気分次第で
この日はお盆休み。
女の子2人がナンパされていた。
1人はおとなしそうなタイプ。
もう1人はちょっと派手なイケイケに見えるタイプ。
今年はなぜかこのタイプのツーショットをよく見かける。
そんな彼女たちがナンパされていた。
最初は、ごく普通のどこにでもいそうな2人組。
ビーチボールを持っている。
しばらくの間、彼女たちのパラソルの下に座って話していた。
身振り手振りから、多分、一緒に泳ごうとでも誘っていたのだろう。
だが、イマイチ会話が盛り上がっていない。
結果、撃沈。
次に来たのが、缶ビールを片手に、ちょっと俺たちイケてるだろ系の2人組。
この2人は、お互いをネタにしながら、面白さをアピールする作戦のようだ。
多少、彼女たちの気は引けたようだが、次第に空回りし始めたらしい。
とうとうイケイケの彼女は、横になってスマホをいじり始めてしまった。
結局、この2人も撃沈。
海の家に戻ってきた彼女たちに、
「モテていたね。結構会話もしていたみたいだったし。」
と言うと、
「悪い人じゃなさそうだったからね。」
その後に、
「でも、つまんない男だった。」
本人たちが聞いたら凹むだろ。
「じゃぁ、どんな男ならいいの?」
と聞いてみた。
「お兄さんならナンパされてあげるよ。」
と彼女たち。
「ハハハ、ありがとう。気が向いたらナンパしてあげるよ。」
と言うと、
「気が向かないと私たちのことナンパしてくれないの?たった今、お兄さんのこと嫌いになった。」
と笑いながら言った。
さらに、
「こんないい女が2人もナンパされてあげるって言ってるのに。ねぇ。」
2人は顔を見合わせる。
「オレだって選ぶ権利はあるからね。」
「やっぱり大っ嫌い!!」
とまた笑った。
帰りぎわ、売店に彼女たちがきた。
オレは、
「大っ嫌いでもいいから、また遊びにおいで。」
と言うと、
「大っ嫌いだけど、気が向いたらね。」
と彼女たちは笑いながら手を振っていた。
枯れる前に
売店に男1人に女の子2人のお客さんが来た。
女の子はソコソコかわいい。
「いいなぁ、両手に花で。」
と言うと、
「まだあと1人いるんですよ。」
と男。
3人も連れているのかと思っていると。
「向こうに丸いのがもう1人。」
「それにどう見ても花じゃないしね。」
と女の子たち。
「随分ひどい言われようだね。」
と言うと、
「だってねぇ。」
と3人は顔を見合わせて笑っている。
仲が悪いのかなとも思ったが、そういうわけでもなさそうだ。
次に売店にきた時は、さっきの男だけだった。
「あれ?花2人はどうしたの?」
と聞くと、
「なんか暑くて疲れてもう動きたくないって言って、パラソルで今にも枯れそうになってますよ。」
と言って、4人分の飲み物を買って戻って行った。
その次もまたその彼が1人で来た。
そして午後、夕方というにはまだ早い時間。
3人がゾロゾロと海の家に戻ってくるのが見えた。
手に荷物を持っているので、
「お疲れさま。もう上がり?」
と声をかけると、
「疲れたから早めに帰ります。」
と彼が言った。
「もう暑くて疲れちゃったよ。」
と女の子たち。
「せっかくの花もパラソルの下で枯れてたらしいね。たしかに枯れかかってるよ。」
と言うと、
「もうダメ…水分を補給しないと…」
と本当に暑さに参っているようだ。
そして、枯れかかっている花2人はビールを買った。
あの彼はウーロン茶を飲んでいる。
「もしかして車で?」
と聞くと、
「そうです。」
と答えた。
「1日パシリさせられて、今度は枯れかかった花を積んで運転までさせられるんだ。大変だね。」
と言うと、
「運転手はいますから。丸いのが先に戻ってるはずだけど…あっ、あそこです。」
と指をさした。
そこには、丸い男が1人で荷物の片付けを始めていた。
そういえば、一足早く戻ってきた男がいた。
この丸い彼は、何度か1人で売店に来ていた。
お茶やスポーツドリンクを買っていくので、
「アルコールじゃなくていいの?」
「車だから今日はやめときます。」
そんな会話をしたのを覚えている。
オレは、さっき女の子たちが「丸いの」と言ってたもう1人の事を、てっきり女の子だと思ってた。
だが、丸い彼を見て納得した。
確かに花ではない。
そして、準備を整えた4人は、丸い彼の運転で帰って行った。
帰る前に女の子たちに、
「水分補給でなんとか枯れずにすんだみたいだね。」
と言うと、
「ダメ、もっと補給しないと枯れちゃうよ。」
と言って、ビールのロング缶を買った。
彼女たちは、丸い彼の運転するエアコンの効いた車の中でたっぷり水分補給をしたのだろう。
ネイル
ジュースを買いにきた、見た目イケイケのねえさん。
手にしている財布が異常に分厚い。
小銭を出そうと飲み物のショーケースの上で財布を開けた。
その瞬間、
財布の中から、トランプのようにカードが飛び出し、ショーケースのガラスの上にバラバラと飛び散った。
CDショップ、ネイルサロン、レンタルビデオ、美容室、Suica、その他ナニやらよくわからないカードが多数。
彼女は、
「わーっ!!」
と言いながら、
カードを拾い集めたが、
このショーケースは飲み物を冷やすための冷蔵庫。
ガラスの表面が少し結露している。
ほとんどのカードは財布にしまったが、最後の2,3枚が水滴でガラスに張りつきなかなか取れない。
彼女は爪を立ててカードをガラスから剥がそうとするが、
その爪は、悪魔のように長く尖っている。
「ねえさん、それじゃカードの前にそのネイルが先に剥がれちゃうよ。」
と集めたカードを渡しながら言った。
「お兄さん取ってよぉ…」
と必死に長く尖ったネイルを突き立てている。
仕方ないので、
「ちょっとどいて。」
なんとかカードを取って彼女に返し、
「海に来るときは、そんな長い付け爪外してくばいいのに。」
と言った。
「ダメだよ。コレ高かったんだから。」
まぁ、とりあえず彼女のネイルは剥がれる事なく無事に守られた。
お客さんが帰る準備をしている時、一番面倒なのがウキワの空気を抜く作業だ。
こちらが手伝うことも多い。
この日も1人の男が大きなウキワの空気を抜いていた。
多分、このウキワで彼女と一日海で遊んだのだろう。
オレは、
「大変だね。手伝おうか?」
と声をかけた。
そのとき、
「あ、お兄さん手伝ってくれるの?ありがとう。」
と、ネイルの彼女が現れた。
「にいさんの彼女?」
と聞くと、
「ええ。」
と答えた。
「にいさん大変だね。」
と、さっきのカードの話しをした。
「なんだ、またやったのか?」
と言い、オレに
「すいません。」
と謝った。
「だって爪が取れちゃうもん。」
と、ケロッとした顔で自慢のネイルを見せた。
オレは、
「ウキワだけど、その爪でグサッ!とやれば簡単に空気抜けるじゃん。」
と言うと、
「だから、これ高かったんだってば!」
と、またネイルを見せる。
オレは、空気を抜いている彼氏を手伝って、
「空気は抜いたから、あとはコレたたんでおいて。」
と彼女に渡した。
「砂がついてるからヤダ。ねぇコレやっといて。」
と彼氏に渡した。
オレは彼氏に、もう一度言った。
「本当に大変だね。」