Sea Breeze Season8 -26ページ目

自由研究


お盆休み中のある日のこと。

売店で商品チェックをしている時に、

「すいません。」

と声をかけられた。

振り向くとノートを持った小学生の女の子。

帽子を被り、肩から水筒をかけている。

「今、自由研究をやっていて、海の家の人からお話聞いてるんですけどいいですか?」

と緊張しながら言った。

「いいよ。何が聞きたいのかな?」

女の子は、

「かき氷は何が一番売れるんですか?」

と聞いてきた。

「イチゴかな。」

と答えた。

すると、

「それは子どもですか?」

と聞いてきた。

オレは、単純に売れた数だけ答えていたので、

「子どもならブルーハワイだね。」

と答えた。

女の子は次も同じように質問をした。

もしかしてと思い、

「おねぇちゃん、ちょっと見せて。」

と女の子が持っているノートを見せてもらった。

落ちた汗で所々濡れているノートには、子どもらしい文字で、かき氷の名前の後にカッコで大人とか子どもとか書いてあった。

まだ始めたばかりのようで、調べた件数も少ない。

内容は、海の家のかき氷の人気ベスト5を調べているようだ。

この書き方では大変な時間がかかる。

オレは、

「おねぇちゃん、何年生?」

と聞いた。

女の子は、

「4年生。」

「これから海の家を全部まわるの?」

「うん。」

「大人と子どもと両方聞くの?」

「うん。」

女の子は顔に汗を流しながら答えた。

オレは、

「ちょっと座って待ってて。」

と言って、売店前のテーブル席に座らせ、冷たい麦茶を出した。

女の子が麦茶を飲んでいる間に、オレはノートに大人、子ども、あとは1から5の番号の簡単なメモを書いた。

そして、

「この順番で聞くと分かりやすいよ。」

と言ってノートを返し、途中だった女の子の質問に答えた。

質問もスムーズにできた。

オレからの回答をノートに書き込んだ女の子は、

「ありがとうございました。」

とお辞儀をした。

「どういたしまして。」

と言って、テーブルに置いてあった水筒に氷と麦茶を入れ、

「頑張ってね。」

と送り出した。





その翌日、

女の子が、お母さんと一緒に海の家にやって来た。

「昨日はこの子がお世話になってありがとうございました。」

と言った。

女の子が帰った後、受け取った水筒に氷と麦茶が入っていたので、どうしたのか聞いたところ、この海の家のこと話したそうだ。

それを聞いて、わざわざお礼を言いに来てくれた。

オレは、

「暑いし熱中症になると大変なので。それにこちらが勝手にしたことですから。」

と言った。

お母さんは何度もお礼を言って、かき氷を注文してくれた。

女の子の注文はブルーハワイ。

やっぱり子どもには一番人気だ。

マイペース


日曜日の午後3時頃、

「空気入れ貸してもらえますか?」

と2人の女の子に声をかけられた。

この時間になると、かなりのお客さんが帰り支度を始めるのだが、

今年はお客さんの数も多く、週末はいつも満員状態。

こういうお客さんもよくいた。

「ねぇさんたちこれから泳ぐの?」

「うん、さっき着いたところなの。」

せっかく来たんだからと思い、

「おいで、こっちだよ。」

と空気入れの使い方を教えた。
 
うきわを広げると、座椅子に肘掛けをつけたクッションのような形をしている。

早速空気を入れ始めたが、背もたれだけがどんどん膨らんで、座るところに空気が入ってこない。

もう背もたれはパンパンになって、今にも破裂しそうだ。

思わず、

「ストップ!ストップ!パンクするよ!」

と一度空気入れを止めさせ、

「それ もうひとつ空気穴がついてない?」

と聞いた。

彼女は、

「あっ、あった。」

と言って座面の空気穴から空気を入れた。

いざ膨らませてみると、なんかバランスおかしい。

座面より背もたれの方が大きい。

何度置き直しても後ろに倒れてしまう。

「これ座るのムリじゃない?ちょっと座ってみて。」

と砂浜に出て行った彼女たちに言った。

空気を入れた彼女が座ると、そのまま後ろにひっくり返った。

それを見たもう1人の彼女は、ゲラゲラ笑いながら、

「あんたお尻が空に向いてたよ。足はガニ股になってるし。」

ひっくり返った彼女は起きあがりながら、横で笑ってるオレを見て、

「お兄さんわかっててわざと座らせたんでしょう?」

と睨んだ。

オレは、

「転がるとは思ったけど、あんな豪快にいくとは思わなかったよ。おかげでいいもの見せてもらった。ありがとね。」

「やっぱりわかってたんだ。」

「 それより海で試したほうがいいんじゃない?早くしないと海の家閉めちゃうよ。」

もう1人の彼女も、

「そうだよ、早く行って乗ってみようよ。」

と言って海に向かった。

その後、どこへ行ったのか2人の姿は見当たらなくなった。


そして、午後4時半。

閉店時間は、午後5時だ。

海の家の終了時刻を案内するアナウンスが流れる中、

遠くに椅子のうきわを引きずってくる2人の姿が見えた。

近づいてきた彼女たちの表情は疲れきって、髪の毛は海草のように顔にへばりついている。

「お兄さ~ん、全然座れなかったよぉ。」

「もぉ、疲れたよぉ。」

と情けない声を出しながら近づいてきた。

「とりあえずひと休みしたら?シャワーも混んでるし。」

この日も、満員状態でシャワー待ちのお客さんが並んでいた。

彼女たちはビールを買い、空席を見つけ飲み始めたが、

ちょっと目を離した隙に、また姿が見えなくなった。

シャワー待ちの列は解消されたが、並んでいた様子もない。

砂浜を見ると、もうすぐ閉店時間だというのにシートに寝転んだり、顔を寄せあったりしながら自撮りをしている。

まったくのんきなものだ。

オレは、

「ねぇさんたち!シャワー止めるぞ!」

と言って連れ戻した。

シャワーを浴びた後も、タオルで髪を拭きながら、

「お兄さん、ドライヤーないの?」

どこまでもマイペース。

その後も、椅子型のうきわの空気を抜いたり、ビーサンのまま帰ろうとして引き返して来たり。

靴を取りに戻った彼女たちは、最後のお客さんが荷物を片付けているのを見て、

「まだお客さんいるんだから、もう1本飲んでもいいよね。」

とテーブル席でビールを飲み始めた。

結局、最後までマイペース彼女たちが、
この日最後のお客さんになった。



テント


風に煽られてレジャーテントが飛んできた。

設置したお客さんが、しっかりと固定していなかったのだろう。

さらに、 テントにはうきわが2つ縛りつけてあるので、不規則に転がっている。

そのまま放置しておくと、他のお客さんが怪我をするかもしれないので、とりあえず回収した。

辺りを見回し持ち主を探したが、それらしい人は見当たらない。

仕方ないので、風に飛ばされないように海の家の柱に縛りつけておいた。
見えるところに置いておけば持ち主が見つけるかもしれない。

その後、売店が忙しくなりテントのことをすっかり忘れていた。

それから暫くして、テントを見ている2人の女の子がいた。

「風に飛ばされて来たんだけど、そのテントねぇさんたちの?」

と聞いた。

「はい、そうです。拾っておいてくれたんですか?ありがとうございます。」

もう一人の彼女が、

「ちょっとシャワーで砂を洗い流しているうちに飛ばされてちゃったみたいで。」

と答えた。

てっきり家族連れかカップルだと思っていたので、女の子2人というのは意外だった。

「飛ばされた時に骨組みのポールが1本折れちゃったみたいだね。」

とポールを見せた。

ホントだぁと言って、海の家の柱に縛ってあることに気づき、

「あっ、すいません。すぐに片付けますから。」

と言って、テントをたたもうとした。
だが、ポールがうまく抜けない。

風で転がったせいで、うきわの結び目が絡まっている。

彼女たちではほどけそうもないので、

「ちょっと貸して。」

と言って手伝った。

折りたたみ式のワンタッチタイプではなく、ポールを通して組み立てるタイプのテントだ。

複雑に絡まっていたので少し時間はかかったが、無事に解体して彼女たちに渡した。

彼女たちは、何度もお礼を言って帰って行った。



最近はレジャーテントを持ってくるお客さんが多い。

テントには、ペグ(固定するための杭)がついている。

キャンプ場などのように土に固定する場合には有効だが、ペグのタイプによっては砂浜には向かない物もある。

その場合は、どうしたらいいか?

簡単な方法は、コンビニ袋に砂を入れてテントに縛りつける。

そして、その砂袋を砂浜に埋めれば完成。

まず風に飛ばされることはないだろ。

もし袋が破れたら、と心配ならば袋を二枚重ねすればいい。

片付ける時も、袋を破って砂を出せばビニールゴミとしてすぐに捨てられる。

海でレジャーテントを使用する際には、ぜひ活用してほしい。