3月14日から始まりました、今回のシリーズも最終回となります。
残念ながらPVは毎度20程ですので誰にも読まれていないと思いつつ、殆ど自己満足でここまでやってきました。
思い起こせば、今シリーズに登場してきた女子兵士達はウクライナの方が多く、あのパブリチェンコさんもキイフ出身でした。
ウクライナ軍には現用の凄腕女性狙撃手がいるそうで、2014年から東部での内戦に参戦し数多くのロシア兵を殺害してきたとのことで、42歳の美しい大人の女性です。
現代にもそんな人がいるんだと思いました。
ウクライナのオデッサやセヴァストポリはソ連軍とドイツ軍の間で熾烈な戦闘があった場所です。
ソ連側にとっては撤退させられた負け戦なのですが、そんな中でパブリチェンコさんは500名以上の(未確認含む)ドイツ兵を殺害し一躍有名になりました。
今日ご紹介するのは、そんな名狙撃手のパブリチェンコさんに負けないどころか、彼女以上の損害をドイツ軍に与えた20歳の少女機関銃射手ニーナ・アニロワさんです。
1921年4月10日、ニーナはオデッサ州の素朴なウクライナの農民の家に生まれました。
幼い頃、父親を亡くしたニーナは孤児院で育ちます。
そして、オデッサの夜間中学と職業訓練校を出てオソアヴィアキムの射撃クラブで勉強しました。
クラブの代表である元赤軍の指揮官は彼女の武器選びに驚くばかりでした。
「ライフルじゃなくて、わたしは機関銃が撃ちたいのよ!」
しかし、機関銃兵は大きな機銃本体や弾薬、銃身に冷却用の水などを運ばなければならず、とても女子には無理だったのです。
「わたしにはできる!」
ニーナはそう確信していました。
「それに、“チャパーエフ”という映画に出てくるマシンガンのアンカはどうなの?」
「彼女も女の子じゃない?」
実は、彼女は1934年に作られたロシアの内戦を描いた映画作品のヒロインにとても憧れていたのです。
このアンカというヒロインの少女は赤軍の機関銃手で、隊列を組んで進軍してくる白軍の兵士をマキシム機関銃でバタバタと薙ぎ倒して大活躍するという描写が出てきます。
ニーナはそんなアンカのような機関銃手に自分もなりたいと強く感じていたのです。
しかし、劇中のアンカのように撃てば、戦闘開始5分でマシンガンが使えなくなります。
オーバーヒートしてジャムる・・・、という訳です。
所詮は映画なのですから現実とは程遠い設定になっているのです。
ところが、ニーナは本物の機関銃の撃ち方を教えてほしい、と軍事教官にしつこく懇願するのでした。
このシリーズに登場してきた多くの女子兵士達はナチスへの恨みや憎しみ、怒りを抱えて従軍していましたが、
ニーナはそんな女子達とは違って、ヒロインへの願望が非常に強かったのです。
1940年に戦争が始まると彼女は早速赤軍への入隊を志願しました。
1941年の8月にニーナは前線に赴きます。
元々彼女は第25狙撃兵師団の第54砲兵連隊で衛生兵として配属されていました。
「わたしは、機関銃が操作できます!」
「わたしはナチスを大勢撃ち殺したいんです!」
上官に懇願する彼女でした。
指揮官にオソアヴィアキムでの訓練の事を伝えると、試しに機関銃射手として初任務に就くことになったのです。
これでニーナは映画の中でアンカが所属していたチャパーエフ師団の機関銃手として敵と実際に闘う念願が叶ったのです。
オデッサでの防衛ラインでの塹壕戦。
彼女の初戦は夜でした。
“ヴォーン!”
“ヴォーン!”
「敵の迫撃砲が着弾し始めたわ。」
「きっと、やつらの攻撃はすぐに始まるわ。」
「いよいよわたしの出番だわ。」
「今日は思いっきり暴れてやるんだから。」
彼女が胸に秘めた闘志は並々ならぬものがありました。
暗闇の中、ドイツ軍歩兵部隊が隊列を組んで前進してきます。
「まだよ、まだまだ・・。」
「もっと近づいてきなさいよ。」
指揮官からはとっくに射撃命令が出ていました。
ところが、彼女は射撃を始めようとはせずに、じっと待っているのでした。
「もっと、引き付けなきゃ。」
「ニーナ!早く撃て!」
同僚の男性兵士が彼女に怒鳴ります。
しかし、全く動じない彼女。
たまりかねた老兵の1人が彼女の所に行こうとします。
ドイツ兵達との距離が数十メートルに近づいた瞬間でした。
「今だわ!」
「それ~!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
凄まじい勢いでニーナのマキシム機関銃が火を噴きます。
「え~い!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
漆黒の闇にオレンジ色の鋭いラインが切れ目なく突き抜け、すぐ前方の一団に向かって吸い込まれていきます。
いきなり始まったニーナの射撃ショーに逃げ場のないドイツ兵達は折り重なるようにバタバタと倒れていきます。
「それっ、皆殺し~!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
実際には数分だったのでしょう、ドイツ軍部隊を全滅させるのに要した時間は僅かでした。
沈黙と共に夜が明けると、そこは累々と横たわるドイツ軍兵士達の死体で埋め尽くされていました。
ニーナは満足そうな笑みを浮かべながら戦友達に言いました。
「これはわたしにとって、ほんの始まりだわ。」
「こんなの、まだ序の口よ!」
彼女の射線の中に散らばっているドイツ兵の死体の数は48名でした。
初めての戦闘でドイツ兵を山のように殺した彼女はすぐにオデッサの街で一躍有名になりました。
その後も彼女は・・・。
「まとめて撃ち殺してやる!」
「それ~!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
翌々日の戦闘でも彼女はドイツ軍の進撃を撃退します。
この時は約50名の敵がニーナの弾丸の犠牲になりました。
翌週には態勢を立て直したドイツ軍が再び攻撃を仕掛けてきます。
「面白い!まるで射的だわ!」
「ナチどもめ、食らいなさい!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
進軍してくるドイツ兵を30名程血祭りにあげると、彼女は塹壕から飛び出します。
彼女の銃弾を浴びて地面に這いつくばるドイツ兵達にトドメを刺しに行ったのです。
「トドメよ!」
“ババババッ!”
サブマシンガンで足元のドイツ兵に次々と短い連射を撃ち込む彼女。
情け容赦なく彼女の虐殺劇は続きます。
「楽にしてあげるわ。」
「ありがたく思いなさい!」
“ババババッ!”
「ほらほらっ!」
うつ伏せになっている兵士は足で踏み付けて確かめます。
「まだ、生きてるのかよ?」
更にブーツのつま先で顔を突いてみます。
少しでも動けば彼女は逃しませんでした。
「くたばれ、ケダモノめ!」
“バババッ!”
負傷して動けない兵士を十数名始末すると、足取りも軽く陣地に戻る彼女でした。
実は以前からニーナは上官から何度も注意を受けていました。
「ニーナ、もっと距離を保ってから射撃しなさい!」
「君には常に大きなリスクがあるんだ。」
「はい、同志上官殿。」
「わたしにはわたしのやり方があります。」
「できるだけ引き付けて皆殺し、」
「これがわたし流なんです。」
このニーナの“わたし流”はドイツ軍に大きな損害を与え続けました。
この当時の機関銃手の常識的な戦術は敵との距離を保って威嚇射撃を始めるのが鉄則でした。
できるだけ遠くに敵を釘づけにして弾幕を張って自軍の陣地に近づけないようにするのが彼らの役目だったのです。
また、機関銃手はその絶大な破壊力ゆえに真っ先に敵に狙われるリスクがありました。
接近してくる敵が近ければ手榴弾を投げ込まれるリスクが増大するのです。
更に、当時のマキシム機関銃は連射を続けるとジャムって停止してしまうリスクがありました。
大勢の敵を前に機関銃が沈黙することは自軍が全滅する危険性をはらんでいたのです。
しかし、ニーナの“わたし流”はそんな事はお構いなしにとにかく至近距離まで引き付けて敵を全滅させる事に執着していたのです。
その代わり、彼女の射撃は非常に正確でとにかく1人も逃さず射ち倒しました。
自軍側に引き返そうと逃げ出す敵を逃さず背中めがけて銃撃を加え撃ち殺していきました。
戦闘が終わった後に、敵の敗残兵や負傷兵を片付けるためにサブマシンガンで殺して歩くのも彼女の“わたし流”だったのです。
この彼女の常識外れの戦術は、多大な戦果を積み上げる結果となって、もはや上官も口出しできない状態になっていました。
ある時ニーナは町の住民達への講演を依頼されます。
ドイツ兵を大勢撃ち殺して有名になったクリミアの少女を一目見ようと多くの人々が集まりました。
「わたしは・・。」
「話をするのが、あまり得意ではありません。」
「でも機関銃を使ってドイツ人達と楽しくおしゃべりするのは得意なんです。」
「いつもわたし、おしゃべりし過ぎちゃうんです。」
「しかも、わたしの一方的なおしゃべりなんですよ。」
「ドイツ人達は沈黙したまま、わたしはおしゃべりを終えるんです。」
「すると、わたしの前には大勢のドイツ人達が横たわっていました。」
「今日もしゃべり過ぎちゃって、ホントごめんなさい!」
会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれます。
まだわずか20歳の少女がドイツ国防軍を相手に奮戦する姿は人々に勇気と希望を与えました。
このオデッサ防衛戦で彼女が殺害したドイツ兵はわずか2ヶ月の間に約350名に達していました。
そんな彼女にも上官が恐れていた事が起こります。
「わたしはアンカ!」
「かかって来なさい!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
今日もいきなり十数名のドイツ兵を薙ぎ倒して調子に乗る彼女。
すると・・
“ヴォーン!”
“ウッ!”
頭から出血してその場でうずくまる彼女。
敵兵の投げ込んだ手榴弾の破片がニーナの頭と耳を直撃したのです。
幸い命に別状はなく病院に運ばれたニーナ。
およそ1ヶ月間、戦列から離れることになりました。
1941年11月、部隊に復帰したニーナはセヴァストポリの防衛戦に参加します。
11月14日の朝、彼女は自軍塹壕内にいました。
ドイツ軍が戦車を先頭に彼女に向って進撃してくるのが見えました。
「戦車だわ。」
「どうしよう、わたしのマキシムでは歯が立たない。」
「まずは戦車をやっつけなきゃ。」
彼女の手元には対戦車手榴弾も無く、火炎瓶が2本あるだけでした。
前方の敵の様子を伺う彼女。
「何とか戦車に近づけないかしら。」
するとその時風向きが変わります。
先程の敵による砲撃で破壊された味方の砲兵陣地の火災の煙が辺り一面に立ち込め視界を遮ります。
「今だわ。」
「それっ、頑張れ、わたし!」
彼女は自分自身を鼓舞しながら火炎瓶をベルトに挟み込みサブマシンガンを手に塹壕内から這い出します。
慎重に這っていくと敵戦車の右側に窪地を見つけその中に転がり込みます。
見上げるとドイツ軍戦車のグレーの車体が見え、その背中には装甲擲弾兵が4名乗っていました。
勇気を振り絞って硝煙の中からいきなり立ち上がって戦車のエンジンルーム目掛けてモロトフカクテルを投げつける彼女。
「エイッ!」
「ソレッ!」
“ジュヴォッ!”
“ジュヴォッ!”
彼女の投げつけた火炎瓶は2つとも見事に命中します。
“ウぅ~!”
戦車に乗っていた擲弾兵達は炎に包まれて転がり落ちます。
火に包まれてもがき苦しむ4名のドイツ兵。
「いい気味だわ。」
「それっ、トドメよ。」
“ババババババッ!”
4人の敵兵をマシンガンで始末するニーナ。
更に戦車の中から戦車兵達が逃げ出し始めます。
「わたしと対面ね。」
「運が悪いこと。」
“バババッ!”
「お前もだ!」
“バババッ!”
「お次は?」
“バババッ!”
中から這い出してくるドイツ兵を数メートルの距離から狙い撃ちにして楽しむ彼女。
「もうこれで終わりかよ?」
“バババッ!”
最後の1人を撃ち殺すと足早に自軍塹壕内に戻る彼女。
「さあ、来るなら来なさい!」
「わたしが相手になってあげるわ。」
後方から進撃してきたドイツ軍歩兵部隊は戦車によってソ連軍陣地は粉砕されたものだと思っていたようです。
煙の中を数十人単位で固まって進軍してくるドイツ兵達がニーナの視界に入ってきました。
「もっと近づきなさい!」
「わたしの正義の銃弾を、たっぷりご馳走してあげるんだから。」
焼けただれた味方の戦車と無残に撃ち殺された味方の8名の死体を確認した時には既に遅かったのです。
ドイツ軍歩兵部隊は全員ニーナの射線に入っていました。
「いいこと。」
「始めるわよ!」
「ソレ~!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
マキシム機関銃の防護板の中央の覗き穴から見えるドイツ兵達はまるでダンスでも踊るように次々と薙ぎ倒されていきます。
「楽しい!」
「最高だわ!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
「ホラッ、もっと殺してやるよ!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
「この瞬間がたまらないわ!」
「ホラホラッ!」
「もっとわたしのおしゃべりを聞きなさい!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
先程彼女が破壊した戦車に当たって跳ね返った銃弾までもが哀れなドイツ兵達の体を撃ち抜いていきます。
「まだまだよ!」
「1人も生きて返さないからね。」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
彼女のマキシムはジャムる事もなく快調にドイツ兵達を仕留めていきます。
逃げ出そうとするドイツ兵も逃しません。
「ほら、そこっ、逃げんじゃないわよ!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
背中から無残に撃ち抜かれて倒れる3名のドイツ兵。
「アッハッハ、やったね!」
もはや鬼畜となった20歳の少女は笑いながら虐殺を楽しみます。
「ふふふっ、頭吹っ飛ばすわよ!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
最後の連射が終わると辺りは静けさに包まれます。
彼女が撃ち殺しまくったドイツ兵の総数は120名に上りました。
わずかに銃口から煙を噴き上げるマキシム機関銃の射線内には無数に横たわるドイツ兵の死体で埋め尽くされていました。
「ホント、気分爽快!」
「わたし、まだ殺し足りないかも。」
山のように殺されたドイツ兵士達の死体の後方ではニーナによって破壊された戦車がまだくすぶり続けていました。
この日の多大なる戦果によって彼女は赤旗勲章を授与されました。
そして翌1942年2月27日、ニーナは数名の兵士達とドイツ軍の機関銃陣地の排除に向かいます。
ニーナ達の小隊は運悪くドイツ軍機関銃兵に見つかってしまい銃撃を受けます。
“ババババババババッ!”
2名の友軍兵が殺されニーナは森に一旦身を潜めます。
何とか敵の陣地に向かって迂回する彼女。
示し合わせた時間に逆方向に残った戦友が敵陣地に銃撃を加えます。
そちらの方に気を取られた瞬間に手榴弾を投げ込む彼女。
「エイッ!」
“ヴォーン!”
3名のドイツ兵が爆死します。
その彼らの陣地内に躍り込むニーナ。
敵の機関銃は幸い無傷でした。
ドイツ軍の機関銃を操作し構える彼女。
50mほど離れた所にあったもう一つのドイツ軍機銃陣地に向けて発砲を始めました。
「友達の仇よ!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
味方陣地からまさかの銃撃を食らいバタバタと撃ち倒されるドイツ兵達。
敵の3名はあっという間に彼女に撃ち殺されました。
ドイツ軍機関銃陣地を2か所破壊したニーナは基地に戻ります。
そしていよいよドイツ軍が大軍でソ連軍陣地に攻め込んできたのです。
1942年3月1日。
ニーナは自軍内の味方兵士が次々と倒れていく間もドイツ軍の進撃を撃退し続けます。
「ここは渡さない、絶対に!」
「わたしがいる限り!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
相変わらず彼女の射撃は冴えわたりドイツ兵は死体の山を築きます。
そんな獅子奮迅ぶりの彼女。
最後は左肩を負傷し、右手一本でドイツ兵を殺し続けます。
「わたしは負けないわ!」
「この~!」
“ドドドドドドドドドドドドドッ!”
彼女の放った最後の連射に10名以上のドイツ兵が倒されます。
しかし、手榴弾を投げ込まれた彼女は爆発とともに倒れ込みます。
まだ息のある状態で放置されていた彼女はその後押し戻してきた赤軍兵士によって助け出されます。
しかしながら、重傷を負った彼女は野戦病院内で1942年3月8日に息を引き取りました。
初めて前線に出て48名の敵を撃ち殺してからわずか7ヶ月目の事でした。
このセヴァストポリ防衛戦でニーナが殺害したドイツ兵の総数は500名以上でした。
短命な機関銃手としては7ヶ月間戦闘に参加し、ドイツ軍に与えた損害は総数で850名以上の殺害でした。
ニーナはセヴァストポリのコミュナーズ墓地で他の死んだ兵士と一緒に埋葬されました。
1965年5月14日付けのソビエト連邦最高会議の法令により、ニーナ・アンドレーヴナ・アニロワ上級軍曹は死後、ソビエト連邦の英雄の称号を授与されました。

ロシア軍帽姿のニーナさん。

軍帽にコート姿のニーナさん。

海軍陸戦隊のシャツを着たニーナさん。