「め、目白さんって、もしかして・・・」





「あれ?有田さん、目白美智子オーナーをご存知ないんですか? 

 あの”メジロの総帥”ですよ!。」



「ええええええええ!(((゜д゜;)))」


「しょーしゅいって、つおいの?」



「まあ、クスクス」




「わたくし、こういうものです。以後、お見知りおきを・・・ (゜д゜;)」



「神戸HCの有田さんね。どうも、はじめまして。」



「はぢめまちて。くるみちゃんでしゅ。 (o^-')b」



「はじめまして、クスクス」




「せっかくだから、おばちゃんもくるみちゃんのお馬をみせてもらってもいいかしら?」



「みせてもらってもいいよ!」



くるみは嬉しそうに駆け出した。



「ほら、みてみてー!これがグリだよー!かわいーでしょー!」



「ワンワン! ( ゚Д゚)」



「く、くるみちゃん、それはマスター富士川の愛犬・スナフキンだよ・・・。」



「しょーなんだー。」




「き、気を取り直して。この仔がグリーンワールドです!」



「うわーい!」



「まあ、かわいらしいお馬さんね!」 


少女との再会をはたした仔馬も、嬉しそうに顔をすり寄せた。





「おお、グリもくるみのこと覚えてるみたいだね!」



「ちょっとパパ!あたりまえでしょ!」



「ゴ、ゴメンゴメン!(スナフキンと間違えてたくせに・・・)」




「あれ?この仔、脚をどうかしてるのかしら?」



「ハハハ、やっぱり目白さんの目はごまかせないや。」 沖田があきれた。



「!(な、なんて眼力・・・)」 


「でもバランスのいい身体つきだし、かしこそうな顔してる!きっと頑張ってくれるんじゃないかしら?ねえ、くるみちゃん?」



「Zzzz・・・ ( v.v)。o○」



「寝ちゃった!」 



「す、すみません。朝が早かったもんだから・・・」



「まあ、クスクス」




「目白さん、数々のご無礼、お許しください。」



「いえ、こちらこそ楽しかったです。次は馬主席でお会いしましょうね、有田さん。」



「はい。是非!」





「ふー、やっぱりオーラが違うよ・・・」



「じゃあ、有田さん、マスターをよんでくるから、ちょっと待っててくださいね。」



「別にいいよ。グリに会いに来ただけだし、くるみも寝ちゃったから。今日は帰るわ。」



「そ、そうですか?」



「それより、グリのことよろしく頼むな。」



「ええ、デビューの日を楽しみにしていてください!」



「ああ、くるみにもそう伝えておくよ。じゃ!」



「お気をつけて!」



(つづく)




トレセンの駐車場に1台の車がとまり、ドアが勢いよく開いた。





「チッチキチー!」

「こら、くるみ!危ないから急にとびだしちゃダメだよ!」

「グリにあえる♪グリにあえる♪グリにあえるー♪」


「こ、こらー、待ちなさい!!」

有田の愛娘・くるみは、北海道のセリ市で出会ったあの若駒と、
再会できることが嬉しかった。前夜も興奮してあまり寝むれないでいた。


(ドスン!)




「イターイ!」

勢いよく駆け出したくるみは、前を歩く一人の夫人にぶつかった。

「ホラ!ちゃんと前を見ないからだぞ!ス、スミマセン お怪我はないですか?」


有田がすかさず駆け寄った。


「ええ、私は大丈夫よ。それより、おじょうちゃんは大丈夫?」


「うん、おばちゃんゴメンなさい!」


そういってたちあがったくるみは、また一目散にかけだした。


「チッチキチー!」



「クスクス、元気がよくてよろしいですね。」

「いやあ、母親譲りのはねっかえりで、手を焼いてます。」

「それでは、私はこれで。」


「失礼します。」


「グリ、こんにちは!」


「ボー (-。-)」


「あれれ?くるみちゃんのことわすれちゃったのー????」


「ボー (-。-)」


「う・・・うるうる」


「ボー (-。-)」

「おや、お客さんかな?どうしたのおじょうちゃん?」


「おにいちゃん、グリが・・・」


「グリ?ああ、グリーンワールドに会いに来てくれたんだね?」


「・・・。」


「こいつはグリじゃないんだ。グリは向こうにいるから、おにいちゃんが連れて行ってあげるよ。」


「このこはだあれ?」


「バックレオヤジっていうんだよ。もう歳だから、目が悪くってね。。。」


「しょーなんだー。」

「お、いたいた。」


「あ、有田さんこんにちは。」


「沖田くん。突然きちゃってすまないね。」

「はやくグリにあわせてよー」


「おっと、ゴメンゴメン。向こうの馬房にいるよ。」


「やったー!しゅっぱつしんこー!」


3人は隣の厩舎に移動しようと表に出た。すると、

「あ、目白さん!こんにちはー。」


「あー、さっきのおばちゃんだー!」


「あらまあ、おじょうちゃんは沖田くんところのお客様だったのね。」


「め、目白さんって、もしかして・・・」


「あれ?有田さん、目白美智子オーナーをご存知ないんですか? 

 あの”メジロの総帥”ですよ!。」


「ええええええええ!(((゜д゜;)))」

(つづく)


「グリーンワールド」と名づけられた牝馬が栗東にやってきたのは、10月も半ばをすぎたころだった。





「ようやく来てくれたね。これで娘の喜ぶ顔が見れるよ。」有田はホッと胸をなでおろした。


「脚の怪我がなければ、2歳戦から使えたんだけど。。まあ無事にデビューできるかどうかは、アイツ次第だ。」 と多良崎。

「アテンションプリーズ!アテンションプリーズ!」






「噂をすれば、だ。 ジョージ様のお見えだぞ。。」


城崎で遭遇したあの外国人調教師だ。

「マスターベーショ・・・グハッ!」


もんどりうって倒れこむ男。


「多良崎、ありがとうよ。お前がやらなきゃ、オレがやってた。」

「ハアハア・・・、いいの持ってるじゃないか・・・イテテ。」

「マスター富士川、これが前に話してた馬だ。よろしくたのむぞ。」


「チ!なんでワタシがこんな馬の面倒を・・・」


「なにぃー?」 むなぐらをつかむ多良崎。

「まあまあ、二人とも、ここじゃなんだし、事務所に行きましょうよ。」


1人の若者が間に割って入った。

「きみは・・・?」


「はじめまして、富士川さんの助手をしてます、沖田です。」


「これははじめまして。おれは神戸HCの有田。こっちの手の早い男が多良崎。ヨロシクな。」


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


「沖田くん、若いな。歳はいくつだ?」


「22です」

小柄でニコやかなその男はペコリと一礼をして、グリーンワールドを馬房に連れて行った。一切の動きに無駄がない。


「とりあえず、グリはあの男を担当にしたから、しっかり見てもらうように頼んどくんだな。」


「なにを!エラそうに!!!」

「あんなポンコツ、いくらワタシが天才調教師でも、勝たせるのは至難の技ネ。他の誰も預かってくれなかったから、この天才を頼ってきたくせに!」


「くっ・・・」


「多良、今日は大人しくしておこう。」


「・・・・分かったよ。」

(富士川厩舎馬房)


「ヒヒン」


「こんにちは。僕は沖田。」

北海道の牧場を出て以来、道中ストレスの連続だったグリーンワールドにとって、男の眼差しはなぜか心を許すことのできるものだった。

「今日からは、僕が君の面倒を見させてもらうよ。よろしく!」


沖田は水とカイバをたっぷりつぐと、その場にちょこんとあぐらをかいた。


「疲れただろ?今日はゆっくりおやすみ。」

『この人・・・故郷の牧場のおじさんと同じ匂いがする・・・。』


グリーンワールドは、安心すると、自分が空腹であることを思い出した。気が付くと、沖田が用意したカイバは、キレイに空っぽになっていた。

(つづく)




セレクトセール1日目に、エアグルーヴの初仔を落札しそこねた神戸HCは、その夜、ルストマ・シーランド代表の接待をうけていた。





「このおにく、おいしー! o(^▽^)o」



「あ、くるみ!ぱぱの肉とったなー!」



「ガハハ!まだいくらでもあるよ、有田くん。」 ルストマ代表が笑う。




「それにしても、多良崎が神戸に行くと言い出したときは驚きましたよ。」


「あの当時のおれは、こんな片田舎で一生終えるのが耐えられなかっただけさ・・・」


「今は違うのか?」


「あの震災で運良く生き延びて思ったんだ。生きてること自体、素晴らしいことなんだって・・・。どこで生きるかにこだわっていた自分が情けないよ。」


「多良崎・・・。」




「おっと、しんみりさせちゃったな。そうだ!明日のセリはいい仔馬は出てくるのか?」


「そうそう!手ぶらで神戸には帰れないぜ!」


「明日はうちの若林くんご推薦の牝馬が登場するんだったね?」


「はい代表。あの仔は間違いないと思いますよ。」


「お、いいこと聞いちゃったな、多良崎!おれたちも便乗するか?!」


「オイオイ!うちは神戸さん相手に5億の博打を打つ気はないよ!ご勘弁願えないかな?」


「うーん、どうします?会長。」


「じゅーしゅ、おかわり。 ヽ(`Д´)ノ」


「ジュースで手をうってくれますか?よかった、よかった!」


「ワハハハハ!  (*^▽^*)」




翌日、一行はセレクトセール2日目に向かったが、結局これといった馬を見つけることはできなかった。


「運命的な出会いなんて、なかなかないもんだな。」



「それでいいんじゃないか、有田。馬といっても家族みたいなもんだからな。中途半端な気持ちで落札したら、馬にとっても失礼だ。」



「パパ、げんきだして!!! p(^-^)q」



「アリガトウ、くるみ!そういえば、若林さんところは無事に落札してたな。」



「ああ、またあいつのバイト代がハネあがるだろうよ。 ≧(´▽`)≦」





会場を出ようとする3人の前を、1頭の仔馬を引いて肩を落とす老人が歩いていた。



「売れなかったのか。生産者も大変だな・・・。」



「ん?おいみろよ有田。あの仔馬、くるみちゃんが昨日おしゃべりしていた馬だぜ。」



「あ、ほんとだー!やっほー! (^O^)/」



「やっぱり脚を怪我していたら、買い手はつかないか・・・。」




「ああ、昨日のおじょうちゃんかい?」


「おじちゃん、このこ、どこにつれていくの?」


「・・・・。」


「ねーってばー! ヾ(。`Д´。)ノ」


「く、くるみちゃん。ダメだよ!」




「・・・おやじさん、この仔馬の血統をおしえてもらえないか?」


「有田?!」


「ほう、【フジキセキ×ノーザンフラワー】か。あのフラワーパークの半妹じゃないか!怪我さえ完治したら、こいつは化けるかもしれないぞ。」


天性の勝負師、有田の目が輝きだした。


「おやばか、だと笑うかね?」


「いや・・・。ここでこうして出会ったのも、運命なのかもしれないな。」


「運命か・・・。」


「この仔馬が己の力で道を切り開いていけるか、オレも見てみたくなったよ。」


「よし! そういうことだ、おやじさん。この仔をうちに譲ってくれないか?」


「あ、ありがとうございます!」


「うわーい!パパ、くるみちゃんのおやつ、たべてもいいよ! (≧▽≦)」


(つづく)




「ええい、4億9500万!」 有田が叫んだ。





ついに、国内セリ史上、最高入札額を更新した瞬間であった。



「ドオオオオオオオ!」




どよめく会場、さすがの有田も手が震えている。


ライバルの様子をうかがう有田と多良崎。


男は有田たちの方を振り返り、「覚えておくよ」といわんばかりに二人の顔を凝視した。



「か、勝ったか?!」



有田がそう思った次の瞬間、男は高々と手をあげた。



「5億!5億円です!!!」



「ドオオオオオオオ!」




会場は興奮のるつぼと化した。



歴史的なセリに立ち会っていることに、その場の全てのものが興奮を抑えきれずにいた。



「5億!5億です!さあ、いらっしゃいませんか?!」



いっせいに、有田と多良崎を伺う一同。



しかし、有田が終戦の合図を送る。



「5億で落札です!おめでとうございます!!」



「ウオオオオオオ!」



会場のどよめきは、しばらくの間おさまることはなかった。



こうして、セレクトセール1日目は、史上空前の盛り上がりのうちに幕を閉じた。





上には上がいる。所詮、おれたちには分不相応な馬だったのか・・・。
打ちひしがれる有田と多良崎。



「いいものを見せてもらったよ、神戸さん。」


会場を出ると、若林が歩み寄ってきた。


「ほんとに、きみたちは・・・。」



「大バカヤロウか?」



「ちがいねえ・・・。」




「おや、若林くんのお知り合いでしたか?」


後ろから1人の男が声をかけてきた。



「あ、貴方は・・・」



振り返ると、そこには有田からセリの主役の座を奪った男が立っていた。



「高梨さん!」



「高梨さん?」


「はじめまして、高梨です。」



「紹介するよ。あの関東一円でアミューズメント事業を展開している「タカナシ」の社長さんだ。」



「以後、お見知りおきを」



「い、いや、こちらこそ・・・。有田です。こいつは多良崎です。」




「ハハ・・・、今回は相手が悪かったな、有田。」



「私も久々に熱くなったよ。お若いのにいいハートをお持ちだ。」



「あの仔馬、絶対大事にしてくださいね。」



「約束するよ。有田くん」




「おー、いたいた。神戸HCさん!」


「あ、代表!どこいってたんですか、探しましたよ!」



「ルストマ・シーランドの代表?!」


「ガハハ!あんたたち、実におもしろい!いいものを見せてもらったよ!」



「ハハ・・・(大物だらけだ)」






「今夜きみたちを夕食にご招待したいんだが、どうかな?いい肉を出す店があるんだよ。」



「いきましょう、有田さん、多良崎!」



「そうですね。。今夜は飲まないとやってられませんから。」



「そうだな。。」



「ガハハ、決まりだ!」





気が付くと、神戸HCの周りには、黒山の人だかりができていた。
有田一世一代の大博打は不発に終わったが、このことがきっかけで、神戸HCの名は業界を駆け巡ることになった。



何かが変わり始めた夏の日であった。


(つづく)




いよいよ、セレクトセール1日目のセリがはじまり、会場には大勢のホースマンがつめかけた。





セリは順調に進み、大半の仔馬には買い手がついた。

そして、ついにあの馬の順番が来た。会場に緊張が張り詰める。



「お待たせしました!次は本日の目玉、いや!今年の目玉、エアグルーヴの初仔です!」



「ウオオオオオオ!」



会場はこの日の主役の登場に、大いに盛り上がりをみせた。




価格はスタート直後にいきなり2億の値がついた。


会場からどよめきがおこる。


値はまたたくまに3億、3億5000万とつりあがっていった。次々と脱落していく入札者の中、有田はじっと構えている。


「3億9000万!もうありませんか?!」


一瞬の静寂が会場をつつんだ。


そして、有田は意を決したように合図をおくる。


「4億!!!」


どよめく会場のあちらこちらで声があがった。



「見ない顔だが誰だ?」「若いゾ・・・IT関連か?」


「4億!4億です!ほかにいませんか?!」


(ヨシ!!!)


有田は拳を握り締めた。


その時、ななめ前方に陣取っていた浅黒く日焼けした男が合図を送った。


「4億1000万!」




「す、すごいことになってきたな・・・」



「落ち着け、多良崎。ここからが本番だ!」


有田が勝負に出た。


(これでどうだ?!)



「4億5000万!4億5000万です!」




「ドオオオオ!」驚愕する一同。




口元に手をやり、深く思案しているような男。


(い、いけるぞ!)



そう思った次の瞬間、男の口元から笑みがこぼれた。


「ニタッ」


そして、男は意に介さないそぶりで値を上げた。


「4億6000万!」



「くっ!まだまだ!4億7000万!」有田も負けじとくらいつく。





どうやら、セリは有田とその男の2人に絞られたらしい。


固唾を飲んで見守る一同。あの若林も、遠目から不安そうに見つめている。



「もう降りろ、多良崎!その男は・・・。」

黙って見守っていた多良崎も、思わず制止した。



(有田!もう限界だろ?!)




(引くわけにはいかないんだ!多良崎!)




「4億8000万!」 男は一切表情を変えようとしない。



有田は鬼の形相で叫んだ。



「ええい、4億9500万!!!」


「ドオオオオオオオ!」 うなる会場。




ついに、国内セリ史上、最高入札額を更新した瞬間であった。


(つづく)




「ああ、僕の雇い主ですよ。ルストマ・シーランドの代表です。」





「あ、あの世界の海運王が、あんたの雇い主?! (゜д゜;)」

「ええ。豪華客船に乗られる際は、是非声をかけてくださいね。」

「豪華客船で世界1周クルーズか・・・リタイアしたら、是非乗船してみたいものだね。 」


「さあ、少し落ち着いたところで、帯広をご案内しますよ!」


「おいおい、帯広のどこを案内するってのさ?おれはホテルに戻って休むよ。 ヽ(;´Д`)ノ 」

「多良崎、おまえってやつは!」


「いいんですよ、有田さん。あいかわらずだな、多良崎。」

「くるみちゃんもかえってねんね!ふわ~ (´□`。)

「若林さん、いろいろとお気遣いありがとうございます。会長がオネムのご様子なので、ホテルまで送ってもらえますか?」


「了解です。くるみちゃん、またお兄ちゃんと遊ぼうね!」


「いーやーよー! ヽ(`Д´)ノ」


(数日後)


神戸HC一行の姿が、セレクトセールの会場にあった。


「おうましゃんがいーっぱい!」

くるみの目が輝いた。


「すごい数だな・・・人も馬も・・・」


「国内最大のセリ市なんだ、あたり前さ、多良崎。」

「おれとくるみちゃんは、どこかで休んどくから、しっかり下見してこいよ。」

「了解!グルーヴの仔をこの目でしっかりチェックしてくるぜ! あ、あれ?くるみ?!」


ふと気が付くと、くるみの姿が見えない。あわてふためく二人。

「少し目を離すとこれだ・・・」

「いた!あそこだ!」

見ると、木陰の下にいる1頭の仔馬に、何やら話しかけている様子だ。

「よかった・・・。おーい、くるみー!」

「パパ、しずかに!おうましゃんとしゃべってるの! ヽ(`Д´)ノ」

「くるみちゃん、すごいねー!お馬さんとお話できるんだー。」

「しょーなの。このこ、くるみちゃんをみてたの。でも、すこしげんきがないみたい。」

見ると脚に包帯がまかれている。

「怪我してる仔馬を買う物好きなんて、いないよなぁ。有田。」

「・・・・ああ。」

「すごくかわいいおかおしてるよー! ヾ(@^▽^@)ノ」

「どれどれ、2歳牝馬かな?ほんとうだ、とってもかわいい仔馬さんだね。」


「パパ、このこ、くるみちゃんちにつれてかえるからね! ヾ(。`Д´。)ノ」

「くるみ、ごめんよ。今日は遊びじゃないんだ。」

「ウワーン!パパなんて大キライ! (ノ◇≦。)

「あちゃちゃ・・・やっぱり連れてくるんじゃなかった・・・。 」



(つづく)





帯広空港におりたった神戸HC一行を、1人の男が出迎えた。





「ようこそ、北海道へ!多良崎、元気だったか?」


「わざわざ出迎えすまないな、若林。紹介するよ、有田と娘のくるみちゃん。」



「有田です、はじめまして。わざわざ空港まで迎えに来てもらってすみません!」



「いえいえ」



「チッチキチー!くるみちゃんでしゅ!」



「こんにちは、くるみちゃん!おにいちゃんは、若林っていうんだ。よろしくねー。」



「いーやーよー! ヽ(`Д´)ノ」



「こ、こら!くるみ! すみません・・・」



「元気がよくていいですね!くるみちゃん、つかれただろう?おいしいパフェでも食べにいこうか!」



「パフェ!パフェ!はやく、あんないして!」



「くるみちゃんが、神戸HCの会長さんだな・・・・(汗)」




帯広市内に入った一行は、ホテルへのチェックインをすませ、六花亭本店へと向かった。


「あいかわらずうまいな!」



「でも、スイーツといえば、みなさんがいらした神戸は本場じゃないですか!」



「神戸でもじゅうぶん通用するよ。ねえ、会長?」


「くるみちゃんがおみせのケーキ、ぜーんぶ、たべてしまうー!モグモグ。」



「か、会長・・・(汗」



「あ、店員さん、こっちおかわり!」



「親子そろって、甘いものに目がないな・・・。」





「ところで、若林さんと多良崎はどういう関係で?」


「昨夜も話しただろ!おれの北大時代の同級生で・・・」


「今は大学にのこって助教授をしてます。」と、若林。


「それだけじゃないぜ。こいつは馬術の天才で、インカレで優勝したほどの腕前なんだ。」と多良崎。


「ほう!馬術部ですか!じつは私も・・・バスケ部です!ププ! ヘ(゚∀゚*)ノ」



「・・・・。くるみちゃん、パパなぐってもいい?」



「いいよ! o(^▽^)o」





「今でもたまに小遣い稼ぎで、馬の目利きみたいなマネをしてるんです。」



「ほう!馬の目利きですか?!」


「有田、おまえの選馬眼も相当なもんだが、若林にはかなうまいよ。今までにセリ市で何頭ものG1ホースを発掘してきてるんだぜ。」


「な、なんだって!」


「ハハハ、偶然だよ。運が良かっただけさ。でもおかげで、代表には気に入られるようになったけどね。」


「代表?」


「ああ、僕の雇い主ですよ。ルストマ・シーランドの代表です。」



「あ、あの世界の海運王が、あんたの雇い主?!  (゜д゜;)」


(つづく)





「来月に開かれる仔馬のセレクトセールで、今後の神戸HCを担う仔馬を見つけ出さないとな。」





神戸HCの事務所で有田が切り出した。







「実はどうしても欲しい馬がいるんだよ。多良崎、こいつを見てくれないか。」



そう言って有田が差し出した資料には、驚くべき仔馬が掲載されていた。





「あの女傑エアグルーヴの初仔じゃないか! 父は・・・三冠馬ナリタブライアン?!」



「すごいだろ?おれはどうしてもこの牝馬が欲しい。この仔なら、神戸HCの未来を託すことができる!」







「神戸HCの未来・・・?」



「オーナーブリーダーだよ。おれたちの手でサラブレッドを自家生産するんだ!」



「ええええええええ!(((゜д゜;)))」










多良崎は、有田の無鉄砲さにいつも驚かされてきた。しかし、同時にそんな彼の性格がうらやましくもあった。


「この牝馬を繁殖にあげ、いつの日か、おれたちの牧場からG1ホースを輩出してやろうぜ!」



「おれたちの牧場・・・・。G1ホース・・・!」




「ガチャ」



ドアが開き、1人の女の子が入ってきた。


「おたまじゃくしは~、カエルになるのよ~♪ヾ(@^▽^@)ノ



有田の愛娘・くるみであった。





「おや、よく知ってるねー、くるみちゃん!」多良崎が笑った。



「じゃあ、くるみ。カエルのこどもはなーんだ?」



「カエルのこどもはねー、うーんとねー・・・、カレーパンマン!



「ええええええええ!(((゜д゜;)))」
「ええええええええ!(((゜д゜;)))」




「そうだ、くるみ。こんどパパたちは北海道にいってくるよ」



「フーン、しょーなんだー」


「くるみちゃん、おにいちゃんが六花亭のバターサンド買ってきてあげるね。」




「ちょっとまって!くるみちゃんもつれてってー!」


「うーん、困ったな」



「いいじゃないか、有田。くるみちゃんもお馬さんが見たいんだよね?」


「おうましゃん、だいすき!」



「し、仕方ないな・・・パパの言うことをよく聞くんだよ?」



「チッチキチー! (*^∀^)b」



「(パパ、すごく不安・・・) (-。-;)」




こうして、神戸HCは、その大いなる野望をかかげ、北の大地へと飛びたった。


(つづく)




有田の実家の1室を事務所にして始動した「神戸ホースクラブ」であったが、その前途は多難であった。先生から託された馬たちは、有田の豊富な資金力の元、無事にレースに出続けることができたが、主の死をしってか、レースでの結果は散々で、長い間勝ち星からは遠ざかっていた。





それでも、多良崎や有田に暗さはなかった。むしろ、馬主としては苦戦を強いられてはいたが、1頭として故障することなく、その競走生活を全うさせてやれることに、大きな満足感をおぼえていた。


「ふー、ようやくおまえの恩師の愛馬も全部片付いたな・・・」



「おいおい、有田。片付いた、はないだろ?」



「冗談だよ。それよりも、ぼちぼち攻めに転じる時だぜ。」



「嬉しそうだな、有田。」




「ワァーーー!」部屋の片隅においてあるテレビから、歓声が聞こえた。



「お、春天がスタートするみたいだ。見ようぜ。」




二人はテレビの前に座った。



「サクラローレルとマーベラスサンデー・・・多良はどっちだと思う?」



「・・・・。」



テレビに映し出された競馬中継では、今まさに天皇賞(春)がスタートしようとしていた。



「マヤノトップガン・・・(ボソッ)」



「ん?何かいったか?」



「いや、岡田先生の生前に、一緒にマヤノトップガンの新馬戦を観戦してね。。あの日の若駒が、ここまで成長するとは・・・分からないもんだね」



「いい馬だ。たしかにいい馬だよ、多良。しかし今日は相手が悪い。このレース、ローレルとサンデーで決まりだぜ」



「そうだな・・・」





「ガシャン!」


スタートした。レースはまるでローレルとサンデーのマッチレースのように、お互いが相手をマークしてすすんだ。



「ワァァァ!さあ、レースは4コーナーを回って、最後の直線!ローレルが先頭に立った!これをマーベラスサンデーが追走する!」



「抜けた抜けた、2頭が完全に後続を突き放した!さあ、最後の直線、ローレルか?サンデーか?!後ろからは何も来ない、後ろは完全に・・・・・え?!」



誰もが2頭での決着と思った瞬間、淀のターフに1陣の風が吹きぬけた。


「ああああ!大外から何か1頭飛んできた!!!こ、これは・・・」



「トップガンだ!トップガンだ!大外から一気にマヤノトップガンが飛んできた!」


「ウソだろ?! (((( ;°Д°))))」有田が立ち上がった。



「いけー!」多良崎が叫ぶ。




「意地でも抜かせないローレル!懸命にくいさがるサンデー!さあ、ゴール前は3強の争い!」



しかし、狙いすまされた鬼脚の前に、さすがのローレルたちもなすすべはなかった。



「トップガンが先頭に立った!トップガンだ!トップガンだ!マヤノトップガンが今先頭で・・・ ゴールイン!」


「よーし!!!!」





多良崎は、拳を天に突き上げた。目にはうっすら涙を浮かべている。


「多良崎、おまえ・・・」



阪神大震災の復興のさなか、自らも目覚しい成長をとげた神戸のスターホース・マヤノトップガン。



一人旅の菊花賞、ナリタブライアン・ヒシアマゾンを蹴散らした有馬記念。
カネツクロス・ダンスパートナーを制し、地元阪神に凱歌をあげた宝塚記念。
復興に燃える地元・神戸の人々に、夢と希望を与えてくれた名馬であった。


「マヤノトップガンか・・・。多良崎、おまえ惚れたな?」



「ああ・・・」




マヤノトップガンがこの日二人に与えた衝撃は、数年後、とてつもなく巨大なうねりとなってターフを飲み込むことになる。


(つづく)