わがままガール
引き続き3連休の話。
売店でお客さんの対応をしている時、海の家の前に3人の女の子がいた。
何となくこちらを見ているようなので、
「いらっしゃい。海の家はもう決めたの?」
と声をかけてみた。
まだ決めていないと答えた彼女たちは、
「パラソルも借りるので割引きしてもらえます?」
と聞いてきた。
「少しなら割引きしてもいいよ。」
とオレは言った。
そこから料金の交渉が始まった。
簡単に終わると思ったが、まだ高いとかもっと安くとか、彼女たちは結構粘った。
なんとか話はまとまり海の家を利用することになり、水着に着替え海に出て行った。
それから暫くして、その中の1人の女の子がビールを買いに来た。
そして、
「ねぇ、お兄さんあたしのこと覚えてない?」
と言った。
顔を見ても思い出せない。
覚えてないと答えたオレに彼女は、
「寂しいなぁ。今年で 3回目で、 去年もここでお兄さんと話してるのに。」
「えっ、そうなの?そういう事は先に言わなきゃダメだよ。そうすれば話は早く済んだのに。」
そして、
「その時ってどんな会話した?何かやらかしたとかハプニングがあったとか。」
と聞いた。
何か印象に残る事があれば、覚えていたり、思い出すことも多いからだ。
だけど彼女は、
「特に何もなかったよ。お兄さんに写真を撮ってもらったくらいかな。」
と言いながらスマホの写真を見せてくれた。
そこには、2本のパラソルの下で笑っている7人の女の子が写っている。
それを見てちょっと思い出したことがあった。
「もしかしてこのパラソル借りる時、モメなかった?」
「安くしてくれたよ。」
「その時ってパラソル代が7人で割り切れないから安くしろとか、サマーベッドをサービスしろとか。」
「そう!それ!」
と彼女。
やっぱりそうだ。彼女たちだ。
「そう!それ!じゃねぇよ!あれだけ大騒ぎしておいて特に何もなかったじゃねぇだろ!」
「そうだったかなぁ。そんなに大騒ぎしたかなぁ。」
と笑っている。
「とぼけるな!思い出したよ。あの時のねーさんだったのか。」
去年の夏。
その日はかなり忙しく、レンタル小屋にはバイトが1人しかいなかったので、オレも合間をみてはサポートに入っていた。
そこに7人の女の子がパラソルを借りに来た。
そこでさっきの騒ぎがあった。
初めは適当なところで収めようとしたが、彼女たちのわがままはどんどんエスカレートしてくる。
結局、パラソル2本とサマーベッドを割りきれる金額にサービスして納得させた。
夕方になり、そろそろ帰ると言いに来たので、パラソルを片付けに行った。
その時に撮ったのがあの写真だ。
そして、
「お兄さん、ありがとう。また来るね。」
と言って帰って行った。
そんな事を思いだしながら、
「もしかして、海の家の前にいたのはオレが出てくるのを待ってたのか?」
と聞くと、
「うん、お兄さん覚えてると思ってたから。」
と言ったが、さすがに7人は覚えきれない。
「今度来るときは先に言えよな。そうすれば安くしてやるから。」
と言うと、
「わかった。お兄さんも忘れないでよね。絶対覚えててよね。」
と念を押された。
「その時は名前はいいから、わがままな小娘と言ってくれ。そうすればすぐにわかるから。」
彼女は不満そうだったが、こういう時はアダ名をつけるのが一番覚えやすい。
倖田來未風
3連休2日目。
午後4時頃、20過ぎぐらいのかなりポッチャリしている女の子が、
「お兄さ~ん、うきわ貸してくれるぅ~?」
と声をかけてきた。
海の家の閉店時間は5時。
4時半を過ぎれば片付けが始まる。
今からだとあまり時間がないが、
それでもいいと言うので貸してあげた。
彼女は、
「どうもありがと~。」
と言ってうきわを持って行った。
それを隣で見ていたバイトが、
「今のコ、やしろ優がマネする倖田來未みたいなしゃべり方でしたね。」
と言った。
言われてみれば確かに似ている。
なので、うきわを返しにきた時に決めゼリフを言ってもらった。
彼女もノリノリで、
「素晴らスウィートですぅ~!!」
それを聞いたバイトが、
「お姉さんソックリだよ。」
と言うと、
彼女はまたノリノリで、
「どうもありがと~!倖田來未でした~!」
と言いながら帰って行った。
