[ 内容 ]
中学校理科の化学領域からでもスムースに入っていけるように、原子について丁寧にわかりやすく説明。
具体的な物質をメインに据えながら説明し、物質にはくり返し化学式をつけている。
読んでわかるから面白い!
現代人に必須の科学的素養が身につく、検定外高校化学教科書。
[ 目次 ]
第1章 物質を作るおおもと-原子
第2章 原子と原子の結びつき-化学結合
第3章 物質の状態
第4章 化学変化の仕組みといろいろな反応
第5章 無機物質
第6章 有機化合物
第7章 高分子化合物
第8章 人間と化学のかかわり
[ 問題提起 ]
今回「現代人のための高校理科」シリーズとして出ている方のもう一冊。
「物理」と「地学」も出ています。
それだけに、各項目の「薄さ」が気になる。
400ページというのは新書にしては厚いが、扱う話題を考えるとあまりに少ないのではないだろうか?
率直に言って、読み物としてはこちらの方がよく出来ていると思う。
特にフロンの話しなど、ここまで過不足なく紹介しているものは稀だと思う。
面白いことに、生化学に関しては「高校生物」よりこちらの方が上。
必須アミノ酸も分子式付きで紹介されているし、αへリックスも図解付きで出てくる (なんでβシートが出てこないんだろ?)。
そしてタンパク質がきちんと索引に登場する。
また、タンパク質だけではなく糖や脂質など、生体を構成する化合物がきちんと紹介されている。
「高校生物」の方は、率直に言って化学を端折りすぎているのかも知れない。
[ 結論 ]
例えば解糖系の説明のところでクエン酸回路が当然登場するが、ここでも回路を構成する化合物名は出て来ても、化学式は出てこない。
化学式があった方が分子の変化を追いやすいのに。
強いて難点を言うと、無機化学が弱いことか。
もちろん現在の有機・無機の化学の割合から見て適切な配合比ではあると思うのだが、高校レベルでは無機の方がやさしい実験も多い(というのか有機は結構難しい)。
化学の楽しさを紹介するには無機化学はうってつけだけに、もう少し紹介してもよかったのではないか?
やはり今後出る予定の「物理」と「地学」も含め、全巻揃えが正しい使い方か、と講談社のまわしものみたいなオチになってしまった。
ところで現在の高校理科は「生物」「化学」「物理」「地学」と4つに分かれている。
これが大学レヴェルになると数えきれない。
ところが面白い発見は、これらの「境界」で起きることが多い。
利根川博士の業績なんてまさにそうだ。
[ コメント ]
ところが高校の授業でこれらを全部修めるというのはたしか事実上不可能だったはず。
むしろ学校に行かなかったおかげで学際の楽しさに触れるというのも皮肉に思える。
[ 読了した日 ]
2010年1月16日