鈴木雅明 バッハ・コレギウム・ジャパン コラールカンタータ300年II | ベイのコンサート日記

ベイのコンサート日記

音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

(6月13日・調布文化会館 たづくり くすのきホール)

ルターが賛美歌集を出版した“賛美歌制定の年“からちょうど500周年、さらには、バッハがライプツィヒに就職して “コラールカンタータ“ と称される特徴的なカンタータ群を作曲してから300周年となる2024年を記念。2年間をかけてスタートする一連の「コラールカンタータプロジェクト」の第2回目。

 

コラールカンタータとは、讃美歌とオペラのレチタティーヴォやアリアを融合したもの。冒頭と最後はコラール(讃美歌)が置かれ、中間は自由詩のレチタティーヴォやアリアが歌われる。それらにはコラールの詩やメロディーが引用される。各曲とも20分前後とコンパクトながら個性的な作品。

 

当初から曲順が変更になり、下記の順で演奏された。
カンタータ第93番《愛するみ神にすべてを委ね》BWV 93

カンタータ第94番《私はこの世に何を求めよう》BWV 94

カンタータ第101番《私たちから取り去ってください、主よ、まことの神よ》BWV 101

カンタータ第10番《我が魂は主を崇め》BWV 10

 

この4曲はいずれも1724年の作曲。この年バッハは異常なほどのスピードでコラールカンタータを作曲。ほぼ週に1曲を作曲し初演するというハードワークを1年間続け40曲ものコラールカンタータを完成させた。

 

ソリストは合唱パートも兼務する。合唱は各パート2名、計8名という小編成。

カンタータ第93番《愛するみ神にすべてを委ね》BWV 93は神への信頼がシンプルに歌われていくが、第1曲のコラールはソプラノとアルト、テノールとアルト、合唱4声と歌い継がれていく複雑な曲で充実していた。

 

カンタータ第94番《私はこの世に何を求めよう》BWV 94はフルートが大活躍する曲。フラウト・トラヴェルソ鶴田洋子が第1曲のコラールでは合唱とともにリズミカルに吹き続ける。第2曲はバスのアリア。上村文乃のバロック・チェロがバスの加耒徹の技巧的な歌に負けじと、通奏低音を鮮やかに弾く。第4曲のアルトの歌うアリアでも鶴田洋子が美しくオブリガートを吹いた。

 

後半の最初、カンタータ第101番《私たちから取り去ってください、主よ、まことの神よ》BWV 101の第1曲のコラールは8分弱262小節もある規模の大きな曲。歌詞も戦争や飢饉、疫病、火災や大きな苦しみから守りたまえと歌う緊迫感のある内容。楽器も2本のオーボエとターユ、コルネット(ツィンク)と3本のトロンボーンも入る規模の大きな曲。コルネット(ツィンク)の形と音はユニーク。

 

第2曲テノールのアリアでは再びフラウト・トラヴェルソの鶴田洋子が大活躍。第3曲のソプラノのレチタティーヴォでは、上村文乃のソロが鮮やか。第4曲はテンポがヴィヴァーチェ、アンダンテと次々に変わり、転調も激しいテクニカルな作品。バスの加耒徹が見事なソロ。第6曲はフラウト・トラヴェルソとオーボエ・ダカッチャのソロを伴い、アルト:久保法之とソプラノ:松井亜希が素晴らしい二重唱を聴かせた。

 

カンタータ第10番《我が魂は主を崇め》BWV 10は1724年7月02日、マリアのエリザベト訪問の祝日のカンタータ。当初のプログラムでは、この曲が最初に予定されていた。全体に祝福の雰囲気にあふれた活気のあるカンタータ。

第4曲バスのアリアでは上村文乃が動きの速い通奏低音を見事に弾く。第5曲アルト:久保法之とテノール:櫻田 亮の二重唱ではコルネット(ツィンク)上野訓子のソロが味わい深い。最後の第7曲は三位一体を短く賛美して終わる。

 

バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏は、いつもながら合唱もソロも重唱も正確な音程で歌われ、古楽器演奏もまとまりがある。毎週のように新作を演奏したバッハの時代にはここまで洗練されてはいなかったのではないだろうか。

 

今後のスケジュールは、第3回が9月15日(日)15時鈴木雅明指揮、第4回が11月28日(木)19時鈴木優人指揮、いずれも今日と同じ調布文化会館 たづくり くすのきホール。

第5回は2025年3月16日(日)15時鈴木優人指揮、東京オペラシティコンサートホール。

詳しくは、下記をご覧ください。

Bach Collegium Japan 2024-2025シーズン ラインナップ発表!