ブルックナー《ミサ曲第3番》 生誕200年に寄せて 東京春祭 合唱の芸術シリーズ vol.11 | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。


(4月13日・東京文化会館 大ホール)

ワーグナー:ジークフリート牧歌

都響は8型。コンサートマスターは山本友重ローター・ケーニヒスの指揮は誠実、実直。頂点に向かってかっちりと進めていく。都響のホルンと木管が良かった。

 

ブルックナー:ミサ曲 第3番 ヘ短調 WAB28

テ・デウムは交響曲第9番の第4楽章として聴く機会は多いが、ブルックナーの宗教曲の中で最も規模の大きなこの作品を初めて聴く。

 

印象としては、ブルックナーの交響曲に合唱が合体したよう。オーケストラの印象は交響曲そのもので、力強い行進、突然の休止、アダージョ楽章のような聖なる旋律が登場する。

 

都響東京オペラシンガーズの合唱が引き締まり、力強く、ふたつが一体となり宇宙的な世界が広がる。ケーニヒスの指揮はがっちりとして明解。

 

ソリストはソプラノのハンナ=エリーザベト・ミュラーが芯のしっかりとした強靭な声で素晴らしかった。またバスのアイン・アンガーも手堅い。

メゾ・ソプラノのオッカ・フォン・デア・ダメラウは声が出ておらず、月曜日のリサイタルが心配になるほど。テノールのヴィンセント・ヴォルフシュタイナーもワーグナー・ガラでは絶好調だったが、今日は不調。

 

全曲の中では長大な第3曲「クレド」がキリスト受難のドラマも交えて劇的で聴きごたえがあった。コーダの対位法は交響曲の終結部を思わせる。

第1曲「キリエ」のソプラノとバスの応答が美しい。第2曲「グローリア」の『唯一の御子である主、イエス・キリストよ』のクライマックスは交響曲と合唱が合体した巨大なモニュメントのようだった。

 

コーダのフーガと「アーメン!」も衝撃的。

第5曲「ベネディクトゥス」の都響の弦が静謐、フルート(柳原佑介)も天国的だった。

 

ソリストが万全だったら、合唱の芸術シリーズの中でも傑出したコンサートになったのだが、歌手の体調はその場になってみなければわからない。

ともあれ、めったに演奏機会がない作品を、優れたオーケストラと合唱で聴けた喜びは大きかった。

 

出演

指揮:ローター・ケーニヒス

ソプラノ:ハンナ=エリーザベト・ミュラー

メゾ・ソプラノ:オッカ・フォン・デア・ダメラウ

テノール:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー

バス:アイン・アンガー

管弦楽:東京都交響楽団

合唱:東京オペラシンガーズ

合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩

 

曲目

ワーグナー:ジークフリート牧歌

ブルックナー:ミサ曲 第3番 ヘ短調 WAB28