マルティン・ジークハルト 竹澤恭子 新日本フィル | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。


922日、すみだトリフォニーホール)

 予定されていたルイ・ラングレが肺炎のため、来日ができなくなり、マルティン・ジークハルトが代役として登場。プログラムは予定通り演奏された。まずは、ジークハルトの見事な代役に拍手を贈りたい。

 シューマンの序曲「メッシーナの花嫁」は、シラーの原作の悲劇のオペラ化をシューマンが断念。序曲だけが残ったもの。ジークハルトは、ロマン派の作品らしい重々しい響きを新日本フィルから引き出した。

 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、竹澤恭子がソリスト。名手にしては珍しく第1楽章冒頭やフラジオレットの一部にわずかな音程の乱れがあったが、第2主題は美しく艶やかに歌う。その後は持ち直し、いつも通り力強く充実した演奏で聴き手を惹きつけた。

 

 後半のドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」は、新日本フィルの木管の名手たちのソロが良かった。特にオーボエ首席の金子亜未が素晴らしい。

 スクリャービンの交響曲第4番「法悦の詩」は、ホルン8本、トランペット5本、ハープ2台にオルガンも加わる大編成。「牧神」の時から全員が舞台に上がり壮観。ジークハルトは、この難曲をよくまとめあげていた。欲を言えば、コーダ前の最大のクライマックスはもうひとつアンサンブルの精度がほしいが、急な代役の中、これ以上を求めるのは酷というものだろう。新日本フィルの楽員が一度となくジークハルトを讃える光景は、難しい状況の中、指揮を引き受けてくれたマエストロへの感謝の気持ちが込められていたと思う。 

写真:(c)竹澤恭子 Tetsuro Takai