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源氏物語(二帖「帚木」第二章 女性体験談 第二段)

[第二段 左馬頭の体験談(浮気な女の物語)]

 「ところで、また同じころに、通っていました女は、人品も優れ気の働かせ方もまことに嗜みがあると思われるように、素早く歌を詠み、すらすらと書き、掻いつま弾く琴の音色、その腕前や詠みぶりが、みな確かであると、見聞きしておりました。見た目にも無難でございましたので、先程の嫉妬深い女を気の置けない通い所にして、時々隠れて逢っていました間は、格段に気に入っておりました。今の女が亡くなって後は、どうしましょう、かわいそうだとは思いながらも死んでしまったものは仕方がないので、頻繁に通うようになってみますと、少し派手で婀娜っぽく風流めかしていることは、気に入らないところがあったので、頼りにできる女とは思わずに、途絶えがちにばかり通っておりましたら、こっそり心を通じている男がいたらしいのです。
 神無月の時節ごろ、月の美しかった夜に、内裏から退出いたしますに、ある殿上人が来合わせて、わたしの車に同乗していましたので、大納言殿の家へ行って泊まろうとすると、この人が言うことには、『今宵は、わたしを待っているだろう女が、妙に気にかかるよ』と言って、先程の女の家は、なんとしても通らなけれならない道に当たっていたので、荒れた築地塀の崩れから池の水に月の光が映っていて、月でさえ泊まるこの宿をこのまま通り過ぎてしまうのも惜しいというので、降りたのでございました。
 以前から心を交わしていたのでしょうか、この男はとてもそわそわして、中門近くの渡廊の簀子のような所に腰を掛けて、暫く月を見ています。菊は一面にとても色美しく変色しており、風に勢いづいた紅葉が散り乱れているのなど、美しいものだなあと、なるほど思われました。
 懐にあった横笛を取り出して吹き鳴らし、『月影も良い』などと合い間合い間に謡うと、良い音のする和琴を、調子が調えてあったもので、きちんと合奏していたところは、悪くはありませんでした。律の調子は、女性がもの柔らかく掻き鳴らして、御簾の内側から聞こえて来るのも、今風の楽の音なので、清く澄んでいる月にふさわしくなくもありません。その男はひどく感心して、御簾の側に歩み寄って、
 『庭の紅葉を、踏み分けた跡がないですね』などと嫌がらせを言います。菊を手折って、
 『琴の音色も月も素晴らしいお宅ですが
  薄情な方を引き止めることができなかったようですね
 悪いことを言ったかしら』などと言って、『もう一曲、喜んで聞きたいというわたしがいる時に、弾き惜しみなさいますな』などと、ひどく色っぽく言いかけますと、女は、声をとても気取って出して、
 『冷たい木枯らしに合うようなあなたの笛の音を
  引きとどめる術をわたしは持ち合わせていません』
 と色っぽく振る舞い合います。憎らしくなってきたのも知らずに、今度は、筝の琴を盤渉調に調えて、今風に掻き鳴らす爪音は、才能が無いではないが、目を覆いたい気持ちが致しました。ただ時々に言葉を交わす宮仕え人などで、どこまでも色っぽく風流なのは、そうであっても付き合うには興味もありましょう。時々であっても、通い妻として生涯の伴侶と致しますには、頼りなく風流すぎると嫌気がさして、その夜のことに口実をつくって、通うのをやめてしまいました。
 この二つの例を考え合わせますと、若い時の考えでさえも、やはりそのように派手な女の例は、とても不安で頼りなく思われました。今から以後は、いっそうそのようにばかり思わざるを得ません。お気持ちのままに、手折るとこぼれ落ちてしまいそうな萩の露や、拾ったと思うと消えてしまう玉笹の上の霰などのような、しゃれていてか弱く風流なのばかりが、興味深くお思いでしょうが、今はそうであっても、七年余りのうちにお分かりになるでしょう。わたくしめごとき、わたくしごとき卑賤の者の忠告として、色っぽくなよなよとした女性にはお気をつけなさいませ。間違いを起こして、相手の男の愚かな評判までも立ててしまうものです」
 と、忠告する。頭中将は例によってうなずく。源氏の君は少し微笑んで、そういうものだろうとお思いのようである。
 「どちらの話にしても、体裁の悪くみっともない体験談だね」
 と言って、皆でどっと笑い興じられる。(「源氏物語の世界(渋谷栄一著)」より)
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見聞諸家紋―宮内庁書陵部蔵 (1976年)

『女中達紋尽』元禄10年(1697)
『風流替紋づくし』延享年間(1744~48)
『早引紋帳大全』文政7年(1842)
『風流紋帖早見大成』文久年間(1861~64)
『図解いろは紋帖大成』不明(昭和8年復刻版)
『伊呂波引紋帳』明治14年(1881)
『広益紋帖大全』明治24年(1891)
『紋かがみ』明治36年(1903)
『紋の志おり』明治39年(1906)
『紋づくし』大正4年(1915)
『紋之泉』大正15年(1926)
『江戸紋章集』昭和2年(1927)

『紋典』昭和7年(1932)
紋典 (1940年)

『標準紋帖』昭和10年(1935)
図解いろは引標準紋帖

『平安紋鑑』昭和11年(1936)

『日本紋章学』大正15年(1926)
日本紋章学 (1968年)

『綱要 日本紋章学』(普及版)昭和3年(1928)
綱要日本紋章学 (1977年)

『紋章の研究』昭和15年(1940)
紋章の研究 (1940年) (創元選書)

『日本紋章大図鑑』昭和53年(1978)
日本紋章大図鑑―歴史と暮らしの中の紋章5000 (1978年) (図説百科〈no.1〉―歴史と現代をつなぐ再発掘シリーズ〈1〉)

『紋章の再発見』昭和55年(1980)
紋章の再発見 (1980年)

『日本家紋総鑑』平成5年(1993)
現在は絶版となっておりますので、古本屋で探すしかないようです。

『紋帖による紋の違い』平成9年(1997)
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『都道府県別 姓氏家紋大事典』平成16年(2004)
都道府県別 姓氏家紋大事典

『家紋の事典』平成20年(2008)
家紋の事典

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源氏物語(二帖「帚木」第二章 女性体験談 第一段)

 [第一段 女性体験談(左馬頭、嫉妬深い女の物語)]

 「若いころ、まだ下級役人でございました時、愛しいと思う女性がおりました。申し上げましたように、容貌などもたいして優れておりませんでしたので、若いうちの浮気心から、この女性を生涯の伴侶とも思い決めませんで、通い所とは思いながら、物足りなくて、何かと他の女性にかかずらっておりましたところ、大変に嫉妬をいたしましたので、おもしろくなく、本当にこうではなくて、おっとりとしていたらば良いものをと思い思い、あまりにひどく厳しく疑いましたのも煩わしくて、このようなつまらない男に愛想もつかさず、どうしてこう愛しているのだろうと、気の毒に思う時々もございまして、自然と浮気心も収められるというふうでもございました。
 この女の性格は、もともと自分の考えの及ばないことでも、何とかして夫のためにはと、無理算段をし、不得手な方面をも、やはりつまらない女だと見られまいと努力しては、何かにつけて、熱心に世話をし、少しでも意に沿わないことのないようにと思っていたうちに、気の勝った女だと思いましたが、何かと言うことをきくようになって柔らかくなってゆき、美しくない容貌についても、このわたしに嫌われやしまいかと、むやみに思って化粧し、親しくない人に顔を見せたならば、夫の面目が潰れやしまいかと、遠慮し恥じて、身嗜みに気をつけて生活しているうちに、性格も悪いというのではありませんでしたが、ただこの憎らしい性質一つだけは、収まりませんでした。
 その当時に思いましたことには、このようにむやみにわたしに従いおどおどしている女のようだ、何とか懲りるほどの思いをさせて、脅かして、この嫉妬の方面も少しはまあまあになり、性悪な性格も止めさせようと思って、本当に辛いなどと思って別れてしまいそうな態度をとったならば、それほどわたしに連れ添う気持ちがあるならば懲りるだろうと存じまして、わざと薄情で冷淡な態度を見せて、例によって怒って恨み言をいってくる折に、
 『こんなに我が強いなら、どんなに夫婦の宿縁が深くとも、もう二度と逢うまい。最後と思うならば、このようなめちゃくちゃな邪推をするがよい。将来も長く連れ添おうと思うならば、辛いことがあっても、我慢してたいしたことなく思うようになって、このような嫉妬心さえ消えたならば、とても愛しい女と思おう。人並みに出世もし、もう少し一人前になったら、他に並ぶ人がない正妻になるであろう』などと、うまく教えたものよと存じまして、調子に乗って度を過ごして言いますと、少し微笑んで、
 『何かにつけて見栄えがしなく、一人前でないあいだをじっとこらえて、いつかは一人前にもなろうかと待っていることは、まことにゆっくりと待っていられますから、苦にもなりません。辛い浮気心を我慢して、その心がいつになったら直るのだろうかと、当てにならない期待をして年月を重ねていくことは、まことに辛くもありましょうから、お互いに別れるのによいときです』
 と憎らしげに言うので、腹立たしくなって、憎々しげな言葉を興奮して言いますと、女も黙っていられない性格で、指を一本引っ張って噛みついてまいりましたので、大げさに文句をつけて、
 『このような傷まで付いてしまったので、ますます役人生活もできるものでない。軽蔑なさるような官職で、ますます一層どのようにして出世して行けようか。出家しかない身のようだ』などと言い脅して、『それでは、今日という今日がお別れのようだ』と言って、この指を折り曲げて退出しました。
 『あなたとの結婚生活を指折り数えてみますと
  この一つだけがあなたの嫌な点なものか
 恨むことはできますまい』
 などと言いますと、そうは言うものの涙ぐんで、
 『あなたの辛い仕打ちを胸の内に堪えてきましたが
  今は別れる時なのでしょうか』
 などと、言い争いましたが、本当は別れようとは存じませんままに、何日も過ぎるまで便りもやらず、浮かれ歩いていたところ、臨時の祭の調楽で、夜が更けてひどく霙が降る夜、めいめい退出して分かれる所で、思いめぐらすと、やはり自分の家と思える家は他にはなかったのでしたなあ。
 内裏あたりでの宿直は気乗りがしないし、気取った女の家は何となく寒くないだろうか、と存じられましたので、どう思っているだろうかと、様子見がてら、雪をうち払いながら、何となく体裁が悪くきまりも悪く思われるが、いくらなんでも今夜は数日来の恨みも解けるだろう、と存じましたところ、灯火を薄暗く壁の方に向け、柔らかな衣服の厚いのを、大きな伏籠にうち掛けて、引き上げておくべきの几帳の帷子などは引き上げてあって、今夜あたりはと、待っていた様子です。やはりそうであったよと、得意になりましたが、本人はいません。しかるべき女房連中だけが残っていて、『親御様の家に、今晩は行きました』と答えます。
 艶やかな和歌も詠まず、思わせぶりな手紙も書き残さず、もっぱらそっけなく無愛想であったので、拍子抜けした気がして、口やかましく容赦なかったのも、自分を嫌になってくれ、と思う気持ちがあったからだろうかと、そのようには存じられなかったのですが、おもしろくないままそう思ったのですが、着るべき物が、いつもより念を入れた色合いや、仕立て方がとても素晴らしくて、やはり離別した後までも、気を配って世話してくれていたのでした。
 そうは言っても、すっかり愛想をつかすようなことはあるまいと存じまして、いろいろと言ってみましたが、別れるでもなくと、探し出させようと行方を晦ますのでもなく、きまり悪くないように返事をしいし、ただ、『以前のような心のままでは、とても我慢できません。改心して落ち着くならば、また一緒に暮らしましょう』などと言いましたが、そうは言っても思い切れまいと存じましたので、少し懲らしめようという気持ちから、『そのように改めよう』とも言わず、ひどく強情を張って見せていたところ、とてもひどく思い嘆いて、亡くなってしまいましたので、冗談もほどほどにと存じられました。
 一途に生涯頼みとするような女性としては、あの程度で確かに良いと思い出さずにはいられません。ちょっとした風流事でも実生活上の大事でも、相談してもしがいがなくはなく、龍田姫と言っても不似合いでなく、織姫の腕前にも劣らないその方面の技術をもっていて、行き届いていたのでした」
 と言って、とてもしみじみと思い出していた。中将が、
 「その織姫の技量はひとまずおいても、永い夫婦の契りだけにはあやかりたいものだったね。なるほど、その龍田姫の錦の染色の腕前には、誰も及ぶ者はいないだろうね。ちょっとした花や紅葉といっても、季節の色合いが相応しくなく、はっきりとしていないのは、何の見映えもなく、台なしになってしまうものだ。そうだからこそ、難しいものだと決定しかねるのですな」
 と、話をはずまされる。(「源氏物語の世界(渋谷栄一著)」より)
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家紋の変形パターン5

●頭合わせ・尻合わせ 「頭合わせ」は、同じ紋が二つ以上で、紋の頭にあたる部分を合わせたもの。「尻合わせ」 はその逆。

●ほかの紋との合成 異なる紋同土を合成したもの。縁がある紋同士が合成される場合と、結婚などにより両家の紋が合成される場合がある。総じて「複紋」と呼ぶ。江戸時代には恋人同士が互いの家紋を合成することが流行り、これをとくに「比翼紋」と呼んだ。

●分割・省略 「分割」は、一つの紋を複数に分割したもの。「省略」は、オリジナルの一部を取り出したもの。

以上のように、さまざまな変形パターンがある。このおかげで、オリジナルの家紋が尚武的になったり女性的になったり、あるいはソフトになったりユニークになったりしている。家紋の豊かなデザイン性は、こうした変化によるといえるだろう。

(引用:「家紋から日本の歴史を探る」(株)インデックス発行)


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