さあ最終コーナーに掛かってくる、行った!行ったのはグルーヴダイナ!グルーヴダイナと岡辺が動いていった!さあ後続もこれを見て動いていったぞ!





ミリオンキスィーズ、ウインドジュエルも懸命に押して行って、サカナトウショウも良い感じで上がってきている、外からメジロトップレディ、そしてプリンセスメールは最内に突っ込むのか、皇女メールは最内馬群の中に突っ込んだ!



さあ!最後の直線!最後の直線だ!



先頭はスタイルカウンシルでリードは四馬身、しかしちょっと脚色鈍ったか、さすがに鈍った、鈍った!さあ後続が差を詰めてくるぞ、グルーヴ来た!


グルーヴダイナがぐんぐん差を詰める!来た来た来たぁ!一気にグルーヴ、一気にグルーヴ!終始これをマークしていたウインドジュエルは馬群に消えるっ!


フェアウェルソングその後、そしてサカナトウショウが馬場の真ん中から来たっ!



抜けたっ、抜けたっ!グルーヴダイナが抜けてきた!さあようやく、ようやくグルーヴに春が来るか、無冠の女王にようやく春が訪れるのかっ!そうはさせじとサカナトウショウ懸命にこれを追う!残り200、栄光のゴールまで残り200!


さあグルーヴ先頭、グルーヴ先頭!サカナの脚色は一緒になったか、サカナはちょっと伸びないかっ!後は後は……ああっ、やはり、やはりこの馬がぁ……



プリンセスメールが一気の末脚!!さあ最内を強引に割ってプリンセスメールが一気にやって来たぁ!やはりこの馬、この鞍上、来ました来ました、メールが一気にやってくる、そして外から一頭、外からもう一頭、これは、これは、


貴婦人だ、貴婦人だっ!!ゼッケン10番、メジロ軍団の秘蔵っ子、メジロトップレディがやって来たぁ!!、さあエンジン掛かったメジロトップレディが外から来るっ!外から来るっ!



ああっ分からなくなった、分からなくなった、前グルーヴに迫ってくるメールとメジロ、間入ってエイシンマリーナか、エイシンマリーナも詰めてくる、


グルーヴどうか、グルーヴ粘っている、ゴールはすぐそこだ、さあ頑張るぞ、グルーヴダイナ、内からメール来るっ!内からメール来るっ!


グルーヴ、メール、そしてメジロ!このタイトルだけは、このタイトルだけは渡したくない女傑グルーヴダイナ、2歳女王の意地、皇女プリンセスメール 、そしてそして、伏兵視されていた貴婦人メジロトップレディが今、堂々と、堂々とその座を勝ち取りに来たぁ!



三頭だ、三頭だ!どれが抜ける、どれが抜けるのか栄光のゴール板前っ!内からメール、内からメール、グルーヴ頑張る、グルーヴ頑張る、懸命に、懸命に外からメジロ、さあメジロか、メジロか、




外からメジロメジロメジロぉ!!!!




メジロが凄い脚ぃ、さあ三頭並んでくるゴール板前、間にグルーヴ、そして内メール、外からメジロ一気に来たぞ今ぁ、ゴール、イン!!!



なんとなんとっ!!粘ったグルーヴ、内から強襲したメール、しかしかしっ!どうやら、どうやら抜けているのは外から飛んできたメジロトップレディか!見た目には抜けたように見えますっ!どうやら勝ったのはメジロトップレディか。



しかし良いレース、良い競馬でした!

凄いレースになりました、優駿牝馬!見事栄冠に輝いたのは貴婦人メジロトップレディ、姉ドーベルに続いてここを制しました。


敗れたグルーヴダイナが恐らく二着か。また二着であります、グルーヴダイナ。しかし健闘は称えたいと思います、前目から抜け出して押し切る競馬をしての二着。これは価値があるでしょう。


プリンセスメールも凄い脚で追い込んできました。道中終始最後方で、直線に向いても一番後ろにいたはずです。そこから来ての三着。十分その末脚を堪能することが出来ました。



極上のレース!極上のオークス!勝ちましたのはメジロトップレディ、父メジロライアン、母メジロビューティー。オーナーはご存知、目白美智子さん。貴婦人メジロトップレディが3歳牝馬の頂点に立ちました!



(つづく)




「高梨さん、オークスへの意気込みをお聞かせください!」





「グルーヴダイナ、圧倒的な1番人気ですね!」






オークス当日、グルーヴダイナのオーナー・高梨は大勢の記者たちに囲まれていた。


「父ナリタブライアン、母エアグルーヴ。この血統は、府中2400Mで勝つためのものだからね。」



高梨も自信を隠さない。



記者たちもドラマチックな勝利を期待している。


「ライバルは、2歳女王プリンセスメールと、無敗の桜花賞馬サカナトウショウだと思われますが?」



「ライバル?ライバルはグルーヴ自身さ。」



「オオオオ」



「ハハ・・・高梨さん、ものすごい取材攻勢ですね。」  遠目から様子を伺っていた若林は苦笑い。



「そらそうだろう。」  ルストマ・シーランド代表は気にもしない。




「たしかに・・・この距離ではウインドジュエルの勝ち目は薄いですね。」



「なーに、勝負事はゲタを履くまでわからないさ。ガハハ!」



「そうですね。」




「ルストマ代表、若林さん、こんにちは。」



「あ!目白さん、ご無沙汰してます!」



「これはこれは、女王様のお越しですな。」



「まあ!クスクス」









「目白さんの牝馬も、人気してますね。」



「とんでもない。うちの馬はこの晴れの舞台に出れただけで、光栄ですわ。」


「こわいこわい。そう言って、いつも大きなところを持っていかれる・・・。」









「メジロトップレディ・・・あのオークス馬・メジロドーベルの全妹ですもんね。」



「みなさん、そんな警戒なさらないで・・・。まだ条件戦を勝ったばかりの馬なんですから・・・。」








「メジロの総帥」という呼び名とは裏腹に、その女性は物静かで落ち着いた雰囲気の人であった。



ターフを見つめるその目は、我が子を見守る母のように慈愛に満ちあふれている。



「(トップレディ・・・、気をつけて!)」







東京のメインレースは優駿牝馬、G1。芝の2400mで行われます。一番人気はグルーヴダイナで3.0倍。無敗の桜花賞馬サカナトウショウが3.5倍で続きます。2歳女王プリンセスメールは5.0倍。



G1馬二頭を差し置いて一番人気に支持されるのですからグルーヴダイナの人気は相当なもの。果たしてその期待に応えることが出来るかどうか。




さあ全馬ゲートにおさまりました。いよいよです。いよいよオークスのスタートです……






「ガシャン!!」



スタートしました!メジロトップレディ余り良いスタートではありません、前はウインドジュエル、グルーヴダイナ、フェアウェルソング、スタイルカウンシルあたりが出てきます。内のプリンセスメールはスーッと下げて行きます。サカナトウショウも中団あたりに付けるのか。






注目の先行争いでありますが、スタイルカウンシル行く構えか。スタイルカウンシルがどうやら逃げる構えであります。二番手にフェアウェルソング控えまして、グルーヴダイナは三番手。







その後……おっ!その後にウインドジュエルがいます!ウインドジュエルはグルーヴをマークか、ジュエルは逃げません!ジュエルは抑え気味にグルーヴをマーク!




桜花賞馬サカナトウショウはここ。現在九番手辺り馬群の中団。メジロトップレディがその後を追走します。抑え気味にトップレディと喜田騎手、外目を通っています。






そして最後方、最後方に控えているプリンセスメール。先頭からは二十馬身近く離れています。ここから十五頭をまとめて交わすことが出来るのかプリンセスメール?!







「ウワアアアアアア!」






(つづく)




「うわーい、アンパンマン・ミュージアムだー!o(^▽^)o」





「こら、くるみ!危ないから走っちゃダメだよ!」






帰阪を明日に控えた神戸HC一行は、会長たっての希望で、高知東部に位置する遊園地を訪れていた。

「うわー、おっちなアンパンマンだー! ヾ(@^▽^@)ノ」

園内ところせましと並べられたアンパンマングッズに、くるみは底なしに明るい笑顔をふりまいていた。

「やっぱりかわいーなぁ、うちの娘・・・。」

「有田パパ、デレデレですね!」 会長に無理やり連れてこられた沖田が笑った。

「でも・・・。なんで多良崎の野郎が手をつないでんだよ?! (ノ◇≦。)」

「あ、有田さん、泣かないで!」


くるみと多良崎が楽しそうに歩いていると、広場で着ぐるみショーが開催されていた。

「くるみちゃん、あれ見る?」

「ぜったいみる。 ヽ(`Д´)ノ」

(15分後)


「パチパチ。おもしろかったね!くるみちゃん。」

「うん!バイキンマン、だいしゅき! ヾ(@^▽^@)ノ」

「(そ、そっちが好みなの?!) (^▽^;)」


その場を去ろうとした多良崎たちに、1人の着ぐるみが声をかけてきた。

「もしかして、多良崎さんじゃないですか?」

「ショ、ショクパンマン?! ( ̄□ ̄;)!」

「ショチパンマン、キラーイ!あっちいけー! ヾ(。`Д´。)ノ」

「ゴメンゴメン。これはもう脱ぐね!」

着ぐるみの中から、見覚えのある男が現れた。

「ど、土居くん! (@Д@;」

「ご無沙汰してます、多良崎さん!」




「こんなところで何を?たしか・・・保父さんを目指してたんじゃ?」 (第7話参照)

「保父には結局なれなかったんですよ。それで、こうして子供と触れ合えるアルバイトをしているんです。」

「そうだったのか・・・。土居くん、本当に子供が好きなんだね。」

「ハイ!これが僕の天職なんだと思います!」





「おーい、多良崎ー、ぼちぼち帰るぞー!」 有田の声だ。

「土居くん、悪い!おれたちはこの辺で失礼するよ。また会おう!がんばって!」

「はい、お気をつけて!」




「かあちゃん、はやくはやく! (≧▽≦)」

「まちなさい、タカオ!」

退園して帰路につく神戸HCの横を、手をつなぐ一組の母子が走り抜けた。







「だって、かあちゃん。うち貧乏だから、遊園地なんてはじめてなんだもん!」

「これ!そんな大きな声でいわないの!かあちゃんだって、頑張って働いてるんだから。」

「かあちゃん、連れてきてくれてありがとう!」

「商店街のくじ引きで招待券をいただいたからね。さあ、これを見せて・・・。」

「ワクワク!」


「お、お客様!」

「え?」

「これではご入園いただけません・・・。これは優待券です。」

「そ、そんな・・・。」

「申し訳ありませんが、そちらの券売機で入園料をお支払いください。」



「うわーん、ヤダヤダ!なんで入れないんだよー!」

「ゴメンね・・・、タカオ・・・。

かあちゃん、帰りのバス賃しか持ってないんだよ・・・。」

「うわーん!かあちゃんなんて大嫌いだー!」

「かあちゃんバカで・・・ゴメンね・・・。 (´д`lll) 」


ひとしきり泣いた後、二人は、母が早起きしてつくってくれたお弁当を広げた。


遊園地を外から恨めしそうに眺めながら、タカオは好物のタコさんウインナーを頬張った。


そんなタカオの様子を見つめる母の頬を、涙がつたう。



お弁当を食べ終え、悔しい思いを噛締めながら帰り支度をはじめた二人に、背後から声がかかった。

「お客様、どうぞこちらのチケットでご入園ください。 (o^-')b」

タカオが驚いて振り向いた。

「ああー!ショチパンマン!!! (  ゚ ▽ ゚ ;)」

(つづく)




「黒潮牧場によっていけよ。」





「は?」




『風林』店主、松戸が去り際に言った。



なんでも、高知には黒潮牧場という牧場があって、1頭のサラブレットが繁用されてるらしい。

「価値観が変わるぞ。行ってあってこい。」

響牧場長もうなずいた。


「いいですね。明日、みなさんをご案内しましょう。」







「沖田くん、いったいどんなサラブレットがそこにいるんだ・・・?」 有田が聞く。

「それは見てのお楽しみです。」

「ヒ、ヒントくれよー!」

「うーん、困ったなぁ。”ナリタブライアンのライバル”ですよ!」

「ええええええええ!(((゜д゜;)))」







「トップガンだ!マヤノトップガンだ!」 多良崎のテンションがハネ上がった。

「ち、違いますよ!トップガンは北海道・静内でしょ?!」


(翌日)


さあ、つきましたよ。ここが黒潮牧場です。

「おー!あそこに馬が見えるぞ。さっそく行ってみよう。」

一行は1頭の馬が繁用されている柵に近づいた。

【ナムラコクオー】

「おお、こいつは驚いた!ナムラコクオーじゃないか!」


有田が目をみはった。

「す、すげぇ・・・この解説読んでみろよ!47戦27勝だって?!」



「な、なんて馬だよ・・・屈腱炎を4度も発症しながら、12年間も走り続けたのか。」  多良崎も声をあげる。

「サラリーマンの鏡だな(TT)」

「サラリーマンじゃないから(汗」

「この不屈の闘志・・・グリーンワールドもあやかりたいね」

「ええ、そうですね・・・。」  沖田が大きくうなづいた。






「チッ・・・なんだか目頭が熱くなってきたぜ・・・。」

「多良崎・・・。」

「人も馬も同じだな。何度倒れても立ち上がれるモノこそ、本物なんだ。どれだけ高みに登れたかじゃない。どれだけどん底から這いあがれたかで、そいつの価値が決まるんだ・・・。」

「ああ、そうだな・・・。」



「あら、コクオーを気に入ってくれたみたいですね?」


感じのいい牧場主が奥から現れた。

「そういえば、以前コクオーをどうしても種付けしたい、という方がいらしてね・・・。」


「ほお・・・」

「そのとき産まれた仔馬が、ちょうど今ごろ2歳になってるんじゃないかしら・・・。北海道の古来ファームっていう小さな牧場で元気に育てられてるはずですよ。」


「不屈の闘志を継ぐ仔馬か・・・。」 天性の勝負師、有田の目が輝きだした。

「ありがとう。是非会いに行ってみるよ。」

「それじゃあ、コクオー!また会いに来るね!」 


沖田の声に、軽くうなずくナムラコクオーであった。

(つづく)




「チッ、うるさい客どもだ・・・。」





「おい、亭主!このマグロのカマ(頭)はどういうつもりだ?!」

「なんだ?うちの看板メニュー、”火山ラーメン” が気に食わないってのか?」

「グ、グロいが、たしかに見た目は火山そっくりだ・・・」 感心する有田。







風林・・・火山?」 沖田がつぶやく。

「なんだ?信玄マニアか? 山本勘助みたいなツラしやがって!」

「やめとめ、多良崎。」



「そうそう、松戸さん!ヘリオスの状態はどうですか?」 響が話題をそらした。

「ヘリオス・・・?まさか、安田記念有力馬のマッドヘリオス?!」

「ええ。この方は、マッドヘリオスのオーナー・松戸さんですよ。この店にくる客のほとんどは、マッドヘリオスのファンなんです。」


「ご、ご主人・・・、はじめまして、神戸HCです。」 慌てて有田が非礼を詫びる。

「おい、多良崎!恐れおおくも重鎮馬主であるぞ!頭がたかい!」

「・・・・ご、ごめりんこ。」

「多良崎さん!」


「都会の奴らはおしゃべりでいけねぇ。ほら、麺がのびちまうだろ。」 ぶっきらぼうに対応する店主。

「だから・・・どこから食べればいんだ・・・。」  と多良崎。








「神戸HC・・・・。グリーンワールドの関係者か。」

「さすが、松戸さん。あいかわらず情報通ですね!」 

「おたくが疎すぎるんだよ。響さん。」

「松戸オーナーにはかないませんよ。牧場生産者・調教師・騎手から新聞記者にいたるまで、幅広い人脈をお持ちですからね・・・。」




「おや?マスター富士川が見えねえな?クビになったか。」

「あ、私は助手の沖田です。マスターのかわりに・・・」

「ハ!あんなバカのかわりなんてよせ!アンちゃんの人生を棒にふることになるぞ。」

「たしかに・・・」 うなずく多良崎。

「マッドヘリオス・・・あのターフ1の人気者か!・・・すごいなぁ。」 有田が憧れの眼差しで見つめる。

「”人気”と”実力”、両方を兼ね備えてはじめて一流なのさ。今の競馬界に、ヘリオスと互角に張り合えるヤツなんていやしないよ・・・。」

「ふー、大馬主ってどうしてこうも自信家ばかりなんだ・・・。」 多良崎が呆れる。

「おや?おまえさんらにはクラシック制覇する自信がないってのか?」

「そ、それは・・・!」

「秋華賞、とうぜん狙ってるんだろう?」

「はい!グリーンワールドは必ず復活してくれますよ!」 沖田が立ち上がった。

「ハハハ、このアンちゃん気に入った。今日のお代はいらねえよ。」

「い、いけませんよ、松戸さん!」

「そっちのあんちゃんは、”火山ラーメン”を残さずたいらげて帰れよ!」

「ええええええええ!(((゜д゜;)))」

(つづく)




くるみが寝付いてから、神戸HCの一行は響牧場長の案内で高知市内に繰り出した。





「つきました。ホラ、あそこです!」

見ると、「風林」という名の小さなラーメン屋の軒先に、ズラリと客が並んでいる。


待つこと40分。ようやくカウンター席にとおされた。

「チッ!これだけ待たせておいて、愛想の悪いオヤジだな!ここは一つ・・・。」 と、多良崎。


「私は塩ラーメン。」 響が注文を出す。


「あ、僕も!」


「お、それ美味いのかい?じゃあ、おれも!」

「多良崎さんは?」

「トンコツラーメン大盛り、中細麺かため、ネギ大盛り、半熟味付け玉子3つ、メンマ大盛り、のり5枚。小ライス、餃子2人前、生ビール。」

「ちょっと、多良崎さん!」 

「あらら、こりゃもめるぞ・・・。」 苦笑いする響。


(5分後)

「ヘイ、お待ち。」



出てきたラーメンを見て、 有田が声をあげる。



「あれ?おいおいオヤジ!こっちはチャーシューメンじゃなくて塩ラーメンだぞ!」 

「ぼ、僕も塩ラーメンっていいましたよね?なんで、みそラーメンが来たんだろ?」 沖田も困惑顔だ。


「ハハハ、どうです?変わってるでしょう?」 響が笑った。

「ハ?!」

「ここのオヤジさんは、客の顔を見て勝手にメニューを決めるんですよ。」


「ええええええええ!(((゜д゜;)))」

「ええええええええ!(((゜д゜;)))」


「そ、それじゃあ注文聞くなよ・・・。」

「ま、まあいいじゃないですか!このラーメンもおいしそうですし・・・。」

「そ、そうだな・・・。」



「だ、誰か・・・。おれの前に置かれている物体について、説明してくれないか・・・」


「ん?どうした多良崎・・・・ええええ?!」

「うわーーーーー!そ、その物体は!」

「それは”マグロのカマ(頭)”です。下にどんぶりが見えますから、一応ラーメンみたいですね。」

「そ、そう。 ありがとう・・・。」

(つづく)




桜花賞から1夜あけ、富士川厩舎のグリーンワールドの馬房に関係者が集まった。みな一様に心配そうな表情を浮かべている。


「どうだ?脚の具合は?」


「うーん、脚部不安だね。やはりガラスの脚だよ・・・。」


「そうか・・・。これじゃオークスは無理だな・・・。」


「秋華賞に間に合うかどうか・・・。」


あたりを重苦しい雰囲気が包む。





「とりあえず、放牧の準備にとりかかるよ。」


「響牧場ですね?マスター」


「YES。高知の四万十川上流の静かな山あいに、馬の温泉で有名な響牧場がアリマス。沖田クン、任せてもいいデスカ?」


「はい!」



「馬の温泉・・・そいつはすごい!おれたちも牧場長さんへの挨拶をかねて一緒にいくよ。」


「有田、会長も連れていかないと、また怒られるゾ・・・。」


「わ、わかってるって!」





(数日後・高知市内)





「四国まで意外と近いんだな。」


「淡路島経由で入れば、結構近いだろ?」


「さて、ここから四万十川に沿って北上するぞ。」


「パパ!あとでアンパンマン・ミュージアムつれてって!」


「わ、わかったよ・・・!(いつのまにリサーチしてきたんだ)」





市内から車で3時間走ったころ、少し開けた丘陵地に小さな牧場がみえてきた。



緑の屋根と真っ白な壁のコントラストが美しい。



「やあ、沖田くん!久しぶり!」


「響牧場長!ご無沙汰してます!」


牧場長となのるその男は、元高知競馬のジョッキーだったらしく、今は夫婦と息子の栄太郎の3人で、ひっそりと牧場を経営していた。



「はじめまして、神戸HCです。」


「お噂は聞いていますよ。おお、この仔がグリーンワールドですね!これは見事な優駿だ!」


「ささ、疲れたでしょう?奥でゆっくりお休みなさい。」響夫人がグリーンワールドを馬房に連れて行く。


「静かでいいところですね。涼しいし、空気もうまい・・・。」多良崎が深呼吸を繰り返す。


「ささ、みなさんも疲れたでしょう?しばらくゆっくりしていってください。」


「お世話になります。」


こうして、一行は山あいの牧場で、都会の喧騒を忘れ、静かな時を過ごした。





「四万十川のあゆは絶品だな・・・。」


「くるみちゃん、おさかなだいすき!」


「か、会長!それ5匹目ですよ・・・!」


ワハハハ



「そうそう、高知市内に、有名なラーメン屋があるんですよ。 今夜、行ってみませんか?」


「ラーメンですか?いいですね。行きましょう!」


「”風林”という店でしてね。そこのご主人が実に個性的な方なんです。」



(つづく)




さあ!ウインドジュエルがただ一騎、最終コーナーをまわって最後の直線!





グルーヴダイナが2番手にあがって、有力どころも一気にスパートをかけてきた!!!



「ウワアアアアアアア」



ああ、ウインドジュエルは苦しい!ウインドジュエルがピンチ!!!



スタンド前は悲鳴の嵐!1番人気の重圧か!ウインドジュエルが馬群に沈んでいくぅ!




さあ、先頭はかわってグルーヴダイナ!悲願のG1制覇に向かって、女傑グルーヴが先頭だ!


グリーンワールドはどうした?!グリーンワールドはまだ馬群の中!アクエリアスがグリーンワールドの進路を塞ぐかたち!グリーンワールド八方塞だ!!!





『し、しまった!これじゃ囲まれて出れない!』





ああ!シビレを切らしたグリーンワールド、強引にこじあけにかかる!






「ゴンッ!」




おおっと!アクエリアスとグリーンワールドが接触か?!!

衝撃でグリーンワールドは後退!再び馬群の中に後退!





『(グリ、あなたは所詮、その程度の馬よ・・・)』 



さあアクエリアスにムチがとぶ!今日は3強の一角リエマリアはいないぞ!



代役では終わらない!アクエリアスが意地のスパートでグルーヴダイナを猛追! アクエリアスが2番手にあがったー!




『くっ!よくも、やったわね・・・!』



おおっと、グリーンワールドあきらめない!グリーンワールドふたたび馬群をこじあける!





ああっ!しかし、グリーンワールド大きく左にヨレた!大丈夫かー?!




『あ、脚が・・・!!』 






さあ!先頭はグルーヴダイナ!アクエリアス必死にくらいつくも差は3馬身!差は縮まりません!



『と、届かない・・・!』 






アクエリアスの脚がとまった!アクエリアスも限界なのか?!




さあ、きたぞプリンセスメール!プリンセスメールがアクエリアスをかわしてグルーヴダイナに襲い掛かる!


皇女がかわし・・・・いや!抜かせない!抜かせない!グルーヴダイナが抜かせません!


ゴールまで残り100M、やはりこの2頭のマッチレースだ!プリンセスメールとグルーヴダイナ!脚色はほぼ同じ!





「ウワアアアアアア!」




これはすごい大歓声!ああっと、大外からサカナトウショウだ!サカナトウショウがとんできた!


『し、しまった!』


これはノーマーク!完全に意表をつかれたぞ、上位2頭!




『レースを走ってるのは貴女達だけじゃないのよ!』


サカナトウショウ、これはすごい!リエマリアをちぎった鬼脚は伊達ではない!



グルーヴダイナ・プリンセスメールを強襲!そして、かわしたーーー!



「ドオオオオオオオ!」



1馬身、2馬身、3馬身・・・ すごいすごい!サカナトウショウが完全に突き抜けた!



サカナ・サカナ・サカナ!!!

サカナトウショウ、今ゴールイン!!!!牝馬クラシック最初の1冠は、サカナトウショウ!



「ウワアアアアアア!」




これは驚きました!勝ったのはゼッケン5番、サカナトウショウ!



並み居る強豪をおさえ、無敗で桜花賞を制しました!



2着グルーヴダイナ、3着プリンセスメールはまさかの完敗!オークスでの巻き返しに期待したいところです!



そして・・・、ウインドジュエル、アクエリアス、グリーンワールド陣営にはショックの残る敗戦となりそうです!



おや?10着でゴールしたグリーンワールドにスタッフが駆け寄ってるぞ!故障発生でしょうか?心配です!



(つづく)






快晴の阪神競馬場、乙女達の夢の舞台・桜花賞の発走まで5分を切りました!





1番人気は、年明けのデビューから破竹の3連勝で駒を進めてきたウインドジュエル、2.5倍。 前哨戦となったトライアル・孔雀賞では、グルーヴダイナ、グリーンワールドといった有力どころよせつけませんでした。

2番人気は、昨年の2歳女王・プリンセスメール、3.0倍。3番人気は女傑・グルーヴダイナ、5.5倍といったオッズとなっております。


以下、アクエリアス、グリーンワールド、サカナトウショウ、フライトクリエンス、フェアウェルソングといったところが人気を集めてますが、残念ながら2歳G1・プリンセスSの2着馬、リエマリアの姿はありません。先日のエンジェルSにて故障発生し、まさかのクラシック回避となってしまいました。


「ウワアアアアア!」


さあ、各馬体勢ととのって、今スタートしました!


真っ先に飛び出したのはウインドジュエル、ウインドジュエルが好ダッシュを見せてやはりハナに行った、外からウインドジュエルが先頭に立ちます、

ウインドジュエルが先頭、ジュエルが先頭に立って内に入ってきます、グルーヴダイナが早目三番手。グリーンワールドがその後にいて、

フェウェルソングでありますが、並んで内からアクエリアスが行きます。フライトクリエンスが七番手、サカナトウショウがその後にいます。プリンセスメールはいつものように最後方に待機だ!


さあ前はウインドジュエルが飛ばしていきます。後続を四馬身ほど離してぐんぐん行きます。グルーヴダイナが三番手でありますが、 抑えた感じ、岡辺は抑えた感じでグルーヴダイナ三番手。

第三コーナーから第四コーナーに掛かって更にウインドジュエルのピッチが上がったか、これは速い!これは速いペースで進んでいるぞウインドジュエル、後続は付いていけない!これではさすがに付いていけない!


『あらら、ジュエルちゃん、あんなにとばして大丈夫かしら?』 アクエリアスがおどけてみせた。

『グルーヴダイナは前、プリンセスメールは後!仕掛けるタイミングは・・・』 グリーンワールドは馬群の中で様子を伺っている。

『まだ大丈夫よ、グリ!このまま直線までいけば、前が勝手に止まってくれるわ』

『アク・・・。そうね。ここは我慢、我慢!』


「ウワアアアアア!」


おお!皇女プリンセスメールが動いた!一気に中団まで進出して、先頭を伺う!

さあ!ウインドジュエルがただ一騎、最終コーナーをまわって最後の直線!


グルーヴダイナが2番手にあがって、有力どころも一気にスパートをかけてきた!!!

勝負はいよいよ最後の直線!最後の直線だ!!!

「ウワアアアアア!」











(つづく)




桜花賞へ向けた牝馬クラシック戦線も佳境へと入っていた。

2歳女王プリンセスメールは、復帰戦マロン賞を危なげない走りで快勝。本番に向けてはずみをつけた。


同じ頃、多くの馬が大舞台への出走権をかけて、桜花賞トライアル第3弾エンジェルSに参戦していた。その中に、打倒プリンセスメールに燃える3強の一角、妖精・リエマリアの姿もあった。



さあ、快晴の東京競馬場にリエマリアが登場!父フジキセキ、母ライトカラー。前走のG1・プリンセスS2着以来、久々の競馬となります。 圧倒的な1番人気!ここは負けられないところです!



相手探しは困難を極めますが、どうでしょうか?
実績馬ミリオンキスィーズ、新馬戦を圧勝したサカナトウショウあたりに印が集まっておりますが、どの馬にもチャンスはあります!





「おーい、沖田くん!レース中継がはじまるぞー。」 マスター富士川が沖田を呼んだ。



「は、はーい!今いきます!」




(数分後)



「ウワアアアア!」



「そ、そんな・・・」



「アンビリーバボー・・・!」




これはすごい馬が出てきました、東京競馬場!サカナトウショウ、後続に5馬身差の圧勝で、桜花賞への出走権を獲得しました!



「つ、つよい・・・!」


「あのリエマリアが・・・。」




サカナトウショウ - 父オグリキャップ、母ポリートウショウ。所属は美浦の斎藤厩舎です!



「チッ・・・また斎藤デスカ!」


「今年もすでにリーディングトップを独走してますから・・・。毎年、クラシック候補が出てきますね。」


「チ、チキショー!」





「プルルルル・・・!」


そのとき、富士川のそばの電話が鳴った。


「ハロー!富士川デス!」


「おお、マスター!今のレースみたか?」


「有田サン?ちゃんと見てマシタヨ!」


「サカナトウショウってのは、「魚闘将」か?それとも「魚と鵜匠」なのか?気になるから作者に聞いてくれ!」


(ガチャン!)


「ああ!マスター?!電話切っちゃっていいんですか?!」


「まったく、うるさくてしょうがないデス・・・・」


「有田さんも、かなり混乱されてるようですね・・・」


「ミーたちは、自分のできる範囲のことを、全力でやるだけデス!わかってますね?沖田クン!」


「は、はい!」




牝馬クラシック最初の関門、桜花賞。



3強と謳われる、皇女・プリンセスメール、女傑・グルーヴダイナ、妖精・リエマリア。



グルーヴダイナに勝ったウインドジュエル、グリーンワールド。リエマリアに圧勝した新星・サカナトウショウ。


栄冠は、だれの頭上に輝くのか?あるいは、まだ見ぬ素質馬が主役に踊り出るのか?



乙女たちのクラシックロードが、いま幕を開けようとしていた。




(つづく)