海の家のバイト
海の家では、どこでもバイトを雇っている。
但し、バイトにとっては海の家にも良し悪しがあるらしい。
オレが手伝っている海の家でも、大学生や高校生が何人もバイトをしていた。
ある日のこと、
オレは、いつものようにレンタル小屋に行きチェックをしていた。
この日の当番は高校生のバイト。
そしていつものようにそのバイトと雑談をしていると、
「隣のアイツが、こっちでバイトしたいって言ってましたよ。」
と言った。
隣のアイツとは、
隣の海の家でバイトしている高校生で、
オレと雑談をしているバイトの同級生のことだ。
オレも何度か話をしたことがある。
「なんで?海の家なんてどこでも一緒だろ?」
と聞くと、
「いや、こっちの方が楽しそう見えるらしいんスよ。」
と言った。
「そうか?お前はどう思う?」
「俺はここのバイト楽しいッスよ。」
と答えた。
それを聞いてオレは、
「多分そうなんだろうな。ここでバイトしてたヤツは毎年申し込んでくるんだよ。お前を誘ったアイツだって去年もここでバイトしてたからな。」
「俺もアイツに声かけてもらってラッキーでした。」
この高校生も、去年ここでバイトしてた同級生に誘われて一緒にやって来た。
「だけど、やってる仕事は同じなんだけどなぁ。」
と言うと、
「でも忙しい土日は、指示出してくれたり、フォローしてくれるじゃないスか。それにお客さんと雑談したり。だから動きやすいし楽しいんスよ。」
そんな会話をしていた。
それからその数日後、
もう夏も終わりに近づいた頃、
隣のバイトと話す機会があった。
オレが、
「こっちでバイトしたいんだって?アイツから聞いたよ。」
と聞くと、
「したいッスよぉ。楽しそうじゃないッスかぁ。」
と即答した。
「なんで?やってる仕事は一緒だぞ。」
「そうなんスけど、アイツらよくおにいさん達と楽しそうに話してるじゃないスかぁ。」
「あれは雑談しながら仕事を教えてたんだよ。雑談のほうが長いけどな。それにただ命令したってお互いつまんねぇだろ。」
「そうッスよね。それとアイツが言ってましたよ。』
「なにを?』
「仕事はしっかりやって、あとは楽しめって言ってくれたって。』
「やる事さえしっかりやって迷惑かけなければ、誰も文句は言わねぇし、自由な時間だってできるだろ?」
「そうなんスけど…。」
「だったら楽しまなきゃ。せっかく海でバイトしてるのに楽しまなきゃ損だろ?」
「ウチにはそういうふうに言ってくれる人がいないんスよ。みんな仕事仕事って感じで。だからアイツらが羨ましいんスよ。来年はお願いしますよ。』
と力説していた。
本当にこっちでバイトしたいようだった。
そして、海の家の最終日。
バイト達は、店長と来年の申し込みの話をしていた。
あの高校生は、隣のアイツも連れて来ると言っていた。
だが、来年は大学生も高校生も、就活や受験の年になる。
何人がバイトに来られるのかわからない。
とりあえず、来年の夏を楽しみにしていよう。
海の家の良さとは?
うちの海の家に入ったニーチャン達。
売店に来るうちに話をするようになった。
その中の1人が、ビールを買い、売店前のテーブル席で飲みながら、
「ここの海は初めてだけどいいねぇ。ゆっくり飲めるよ。」
と言った。
「初めて?やっぱりいつもは湘南辺りが多いのかな?」
と聞くと、
「そうなんだけどさぁ、あっちは疲れるんだよね。」
と言った。
「なんで?」
「シャレた店が多いから話のネタにはいいんだけど、のんびりできないだよ。」
「へぇ~、そうなんだ。」
「そうだよ。ここは座敷があるから横になれるじゃん。あっちはテーブル席だけだからさぁ。」
仲間のニーチャン達は、座敷で寝転んでいる。
遊び疲れた子供を寝かせている家族連れもよく見かける。
「だけど、みんなパラソルの下で横になってんじゃん。」
「暑くて長時間なんか寝てらんないって。」
確かに、暑さ対策の為のパラソルとはいえ、寝込んでいる人がいると、熱中症防止のためにライフセーバーが声をかけて歩いている。
「だけど、湘南の方が女の子いるんじゃないの?」
と聞くと、
「女の子の数だけは多いけど大したことないね。こっちだって十分イケてるよ。」
そして、
「ナンパしたって、テーブル席じゃ疲れるよ。やっぱり一日遊ぶなら、こういう海の家の方がいいよなぁ。」
と言った。
このニーチャン達、
日焼けした体にタトゥーを入れ、女の子目当てだけのように見えるが、
こういう海の家の良さに気づいたようだ。
その後、このニーチャン達はナンパした女の子達と座敷で盛り上がり、
売店の売り上げに大いに貢献してくれた。
