マウリツィオ・ベニーニ指揮東京フィルの演奏が評判通り素晴らしかった。
よく揃った弦の繊細な表情と心に刺さる音、金管のまとまり。木管の歌。細やかな演奏でありながら、ここぞというクライマックスでは、目の詰まった芯の強い音が響く。
これまで聴こえてこなかったフレーズがいたるところに表れる。歌唱との一体感はバランスがとれ、理想的だった。
作品の中核を占めるスカルピア役が、ニカラズ・ラグヴィラーヴァから青山 貴に代わったことは残念だった。青山も健闘するが、準備期間も少ないためか役になりきれず、主役とも言うべき悪役の存在感が薄れてしまった。
結果的にカヴァラドッシとトスカの二重唱がハイライトとなる第3幕が最も充実していた。
トスカのジョイス・エル=コーリーとカヴァラドッシのテオドール・イリンカイは、安定はしているが、飛びぬけた個性はあまり感じられない。脇を固めるアンジェロッティの妻屋秀和、堂守の志村文彦は好演。
第1幕フィナーレのテ・デウムの場面では新国立劇場が誇るアントネッロ・マダウ=ディアツの豪華絢爛な舞台を見るのは二度目だが、やはり圧巻。新国立劇場合唱団も引き締まった合唱を聴かせた。
19日(金)19時、21日(日)14時からも公演がある。
スタッフ
【指 揮】マウリツィオ・ベニーニ
【演 出】アントネッロ・マダウ=ディアツ
【美 術】川口直次
【衣 裳】ピエール・ルチアーノ・カヴァッロッティ
【照 明】奥畑康夫
【再演演出】田口道子
【舞台監督】菅原多敢弘
指揮
マウリツィオ・ベニーニ
演出
アントネッロ・マダウ=ディアツ
キャスト
【トスカ】ジョイス・エル=コーリー
【カヴァラドッシ】テオドール・イリンカイ
【スカルピア】青山 貴
【アンジェロッティ】妻屋秀和
【スポレッタ】糸賀修平
【シャルローネ】大塚博章
【堂守】志村文彦
【看守】龍進一郎
【羊飼い】前川依子
【合 唱】新国立劇場合唱団
【合唱指揮】三澤洋史
【児童合唱】TOKYO FM少年合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団