では見られない柄ですが台メスとしてはよかったと思います。マッチング次第で斑のない展覧会向きの犬も作出できました。
私がメスの斑犬を作出に使う際は、姿の良さに重点をおいてセレクトします。また、斑犬は個体によって色素に退色などの異常を持っていることがありますので、目と粘膜(色素ポイント)の色を必ずチェックし、少しでも退色の疑いがある個体は使いません。
マッチングについては、斑ができるだけ無く毛色の良いオスを選び、生まれてくる子にその毛色がうまく乗るように心がけます。斑犬の有色部分は総じて良い色ですし、白毛は美しいのでマッチングさえ間違わなければきれいな毛色の作出ができることと思います。
もうひとつのポイントは雄雌両方の血統をよくよく吟味することです。
遺伝子プールが限定されるほど表現の予想もしやすく、欲している表現が作出される確率が上がることはいうまでもありません。
斑犬を使ったブリーディングはリスクも大きいので、無理に作出に使うことを勧めるつもりはありません。しかし、チャンピオン犬をむやみに交配すれば良い犬が得られる、というものでもないように思います。
このようなことを書いては参りましたが私自身何十年にも渡って試行錯誤しています。そしてお恥ずかしいことにまだ納得できる作出に辿りつけておりません。
ただ掘り下げれば掘り下げるほど、よりよいブリーディングを行なっていくためには、目に見える表現の下にその犬が密かに隠し持っている“血統”を見極めることが重要なのだと思い知らされます。(be-so)
_______次回は通常の古典鑑賞の予定です。
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