それぞれの楽しみ方 その3
8月23日 日曜日。
3組目は、
20代半ばのショートカットとセミロングの女の子2人組。
この二人も、休憩していけば?と声をかけて入ってきたお客さんだ。
彼女たちは、売店前のテーブル席でビールを飲んでいたが、
遊泳禁止とはいえ、強風と高波を除けば外はまだ夏だ。
服の下に水着を着ていた彼女たちは、我慢できずに水着になり、サマーベッドで日光浴を始めた。
海に向かってサマーベッドを並べたが、真横から吹いてくる風に手こずっている。
しばらくは耐えていたが、顔に手を当てて砂を避けながら戻って来た。
「やっぱりムリだった?」
と聞くと、
「もう風がスゴくて。」
「砂も飛んできて痛いし。だから一旦休憩。」
と砂を払って、テーブルでビールを飲んだ。
ひと休みした彼女たちは、
「もう一回チャレンジしてくる。」
と言って、二人はまた出て行った。
サマーベッドに横にはなったが、相変わらず強い風が吹きつけている。
この日の砂浜は、風よけになるレジャーテントがほとんどで、サマーベッドを使ってる人は数えるほどしかいなかった。
オレは売店を出て彼女たちのところに行き、
「ねぇさんたち、ちょっとどいて。」
と彼女たちを立たせ、
海に向いていたサマーベッドの向きを少し変えた。
「これで座ってみて。」
と彼女たちを座らせた。
すると、
「あ~っ!風が来ない。」
「ホントだ。これならいいね。」
と気に入ったようだった。
「背もたれを風よけにしたんだよ。これなら大丈夫だろ?それに太陽は真上にあるから日焼けもできるよ。」
オレは売店に戻りかけて、
「風は強くても日射しは夏たがら適当に休憩するようにね。」
と付け加えておいた。
「ハ~イ。」
と言って、今度は気持ち良さそうにサマーベッドに横になっている。
その間、彼女たちは何度かナンパされていた。
彼女たちなら声をかけられるだろうと思っていた。
でも二言三言話すと男たちはすんなり諦めて立ち去って行った。
しばらくして売店に来た彼女たちに、
「ちゃんとオレの言いつけ守って休憩に来たんだ。エライエライ。で、どうだった?」
と聞くと、
「快適だったよ。ちょっとウトウトした。」
「風がいい感じになって気持ちよかったよ。」
と満足そうだった。
そしてまた同じようにビールを飲みながら休憩。
先に飲み終えたセミロングの彼女が、
「もう一回行ってくるね。」
と一人でサマーベッドに向かった。
残ったショートの彼女は、テーブルに頬杖をついてとろんとした目をしている。
「ねぇさんどうしたの?なんかまったりしちゃって。」
「この席いい風が入ってきて気持ちいいね。なんか眠くなってきちゃった。」
と海を見ながらボーッとしている。
風は強いが、彼女が座っている辺りは売店が風よけになり、ちょうどいい感じの風が入ってくる。
彼女があまりにも気持ち良さそうにしているので、しばらく話しかけずにいた。
気がつくと、彼女はそのまま眠っていた。
その後、目を覚ました彼女はサマーベッドに行った。
そして、お客さんの数が減り始めた頃、
彼女たちも引き上げてきた。
「二人ともよく寝てたね。」
と言うと、
「気持ちよかった~。」
とショートの彼女。
セミロングの彼女は、
「ちょっと日焼けし過ぎたかなぁ?」
とビキニの肩ひもをずらして見せた。
うっすらと赤くなっている肩に、白くビキニのあとがついていた。
肩に手をあてると少し火照っている。
オレは、飲み物を冷やしているストッカーの冷水の中に手を入れ、その手を彼女の両肩に置いて、
「どう?冷たい?気持ちいい?」
それほど焼けてなければ飛び上がるほど冷たい。
ある程度焼けてればその冷たさが気持ちいい。
彼女は、
「あ~、気持ちいい~。背中にもあてて。」
背中にあてると、
「冷たくて気持ちいい~。」
それを見ていたショートの彼女も、
「あたしも、あたしも。」
と背中を向けた。
同じように手をあてると、
「ホントだ、気持ちいい~。」
と目を閉じている。
そのあと、
「もう一回、もう一回。」
と言われ、手をあてながら、
「気持ちいいってことは、結構焼けてる証拠だから今日はもう日焼けしちゃダメだよ。これ以上焼いたら帰ってから大変だから。」
と注意しておいた。
彼女たちはオレの忠告を聞いてテーブルでビールを飲んでいる。。
そのうち、おしゃべりをしていた二人の口数が減ってきた。
「どうしたの?なんか大人しくなってない?」
「ここ気持ちいいんだもん。」
日焼けで火照った体に風が気持ちいいのだろう。
「あたし、また眠くなってきちゃった。」
とショートの彼女。
時計を見ると、閉めるまでにはまだ間がある。
「まだ早いから寝ててもいいよ。時間になったら起こしてやるから。」
それを聞いて安心したのか、二人ともすぐに眠ってしまった。
午後4時少し前に、彼女たちを起こした。
「ねぇさんたち、そろそろ時間だよ。」
声をかけても起きない。
「起きないとシャワー止めちゃうよ。」
と肩を揺すった。
相変わらず肩は火照っている。
二人は大きく伸びをしながら目を覚まし、シャワーに向かった。
潮と砂を洗い流し、すっきりした顔で戻って来た彼女たちは、
「お兄さん、ポカリちょうだい。」
と言った。
テーブル席の二人は、スポーツドリンクを飲みながら、名残惜しそうに海を見ている。
「残念だったね。海に入れなくて。」
と言うと、
「残念だけど、楽しかったよ。」
とセミロングの彼女。
「さっきナンパされてたな。」
「ああいうのってホント面倒くさくてイヤんなっちゃうよ。」
「ねぇさんたちはナンパの誘いには乗らないタイプなんだ。」
「お兄さんはあたしたちが喜んでついて行くと思ってたの?」
と不機嫌そうな顔をした。
「そうじゃなくて、あまりにも簡単に追っ払ったからさ。」
するとショートの彼女は笑いながら、
「あれはね、あたし達このあとお兄さんとご飯の約束してるからムリって言って断ったの。」
「そう。先にお兄さんにナンパされちゃったからってね。」
とセミロングの彼女も笑った。
あの時、彼女たちはこっちを指さしていた。
「やっぱりな。そんな事だろうと思ったよ。あまりオレの評判落とすような事しないでくれよな。」
「いいじゃん。あたしたちには評判いいんだから。」
と言った。
「そうなの?それはちょっと嬉しいような、かなり迷惑なような。。。」
「そこはかなり嬉しいとこでしょ。」
「もしかして今日オレが声かけた時も、ナンパだと思ってあんなに警戒してたのか?」
と聞くと、
セミロングの彼女が、
「それもちょっとあったけど、海の家を使うつもりもなかったし。なんか面倒くさいなぁと思って。」
「それに初めは本当に帰ろうと思ってたから。」
とショートの彼女。
「どうして声かけてくれたの?」
とセミロングの彼女が聞いた。
「入口でバイトの呼び込み断っただろ?で、こっちに来るのが見えたからダメ元で声かけたんだよ。とりあえずひと休みすれば?って。荷物も重そうだったしね。迷惑だった?」
「うぅん、よかったよ。でも断ってたらどうしたの?」
「そしたらそこでおしまい。断るのも帰るのもねぇさんたちの自由だからね。」
「そうなの?」
「そう。ここのお客さんにならなかったって事だけ。そうしたら今こうやって話す事もなかったよ。」
「じゃあここに入って良かったんだ。」
ショートの彼女も、
「結局、一日遊んじゃったもんね。」
「こういう日はお客さんが少ないから結構ヒマなんだよ。それで声かけて話し始めたら、なんとなく話し相手になってくれそうだなぁと思ってね。」
と言うと、
「あたしたち話し相手になってた?」
とショートの彼女が聞いた。
「なってたよ。この時間まで付き合ってくれたじゃん。」
「今も話してるしね。」
とセミロングの彼女。
「そういえば、お兄さんあたしたちのこと何にも聞かなかったよね。」
とショートの彼女が言った。
「何にもって、何を?」
「名前とか、歳いくつとか、どこから来たのとか。」
「だってナンパじゃないんだからそういうのいらないだろ?ねぇさんって呼べばそれで済むし。」
「どういうこと?」
「今日一日話してて、ねぇさんたちがどこの誰かなんて話題あった?」
「全然なかったね。ずっとねぇさんとお兄さんだったもんね。そっかぁ、だから気楽に話せたのかもね。」
「それにねぇさんたちはお客さんだけど、オレあんまりお客さん扱いしてなかったし。」
「そうだね。いつの間にか普通に話してたね。」
そこへセミロングの彼女が、
「そうだ!お兄さん!ナンパされてあげるからあたしたちの名前教えようか?」
と言った。
「遠慮しておくよ。名前聞いたら本当にご飯連れて行けとか言われそうだし。」
と断ると、
「ヒドイなぁ。そんなこと言わないよ。」
とショートの彼女。
「それに、それって名前教えたんだからねぇさんたちをナンパしろってことだろ?それじゃ逆ナンどころかナンパの押し売りだよ。」
「あ~ぁ、 もったいないなぁ。目の前にこんなにいい女が二人もいるのに。」
とセミロングの彼女。
ショートの彼女も、
「押し売りじゃなくて、スゴいお買い得なのにねぇ。」
などと言っている。
「う~ん、もう夏も終わっちゃうしなぁ。じゃあ、来年会えたらその時に名前教えてもらうよ。ご飯には連れて行かないけど。」
とオレは答えた。
「え~っ!それじゃ教え損じゃん。」
「ほら、やっぱり奢らせるつもりだったんだ。」
そんな冗談を言い合ってる間に、ほとんどのお客さんが帰っていた。
ショートの彼女が辺りを見回して、
「もう少しこうしていたいけど、そろそろ終わりの時間だよね。早いなぁ。」
と荷物を持って立ち上がった。
セミロングの彼女も、
「今日はありがとう。楽しかった。」
と言い、
ショートの彼女も、
「海には入れなかったけど、海に来て海の家のお兄さんとこんなに話したの初めて。こういう楽しみ方もなんかいいね。」
と言った。
オレは、
「こちらこそ。オレも今年は今日が最終日だからねぇさんたちが最後のお客さんだよ。ありがとね。」
とお礼を言った。
そしたら彼女たちが、
「そうなの?じゃあ、お疲れさま!」
と言って右手を上げた。
そして、
パン!
パン!
とハイタッチ。
オレは出て行く彼女たちを見送った。
彼女たちも歩きながら手を振っていた。
毎年、最終日は忙しくて賑やかに終わるのだが、
今年は、遊泳禁止のせいでいつもの賑わいもなく、何となくやり残した感の残る終わりになると思っていた。
でも、彼女たちのおかげで今年の夏も楽しく終わることができた。
3組目は、
20代半ばのショートカットとセミロングの女の子2人組。
この二人も、休憩していけば?と声をかけて入ってきたお客さんだ。
彼女たちは、売店前のテーブル席でビールを飲んでいたが、
遊泳禁止とはいえ、強風と高波を除けば外はまだ夏だ。
服の下に水着を着ていた彼女たちは、我慢できずに水着になり、サマーベッドで日光浴を始めた。
海に向かってサマーベッドを並べたが、真横から吹いてくる風に手こずっている。
しばらくは耐えていたが、顔に手を当てて砂を避けながら戻って来た。
「やっぱりムリだった?」
と聞くと、
「もう風がスゴくて。」
「砂も飛んできて痛いし。だから一旦休憩。」
と砂を払って、テーブルでビールを飲んだ。
ひと休みした彼女たちは、
「もう一回チャレンジしてくる。」
と言って、二人はまた出て行った。
サマーベッドに横にはなったが、相変わらず強い風が吹きつけている。
この日の砂浜は、風よけになるレジャーテントがほとんどで、サマーベッドを使ってる人は数えるほどしかいなかった。
オレは売店を出て彼女たちのところに行き、
「ねぇさんたち、ちょっとどいて。」
と彼女たちを立たせ、
海に向いていたサマーベッドの向きを少し変えた。
「これで座ってみて。」
と彼女たちを座らせた。
すると、
「あ~っ!風が来ない。」
「ホントだ。これならいいね。」
と気に入ったようだった。
「背もたれを風よけにしたんだよ。これなら大丈夫だろ?それに太陽は真上にあるから日焼けもできるよ。」
オレは売店に戻りかけて、
「風は強くても日射しは夏たがら適当に休憩するようにね。」
と付け加えておいた。
「ハ~イ。」
と言って、今度は気持ち良さそうにサマーベッドに横になっている。
その間、彼女たちは何度かナンパされていた。
彼女たちなら声をかけられるだろうと思っていた。
でも二言三言話すと男たちはすんなり諦めて立ち去って行った。
しばらくして売店に来た彼女たちに、
「ちゃんとオレの言いつけ守って休憩に来たんだ。エライエライ。で、どうだった?」
と聞くと、
「快適だったよ。ちょっとウトウトした。」
「風がいい感じになって気持ちよかったよ。」
と満足そうだった。
そしてまた同じようにビールを飲みながら休憩。
先に飲み終えたセミロングの彼女が、
「もう一回行ってくるね。」
と一人でサマーベッドに向かった。
残ったショートの彼女は、テーブルに頬杖をついてとろんとした目をしている。
「ねぇさんどうしたの?なんかまったりしちゃって。」
「この席いい風が入ってきて気持ちいいね。なんか眠くなってきちゃった。」
と海を見ながらボーッとしている。
風は強いが、彼女が座っている辺りは売店が風よけになり、ちょうどいい感じの風が入ってくる。
彼女があまりにも気持ち良さそうにしているので、しばらく話しかけずにいた。
気がつくと、彼女はそのまま眠っていた。
その後、目を覚ました彼女はサマーベッドに行った。
そして、お客さんの数が減り始めた頃、
彼女たちも引き上げてきた。
「二人ともよく寝てたね。」
と言うと、
「気持ちよかった~。」
とショートの彼女。
セミロングの彼女は、
「ちょっと日焼けし過ぎたかなぁ?」
とビキニの肩ひもをずらして見せた。
うっすらと赤くなっている肩に、白くビキニのあとがついていた。
肩に手をあてると少し火照っている。
オレは、飲み物を冷やしているストッカーの冷水の中に手を入れ、その手を彼女の両肩に置いて、
「どう?冷たい?気持ちいい?」
それほど焼けてなければ飛び上がるほど冷たい。
ある程度焼けてればその冷たさが気持ちいい。
彼女は、
「あ~、気持ちいい~。背中にもあてて。」
背中にあてると、
「冷たくて気持ちいい~。」
それを見ていたショートの彼女も、
「あたしも、あたしも。」
と背中を向けた。
同じように手をあてると、
「ホントだ、気持ちいい~。」
と目を閉じている。
そのあと、
「もう一回、もう一回。」
と言われ、手をあてながら、
「気持ちいいってことは、結構焼けてる証拠だから今日はもう日焼けしちゃダメだよ。これ以上焼いたら帰ってから大変だから。」
と注意しておいた。
彼女たちはオレの忠告を聞いてテーブルでビールを飲んでいる。。
そのうち、おしゃべりをしていた二人の口数が減ってきた。
「どうしたの?なんか大人しくなってない?」
「ここ気持ちいいんだもん。」
日焼けで火照った体に風が気持ちいいのだろう。
「あたし、また眠くなってきちゃった。」
とショートの彼女。
時計を見ると、閉めるまでにはまだ間がある。
「まだ早いから寝ててもいいよ。時間になったら起こしてやるから。」
それを聞いて安心したのか、二人ともすぐに眠ってしまった。
午後4時少し前に、彼女たちを起こした。
「ねぇさんたち、そろそろ時間だよ。」
声をかけても起きない。
「起きないとシャワー止めちゃうよ。」
と肩を揺すった。
相変わらず肩は火照っている。
二人は大きく伸びをしながら目を覚まし、シャワーに向かった。
潮と砂を洗い流し、すっきりした顔で戻って来た彼女たちは、
「お兄さん、ポカリちょうだい。」
と言った。
テーブル席の二人は、スポーツドリンクを飲みながら、名残惜しそうに海を見ている。
「残念だったね。海に入れなくて。」
と言うと、
「残念だけど、楽しかったよ。」
とセミロングの彼女。
「さっきナンパされてたな。」
「ああいうのってホント面倒くさくてイヤんなっちゃうよ。」
「ねぇさんたちはナンパの誘いには乗らないタイプなんだ。」
「お兄さんはあたしたちが喜んでついて行くと思ってたの?」
と不機嫌そうな顔をした。
「そうじゃなくて、あまりにも簡単に追っ払ったからさ。」
するとショートの彼女は笑いながら、
「あれはね、あたし達このあとお兄さんとご飯の約束してるからムリって言って断ったの。」
「そう。先にお兄さんにナンパされちゃったからってね。」
とセミロングの彼女も笑った。
あの時、彼女たちはこっちを指さしていた。
「やっぱりな。そんな事だろうと思ったよ。あまりオレの評判落とすような事しないでくれよな。」
「いいじゃん。あたしたちには評判いいんだから。」
と言った。
「そうなの?それはちょっと嬉しいような、かなり迷惑なような。。。」
「そこはかなり嬉しいとこでしょ。」
「もしかして今日オレが声かけた時も、ナンパだと思ってあんなに警戒してたのか?」
と聞くと、
セミロングの彼女が、
「それもちょっとあったけど、海の家を使うつもりもなかったし。なんか面倒くさいなぁと思って。」
「それに初めは本当に帰ろうと思ってたから。」
とショートの彼女。
「どうして声かけてくれたの?」
とセミロングの彼女が聞いた。
「入口でバイトの呼び込み断っただろ?で、こっちに来るのが見えたからダメ元で声かけたんだよ。とりあえずひと休みすれば?って。荷物も重そうだったしね。迷惑だった?」
「うぅん、よかったよ。でも断ってたらどうしたの?」
「そしたらそこでおしまい。断るのも帰るのもねぇさんたちの自由だからね。」
「そうなの?」
「そう。ここのお客さんにならなかったって事だけ。そうしたら今こうやって話す事もなかったよ。」
「じゃあここに入って良かったんだ。」
ショートの彼女も、
「結局、一日遊んじゃったもんね。」
「こういう日はお客さんが少ないから結構ヒマなんだよ。それで声かけて話し始めたら、なんとなく話し相手になってくれそうだなぁと思ってね。」
と言うと、
「あたしたち話し相手になってた?」
とショートの彼女が聞いた。
「なってたよ。この時間まで付き合ってくれたじゃん。」
「今も話してるしね。」
とセミロングの彼女。
「そういえば、お兄さんあたしたちのこと何にも聞かなかったよね。」
とショートの彼女が言った。
「何にもって、何を?」
「名前とか、歳いくつとか、どこから来たのとか。」
「だってナンパじゃないんだからそういうのいらないだろ?ねぇさんって呼べばそれで済むし。」
「どういうこと?」
「今日一日話してて、ねぇさんたちがどこの誰かなんて話題あった?」
「全然なかったね。ずっとねぇさんとお兄さんだったもんね。そっかぁ、だから気楽に話せたのかもね。」
「それにねぇさんたちはお客さんだけど、オレあんまりお客さん扱いしてなかったし。」
「そうだね。いつの間にか普通に話してたね。」
そこへセミロングの彼女が、
「そうだ!お兄さん!ナンパされてあげるからあたしたちの名前教えようか?」
と言った。
「遠慮しておくよ。名前聞いたら本当にご飯連れて行けとか言われそうだし。」
と断ると、
「ヒドイなぁ。そんなこと言わないよ。」
とショートの彼女。
「それに、それって名前教えたんだからねぇさんたちをナンパしろってことだろ?それじゃ逆ナンどころかナンパの押し売りだよ。」
「あ~ぁ、 もったいないなぁ。目の前にこんなにいい女が二人もいるのに。」
とセミロングの彼女。
ショートの彼女も、
「押し売りじゃなくて、スゴいお買い得なのにねぇ。」
などと言っている。
「う~ん、もう夏も終わっちゃうしなぁ。じゃあ、来年会えたらその時に名前教えてもらうよ。ご飯には連れて行かないけど。」
とオレは答えた。
「え~っ!それじゃ教え損じゃん。」
「ほら、やっぱり奢らせるつもりだったんだ。」
そんな冗談を言い合ってる間に、ほとんどのお客さんが帰っていた。
ショートの彼女が辺りを見回して、
「もう少しこうしていたいけど、そろそろ終わりの時間だよね。早いなぁ。」
と荷物を持って立ち上がった。
セミロングの彼女も、
「今日はありがとう。楽しかった。」
と言い、
ショートの彼女も、
「海には入れなかったけど、海に来て海の家のお兄さんとこんなに話したの初めて。こういう楽しみ方もなんかいいね。」
と言った。
オレは、
「こちらこそ。オレも今年は今日が最終日だからねぇさんたちが最後のお客さんだよ。ありがとね。」
とお礼を言った。
そしたら彼女たちが、
「そうなの?じゃあ、お疲れさま!」
と言って右手を上げた。
そして、
パン!
パン!
とハイタッチ。
オレは出て行く彼女たちを見送った。
彼女たちも歩きながら手を振っていた。
毎年、最終日は忙しくて賑やかに終わるのだが、
今年は、遊泳禁止のせいでいつもの賑わいもなく、何となくやり残した感の残る終わりになると思っていた。
でも、彼女たちのおかげで今年の夏も楽しく終わることができた。





