アジアユースオーケストラ 2日目 | ベイのコンサート日記

ベイのコンサート日記

音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

830日 東京文化会館)



 同じオーケストラでも指揮者によって大きく変わることを1日にして知る。昨日ジェームズ・ジャッドと忘れられない演奏を聴かせてくれたアジアユースオーケストラを、今日は芸術監督のリチャード・パンチャスが指揮したが、正直面白くない演奏になってしまった。

 パンチャスは1212(イチニイチニ)という単純なリズムを刻むような指揮ぶりが多く、フレーズを示すことや、流れを作るようなジェスチャーが少ない。そのため音楽が単調で、流れが悪く重くなる。速いテンポになると、せわしなく小刻みに腕と手を動かすため、音楽が緊張して縮こまり、固くなる。

 コープランドのバレエ組曲「アパラチアの春」は、ゆったりとした部分も多い曲だが、流れがとまったように弛緩してしまう。


 後半のホルストの組曲「惑星」も、指揮しだいでいかようにもスケールの大きい演奏になりうるのだが、広々とした宇宙を感じさせるようなことはなく、管弦楽が鳴り響くだけという印象。アジアユースオーケストラは、ヴィオラの響きがよいこと、コンサートマスターのソロ、ホルンの健闘、木管のうまさ、ユースオーケストラにしては弱音をよくコントロールできている、といった美点は多々感じられたのが救いだった。AYO女声コーラスは、舞台裏から合唱を響かせたが、音程の悪さは残念だった。


アンコールに「スターウォーズのテーマ」、恒例のエルガーの「ニムロッド」が演奏された。「ニムロッド」はオーケストラメンバーが最初に会う時の練習曲。パンチャスは、いつもなら若者たちの涙を誘うように、「このメンバーで会うことは二度とない」と紹介するのだが、fbやインスタグラム、ツィッターなどSNSが広がっている現代では、「明日どこかの店で一緒にピザを食べているかもしれないね」と、一言ユーモアを付け加えた。
 国別では、台湾が一番多く28人。次いで中国本土25人、香港14人、日本12人が参加人数の多い順。


3週間の厳しい練習のあと、3週間のツアー、16回のコンサート。ホテルのルームメイトは滞在地ごとに変え、交流を図るとのこと。17歳から20歳前後の若者たちにとって忘れられない夏になったことだろう。

写真:(c)アジアユースオーケストラ