Sea Breeze Season8 -58ページ目

バーテンダー



今年はいつもの夏よりナンパ男が少ない。


それでもやっぱりいた。


大きなクーラーボックスと荷物を持った男2人組。


2人分の荷物にしては多すぎると思って見ていると、

荷物の中から折りたたみ式のイスが2つ。


そしてクーラーボックスからは次々と酒のボトルが。

クーラーボックスをカウンターに見立て、ボトルを並べていった。


その向こうにはイス。


最後にパラソルを立てた。


そして、バーテンダーにボーイ。


ちょっとショボいが、即席の海辺のバーといったところか。



早速ボーイ役の男が近くの2人の女の子に声をかけている。

なんとかうまく誘えたらしく、カウンターの前に座らせた。


と、思ったらボーイが売店に向かって走ってきて、


「すいません。栓抜き貸してもらえますか?」


と言った。


「いいよ。でもボトルなら栓抜き使わないんじゃない?」


と聞くと、


親指で後ろを指しながら、

「あいつバーテンダーなんスけど、ちょっとヌケてて…。店で使ってる水を拝借してきたんスけど、ビンのやつ持って来ちゃったんスよ。」


と言った。


肩越しに見てみると、どうにかしてビンの栓を抜こうとしている。


「早く持っていったほうがいいよ。女の子も待ってるみたいだし。」


「スイマセン。じゃ、ちょっと借ります。」


と言って、走って行った。


どうなるのか見ていると、

バーテンダーはそれらしくシェイカーを振って、


女の子たちにカクテルらしきモノを出していた。


横ではボーイが話を盛り上げているように見える。


が、出された1杯を飲み終えると女の子たちは行ってしまった。


しばらくするとボーイが、


「これ、ありがとうございました。」


と栓抜きを返しに来た。


「女の子帰っちゃったみたいだね。」


と言うと、


「あいつ、全然空気読まなくて…。」


と呆れ顔。


そのままボーイと少し立ち話をした。


このボーイ、話し方がなかなか上手い。


簡単に言うとこういう事らしい。


ボーイの話術で盛り上がり、いい雰囲気になってきた。

その間バーテンダーは無言。

かなり打ち解けてきたところにバーテンダーが割り込んできて、

「これに携帯番号とメアド書いて。」

とガツガツ感丸出しで紙とペンを出した。

女の子たちは一気に引いてぶち壊しになったそうだ。


オレは栓抜きを受け取り、ボーイは戻って行った。


その後も成果は上がらなかったようだ。



そして夕方、


そろそろ帰るますとボーイが挨拶に来た。


その時に話してくれたのだが、


あのあと、ボーイは2人組の女の子のところに謝りに行ったという。


すると女の子はボーイを気に入っていたらしく、内緒で携帯番号とメアドを教えてくれたそうだ。



何も知らないバーテンダーは、汗だくになって荷物をまとめていた。

ブルーハーツ?

本日のライブ


ブルーハーツのトリビュートバンド。


午後3時頃、リハーサルの音が聞こえてきた。


今回もよく似ている。


4時30分 本番


Sea Breeze  Season4-2012081817210000.jpg


汗でTシャツが張りつくほどの熱唱。


Sea Breeze  Season4-2012081817250001.jpg


ライブが終わった時にはボーカルはフラフラになっていた。


今日のライブも大盛況だった。


大きなサングラス、ふたたび



海の家の手伝いは週末とお盆休みだけ。


平日のオレは普通に仕事をしている。


そして今日。


オレはいつも通り仕事に向かった。


東京駅で乗り換えようと歩いていると、


すれ違いざまに


「お兄さん」


と声をかけられた。


振り返ると女の子がひとり、笑顔でオレを見ている。

オレが無言でいると、


「海の家のお兄さんでしょ?かき氷の。」


と言った。


「誰だっけ?」


と聞くと、


大きなサングラスをかけて、


「アタシよ。氷くれたでしょ?」


と言った。


「あーっ!?あの時の氷のオネーチャンか!!偶然だな!!」


前に書いた『氷ください』の彼女だ。


彼女も通勤途中だった。


「服なんか着てるからわかんなかったよ。」


と、つい言ってしまった。


「ちょっとぉ!こんなトコでヘンな言い方しないでよ。」


と彼女は膨れっツラ。


「そんなこと言ったって水着姿しか見たことねーからな。」


「それはお互い様だよ。お兄さんこそマジメぶっちゃって。」


「今はビジネスモードだからね。あっちはローカルモードなんだよ。」


「なにそれ。」


と笑った。


「それにしてもよくわかったなぁ。」


と言うと、


「だって、黒いもん。」


と言って、また笑った。


確かに。


まわりを見れば、ほとんど白いワイシャツばかり。


この日焼けした顔は目立つかもしれない。


そこで暫く立ち話をした。

そろそろ時間になったので、


「土日なら海にいるよ。ヒマだったら遊びにおいで。」


と言うと、


「うーん、行きたいけど、今年はもう行けるかわかんないなぁ。」


と彼女。


オレは、


「じゃぁ、また次の偶然を期待しようか?」


と言い、


彼女も、


「そうだね。」


と言って別れた。


この先、次の偶然は来てくれるのだろうか?