バーテンダー
今年はいつもの夏よりナンパ男が少ない。
それでもやっぱりいた。
大きなクーラーボックスと荷物を持った男2人組。
2人分の荷物にしては多すぎると思って見ていると、
荷物の中から折りたたみ式のイスが2つ。
そしてクーラーボックスからは次々と酒のボトルが。
クーラーボックスをカウンターに見立て、ボトルを並べていった。
その向こうにはイス。
最後にパラソルを立てた。
そして、バーテンダーにボーイ。
ちょっとショボいが、即席の海辺のバーといったところか。
早速ボーイ役の男が近くの2人の女の子に声をかけている。
なんとかうまく誘えたらしく、カウンターの前に座らせた。
と、思ったらボーイが売店に向かって走ってきて、
「すいません。栓抜き貸してもらえますか?」
と言った。
「いいよ。でもボトルなら栓抜き使わないんじゃない?」
と聞くと、
親指で後ろを指しながら、
「あいつバーテンダーなんスけど、ちょっとヌケてて…。店で使ってる水を拝借してきたんスけど、ビンのやつ持って来ちゃったんスよ。」
と言った。
肩越しに見てみると、どうにかしてビンの栓を抜こうとしている。
「早く持っていったほうがいいよ。女の子も待ってるみたいだし。」
「スイマセン。じゃ、ちょっと借ります。」
と言って、走って行った。
どうなるのか見ていると、
バーテンダーはそれらしくシェイカーを振って、
女の子たちにカクテルらしきモノを出していた。
横ではボーイが話を盛り上げているように見える。
が、出された1杯を飲み終えると女の子たちは行ってしまった。
しばらくするとボーイが、
「これ、ありがとうございました。」
と栓抜きを返しに来た。
「女の子帰っちゃったみたいだね。」
と言うと、
「あいつ、全然空気読まなくて…。」
と呆れ顔。
そのままボーイと少し立ち話をした。
このボーイ、話し方がなかなか上手い。
簡単に言うとこういう事らしい。
ボーイの話術で盛り上がり、いい雰囲気になってきた。
その間バーテンダーは無言。
かなり打ち解けてきたところにバーテンダーが割り込んできて、
「これに携帯番号とメアド書いて。」
とガツガツ感丸出しで紙とペンを出した。
女の子たちは一気に引いてぶち壊しになったそうだ。
オレは栓抜きを受け取り、ボーイは戻って行った。
その後も成果は上がらなかったようだ。
そして夕方、
そろそろ帰るますとボーイが挨拶に来た。
その時に話してくれたのだが、
あのあと、ボーイは2人組の女の子のところに謝りに行ったという。
すると女の子はボーイを気に入っていたらしく、内緒で携帯番号とメアドを教えてくれたそうだ。
何も知らないバーテンダーは、汗だくになって荷物をまとめていた。