ウィーン・リング・アンサンブル32回目の来日ツアー。メンバーは下記のとおり。ベテランと若手で構成される。
ライナー・キュッヒル (ヴァイオリン) Rainer Küchl, Violin
ダニエル・フロシャウアー (ヴァイオリン) Daniel Froschauer, Violin
ハインリヒ・コル (ヴィオラ) Heinrich Koll, Viola
シュテファン・ガルトマイヤー (チェロ) Stefan Gartmayer, Cello
ミヒャエル・ブラデラー (コントラバス) Michael Bladerer, Contrabass
カール=ハインツ・シュッツ (フルート) Karl-Heinz Schütz, Flute
アレックス・ラドシュテッター (クラリネット) Alex Ladstätter, Clarinet
ヨハン・ヒントラー (クラリネット) Johann Hindler, Clarinet
ロナルド・ヤネシッツ (ホルン) Ronald Janezic, Horn
ウィーン・フィルの事務局長でもあるブラデラーが場内マイクでドイツ語と日本語の新年のあいさつをした後、場内アナウンスも務めた。『サントリーホールは堅固な耐震構造となっていますのでご安心ください』という日本語には場内から笑い声が起こった。休憩の終わりには『早めにお席にお着きください』まで話していた。
曲目は以下。
ニコライ:オペラ「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
J.シュトラウス2世:ワルツ「南国のばら」
J.シュトラウス2世:オペレッタ「こうもり」から カドリーユ
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ「とんぼ」
レハール:ワルツ「金と銀」
J.シュトラウス2世:ポルカ・シュネル「狩り」
休憩
プッチーニ・メドレー(没後100年記念)
ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「水彩画」
J.シュトラウス2世:シャンパン・ポルカ(音楽の冗談)
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル「大急ぎで」
ランナー:マリアのワルツ
J.シュトラウス2世:オペラ「騎士パズマン」から チャールダーシュ(編曲:ミヒャエル・ロート)
アンサンブルはミニ・ウィーン・フィルとも言うべき、柔らかく溶け合う響きが常に保たれる。シュトラウスやレハール、ランナーのワルツやポルカのリズムは楽員の身体にしみ込んでおり、その間の取り方は他のオーケストラや団体では再現できないのでは、と思う。
ライナー・キュッヒルが全体を引っ張る形で旋律を弾いていくが、音が鋭角的で際立つ。個人的にはもう少しソフトな音のほうがよりウィーン的にも思える。
フルートのカール=ハインツ・シュッツがキュッヒルに次いでメロディーラインを取ることも多く、爽やかな音が心地よい。せっかくチェロや、クラリネットやホルンが入っているので、もう少し編曲に工夫があってもよいのでは。
ホールの聴衆のマナーがよく、みなさん静かに聴いているが、せっかく華やかなコンサートなので、司会が入るとか、もう少し何か盛り上げる演出があってもいいのでは、と思っていたら、J.シュトラウス2世:ポルカ・シュネル「狩り」が終わると同時に、シュッツがパーティークラッカーのような銃を撃ち放つと紙吹雪が大きく舞い上がり、お客様も大喜びで拍手喝采、ニューイヤー・コンサートらしくなった。
前半の曲の中では、J.シュトラウス2世:ワルツ「南国のばら」 の堂々とした演奏、J.シュトラウス2世:オペレッタ「こうもり」から カドリーユの、各場面が目に浮かぶような乗りの良い4つのダンス音楽の楽しさ。レハール:ワルツ「金と銀」の立派なという形容がぴったりの格調高い演奏が特に素晴らしかった。「金と銀」は、チェロ、ヴィオラ、クラリネットが旋律を取るところがあり、変化に富んでいた。
後半最初は没後100年のプッチーニ・メドレー。《ラ・ボエーム》から「私が街を歩くとき」、《トスカ》から「妙なる調和」、歌劇「ジャンニ・スキッキ」から「私のお父さん」、《蝶々夫人》の導入と「愛の二重唱」などの名旋律が演奏された。三拍子の曲が多かったような気がする。
後半では、ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「水彩画」が印象に残った。Jシュトラウス2世とは異なる感性の鋭さが感じられた。
J.シュトラウス2世:シャンパン・ポルカ(音楽の冗談)では、シャンパンの栓を抜く音を再現する小道具が使われ、ホルンのヤネシッツがコルク栓をほうり投げると、キュッヒルが片手で見事にキャッチ。場内の喝采に得意気な表情で応えるキュッヒルの表情がかわいらしい。
最後はJ.シュトラウス2世:オペラ「騎士パズマン」から チャールダーシュで盛り上げ、アンコールは3曲。
J.シュトラウス2世:ポルカ・シュネル「浮気心」
J.シュトラウス2世:美しく青きドナウ
J.シュトラウス1世:ラデツキー行進曲
「美しく青きドナウ」はホルンの導入から、5つのワルツ、後奏まで、コンパクトだが、これぞウィーン・フィルというすべての楽器が絶妙に溶け合う音を堪能した。