遅刻の理由
8月のある日曜日。
お昼少し前に来た30才前後の2人のねぇさん。
パラソルの下で飲んだり、海で遊んだり、海の家で休憩したりして過ごしていた。
何度も売店に来ては雑談をした。
午後3時頃。
ねぇさんがひとりで売店に来た時、スマホの着信音が鳴った。
スマホに出た彼女が、
「オマエ何やってんだョ!」
とか、
「今どこ?」
とか言っている。
そしてこの場所を説明している時、
海の家の横からスマホで話しながら、キョロキョロしているねぇさんが現れた。
すると、
「ここだよ。バカヤロー!」
と現れたねぇさんに手を振った。
遅れて来たねぇさんは、
「あ~、いたいた。」
と近づいて来た。
その手には、遅れたお詫びなのかビールやつまみの入ったコンビニ袋を下げている。
「アンタ何時だと思ってんの?」
「ごめんごめん。」
「さっさと着替えてきなよ。これはもらっておくからね。」
とコンビニ袋を持って、パラソルにいるもう一人のねぇさんのところに戻って行った。
水着に着替えた遅刻のねぇさんも合流し、3人揃ったところであらためて乾杯。
そして、夕方。
海の家で飲んでいる彼女たちに、
「ねぇさん遅れて来たけど、何時の待ち合わせだったの?」
と聞くと、
さっきスマホで話してたねぇさんが、
「朝の10時。」
と答えた。
オレは遅刻したねぇさんに、
「10時って、来たのが3時だから5時間も遅れたの?それ遅刻じゃなくて約束を忘れてたんじゃない?」
するともう一人のねぇさんが、
「コイツ、いつもそうだから。」
スマホのねぇさんも、
「10時でもゴネてたくらいだからね。」
遅刻のねぇさんが、
「だって電車が混んでたんだからしょうがないじゃん。そういうタイミングが悪い時ってお兄さんもあるでしょ?」
オレは、
「いくら混んでも電車は時間通りに来るでしょ。」
「違う違う、そうじゃなくて電車が事故で止まっちゃって、ホームに降ろされて、その後なかなか電車に乗れなくて。」
「ねぇさんの説明ってちょっと大雑把過ぎない?でも約束の時間に合わせて出れば事故前の電車に乗れたんじゃない?こっちのねぇさん達はちゃんと来てるんだから。」
「そうじゃないんだなぁ。男にはわかんないと思うけど、女のコっていうのはいろいろ準備が大変なものなのよ。」
「でもこっちのねぇさん達はちゃんと来てるよ。」
そんなやり取りを聞いていたスマホのねぇさんが、
「ホント大雑把で全然説得力ないよ。」
もう一人のねぇさんも、
「どうせまた顔を作るのに時間がかかったんでしょ。」
と言った。
オレは遅刻したねぇさんの顔を見ながらしみじみと、
「そっかぁ、ねぇさん準備大変だったね。」
と言った。
他の2人はゲラゲラ笑っている。
遅刻したねぇさんは、
「もう!」
と言って、ふくれっ面をしている。
「ごめんごめん。さぁ飲んで飲んで。」
と言ってビールをすすめた。
3人はまた飲み始めた。
その後、シャワーを浴びて帰り支度をしている時、
遅刻したねぇさんが、うきわの空気を抜くのに苦労していた。
オレは、
「抜いてあげるよ。」
と言ってうきわを受け取った。
「だって、ねぇさん準備が大変でしょ?」
「まだ言うか!」
とオレを睨みつけた。
「いや、お詫びに空気を抜かさせていただきます。」
「じゃあ、任せるね。アタシは準備があるから。」
と笑いながら言って、2人のところに戻って行った。
空気を抜いたうきわを持返しに行くと、
3人の準備は整っていた。
「ねぇさん、今度は準備早かったじゃん。」
と言うと、
「チョロいもんよ。」
と言って、自分の頬をピシャピシャと叩いた。
そして、荷物を彼女たちは、
「お兄さん、ありがとう。」
と言って出て行った。
一番最後にいた遅刻のねぇさんは、
もう一度振り向いて、
「じゃあね。」
と笑顔で手を振った。
BBQ
お盆休み中。
仲間が集まってのBBQ。
場所はこの海の家。
閉店時間の午後5時から貸し切り。
この日も満員だったので、最後のお客さんが帰ったのは5時半を過ぎていた。
結局、準備に取りかかったのは6時頃。
だが、スタートが遅くなっても全然構わない。
オールナイトの予定なので、朝まで借りてある。
メンバーはオレの仲間たち。
みんな海の家にも顔を出すので店長とも顔馴染み。
なので二つ返事で貸してくれた。
道具も全部揃っている。
早速、照明を取り付け、コンロをセット。
炭は火おこし係に任せる。
ガスバーナーで着火し、送風機で一気に火をまわす。
その間に、オレたちは近くのスーパーへ買い出しに。
ここは土地柄、鮮魚も充実している。
魚、肉、野菜、焼きそば、酒等を買い込んだ。
戻った時には炭もいい感じに火がついていた。
炭が馴染んで火力が安定するのを待つ間、刺身をつつきながら乾杯。
包丁、食器、調味料、水道等は、海の家の台所をそのまま使っているので、調理に手間はかからない。
一息ついたところで、肉、野菜を焼き、食べることに集中。
砂浜では花火をしている家族連れや、酔って騒いでいる若者たちの声が聞こえる。
一通り食べたところで、さっぱり系の野菜、豆腐、厚揚げを肴に飲み始める。
コイツらは、とにかくアレンジしてつまみを作るのが上手い。
その後、焼きそばを食べ、最後にもらったすいかを食べてBBQは終了。
ここからはフリータイムの飲み会。
いつものように、まじめに仕事の話をしたり、くだらない話で盛り上がる。
そのうち、好き勝手に動き始める者がチラホラ。
砂浜にサマーベッドで横になり、夜風にあたる者。
夜の砂は冷たくて気持ちいいと言って、裸足で砂浜を散歩する者。
気がつくと午前0時近い。
この頃になると、花火をしている者も、騒いでいる者もいない。
いるのは砂浜を歩いているカップルくらいだ。
さすがに午前1時を過ぎると、流れ解散ならぬ流れ就寝で、眠りだす者も出てくる。
オレを含め、残った者は相変わらず飲んでいる。
そんな調子で夜を過ごしていた午前2時頃、
「すいません。」
と砂浜の方から女の人の声がした。
一瞬、ドキッしてみんなが砂浜の方を見た。
そこには、濃紺のワンピースを着た色白の女の人が立っていた。
そしてもう一度、
「すいません。ちょっといいですか?」
と言った。
真夜中の砂浜にワンピースの女性なんて、いかにもなシチュエーションだが、
どうやら幽霊ではないようだ。
オレは、
「どうかしましたか?」
と彼女に近づいて行った。
初めは暗くてわからなかったが、アメリカ人のようだ。
多分、米軍基地から来たのだろう。
そして上手な日本語で、
「火を貸してもらえますか?」
と言って煙草を出した。
オレは火をつけながら、
「ベースから来たんですか?」
と聞くと、
「はい、彼がネイビーなんです。」
と答えた。
そして、
「ありがとうございました。」
と言って、波打ち際で待っている彼氏のところに歩いて行った。
そんなこともありつつ、飲み会は夜ふけまで続いた。
明け方近くに少しウトウトしたが、ほぼ徹夜に近い状態で夜明けを迎えた。
海の家でのオールナイトは久しぶりだったが、みんなリフレッシュできたようだ。
もしスケジュールが合えば、また来年も企画したい。

待ち合わせ その2
前に書いた『待ち合わせ』のエピソード。
そのもうひとつの話。
オレが追っ払ったにぃちゃんたちが売店に来た。
ビールを買ってテーブル席で飲み始めた。
そして、
「お兄さんズルいよ。横から割り込んでさぁ。」
とボヤいた。
「しょうがねぇだろう。女の子たちがイヤがってるんだから。」
「それにしても全部連れてくのは反則だよなぁ。」
「反則とか言う前に、全然脈がねぇのわからなかったのか?」
と言うと、
別のにぃちゃんが、
「これからって時に連れてっちゃうからさぁ。」
「ウソつけ。バイトが見てたけどほぼ相手にされてなかったらしいじゃん。ダメだよ空気読まなきゃ。」
「違うんだなぁ。そこを突破してこそ楽しい時間が待っているんだよねぇ。」
と全然めげてない。
とにかくこのテのにぃちゃんは逞しい。
「この後もチャレンジするの?」
と聞くと、
「当然!このままじゃ終われないっしょ。」
とヤル気満々だ。
「そのチャレンジ精神はいいけど、空回りしてるんじゃないの?」
と言うと、
「そんなことはない!あとでかわいいコ連れてくるからさ。」
「今度はお兄さん邪魔しないでよね。」
念を押した。
「さっきのは成り行きでそうなっただけだよ。もう邪魔はしないから頑張ってな。」
と言って、にぃちゃんたちを送り出した。
だが、その後にぃちゃんたちがここに来ることはなかった。
やっぱりダメだったようだ。
毎年、こういうにぃちゃん達は必ずいる。