カンブルラン 読響 金川真弓 マルティヌー、バルトーク、メシアン(4月5日・サントリーホール) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

読響第637回定期演奏会

カンブルランが振ると、読響の音は彼が常任だったころに戻る。カラフルな音、しっかりとしたアウフタクトから入り、深く音楽をつかむと、今度は常に躍動するリズムで推進していく。

 

マルティヌー「リディツェへの追悼」は、1943年アメリカ作曲家同盟が第二次大戦の事件を表現する作品を18人の作曲家に委嘱したもののひとつ。アメリカへ亡命していたチェコの作曲家マルティヌーが1942年故国の小村で起きたドイツ軍による報復の虐殺事件を追悼したもの。コラールのような重々しい旋律と強奏のカタストロフィー、ベートーヴェンの運命動機による勝利が示され静かに終わる。色彩と重みのある演奏。カンブルランの指揮は一味他の指揮者とは異なるものがある。

 

バルトーク 「ヴァイオリン協奏曲第2番」金川真弓の演奏が実によく練られていて、作品を完全に自己のものとしており、その美音とともに鮮やかな演奏を披露した。

バルトークの作品も伝統的な様式と民族色の融合のバランスが良く洗練されており、金川のアプローチにぴったり。

 

第1楽章コーダ前の四部音(半音の半分)も正確。第2楽章の主題と7つの変奏の全体的な印象は、バルトークらしい「夜の音楽」。ハープと奏する第2変奏ウン・ポコ・トランクイロ、トリルが頻出(ひんしゅつ)する第4変奏レントが鮮やか。第7変奏の細やかな動きも素晴らしかった。

 

第3楽章も生き生きとした演奏。野性的な推移部が興奮を呼び起こす。コーダも名人芸で華やかに終えた。カンブルラン読響との息もぴったりと合っていた。

 

後半はカンブルラン得意のメシアン。初期の傑作「キリストの昇天」(1933年、作曲家24歳の時の作品)を輝かしい演奏で聴かせた。

第1楽章「父なる神に栄光を求めるキリストの威厳」では読響の金管が大健闘。

 

第2楽章「御国(おくに)を待ち望む魂の静謐なアレルヤ」は木管の旋律のやりとりが繰り返される。長調でも短調でもない調性が不思議な世界を形作る。

 

第3楽章「トランペットのアレルヤ、シンバルのアレルヤ」はトランペットのファンファーレが鳴り響き、短いフレーズをスピーディーに展開していく。カンブルランの指揮が色彩豊かな響きを生む。

 

第4楽章「父なる神の元に昇るキリストの祈り」は天上へ向かっていくような息の長い、ゆったりとしたフレーズが弱音器をつけた弦楽器のみで弾かれる。読響の弦も透明感があった。音程が高くなるにつれ、神聖さも高まる。清められていく世界が永遠に続くようだった。

 

写真:カンブルラン©sylvaincambreling.com