シルヴァン・カンブルラン 読響 シェーンベルク「グレの歌」(3月14日、サントリーホール)  | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

指揮=シルヴァン・カンブルラン
管弦楽:読売日本交響楽団
テノール=ロバート・ディーン・スミス(ヴァルデマル)

ソプラノ=レイチェル・ニコルズ(トーヴェ)

メゾ・ソプラノ=クラウディア・マーンケ(森鳩)
テノール=ユルゲン・ザッヒャー(道化師クラウス)

バリトン=ディートリヒ・ヘンシェル(農夫・語り)

合唱=新国立劇場合唱団(合唱指揮=三澤 洋史)

 

 カンブルランの読響常任指揮者の任期最後の公演シリーズの2回目はシェーンベルクの大作「グレの歌」。今年は大野和士都響、ジョナサン・ノット東響も演奏する。

 

 読響は18-16-14-12-10という巨大編成。金管、木管などの数もすごく、フルート8(ピッコロ持ち替え)、ホルン10(ワーグナーテューバ持ち替え)、トランペット6、トロンボーン7、ハープ4あたりが目に付く。打楽器も11種。総勢130人近いのではないだろうか。

 

 しかし、この大編成オーケストラがカンブルランの指揮のもと、一糸乱れぬ集中を見せた。緻密なカンブルランの指揮に100%応えた。まさにカンブルランの花道を飾るにふさわしい名演だった。

 

 ソリストも文句なし。特に森鳩のメゾ・ソプラノ、クラウディア・マーンケが抜きんでた。豊かで表現力も深い。農夫・語りのバリトン、ディートリヒ・ヘンシェルも風格があり、特に最後の語り(「アカザ氏にハタザオ夫人よ」)はネイティブならではの自然さと演技力が光っていた。

 

 トーヴェのソプラノ、レイチェル・ニコルズはトーヴェの最後の歌“あなたは私に愛の眼差しを向け”の最後、「私たちは幸福な接吻のうちに死に果てて、一つの微笑になって墓に入ってゆくのですから」で絶唱を聞かせた。

 

 ヴァルデマルのテノール、ロバート・ディーン・スミスは、出番も多く、常にオーケストラのトゥッティにさらされるため、声が打ち消される気の毒な面もあった。ただそれを割り引いても、ややパワーに欠けた。

 道化師クラウスのテノール、ユルゲン・ザッヒャーは一度だけの出番“奇妙な水中の鳥はウナギ”でデモーニッシュだが少し滑稽な味を良く出していた。

 

 新国立劇場合唱団は男声75人女声43人前後の陣容。男声合唱による“雄鳥が頭をもたげ今にも朝を告げようとしている”で半音階和声の弱音による美しいコーラスを聞かせた。

 

 最も感動的に盛り上がったのは最後に初めて登場する混声合唱と大オーケストラの総奏による“見よ太陽を!”の大団円。ハ長調、8声による太陽賛歌はすべての恩讐を太陽の光で包み込み解き放った。

カンブルランは読響との別れを惜しむかのように、最後の音を長く保った。