バーテンダー | Sea Breeze Season8

バーテンダー



今年はいつもの夏よりナンパ男が少ない。


それでもやっぱりいた。


大きなクーラーボックスと荷物を持った男2人組。


2人分の荷物にしては多すぎると思って見ていると、

荷物の中から折りたたみ式のイスが2つ。


そしてクーラーボックスからは次々と酒のボトルが。

クーラーボックスをカウンターに見立て、ボトルを並べていった。


その向こうにはイス。


最後にパラソルを立てた。


そして、バーテンダーにボーイ。


ちょっとショボいが、即席の海辺のバーといったところか。



早速ボーイ役の男が近くの2人の女の子に声をかけている。

なんとかうまく誘えたらしく、カウンターの前に座らせた。


と、思ったらボーイが売店に向かって走ってきて、


「すいません。栓抜き貸してもらえますか?」


と言った。


「いいよ。でもボトルなら栓抜き使わないんじゃない?」


と聞くと、


親指で後ろを指しながら、

「あいつバーテンダーなんスけど、ちょっとヌケてて…。店で使ってる水を拝借してきたんスけど、ビンのやつ持って来ちゃったんスよ。」


と言った。


肩越しに見てみると、どうにかしてビンの栓を抜こうとしている。


「早く持っていったほうがいいよ。女の子も待ってるみたいだし。」


「スイマセン。じゃ、ちょっと借ります。」


と言って、走って行った。


どうなるのか見ていると、

バーテンダーはそれらしくシェイカーを振って、


女の子たちにカクテルらしきモノを出していた。


横ではボーイが話を盛り上げているように見える。


が、出された1杯を飲み終えると女の子たちは行ってしまった。


しばらくするとボーイが、


「これ、ありがとうございました。」


と栓抜きを返しに来た。


「女の子帰っちゃったみたいだね。」


と言うと、


「あいつ、全然空気読まなくて…。」


と呆れ顔。


そのままボーイと少し立ち話をした。


このボーイ、話し方がなかなか上手い。


簡単に言うとこういう事らしい。


ボーイの話術で盛り上がり、いい雰囲気になってきた。

その間バーテンダーは無言。

かなり打ち解けてきたところにバーテンダーが割り込んできて、

「これに携帯番号とメアド書いて。」

とガツガツ感丸出しで紙とペンを出した。

女の子たちは一気に引いてぶち壊しになったそうだ。


オレは栓抜きを受け取り、ボーイは戻って行った。


その後も成果は上がらなかったようだ。



そして夕方、


そろそろ帰るますとボーイが挨拶に来た。


その時に話してくれたのだが、


あのあと、ボーイは2人組の女の子のところに謝りに行ったという。


すると女の子はボーイを気に入っていたらしく、内緒で携帯番号とメアドを教えてくれたそうだ。



何も知らないバーテンダーは、汗だくになって荷物をまとめていた。