海外ホール体験 第3回「ムジークハレ」(ハンブルク) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

ベルリンから空路ハンブルクへ。北海に近い気候のためか雲ばかりで地上は見えない。

ホテルから歩いて「ブラームス広場」にある「ムジークハレ」に向かった。「ムジークハレ」(英語でミュージックホール。2005年に寄贈者の名前を復活「ライスハレ」と改名)はギュンター・ヴァント&北ドイツ放送交響楽団やハンブルク・フィルの本拠地で、1908年に完成している。くすんだ色合いの建物で、シューマンの自伝映画に出てきそうな古色蒼然とした雰囲気を持っている。大ホールは2023席。シューボックスよりやや四角に近い会場で、回廊のようになった23階の客席がある。正面には巨大なオルガンが設置され、白と金色がつかわれた舞台装飾がある舞台はマリア・カラスのライブビデオや、101ストリングスのアルバムジャケットなどでも見ることができる。天井は採光できるようにするためか格子状の曇りガラスになっている。

座席は1階前方右寄り。長い木のベンチのような背に個々に跳ね上がる座席がついている。座り心地はあまりよくない。

会場は満席。日本人親子の姿も見かけたが、現地駐在員の家族だろうか。


ポゴレリチのプログラムはオール・モーツァルト。当時の彼は現在のように坊主頭ではなく、デビューしたころの豊かな髪をもった青年だった。ステージは高く1階席からやや見上げるように聴くそのピアノの音は強烈だった。強い打鍵から繰り出される音が上から降ってくる。時差ボケが残った状態にはハンマーで殴られているような、鑿(のみ)で頭をえぐられているような衝撃があった。

これがヨーロッパのホール音か、というショックをこのとき初めて受けた。マドリードやベルリンの歌劇場とは明らかに違うコンサートホールの音。ドイツ的ともいうべき高音のきつい響き。ポゴレリチの打鍵の強さもあっただろうが、最近サントリーホールで聴いたポゴレリチの音の印象とは違う、もっとはっきりとした音像と切れ味、伸びの良さが感じられた。


休憩時間に狭いビュッフェでビールを飲んだが、壁にヨッフム(だと記憶している)ほかの指揮者の写真とともに、若い小澤征爾の指揮する写真があった。北ドイツ放送響かハンブルク・フィルへの客演があったのかもしれない。

初めて聴いたヨーロッパの音の強烈さに打たれ、ホテルまでの帰り道の途中にあったイタリアンのレストランで興奮を冷ました。明日はミュンヘンだ。