「おとうちゃん!レースがはじまるよー」
「わかった、今いく!」
北海道・静内のはずれにある古来ファームは、いつになく盛り上がっていた。
「たのむぞ・・・プリンセスメール!オマエの走りに、おれ達一家の明日がかかってるんだ・・・。」
家族経営であろう小さな牧場は、明日にも潰れそうな零細牧場であった。
これでダメなら牧場は手放さなくてはならない。そんな中、大金をはたいて購入した肌馬がスカーレットメールであった。 その初仔であるプリンセスメールが、中央G1プリンセスSを勝ち、一家はなんとか年を越すことができたのであった。
「あいつがクラシックホースにでもなれば、弟妹たちも高値で売れてくれる・・・。おれ達もこんなギリギリの生活をしなくてすむんだ・・・。」
「とーちゃん。あたいは今のままでも十分だよ。」
「何いってるんだ!牧場が盛り返せば、出稼ぎにでた子供たちも帰ってこれるじゃないか!」
「ウワアアアアア!」
ターフに2歳女王プリンセスメールが帰ってまいりました!桜花賞トライアル・マロン賞は断然の1番人気です!
牝馬3強の一角グルーヴダイナは、先の復帰緒戦を3着と敗れております。新興勢力の活躍が著しい春のクラシック戦線、皇女プリンセスメールは気高く行進することができるでしょうかっ?!
「ガシャン!」
スタートしました!各馬好スタート!
プリンセスメールはいつものように最後尾につけました。
さあ、前はどの馬もいこうとしない!2歳女王を警戒してか、どの馬もじっくりかまえたまま!
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さあ!スローペースのまま、一団は最終コーナーへとさしかかる!各馬いっせいにスパート!
プリンセスメールはまだ最後尾!まだ先頭から10馬身!はたしてここから届くか?!
「ドオオオオオオオオ」
さあ、直線勝負!各馬エンジン全開で坂をかけあがってくるぞ!
その先には桜の大舞台がまっている!
プリンセスメールはどこだ?!プリンセスメールは内にもぐった!皇女は内ラチ沿いを駆け上がる!
きたきたきた!これが女王の末脚だ!各馬が止まってみえるぞ、これはスゴイ!
「ウワアアアアアア!」
グルーヴダイナを葬った末脚は今年も健在!
さあ、大歓声を背に受けて、皇女プリンセスメールが突き抜けた!強い、強い!
最後は持ったまま!持ったままで、今ゴールイン!!!!
やはりプリンセスメールは強かった!クラシック制覇に向け、皇女に死角はありません!
オーナーは只乃商会、生産は静内・古来ファームであります!
「聞いたか?!かあちゃん!!!」
「おとーちゃん!あたしたち、まだやっていけるんだね・・・。」
「そうだ!こんなところで終わってたまるか!」
「プリンセスメール・・・ありがとう!」
「勝つ!この仔は間違いなく、クラシックタイトルを持ち帰ってくれるゾ!」
(つづく)