3年ぶりの再開
7月最後の週末。
梅雨も明け、夏らしくなり、パラソルやサマーベッド借りるお客さんも増えてきた。
オレは、レンタル状況を確認するため、砂浜のレンタル小屋にいた。
貸出し帳をチェックしていると、
「すいませ~ん。ウキワ貸してくださ~い。」
と言う、女の子の声。
オレが声のした方を見ると、
少し日焼けした顔に、サングラスをかけたロングヘアーの女の子が立っていた。
その彼女は、すました顔で、
「あたしのこと覚えてる?」
と言った。
一瞬、
「?」
でも、すぐにわかったオレは、
彼女のサングラスをズラし、目を見ながら
「な~にすました声出してんだ。久しぶりだな。」
と笑った。
彼女の目も笑っていた。
彼女とは、3年ぶりの再開だった。
「よくわかったね。」
と彼女。
「わかるに決まってんだろ。何年の付き合いだと思ってんだ。もう10年くらいになるだろ?」
「もうそんなになるのかぁ。」
と彼女。
仕事が忙しくなり、なかなか海に来られず、3年たってしまったと言った。
そして、やっと時間が取れるようになり、
今年、久しぶりにやって来た。
夏の間の数日しか顔を会わせないが、
彼女がこの海に来るようになってからもう10年。
でも、未だにお互いの名前も連絡先も知らない。
この日も、いつものようにビールを飲んで、しゃべって、笑っていた。
そして、
「また来るね~。」
と言って帰って行った。
今年の夏は、あと何回会えるだろう。
海の日
もう梅雨は明けてしまったが、
更新していなかったので、
まずは、三連休の最終日。
海の日の話。
この日は梅雨明け間近の晴天ということもあり、まずまずの人出だった。
人が多ければ現れるのが、女の子目当ての男達。
オレがいる売店にビールを買いにきた3人のニーチャン達。
海でカッコよく見せるために、日サロで焼いてきたような感じ。
とりあえず、このニーチャン達をA、B、Cとしておこう。
買ったビールを手に、
「そこのテーブル借りてもいいすか?」
オレは、
「いいよ。」
と砂浜に面したテーブルを指した。
「あざーす。」
「お借りしまーす。」
と言って席に着き、飲みながら女の子を物色し始めた。
そして、その中の1人、
ニーチャンCが、
「おっ!発見!」
と言って、いきなり砂浜に飛び出して行った。
残ったA、Bがそれを見て、
「違う!違う!」
「あれはさっきのだよ!」
と走りだしたCを呼び止めた。
飛び出して行ったCの前を歩いている2人の女の子。
「なんだ、やっぱりナンパか?」
とCに聞くと、
「そうなんだけど、アレさっき声かけたコだった。」
他の2人に、
「一度失敗した女の子も見分けがつかなくなるくらいチャレンジしてるのか?」
「何組か声かけたんだけどね、なんかみんなちょっと残念なコばっかりで。」
とニーチャン達。
「残念なのはお互い様だったんじゃないのか?女の子達も残念なのが来たって思ってたかもよ。」
と言うと、
「ひでぇなぁ、お兄さん。そりゃねぇよ。」
「オレらまだ努力が足りねぇんだよ。今度は誠意を持っていこうぜ。」
などと言っている。
一見ワルそうに見えるが、こういうニーチャン達は結構気さくでおもしろい。
そしてビールを飲み終えたニーチャン達は、
「さぁて、それじゃぁ誠意を持って頑張ってくるか。」
と言って席を立った。
ニーチャン達の誠意がどういうものかわからないが、
とりあえず、
「頑張ってな。」
と送り出した。
その後、
まだ午後の早い時間。
渋滞を避けるために、早めに帰宅する客が帰り支度を始めた頃、
一組のカップルが売店にやって来た。
男はキャップをかぶり、サングラスをかけて、素知らぬふりをしているが、
よく見ると、さっきのニーチャンAだ。
なかなか可愛いコを連れている。
邪魔をするのも悪いので、オレも気付かないふりで対応した。
ニーチャンAは、女の子に
「なんでも好きなものを飲んでいいよ。」
「なんでもいいの?」
と言って、迷っている彼女の後ろに立っているニーチャンAと目が合った。
オレが目で彼女を見て、Aに問いかける仕草をすると、
Aはニヤリと笑って、親指を立ててみせた。
ニーチャンAはナンパに成功したようだ。
辺りを見回してみると、ニーチャンBも女の子を連れて歩いている。
ニーチャンCはというと、1人でサマーベッドに寝ている。
ニーチャンAとBは、それぞれ女の子と楽しい時間を過ごしている。
ニーチャンCは、相変わらずサマーベッドに寝ている。
ニーチャンBが来たので聞いてみると、
サマーベッドで熟睡していたニーチャンCを放置したまま、AとB2人で行動し、誠意が通じてナンパに成功したらしい。
そして夕方、
ニーチャン達と女の子はシャワーを浴びるために戻ってきた。
売店に来た女の子達に、
「あのニーチャン達にナンパされたの?」
と聞くと、
「車で送ってくれるって言うから。」
と言った。
こういうことらしい。
声をかけられたが、始めは無視していた。
それでも一方的に話してくる。
車で来ていることや、帰る方向も自分達に都合がいいがわかった。
しばらく話してみたら、悪い人でもなさそうだし、帰りは車で送る。
という事で、話はまとまった。
「それに、いっぱいおごってくれるしね。」
と女の子達。
結局、ニーチャン達の誠意より、女の子達のしたたかさの圧勝だ。
その事にニーチャン達は気付いているのだろうか。
