逢坂先生の「同志少女よ、敵を撃て!」がいよいよ後半に入ってきました。中々ドラマチックな展開でこれは小説の世界だな、と思いました。現実はただ殺伐としているだけで何の面白みも無いのですから。ところで、ここまで読んでちょっと気になった事が2つあります。狙撃兵少女たちがいよいよ卒業間近という段階で、度胸を付けさせる為に生きた動物(食肉用の殺処分前の牛という設定)を撃ち殺すという場面。訓練生の少女達は距離500m以上で動く標的を一発で仕留めるという描写。この辺りは小説的演出という事でよいのですが、どうやら作者の先生はロシア人が牛肉を食べない事をご存知なかったみたいです。わたしはモスクワに合計で3ヶ月位暮らしましたからよく知っているのですが、ロシア人は肉と言えばまず鶏肉(クーラチカ)そして豚肉(ミャーサ)なのです。実は手間暇かかる肉牛の生産は現代でも僅かに数%です。戦時中に貴重な牛を練習台で殺させるかなあ?と思ってしまいました。これが1つ目。そしてもう一つが練習台にされるのが動物という点。間違ってはいないと思います。アレクシェービッチ作の実録小説「戦争は女の顔をしていない」でも女性狙撃兵が馬を撃ち殺す場面が描かれていました。ただ、馬にせよ牛にせよ家畜は貴重な資源ですからそうそう練習用に拠出させられていた訳ではなさそうです。わたしも動画で恐ろしい現実を知って驚いたのですが、実際に使われていたのはドイツ兵の捕虜です。戦時中17歳のパルチザン破壊工作員だった少女が戦後インタビューに答えている動画を見ました。彼女いわく、
「わたしは上官に森に連れて行かれました。するとそこには政治委員の将校とドイツ兵の捕虜が立っていました。政治将校はわたしに拳銃を渡し、コイツを撃ち殺せ!と命じてきたのです。わたしは顔を背けながら彼を撃ち殺しました。でも躊躇したと思われたのか、翌日も同じ事を強要され、わたしは何人もの無抵抗なドイツ兵捕虜を撃ち殺したのです。」
独ソ戦ではジュネーヴ条約は批准されずお互いに捕虜を処刑するのが常だったようです。独ソ戦初期の段階で捕虜になった100万人のロシア兵はほったらかし状態にされ(食料も宿舎もなく)バタバタと死んでいったそうです。逆にソ連側も捕虜の9割以上を処刑していました。
女子狙撃兵の練習用にドイツ兵捕虜を走らせて撃ち殺すという話は出てきませんでしたが、独ソ戦中期になると若い女性が続々と前線に投入されるようになりました。そして彼女達を1日も早く一人前にさせる為に日常的に捕虜処刑は行われていました。
何とも恐ろしい話です。