(5 月28日・サントリーホール)
フランス放送フィルハーモニー管弦楽団が、今年9月に音楽監督に就任するヤープ・ヴァン・ズヴェーデンとともに13年ぶりに来日した。
私は聴くのは初めてだ。
最初はドビュッシー:牧神の午後への前奏曲。フルートの柔らかく密やかな佇まい、オーボエの色彩感、ハープのアルペッジョの柔らかく黄金色に輝く音、ホルンの1番と3番の同じくソフトで温かな対話が印象的で、冒頭からフランス放送フィルの特長と魅力が存分に示された。コーダのホルンとヴァイオリンに寄り添うアンティーク・シンバル(オーケストラの下手に2人の奏者が立って演奏)は聞こえるかどうかという弱音だが、その透明な響きが幻想的な世界を醸し出した。
ラフマニノフピアノ協奏曲第3番 は、ロシアの大地を思わせる雄大さと濃厚なロマンティシズムに満ちた作品だが、藤田真央の演奏は、瑞々しい表情がある一方で、大地を揺るがすような重厚さを打ち出すまでは至らず、ピアノはオーケストラの強奏に埋もれがちであった。
ただ、第1楽章の長大なカデンツァは、気迫のこもった超絶的な技巧が冴えわたり、大きな山場を築いた。
第2楽章「間奏曲」は、オーケストラの滑らかで分厚い弦が豪華な音を生み出す。藤田もロマンティックに歌い、中間部はピッツィカートをバックに繰り出される速いパッセージが華麗で、オーケストラとの一体感もあった。
後半の開始を告げるフランス放送フィルのオーボエとホルンのソロが見事であった。
アタッカで入った第3楽章はピアノとオーケストラが躍動して進み、シンコペーションの主題でも藤田がしっかり攻めていく。抒情的な第2主題は意外にあっさりと弾いた。もう少し思いを込めてもいいようにも思えた。
展開部のメーノ・モッソ、レントでのピアノは夢見るようで惹きつけられた。
コーダは藤田とズヴェーデンフランス放送フィルが白熱した演奏を繰り広げた。ここでもオーケストラの強奏にピアノは押され気味だったが、終わったとたん、多くの藤田ファンが詰めかけた会場から大喝采が起こった。
アンコールは、ラフマニノフ(藤田真央編曲)『ここはすばらしい場所』Op. 21-7
情緒に流れず、さらりとした編曲であり、演奏であった。
後半の最初は、ドビュッシー「交響詩《海》」。ズヴェーデンはオーケストラを存分に演奏させる。楽員が全力で演奏するため、分厚く密度の濃い音となり、聴き手に迫ってくる。昨年ズヴェーデンが2012年から2024年まで音楽監督を務めた香港フィルハーモニー管弦楽団の来日公演を聴いた時と相通じる響きである。
牧神で聴いたフランス的な味わいは、もちろんあるが、柔軟で、機能的な放送オーケストラらしい特長があることを印象付けた。
最後のラヴェル《ラ・ヴァルス》は、ハープの華麗なグリサンド、フルートの輝きなど、フランス的な色彩とともに、濃厚で中身のぎっしりと詰まった音を堪能した。ただ、ズヴェーデンの指揮は押し出しが強く、この作品の洒脱さや幻想性がやや後退し、圧倒的なエネルギーとなって迫ってきた。
アンコールはエルガー:エニグマ変奏曲より第9変奏「ニムロッド」。フランスのオーケストラによる英国音楽はめずらしいが、フランス放送フィルの磨き抜かれた重厚な弦を堪能できた。













