完売公演。藤田真央がブラームスに挑戦。「ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品83」は安定した演奏。スケールが大きく、音もしっかりとした芯と骨格があり、ブラームスにふさわしい。抒情性、歌心、モーツァルトで聴かせる繊細さなども備わっている。読響は12-10-8-6-5という編成。14型ではない点は、藤田とのきめ細かな対話を意図したのだろうか。
そのヴァイグレ指揮読響は引き締まった演奏。第3楽章ではチェロ首席の遠藤真理が柔らかく艶やかなソロを披露した。演奏後カーテンコールで、聴衆の拍手を受けられるよう遠藤をステージ正面に誘いだした藤田のマナーが素敵だった。
藤田のアンコールは、ブラームス「8つの小品Op. 76」より第2曲カプリッチョ。ブラームスのユーモアのセンスが出ているような、軽快だがどこか皮肉も感じる曲。
シューマン「交響曲第1番 変ロ長調 作品38《春》」は14型。ドイツ音楽を指揮するヴァイグレの指揮は確信と自信に満ちている。
リズムに切れがあり、木管の柔らかな響き、歌心も存分に生かされる。
第3楽章のスケルツォの中間部の伸びやかな歌いまわしも味わいがあった。
全体に活気に満ち溢れ、春を待つ期待に満ちた演奏だった。
今日のコンサートは読響プレミアの録画も行われていたので、いずれ放送されるだろう。
終演後のロビーでは能登半島地震の募金が行われていたので、ささやかだが寄付をした。私にとってコンサート会場での募金は読響が初。募金の管理が大変かと思うけれど、他のオーケストラや団体でも積極的に行ってほしい。
セバスティアン・ヴァイグレ:©読響
藤田真央:©Dovile Sermokas