(4月12日・サントリーホール)
下野竜也日本フィルのシューベルト「交響曲第3番」は、リズミカルで流れもよく、がっしりとしている。コンサートマスターは木野雅之、12型対向配置、コントラバスは下手。
第2楽章ののんびりとした主題や、第3楽章トリオのひなびた雰囲気も味わいがある。
全体にもう少し優雅さや音の美しさが出るとさらにいいのだが、下野竜也の音ともいうべき、音がぶつかり合うような濁りが気になる。
後半のブルックナー「交響曲第3番」は先週4月3日の大野和士都響と同じく、第2稿が演奏された。演奏機会がすくない第2稿が続くのは珍しい。
日本フィルは16型に拡大。
第1楽章は大野都響の力で押す演奏と較べてずっと細やかで共感を覚えた。
オッタビアーノ・クリストーフォリのトランペットもバランス良く吹かれる。ただ、ここでも強奏での音の濁りは気になる。
第2楽章は3つの主題がA1-B1-C1-B2-B3-C2-A2-コーダの順で登場する。
第2主題B1のヴィオラはもう少し厚み奥行きもほしい。第3主題C1の弦はきれいだが、もっとピュアな響きだと更に良いかも。後半は盛り上がった。第2主題B2のヴィオラ、チェロ、ヴァイオリンはもうひとつ。B3、C2は盛り上がるが響きが濁る。ピッツィカートに乗せたA2はもっと高みに昇ってほしい。クライマックスではやはり音が濁る。コーダの静謐さがとてもよかった。
第3楽章スケルツォは都響のパワーが勝っていた。トリオは美しい。スケルツォの再現のあとの第2稿だけにあるコーダは力強い。
第4楽章、提示部の第2主題のヴァイオリンが美しい。第3主題は金管がよく鳴る。ホルンのコラールのハーモニー、応えるフルートも美しい。
展開部の第1主題も盛り上がる。
再現部は第1、第2、第3主題がすべて再現される(第3稿は第1主題を省略、第2、第3主題は短縮)。パワーをアップして快調に進む。
第1主題に始まるコーダは雄壮。休止のあとの一瞬の第1楽章第2主題の回想がとても美しい。
直ちに金管でクライマックスに入って行き、全管弦楽が第1楽章第1主題を豪壮に咆哮する。パワーでは大野都響が勝るが、下野日本フィルはこれまでのバランスの良い演奏のコーダにふさわしい格調の高さがあった。
力で押した大野和士都響よりも、下野竜也日本フィルの演奏に共感するところが多かった。
客席からはブラヴォも多く飛び、下野竜也のソロ・カーテンコールとなった。