それぞれの楽しみ方 その2
8月23日 日曜日。
2組目は、
女子会を始める20代半ばのグループ。
声をかけると、
「遊泳禁止だし、しょうがないから写真だけ撮って帰ろうと思ったんだけど。」
と言った。
「それなら荷物をここに置いておけば?こっちは全然構わないから。その方がゆっくり写真撮れるでしょ?」
彼女は他のメンバーと相談して、
「それじゃあ、ちょっと場所をお借りします。」
と中に入って来た。
荷物を置いた彼女たちは、外に出て写真を撮り始めた。
砂浜で、波打ち際で、何枚か写真を撮った。
戻って来た彼女たちは、売店でビールやジュースを買い、
「どうもありがとう。」
と言って出て行こうとした。
オレは、
「せっかく来たんだから、中でゆっくり飲んだら?」
と言った。
「ホントに?いいの?」
と笑顔になった。
「いいよ。ねぇさんたち人数多いからテーブルも動かしていいからね。」
彼女たちは全員で7人。
彼女たちは、みんながまとまって座れるようにテーブルを移動させていた。
1本目のビールを飲み干したねぇさんが、2本目ビールを買いに来た。
「もう1本飲むの?写真撮ったら帰るんじゃなかったっけ?」
とちょっと意地悪く言うと、
「せっかく来たんだからのんびりしていくことにしたの。さっきお兄さん言ったじゃん。」
「そうそう、ゆっくりしていけばいいよ。だって急いで帰る必要もないんでだろ?」
「うん。声かけてくれなかったら本当に帰ってたけどね。でもどこか遊びに行くにしてもあの荷物じゃ面倒だしね。だからゆっくりさせてもらうね。」
と言った。
オレは、
「はいよ。どうぞごゆっくり。」
とビールを渡し、彼女は受け取り戻って行った。
それから入れ替わり立ち替わりビールやチューハイを買いに来た。
彼女たちは、飲んで、食べて、しゃべっていた。
飛び込んでくる内容は、仕事の愚痴、彼氏の愚痴、恋愛話、旅行、ファッション等々。
何時間もしゃべり続け、たまに砂浜に出ては写真を撮っていた。
オレは予想通りカメラマンを頼まれ、彼女たちの集合写真を何枚か撮った。
砂浜から戻る時、彼女たちに、
「みんなよくしゃべるねぇ。7人も集まるとパワーもスゴいね。」
「こういう所で昼間から飲むと時間が経つのが早いのよね。」
「でもいつもみんなで飲んでるんじゃないの?」
すると口々に、
「飲むけどお店の中だとなんか時間が気になっちゃうんだよね。」
「こういう開放感がある所っていいよね。」
「もっとこういう所で飲みたいね。」
と言うので、
「だったらみんなでBBQでもしたらいいんじゃない?」
と言ってみた。
「あっ、それいいかも。」
「やりたいね。」
「じゃ、これから作戦会議しよ。」
「お兄さん、ビール!」
「レモンサワー!」
と次々と注文がきた。
「ねぇさんたち意外とアクティブなんだね。」
「そう。と言うわけでもうちょっと場所借りるね。」
とテーブルに戻り、作戦会議が始まった。
そして、数時間続いた女子会も終了の時間が来た。
「今日はありがとう。そろそろ帰るね。」
と、さっきのねぇさんが挨拶に来た。
「時々ねぇさんたちの会話が聞こえてきたんだけど、女子会ってあんな感じなの?」
と聞くと、
「外ではあんな感じかな。」
と言った。
「外では?」
「みんなで部屋飲みしたらあんなもんじゃないから。もっとえげつない話もしてるよ。」
「例えば?」
「そんなこと言えるわけないじゃん。聞いたらお兄さん引くよ。」
と意味深な笑顔で言った。
「ねぇさんのその笑顔、なんかコワイよ。」
「女子会にも表と裏があるのよ。」
「そうなの?ところでBBQの方はどうなった?」
「やる方向でまとまったよ。あとは幹事役の男友達を誰にするかだけ。」
「そこは決まらなかったんだ。」
「何人か候補は出たから、その中から一番慣れていてマメに動いてくれるヤツかな。」
「あぁ、そういう計画ね。ねぇさんたちは食べて飲めればいいんだ。」
「そういうこと。」
「やっぱりねぇさんたちコワイね。誰か知らないけど、その男友達に同情するよ。」
「お兄さんも来る?」
と何か企んでるような目でオレを見た。
「いや、ねぇさんたちコワイから遠慮しておくよ。」
「なんだ残念だなぁ。お兄さんにフラれちゃったからもう帰ろ。」
と言ってもう一度、
「お兄さん、今日はありがとね。」
と手を振りながら出口に向かって歩いて行った。
出口では他の6人も手を振っていた。
こういう冗談をサラっと言える女の子との会話はやっぱり楽しい。
その後、彼女たちはBBQに行けたのだろうか?
それぞれの楽しみ方 その1
8月23日 日曜日。
自分にとっては、今年の夏の最後の日曜日。
台風の影響で波は高く風も強い。
この日は遊泳禁止。
最終日だというのにツイてない。
遊泳禁止の旗を見て早々に帰る人たちもいたが、それでも遊んでいくお客さんはいる。
若いにぃちゃん達は、遊泳禁止を無視して海に入ってはライフセーバーに注意されていた。
家族連れは、子供たちを砂浜で遊ばせていた。
この日も、
海には来たものの、どうしようか迷っているお客さんに声をかけた。
海の家に入るには、有料のように思っている人も多いが、必ずしもそうではない。
とりあえずひと休みして、そのあと利用するかどうかはその人が決めればいいと思っている。
だからこの日も、お客さんを何組も海の家に入れた。
そんなお客さんの中にいた3組の女の子のグループの話。
「今日は遊泳禁止だよ。」
「そうみたいですね。」
と残念そうに彼女たち。
「とりあえず中に入ってひと休みしたら?今日は席も空いてるし、席に座ったくらいで金払えなんて言わないから。」
「いいんですか?」
「いいよ。その荷物持ってこの風の中を歩き回っても砂まみれになるだけだよ。」
「それじゃあ、お邪魔します。」
と言って、中に入って来た。
彼女たちは、荷物を置いてホッとしているようだった。
3組とも、そんな感じで入ってきた。
最初のグループは、
自撮り棒で写真を撮りまくる3人の高校生の話。
ジュースを持って、料理を持って、砂浜で写真を撮りまくっていた。
自撮り棒なので、ほとんどがアップの写真。
シャッターを押すたびに、顔の角度を変えたり、表情を変えたり、手や指を使ったり、アングルを変えたりしながら撮っている。
今年は自撮り棒を持っているお客さんが多かった。
彼女たちの近くを通りかかったときに、
「それって、やっぱり便利なの?」
と聞いたら、
事細かに説明してくれた。
こうすると2割増しだとか、
この角度からこうすると3割増しで撮れるとか、
手を使うと小顔に見えるとか、
さっきまで撮っていた写真を見せてくれた。
彼女たちは、普通にしていてもそこそこかわいいのだが、
自分で2割増しとか3割増しとか言うのはどうかと思いながら見ると、
確かに写真のほうがかわいく写っていた。
オレは彼女たちと写真を見比べて、
「ねぇさんたち、これ反則じゃない?」
と言うと、
「いいのいいの、インスタ用だから。」
「いつもこの顔でいれば?そしたらねぇさんたちモテるだろうに。写真なら性格も写らないし。」
「残念でした。お兄さんが思ってるよりあたしたちモテるからご心配なく。」
「そうなの?そりゃ失礼。」
別のねぇさんも、
「それにいつもこんな顔してたら疲れちゃうし、アタシたち性格いいから。ほら、これはお兄さんに。」
と言って、投げキッスをしてきた。
そんな話をしながら、写真を見て気がついたことがあったので聞いてみた。
「これって写真を先に見て、後から実物を見ると2割3割どころか4割減くらいの落差になるコとかもいるんじゃない?」
「そんなコいっぱいいるよ。友達の写真を見て紹介してって言われたこともあるよ。」
「みんな撮り慣れてるからね。でもそういうコは写真のパターンが決まってくるんだよね。」
とサラッと言った。
そして、
「お兄さん、あとで写真撮ってもらってもいい?」
「もういっぱい撮ったんじゃないの?」
「海で撮れなかったし、全身がうまく入らないから。」
とカメラマンを頼まれた。
スマホに波しぶきがかかるのを心配したらしい。
オレは、
「いいよ。撮るときに声かけてね。」
と言って売店に戻った。
しばらくすると、
「お兄さん、写真撮るから海行いこ。」
と売店から引っ張り出された。
波打ち際まで行って何枚か写真を撮った。
スマホを返そうとしたら、
「今度はこっちで。」
と砂浜で撮った。
結局、かなりの枚数を撮ることになった。
ポーズをキメたり、お決まりのジャンプをしたり、ただはしゃいでいるだけの写真なのだが。。。
自分たちの場所に戻った彼女たちは、3人でワーワーキャーキャー言いながら写真をチェックしていた。
満足したのか、彼女たちが荷物を持って売店に来た。
「お兄さん、そろそろ帰るね。」
「さっきチェックしてたみたいだけど写真はどうだった?」
「ちゃんと撮れてたよ。お兄さん上手だね。」
「そうだろ?スマホから一眼レフまでいろんな人から頼まれるんだから上手くもなるよ。」
「そうなの?じゃあ帰るね。バイバ~イ。」
と言って帰って行った。
彼女たちの写真は、もうアップされているのかもしれない。
なぜ知っている?
お盆休み中。
若い男女合わせて20人くらいの団体のお客さんが来た。
その中の30代のリーダー的な人が、みんなからオーナーと呼ばれていた。
お店のスタッフとバイトを連れて、夏のイベントで海水浴に来たようだ。
ほとんどが20代のこの団体、とにかくよく飲む。
入れ替わり立ち替わり、生ビール、缶チューハイ、サワー等々大量に買っていく。
時々、一気コールが聞こえてくる。
そして、大量のジョッキ、空き缶、空きビンを持ってきて、また大量に買っていく。
アルコールが飛ぶように売れるので、こちらも在庫をガンガン補充。
そんな状態が続いていた。
しばらくすると、何人か騒ぎながら砂浜に出て行った。
中にはサワーの缶を持って、
「お兄さ~ん、男梅おいしいね~!」
と叫びながら走っているねぇさんもいた。
あとから出てきたにぃさんに、
「にぃさん、あのねぇさん大丈夫か?」
と聞くと、
「もうかなり飲んでるんスよ。」
と言いながら追いかけて行った。
残って飲んでいるメンバーもかなりテンションが高い。
それでも何人か酒豪がいるのか、乱れる事なくそれなりに統率は取れていた。
そんな飲んで騒いでいたこのイベントも、そろそろ終了の時間らしく、帰る準備を始めた。
散らかっていた荷物が、徐々に持ち主に片付けられていく。
大体こういうグループは、必ず忘れ物をしていく。
オレは彼らのところに行って、
「忘れ物しないようにね。大丈夫?」
と声をかけた。
テーブルやイスには、まだTシャツやタオルが残っている。
オレはそこで指示を出しているにぃさんに、
「このトランクスは?」
と聞いた。
にぃさんは、
「おーい!これ誰のだ-!」
と叫んで、持ち主に渡す。
そんな感じで、
「このタオルは?」
「あっ、それは捨てちゃって下さい。」
「このTシャツは?」
「このTシャツ誰だ-!」
こんな繰り返しが何度かあり、
最後に手に取ったのは、やけに小さい布のかたまり。
広げてみるとTバック。
ビキニのインナーショーツだ。
オレは、
「これは?」
と広げて見せた。
まわりの酔っている仲間は、
「おっ、Tバック。」
とか言ってふざけている。
にぃさんは、
「おーい!〇〇-!」
と名前を呼んで渡していた。
忘れ物もなく、帰る準備ができたところで集合写真を撮ることになった。
何枚か写真を撮り、カメラを返した。
リーダーのオーナーが、
「今日はお世話になりました。」
他のメンバーも口々に、
「お世話になりました。」
「ありがとうございました。」
と言って駅に向かって歩き始めた。
そこで、歩きながら誰かが、
「そういえば、なんでオマエあのTバックが〇〇のだって知ってんだ?」
と、あのにぃさんに聞いた。
他の仲間からも、
「オマエ、〇〇と付き合ってんのか?」
とか、
「Tバックはいてるところ見たのか?」
女の子たちも、
「〇〇、アンタ⬛⬛君と付き合ってるの?」
とか、
「もうしちゃったの?」
とかTバックのねぇさんを問いつめている。
みんな酔っているので遠慮がない。
結構生々しいツッコミもあった。
そんな状態で駅に向かって歩いて行った。
多分、帰りの電車の中は大変なことになっただろう。
因みに、男梅を持って走っていたねぇさんは、
酔いつぶれ、そんな騒ぎも知らぬまま、両肩を抱えられ運ばれるように帰って行った。