6  ロシア女子戦記シリーズもあと2回となりました。 

さて、ロシア軍によるウクライナ侵攻もまだまだ継続していて、泥沼化しております。

キエフ近郊の街ブチャでは民間人が虐殺された模様です。

私もFacebookで殺害されたウクライナ市民の画像が流れてきて絶句しました。

その後、ロシア側からフェイク画像だという反論もあったようです。

本当のところは私にはわかりませんが、フェイクならば、あの亡くなった方達が今も存命でいる訳ですから、そうであればどんなに良い事かと思います。

ロシア軍の戦死者も1万人超えだそうです。

もはやロシア国内からの反戦運動でこの戦争を終わらせないかと願うばかりです。

私はこのシリーズを書いていて、10代の少女達がなぜ自らを犠牲にしてまで、ナチスと闘ったのかと思っていました。

それが独ソ戦から80年を経て、ウクライナの犠牲者達の惨たらしい姿をみると侵略者への彼女達の怒りと憎しみが解ったような気がします。

 

今回ご紹介するのは、カザフスタンの女の戦士、アリヤ・モルダグロワさんです。

カザフの英雄は当シリーズの第3回でご紹介しました機関銃手のマンシュークさんと並んでこのアリヤさんが有名です。

彼女の活躍ぶりは映画にもなっていてYouTubeでも見ることができます。(ロシア語)

 

アリヤ・モルダグロワは1925年10月25日、カザフスタンのアクトベ州ホブダ地区で生まれました。

1941年6月、独ソ戦が始まると、リア(アリヤ)はレニングラードに留まる事を決意します。

1941年9月8日、レニングラード攻防戦が始まりました。

彼女はすぐにでもドイツ軍と闘いたかったのです。

しかし16歳の彼女は赤軍への入隊はできず、その後17歳になって狙撃学校に入学します。

彼女は最前線に志願兵として赴く事を強く願いましたがそれは認められませんでした。

その後リアは狙撃学校で技術を磨き、優秀な成績により個人用ライフルを授与されました。

そして1943年7月、まだ17歳のリアはやっとのことで狙撃兵として第54歩兵旅団に配属されました。

まだ17歳の少女リアは部隊に配属されるとすぐにその実力を発揮します。

 

ドイツ軍機甲師団が前進してくるレニングラード戦線でのことです。

彼女のいるソ連軍の塹壕陣地が砲撃に晒され、味方の死傷者が続出していました。

彼女にとっての最初の戦闘でした。

 

“ヴォーン!”

“ヴォヴォーン!”

「リア、伏せろ!」

彼女の上官が叫びます。

砲弾は彼女のすぐそばに着弾し、リアは土まみれになってしまいます。

「よくもやたったわね!ナチスめ。」

「今に見てなさい!」

「わたしが、たっぷり教えてあげるわ!」

彼女の塹壕の数十メートル前方にドイツ軍戦車が迫っていました。

対戦車手榴弾を手に肉弾攻撃を敢行する味方の兵士達。

戦車の機銃でバタバタと倒されていきますが、死に際に1人の兵士が投げた手榴弾が戦車に命中します。

“ヴォーン!”

ドイツ軍戦車のエンジンから出火し、中から戦車兵達が次々に出てきます。

「わたしの出番だわ!」

「覚悟しなさい!」

「それっ!」

“バシュン!”

「もう1人!」

“バシュン!”

「逃がさないわ!」

“バシュン!”

黒い制服姿のドイツ軍戦車兵達が次々とリアに狙い撃つされて殺されていきます。

いきなり狙撃され地面に伏せた兵士も逃さず撃ち殺します。

「隠れても無駄よ、ムダ!」

“バシュン!”

「やったね!4人仕留めたわ!」

恐るべき17歳の少女は、いとも簡単に逃げ惑うドイツ兵を4人撃ち殺したのです。

アジア系の黒髪に黒い瞳の可愛らしいきゃしゃな女の子がいきなり大胆な狙撃で戦果を上げます。

そんな彼女は仲間達から一目置かれる存在となりました。

その後も彼女はドイツ兵を求めて前線で狩りに出かけます。

 

「今日は練習だわ。」

「2・3人片付けてやりたいな。」

「ドイツの奴らいないかしら?」

破壊された戦車の影で待ち伏せするリア。

「いたわ、わたしの獲物よ。」

ドイツ兵2人がやってくるのが見えました。

「まずは、コイツから・・。」

“バシュン!”

十数メートルの至近距離から最初の犠牲者は額を撃ち抜かれて倒れます。

「やった!」

「最高の気分。」

「もう1人はどうやって始末してやろうかしら。」

いきなりリアによって戦友が射殺されたドイツ兵は恐怖で錯乱状態になり辺りにマシンガンを撃ちまくります。

「わたしを狙ってるのかしら?」

「見当はずれもいいとこだわ。」

「わたしが、教えてあげるわよ!」

「それっ!」

“バシュン!”

男の手元を狙って狙撃してみると、マシンガンを地面に落として右手を抑えるドイツ兵。

「お楽しみはこれからなんだから。」

手を負傷して無抵抗になったドイツ兵の前に現れたのは17歳のあどけない少女でした。

「あなたの友達を撃ち殺したのは、このわたし!」

「あなたもわたしに撃ち殺されるのよ。」

“バシュン!”

今度は男の左足の太ももを撃ち抜く彼女。

「ふふっ!」

「痛かった?」

「ごめんなさい!」

「簡単には死なせないわよ。」

「もっといたぶってあげるわ。」

「それっ!」

“バシュン!”

今度は彼の右肩を2メートルの距離から撃ち抜く彼女。

“ウ~!”

3発目の銃撃にひっくり返る男。

まだ20代の若い兵士でした。

仰向けの状態から銃を構えるリアを見上げる彼。

左手で顔を隠しながら手の平を左右に振って命乞いをします。

「わたし、あなたに恨みは無いけど・・。」

「ナチは許せないの!」

“バシュン!”

情け容赦なく引き金を引くリア。

彼女の銃弾は男の左手を撃ち抜いて顔面を直撃しました。

「ごめんね。」

「わたしに見つかったのが運の尽きだったわね。」

 

彼女が前線に配属された8月から10月までの間に、リアは32人のドイツ兵を撃ち殺していました。

わずか17歳の少女は恐れを知らない大胆不敵な狙撃で戦果を上げていきます。

 

そしてある時、リアは女子狙撃兵で戦友のジーナとナディアとでドイツ兵狩りをしていました。

ちょうど独ソ両軍の中立地帯でのことです。

ドイツ軍歩兵分隊の5名が女子狙撃兵3名に気付いて待ち伏せしています。

 

「リア、今日はわたし達、1人づつ仕留めたわね。」

「わたし、まだ殺し足りないかも・・。」

「ジーナは、もっと殺したいのよね。」

「ちょっと待ってて!」

「どうしたのリア?」

「あそこで何か動いたわ。」

「よ~し、何がいるか確かめてやる。」

リアは物陰に隠れて慎重にスコープを覗きます。

前方約100mの廃墟に人影が見えたのです。

「ドイツ兵どもよ!」

「いるいる。」

「ジーナ、あなたの分もいるわよ。」

「わたし達の事、待ち伏せしてるのかしら?」

「こうなったら、全滅させてやるわ。」

「ジーナは右から、ナディアは左からよ!」

「わかったわ!」

「2人とも配置についたかしら?」

「まずは、わたしから。」

「思い知らせてやるわ。」

「それっ!」

“バシュン!”

「やったね!」

“バシュン!”

“バシュン!”

「それ、やったね!ジーナ、ナディア!」

まずリアが1人撃ち殺すとジーナとナディアも1人づつ射殺しました。

正面と両サイドからの狙撃に慌てるドイツ兵達。

「あらっ、両手あげてるわ?」

「降伏?」

「つまんないの。」

彼女達を待ち伏せしていたドイツ兵は3名殺されてあっさりと降伏しました。

武器を捨てて両手をあげて立ち尽くす2人の元に女子達が足早にやってきます。

「リア、こいつら、どうする?」

「この場で、殺しちゃおうか?」

「なら、わたしにやらせてよ。」

「ジーナ、だめよ!」

「彼らは、本部に連れて行くわ。」

2人のドイツ兵に憎しみのまなざしを向けるジーナとナディア。

そんな2人を思いとどまらせて、捕虜として連行することにするリア。

「もうこの間みたいな処刑なんて、するべきじゃないわ。」

心の中で、先日なぶり殺しにした若いドイツ兵の事を思い出すリア。

17歳の少女は、あんな残酷な殺し方は二度としないと心に決めていたのです。

 

1943年12月13日、彼女は親族に宛てた手紙でこう書いています。

「わたしは今、多くの木々に囲まれた深い塹壕の中でこの手紙を書いています。」

「わたし達はドイツ軍と対峙しているのです。頭にはヘルメット、腰には手榴弾、手にはライフル...。」

「わたしが殺した大勢のドイツ人に同情する気はありません。」

「朝、整列時に指揮官から“3歩前に出ろ”と言われました。」

「わたしは3日間で、14名のドイツ兵を殺害しました。」

「この戦果に、司令官が感謝の意を表したんです。」

「わたしは人前で司令官にキスをされ、恥ずかしくて赤面してしまいました。」

リアは前線に出てわずか4ヶ月で67名のドイツ兵を殺害していました。

 

1944年1月11日、レニングラード・ノヴゴロド作戦で、彼女の第54狙撃旅団はノヴォソコルニキ市まで進み、敵の防衛線を突破して市の北側に前進しました。

彼女の部隊はナスバ駅近くに到着し、敵の強力な砲火に遭遇します。

夜間にドイツ軍の防衛ラインを占領した彼女達は、1日14日の夜明けに攻撃を開始しました。

彼女達は駅を通ってカザチハ村を占領する任務を負っていました。

すでに第一次防衛線の突破に成功していたにもかかわらず、敵の強力な応戦によって攻撃は失敗してしまいます。

その時、リアは立ち上がって背筋を伸ばして叫びます。

「兄弟よ、兵士よ、祖国のために、わたしに続きなさい!」

リアを先頭に赤軍兵士達がドイツ軍陣地に総攻撃を仕掛けます。

リアも狙撃銃を手に突撃します。

「こんな劣勢、挽回してみせるわ!」

「わたしに続きなさい!」

「この~!」

“バシュン!”

「それっ!」

“バシュン!”

「死ね!」

“バシュン!”

突撃しながら目に入るドイツ兵を狙い撃ちにするリア。

彼女の正確な射撃に次々と撃ち殺されるドイツ軍兵士達。

「え~い!」

“バシュン!”

“バシュン!”

“バシュン!”

彼女の勇猛果敢な突撃と銃撃に歯向かおうとした11人のドイツ兵が彼女に殺されました。

リア達の総攻撃によりドイツ軍部隊は防衛陣地から敗走します。

そして占領した塹壕に陣取るリア達でした。

「敵はまたここを取り返しに来るわね。」

「今度はわたし、マシンガンで応戦するわ。」

もはや、両軍が突撃を繰り返す塹壕戦では狙撃銃よりも機関銃の方が有効でした。

「これで大勢殺せるわ!」

「やってやるわ。」

サブマシンガンの予備の弾倉を並べてドイツ軍の来襲に備えるリア。

そしてドイツ軍は防衛線を取り戻すために隊列を組んで総攻撃を仕掛けてきました。

「来たわね。」

「思い知れ!」

“バババババババババッ!”

突撃してくるドイツ兵の一団に向かってサブマシンガンで銃撃を加える彼女。

あっという間に5人が薙ぎ倒されます。

「もっとかかって来い!」

「それっ!」

“ババババババババッ!”

目の前のドイツ兵に容赦なく銃弾を浴びせ更に7名を撃ち殺します。

「わたし達は一歩も引かないわ!」

「覚悟しなさい!」

「それ~!」

“バババババババババッ!”

次から次へと突撃してくるドイツ兵達をマシンガンで殺しまくるリア。

この日、ドイツ軍は3回に渡って攻撃してきました。

攻撃の度に勇敢に応戦するリアは、28名のドイツ兵をマシンガンの銃撃で射殺していました。

「まだまだよ、こんなもの!」

「やつらが諦めるまで、わたしは殺し続けるわ!」

しかし両サイドから攻め込むドイツ軍は赤軍陣地内に肉薄し、塹壕内で激しい白兵戦が始まります。

マシンガンを持ったリアに襲い掛かるドイツ兵。

「何よ、こいつ!」

“ババババッ!”

とっさに身をかわして敵を撃ち殺す彼女。

さすがに小柄なリアは大柄なドイツ兵との白兵戦には不利でした。

そこで、一旦塹壕内から這い出す彼女。

地表から塹壕内を見渡すと至る所で銃剣を使った殺し合いが行われていました。

そんな彼女の足元に塹壕内にいた1人のドイツ兵が顔を向けます。

「アラッ!」

「コイツめ!」

「エイッ!」

“パコーン!”

一瞬目が合ったドイツ兵の頭を渾身の力を込めて蹴り上げる彼女。

リアのブーツが男の顔に見事なまでにヒットし、ヘルメットは吹っ飛び男は塹壕内に転がります。

「今よ!」

“バババッ!”

倒れた男に銃弾を浴びせる彼女。

「こいつもよ!」

“バババッ!”

「死になさい!」

“バババッ!”

地表から塹壕内のドイツ兵達を狙い撃ちにするリア。

「面白い!」

「殺し放題だわ!」

「ほらっ!」

“バババッ!”

ドイツ兵を8名ほど血祭りに上げた直後でした。

1人のドイツ軍将校がリアに向かって拳銃で発砲します。

“パン!”

“ウッ!”

「よくも、わたしを・・。」

“ババババッ!”

男の銃弾を浴びてしまったリアは振り向きざまに引き金を引きます。

彼女のマシンガンの銃撃をもろに受けたドイツ軍将校はそのまま声も上げずに倒れました。

この将校はリアの殺害した最後のドイツ兵となったのです。

負傷したリアはその後病院に搬送されますが、この傷が致命傷となって息を引き取ります。

享年18歳のリアが狙撃銃で殺害したドイツ軍兵士の総数は78名。

機関銃で殺した数も含めると130名を軽く超えていました。

アリヤ・モルダグロワはプスコフ州ノヴォソコルニキ地区のモナコヴォ村に埋葬されています。

1944年6月4日、彼女は「ソビエト連邦の英雄」の称号を授与されました。
2021年1月12日、アスカル・マミン首相は、JSC「アクトベ国際空港」にアリヤ・モルダグロワの名を冠する政令を発布しました。

 

アリヤ・モルダグロワさん


狙撃兵になる前のアリヤさん(右)

アリヤさんの銅像

アリヤさんを題材にした1985年のソ連映画“狙撃手”でリア役を演じたアイトゥルガン・テミロワさん。
 

本日から当ロシア少女戦記シリーズも終盤の残り3回となりました。

 

その前に、ウクライナ避難民受け入れの進捗状況をご報告させて頂きます。

その後、政府による渡航費や生活費の国費負担の話がでておりますが、前向きに検討という言葉で誤魔化されて一向に具体的な道筋が見えてきません。そんな中、Facebookの“ウクライナの架け橋”というグループサイトにてウクライナ・テイク・シェルターというハーバード大の学生さんが作ったマッチングサイトを見つけ早速私も横浜音楽館として登録しました。翌日TBSテレビから取材協力の連絡があり、一昨日当館で取材ロケとなりました。現状の政府のスタンスや私の基本方針などをインタビューで答え、今日のサンジャポでオンエアされました。中々コンパクトにまとまった編集内容になっていました。当館の事が全国的に流れる事によって在留ウクライナの方からのアプローチがあるかもしれません。 何か進展がありましたら随時当ブログでご紹介してまいります。

 

さて、本日ご紹介するロシア少女戦士は人を助ける看護兵として従軍していた2人です。

独ソ戦に参加した100万人近くの女子の内、恐らく大半は看護兵や衛生兵だったのではないでしょうか。

ただし、看護兵(野戦病院勤務)や衛生兵(前線で歩兵と行動を共にする)と言っても、銃の扱い方など一通りの戦闘訓練は受けていました。

ですので歩兵に準じていたのだと思います。

 

最初にご紹介するのはクセーニャ・コンスタンチノワさんです。

彼女は1925年4月18日リペツク州スハヤ・ルブニャ村で生まれました。

そして、彼女はイェレツ市の産科学校を卒業し1941年、ドイツ軍がイェレツ市を占領し、彼女の故郷リペツクに接近し始めたとき、16歳のセーニャは戦線に志願することを決意しました。
彼女は母親にこんな手紙を書いています。
「ママ、憎きナチスが祖国を踏みにじるのをわたしは冷静に見ることができません。」

「許してください、ママ、わたしは、わたしの心に従ってわたしが決めたことをしたいのです。」

1943年、彼女は18歳で赤軍への入隊を許可され、第730歩兵連隊の従軍看護兵として前線に赴きました。

彼女はカリーニン戦線での戦闘で多くの負傷兵を看護しました。

しかし、クルスクでの戦闘でゼーニャは負傷しトゥーラの病院に入院します。

ナチスへの憎しみがますます燃え上がる彼女。

「ママ、わたしは、わたし達の土地に1人でもナチスが残っている限り、家に帰るつもりはありません。」

「わたしは、ナチスをやっつけるために急いで前線に戻ります。」

この時、彼女はすでに“戦功賞”が授与されていました。

そして、1943年9月30日彼女の所属する大隊がスモレンスクで戦っていた時の事です。

大隊は前進の命令を受けましたが、誰かが多くの負傷者のそばにいなければなりませんでした。

大隊長のクレヴァキン大尉は、戦闘任務について説明し、衛生大隊の看護婦が戦死したので、ゼーニャに負傷者のそばにいるように命じました。

しかし、ゼーニャはとても不本意だったのです。

彼女も部隊と一緒に前進したかったのです。

前進命令が下ると、ゼーニャは戦友のラゾレンコを抱きしめて言いました。

「さようなら、わたし達、もう会えないような気がするわ。」

大隊が出発すると、渓谷に残された多くの負傷兵達。

彼らは戦うことはおろか動くこともできませんでした。

ゼーニャは運搬兵に負傷者を荷車に載せて移動するように指示しました。

まだ多くの負傷兵が残されている状態で、およそ100名のドイツ軍歩兵中隊が迫ってきたのです。

その事に気づいた彼女は、荷車の運搬兵に森に隠れるように指示し、自らはドイツ軍を引き付ける事を決意したのです。

 

「敵は大勢いるわ。」

「わたしはたった1人。」

「でも、わたしは絶対に諦めない!」

「負傷して動けないみんなの為に、わたしは闘うわ!」

そう決意した彼女はマンドリン型サブマシンガンを手に、ありったけの弾倉と手榴弾を看護用のバッグに詰めて接近してくるドイツ軍部隊に向かっていきました。

「落ち着くのよ、わたし。」

「奴らはわたしの存在に気づいてないわ。」

「それ、頑張れ、わたし!」

自らを鼓舞し続ける彼女でした。

味方の負傷兵は皆重傷者で生きている気配も感じさせませんでした。

彼女はできるだけ負傷兵からドイツ兵を遠ざけようと思いました。

「よ~し、こっちの方向から撃ってやる。」

「それっ!」

“バババババババッ!”

前進してきた先頭のドイツ兵に向かって木陰からいきなり乱射した彼女。

5人のドイツ兵が彼女の銃撃で殺されました。

「よし!」

「やつら、驚いたみたいだわ。」

「今度はこっちからよ!」

「それっ!」

“ババババババッ!”

場所を変えて、慌て気味のドイツ兵に銃弾を撃ち込む彼女。

「やったわ、何人死んだかしら?」

「たったの3人か・・。」

渓谷の巧みな地形を利用して場所を変えながらドイツ兵に銃撃を加え続ける彼女。

「よ~し、今度は手榴弾よ。」

「えいっ!」

“ヴォーン!”

“ヴォーン!”

「やったね!」

岩の下にいたドイツ兵の群れに手榴弾を投げつけた彼女。

更に、負傷した兵士にも逃さず銃撃を加えます。

「逃がさないわ!」

「それ~!」

“ババババババババババッ!”

逃げ場の無い狭い場所での2発の爆発とサブマシンガンでの掃射で12名のドイツ兵が殺されました。

「相手は100人位いるのに、殺せたのはまだ20人か・・。」

「もっと暴れなきゃ、わたし!」

「ヤツラはわたし1人だと思ってないはずだわ。」

「わたしを大勢に見せるには、どうしたらいいかしら?」

「そうだわ、手榴弾をたくさん投げつけて、一気に大勢殺せばいいのかも。」

木陰から敵を覗き見るゼーニャ。

見えない敵から銃撃を受けて味方の損害が増え続けるドイツ軍は焦り始めていました。

小柄な彼女が身を隠せる岩場があり、そこから数メートル下に20名程が集結していました。

「あんなにたくさんいる。」

「こうなったら、あいつらを全滅させてやるわ、見てなさい!」

身をかがめながら手榴弾を4つ準備する彼女。

傍らにマシンガンを置いてすぐに撃てる状態にします。

「今だわ!」

「ソレッ!」

“ヴォーン!”

“ヴォーン!”

“ヴォーン!”

“ヴォーン!”

ドイツ兵達の間で次々と炸裂する彼女の投げつけた手榴弾。

4回の爆発で半数以上のドイツ兵が吹き飛ばされ、残りの兵士も破片で負傷して倒れます。

生き残りのドイツ兵達を皆殺しにしようと狙い撃ちにするゼーニャ。

「1人も逃さないから!」

「ケダモノめ!」

「地獄に落ちなさい!」

“バババババババババババッ!”

岩場の上にいきなり立ち上がった彼女は、サブマシンガンを構えて負傷した彼らに容赦なく銃撃を加えました。

「みんな、死んでもらうわ!」

「え~い!」

“バババババババババッ!”

負傷したドイツ兵もすぐ頭上の少女からの情け無用の銃撃に、体中を撃ち抜かれて次々と絶命していきました。

わずか数分の間に20名のドイツ軍兵士が、看護兵の18歳の少女に壊滅させられたのです。

「これだけ暴れれば十分かしら?」

大勢のドイツ兵の死体を残して再び木陰に身を隠す彼女。

機転を利かせたゼーニャの襲撃に、40名の戦死者を出していたドイツ軍部隊はいきり立っていました。

「まだまだ大勢残ってるわね。」

「わたし、もっともっと殺さなきゃ!」

戦死者続出のドイツ軍は岩陰や木の陰に身を隠しながら辺りをうかがっています。

「しぶとい奴ら!」

「こうなったら、もうひと暴れしてやるわ。」

彼女は勇気を振り絞って決意します。

岩陰に残りの手榴弾を見えないように並べます。

そして木の枝葉の裏にサブマシンガンを立て掛けます。

そのすぐ傍らで両手を挙げて立ち上がる彼女。

ロシアの軍帽を被り、お馴染みのカーキ色のジャケットにパンツ、そして黒いブーツを履いた彼女は小柄なあどけない可愛らしい少女でした。

そんな女の子の姿に一瞬気が緩むドイツ兵達。

まさか自分達の部隊に大損害を与えたのが彼女1人の仕業だとは誰も思っていませんでした。

岩陰にいた兵士達は緊張感もなく揃って彼女の方に歩いてきます。

ドイツ兵の表情がはっきりと見える距離まで近づいてきた瞬間でした。

「今だわ!」

足元に立て掛けたサブマシンガンを手に取ると、目の前のドイツ兵の一団に向かって引き金を引く彼女。

「エ~イ!」

“ババババババババババババッ!”

ゼーニャは叫びながら銃口を左右に振って乱射し始めました。

目の前のドイツ兵6名があっと言う間に撃ち殺され、その背後にいた兵士も逃げ遅れて負傷します。

一連射終わった瞬間に岩陰に隠れて並べて置いた手榴弾を負傷して倒れているドイツ兵やその背後に向かって次々と投げつける彼女。

「エイッ!」

“ヴォーン!”

「ソレッ!」

“ヴォーン!”

「コノ~!」

“ヴォーン!”

身動きの取れないでいたドイツ兵達は手榴弾の爆発で次々と手や足を吹き飛ばされて絶命していきます。

岩陰のそばにいた兵士も破片が当たってうずくまる者、仰向けに倒れ込む者、頭を押さえる者、正に混乱の状態でした。

至近距離での爆発に聴力を失って呆然とする生き残ったドイツ兵達の前に現れたのは、弾倉を取り換えたばかりのサブマシンガンを構えた18歳の少女でした。

「死ね!」

“バババッ!”

うずくまる兵士を撃ち殺すと、仰向けに倒れ込んだ兵士の胸の辺りをブーツでしっかりと踏み付けるゼーニャ。

片足で1人を踏み抑えながら、頭を押さえている兵士に向かって銃口を向ける彼女。

「くたばれ!」

“ババババッ!”

数メートルの距離から銃撃された男はヘルメットごと頭を撃ち抜かれてそのまま倒れ込みました。

彼女に踏みつけられている仰向けの兵士は脇腹に破片を食らって出血していました。

周囲に他の敵がいない事を確認した彼女。

彼女は気づいていたのです。

この男が先程ゼーニャが両手を挙げて立ち上がった時にニヤついていた事を。

怒りが沸々と込み上げるゼーニャ。

このドイツ兵に向かって微笑みかけます。

「わたしを見なさい!」

「わたしは衛生兵よ。」

「アラッ、どこが痛むの?」

「ここかしら?」

そういいながら彼の傷口をブーツでグリグリと踏みにじり回す彼女。

「ホラホラァ!」

“ウゥ~!”

男は激痛にうめき声をあげます。

「静かにしなさい!」

苦しむ男を睨み付ける彼女。

ゼーニャのブーツは男の血でべっとりと汚れていました。

「わたし達の国から出ていきなさい!」

“ペッ!”

そういって男の顔に唾を吐き掛ける彼女。

今度は唾で汚れた男の顔を踏み付けます。

そして彼の胸に銃口を向けると、

「死ね!」

“バババッ!”

男を葬るのに必要な銃弾はわずか3発でした。

ゼーニャが辺りを見渡すと17人の死体が転がっていました。

「全部わたしがやったのね。」

怒りと憎しみで我を忘れて敵の負傷兵をいたぶり倒してから射殺した彼女。

「わたし、なんて事しちゃったんだろ。」

「ごめんなさい。」

たった今、彼女が惨殺したドイツ兵に向かってつぶやく彼女。

看護兵が本来持っている負傷者への優しい気持ちが本能的に蘇ってきました。

“バシュッ!”

「アッ!」

前方の岩陰からドイツ兵が撃って来ました。

背後の岩陰に向かって走り出す彼女。

すかさずマシンガンを構えます。

「弾倉、これで最後だわ。」

「手榴弾もあと2つ。」

本来赤軍兵士(特に女性兵士)は必ず自決用に最後の1発は取っておくのです。

しかし、彼女は最後の1発も敵を撃ち殺すために使ったのでした。

ゼーニャは追い詰められ、残ったドイツ軍兵士達が続々と集まってきました。

周囲を完全に包囲されたゼーニャ。

「かかって来なさい!」

「ホラッ!」

“バババババッ!”

「ソレッ!」

“ヴォーン!”

突撃を敢行するドイツ兵。

彼女の最後の銃弾と手榴弾で更に3名が殺されました。

「これまでだわ。」

全弾使い果たし、手榴弾も無くなった彼女は両手を挙げて立ち上がりました。

今度は慎重に取り囲むドイツ軍兵士。

ドイツ軍に捕まったゼーニャ。

負傷したドイツ兵が先程彼女が味方の兵士をなぶり殺しにしたのを目撃していました。

彼はゼーニャに虐殺されるのを何とか免れたのです。

彼女を取り囲んだドイツ兵は総勢40名。

彼女の蛮行は味方兵士の遺体にその痕跡がはっきりと残っていました。

無残に胸を撃ち抜かれて殺害された兵士の腹部から脇腹に掛けて、更に彼の顔までもがブーツで踏みにじられた彼女の靴跡で泥々に汚れていたのです。

また彼女のブーツにも彼のどす黒い血がべっとりと付着していました。

まだあどけない18歳の少女の恐ろしい残虐行為に、怒りの表情で彼女を睨み付ける兵士達。

この後、ゼーニャは所属部隊の情報に関する尋問を受けますが完全無視を続けます。

彼女の完全黙秘はドイツ兵達をイラつかせ、大勢の味方兵士の殺害と面白がって戦友を惨殺した事に激高したドイツ兵達によって、ゼーニャは惨たらしく処刑されたのです。

後に戻ってきた彼女の所属する部隊がゼーニャの惨殺死体を発見しました。

目はえぐられ、鼻は切り落とされ、胸も切り落とされ、体は地面に釘付けにされていました。

彼女の勇敢な戦闘ぶりと惨殺された状況は現場に取り残されていた動けぬ複数の負傷兵達によって伝えられました。

ソ連軍がこの渓谷に戻ってきた後に現場で発見されたドイツ軍兵士の遺体は60名に上りました。

この日の戦闘でゼーニャが殺害したドイツ兵の総数60名(負傷者数名)は18歳の看護兵の少女の戦果としてはあまりにも大きく、そして彼女の支払った代償は彼女自身の惨たらし死だったのです。

 

クセーニャ・コンスタンチノワは、1943年10月3日にスモレンスク州ラスポピー村の共同墓地に他の242人の兵士と一緒に埋葬されました。

戦後彼女はソ連邦英雄の称号が与えられ、英雄広場の記念館には、彼女の肖像画がブロンズで飾られています。

 

私服姿のゼーニャさん                         

 

 

 

あどけない少女のゼーニャさん

 

 

軍服姿のゼーニャさん

 

 

ブロンズ像で飾られたマシンガンを構える軍服姿のゼーニャさん

 

第7回シリーズ2人目の女の戦士はマリア・カルポヴナ・バイダさんです。

彼女は1922年2月1日、クリミアの農家で生まれました。

19歳の彼女は積極的に赤軍に志願し、まずは医療の勉強をして看護コースを卒業しました。

そして1941年12月マリアはセヴァストポリの防衛戦に参加していました。

彼女は看護兵として数十人の赤軍兵士や将校の命を救いました。

そして上級軍曹になった彼女は偵察部隊への異動を申請します。

彼女がこの特殊な任務に志願したのは、ロマンスからではなくナチスをとても憎んでいたからなのです。

彼女は強く俊敏で射撃の腕前も良かったのです。

特務隊に入ったマリアは敵の背後に回って様々な情報を司令部に伝えます。

1942年6月マリアは3名の兵士を連れて偵察に出かけました。

彼女に同行したのは中年男性のアナトリーと若い男性兵士のミハエル、そして18歳の歩兵女子のリアでした。

彼らは前線で部隊から1人はぐれたドイツ兵の伍長を発見します。

 

「手を挙げなさい!」

ふいに物陰から現れたソ連軍偵察隊に成す術もなく降伏する伍長。

マリア達は彼を司令部まで連行しなければなりませんでした。

後ろ手に縛られた捕虜は指揮官がまだ若い女性兵士だと理解し激しく抵抗します。

大柄なこの捕虜を引きずっていくのはかなり厄介でした。

更にドイツ語でわめき始める始末でした。

すると若い女子のリアがたまりかねて激しい口調で怒鳴ります。

「うるさい!」

「いい加減、黙りなさい!」 

そんな伍長の襟首をしっかりと掴みながら引きずっていくマリア。

抵抗を続ける捕虜はまた叫びます。

その瞬間でした。

“バシュッ!”

若いミハエルが喉元から血が噴き出して倒れました。

狙撃されたのです。

「伏せて!」

“バシュッ!”

更にもう1発が今度はアナトリーの足を貫通します。

撃ってきたのはマリア達のいた道路の反対側に放置されていた焼け焦げた車両の物陰からでした。

ちょうどマリア達の少し後方を歩いていたリアからはこの一瞬の光景が狙撃したドイツ兵と共に丸見えだったのです。

「ザケンジャネ~!」

“ババババババババッ!”

怒りに任せてサブマシンガンを2人のドイツ兵に向かって乱射するリア。

マリア達を狙っていた彼らは、左方向からいきなりリアの銃撃を受けてあっさりと射ち倒されました。

「ざまあみろ!」

ドイツ兵2名を撃ち殺したリアはたった今戦死したミハエルの元に駆け寄ります。

「ミーシャ!」

泣き叫ぶ彼女。

凄まじい形相で立ち上がると、座り込んでいた捕虜の顔面に泥で汚れたブーツの靴底をヒットさせて蹴り倒したのです。

“ヴァスッ!”

「全部アンタのせいよ!」

“ドスッ!”

“ドスッ!”

“ドスッ!”

リアに蹴り倒された男は仰向けの状態でひっくり返り、ヘルメットが脱げてしまいます。

完全に無防備な状態の彼の横腹にリアは激しくブーツで蹴りを打ち込み始めました。

リアのブーツのつま先が男の脇腹に食い込みます。

情け容赦のない強烈な蹴りを打ち込む彼女。

「コノヤロ~!」

“ドスッ!”

4発ほど強烈な蹴りを浴びせると、今度はサブマシンガンの銃口を彼の胸元に向ける彼女。

「わたしに、殺させて下さい!」

いきり立つリアの肩にそっと手を載せるマーシャ(マリア)。

「あなたの気持ちはよくわかるわリア。」

「でも本部では彼の情報を待ってるの。」

「解るわね。」

優しくささやきかけるマーシャの言葉に銃口を下げるリアでした。

銃をゆっくり下ろした彼女。

やっとのことで起き上がったドイツ兵。

リアは自分の口元を彼の顔に近づけます。

“ペッ!”

男の顔面に口に溜めた痰唾を吐き掛けるリア。

「いい気味だわ!」

そうつぶやくと18歳の少女は勝ち誇ったように立ち上がりました。

みじめな姿で座り込むドイツ兵の伍長。

彼の顔はリアの靴跡でどす黒く汚れ、額からは白く濁ったリアの唾が滴り落ちていました。

後ろ手に縛られた彼は汚れた顔を拭う事もできず、うつむいたままでした。

マーシャはそんな彼に近づくと、ポケットから白いハンカチを取り出して泥と唾で汚れた彼の顔を優しく拭き取ってあげました。

「これで綺麗になったでしょ。」

「わたしの部下がやり過ぎたわ。」

「ごめんなさいね。」

マーシャの優しい口調に男は小さな声で

「ダンケ(ありがとう)」と答えました。

その後、この捕虜はおとなしくなり素直にマーシャに従いました。

本部に戻ったマーシャは捕虜の抵抗に起因する味方兵士2名の死傷の責任を追及され営倉3日(禁固刑)を言い渡されます。

しかし、その1時間後に本部に呼び出されたマーシャ。

ガンとして口を割らない捕虜の尋問に手を焼いた情報将校は、試しに捕まえたマーシャに尋問させることにしたのです。

先程18歳の女子に殺さるそうになったところを救われた彼は、マーシャの顔を見るとホッとした表情になり、彼女に対して情報を素直に話し始めました。

この伍長の情報は貴重なものでドイツ軍の防衛ラインに関するものでした。

捕虜を完全に掌握したマーシャに司令部は感謝の意を表しました。

 

1942年6月

セヴァストポリ近郊のドイツ国防軍歩兵連隊の兵士23人が死亡した現場から、非常に興味深いドイツ語の報告書がアーカイブスで見つかったのです。
シュタイナー特務准尉は23体のドイツ兵の死体が様々なポーズで横たわっている場所を調査しました。
殺害された兵士は全員、1939年から軍務に就いている経験豊富な兵士でした。
19人の兵士は複数の銃弾によって死亡していました。

その内の1名は体中に多くの打撲婚や蹴られた靴跡があり、複数名によるリンチにあった可能性を示唆していました。

3人の兵士と1人の将校は頭部が陥没し、ひどく殴られて死亡ていました。

その内の1体の兵士は頭部の致命傷になる激しい殴打の跡がありました。

さらに彼の肋骨は完全に砕かれ、胸部には激しく踏み付けられた靴跡がくっきりと残されていました。
結論として優勢な敵軍による突然の奇襲により小隊全員と隊長が殺されたということになりました。
そして、この出来事について、アーカイブスの文書は何を語っているのでしょうか。
ドイツ軍の全司令部は、もし本当のことを言われても、おそらく信じられなかったでしょう。
ナチスの小隊を壊滅させたのは、砲弾で傷ついた若い20歳のクリミアの少女マリア・バイダだったのです。

 

1942年6月7日、ドイツ軍によるセヴァストポリへの3回目の攻撃が始まるとマリアは前線に偵察に出ました。

彼女の中隊の弾薬は不足し、彼女は戦死した敵兵から武器を調達しなければならない状態でした。

ドイツ軍の砲撃が激しさを増し、マリアは頭と右腕に負傷し、脳震盪を起こして意識を失ってしまいました。

彼女は夜になると我に返ります。

その時、ドイツ軍が防衛線を突破してきました。

マリアは人知れず森を抜け、殺されたドイツ兵達からサブマシンガンを2丁奪い、壕の跡地を通りかかりました。

この廃墟の中では味方の中隊の生存者の兵士8人の尋問が行われていました。

酷い拷問を受けたのか負傷して動けない男性兵士4名とその傍らにこれから尋問を受けようと待つ若い女性兵士4人が見えました。

味方の兵士8名はマーシャの向かって左側に固まっていました。

右側には合計23名のドイツ軍兵士と指揮官の将校が立っていました。

そんな状況をとっさに理解しどうするか判断したマーシャ。

 

「敵は23人、わたしは1人。」

「どうしようかしら?」

「しかも、味方は4名負傷しているし・・。」

「でも4名の女子はみんな無事だわ。」

「こうなったら、こうするしかないかも。」

彼女はドイツ兵から奪い取った2丁のMP40短機関銃を左右の肩からぶら下げて構えます。

マリアは廃墟になった壕の斜面の上方で彼らをうかがっていました。

ちょうど味方の捕虜達とドイツ軍小隊を見下ろす状態だったのです。

いきなり立ち上がったマーシャは向かって左側の味方の兵士達に向かって叫びます。

「みんな、伏せて!!」

その言葉と同時にドイツ軍小隊に向かって2丁のサブマシンガンで銃撃を開始した彼女。

「ソレ~!」

“ババババババババババババババッ!”

「コノ~!!」

“ババババババババババババッ!”

ドイツ兵達を見下ろしながらの銃撃乱射は、狙う必要もなく体を彼らの方に向けるだけでその弾幕が次々とドイツ兵達を薙ぎ倒していきました。

「面白いくらいにバタバタと倒れていくわ!」

不意を突かれたドイツ軍小隊はあっという間に11人が撃ち殺され、残りの12名も銃弾を浴びて、のけ反る者や屈む者、倒れ込む者などすぐに反撃できる者はいませんでした。

「今だわ!」

「奪うのよ!」

捕虜になっていた女子4名が一斉に薙ぎ倒されたドイツ兵に襲い掛かり銃を奪い取ります。

ドイツ兵の半数はマーシャによって撃ち殺され、残りの兵士もみな負傷した状態でした。

そんな彼らに襲い掛かった少女達は、立ち上がろうとする者や、銃を取ろうとしている兵士の顔や胸を激しく蹴り上げます。

「コノヤロ~!」

"パコ~ン!"

「エイッ!」

"パカーン!"

一挙に形勢が逆転して勢いづく女子兵士達。

蹴り倒したドイツ兵達が銃を握れないように手の平をブーツのカカトで強か踏み付けてグリグリとニジり回します。

「こうしてやるわよ!」

「それそれっ!」

兵士達の手は靴底の泥と血にまみれていて、とても彼女達に歯向かう事など出来ない状態でした。

生き残りのドイツ兵達の手を踏み潰して動きを封じ込めた女子達は、奪い取った銃を手に拷問を受けた味方の兵士の復讐を始めるのでした。

「よくもやってくれたわね!」

「ホラッ!」

“バシュッ!”

「こいつもやっちゃいなよ!」

「くたばれ!」

“バシュッ!”

まだあどけない20歳そこそこの女子兵士達は1人また1人と撃ち殺していきます。

「今度はわたしにやらせてよ!」

「いいわよ、やっちゃいな。」

「舐めんじゃないよ、わたし達を!」

“バシュッ!”

「いい気味!」

一番動けそうな兵士から殺害していく少女達。

4人目になると面白がって笑いながら引き金を引きます。

「地獄に落ちな、ふふっ!」

“バシュッ!”

「こいつら、まとめて殺っちゃおうよ!」

負傷して虫の息の2名を抱き起す女子達。

2人の女子がそれぞれの男のヘルメットを脱がせて髪の毛も掴んで首を固定します。

「いくわね!」

“バシュッ!”

“バシュッ!”

ライフル銃を構えた女子が男達の顔に1発づつ撃ち込みます。

「ケダモノどもめ!」

「ざまあ見ろ!」

更に負傷したドイツ兵を見つけた女子はライフル銃を構えながらこの男に微笑み掛けます。

「この辺かしら?」

“バシュッ!”

腹部に銃口を押し付けて引き金を引く彼女。

「アッハッハッ!」

「まだ生きてるのかよ?」

「しぶといね。」

“バシュッ!”

今度は別の少女が男の頬に銃口を押し当てて撃ちました。

「ふふふっ、コイツの顔、台無しだね!」

「トドメ刺しちゃいなよ!」

“バシュッ!”

「やったね!ふふっ。」

「みんな!コイツまだ生きてるよ!」

立ち上がって銃を取ろうとしている兵士に気付いた女子が囃し立てます。

「ザケンナヨ!」

“スコ~ン!”

男が取ろうとした銃を蹴り飛ばす少女。

4人の女子達が男を取り囲んで見下ろします。

悪意に満ちた少女達のまなざしに恐怖するドイツ兵。

「わたしを見なさい!」

“ペッ!”

1人の少女が男の顔に向かってツバを吐き掛けました。

すると、他の女子も一斉に男に向かってツバを吐き掛け始めました。

「やっちゃえ!」

“ペッ!、ペッ!”

“ペッ!、ペッ!”

“ペッ!、ペッ!”

ツバまみれになった男の顔をいきなりブーツで蹴り上げる少女。

「このやろ~!」

“パコ~ン!”

それを合図に全員が男の上半身や顔に容赦なくブーツで蹴りの連打を浴びせます。

「エイッ!」

“ドスッ!” 

“ドスッ!”

“ドスッ!”

「分かったかよ!」

仲間の男性兵士に対する拷問が女子達の怒りに火を付けたのです。

「今度は、みんなで踏み躙ってやろうよ!」

「ホラホラッ!」

散々蹴りつけた後は負傷した男の体を踏みまくる少女達。

「コイツ、ここ怪我してるよ。」

銃創のある右肩にブーツの靴底を擦り付ける少女。

「あらっ、可哀そうに?」

「わたしが、たっぷり泥を塗り込んであげるわね。」

「アッハッハ!」

「痛がってるわ、コイツ、ふふっ!」

痛みで顔を歪めるドイツ兵を見て黄色い声をあげて笑い合う女子達。

「わたし達を怒らせると、こうなるのよ!」

男の顔も肩も胸も腹部も、まんべんなく女子達のブーツがニジり回し、彼の軍服は彼女達の靴跡でどす黒く汚れていました。

「わたし達、タップリ可愛がってあげたかしら?」

「このくらいでいいかも。」

4人の私的制裁に絶命寸前のドイツ兵。

「そろそろトドメよ!」

「楽にしてあげるんだから。」

「ありがたく思いなさい!」

“バシュッ!”

「ふゥ~、片付いたわ!」

 

少女達が敗残兵をなぶり殺しにしている間にマーシャは白兵戦を演じていました。

「コノヤロ~!」

彼女はマシンガンの弾を全弾撃ち尽くすと、1つの銃を捨て去りもう1つの銃をこん棒のように振りかざします。

「くたばれ!」

“グシュッ!”

中腰になっていたドイツ兵の額の辺りを狙って、銃の台尻で思いっきり殴りつける彼女。

男は声も上げずに倒れ込み、即死状態でした。

更にもう1人のドイツ兵がマーシャに掴み掛かってきました。

「何すんのよ!」

「エイッ!」

“ドスッ!”

とっさに身をかわして男の腹を蹴り上げるマーシャ。

そして

「食らえ!」

“バスッ!”

今度も銃の台尻を男の顔目掛けて打ち付けます。

もんどりうって倒れた男は二度と動きませんでした。

そして2人の兵士がマーシャに襲い掛かります。

幸い2人とも負傷していて動きが鈍くマーシャの敵ではなかった。

「エイッ!」

“カコーン!”

1人の男にも先程と同じように銃の台尻をブインと振り回しながら渾身の力で打ち込みました。

一瞬男の頭部が歪んで見えました。

台尻が当たった瞬間に男の頭蓋骨は打ち砕かれ、体が一回転して大の字に転がりました。

「死んだわね。」

「こいつで最後だわ。」

残ったもう1人の男がマーシャの肩を掴もうとした瞬間。

「ホラァ!」

身をかわして男の背後に回るとそのまま押し倒した彼女。

ひっくり返って仰向け状態から立ち上がろうとしたのを見て、

「エイッ!」

“コ~ン!”

思いっきりブーツのつま先で蹴り上げます。

再び仰向けに倒れた男の胸の辺りに飛び乗ると、そのまま両足で飛び跳ねたのです。

「エイッ!」

「エイッ!」

「ソレッ!」

彼女のブーツが男の体に着地する度にソールの部分が胸部に食い込みます。

更に片足を軸にもう片方の脚のブーツの踵を胸に打ち付けるマーシャ。

「エイッ!ソレッ!」

「これでもかっ!これでもかっ!」

普段冷静な彼女に何がここまでさせるのか・・。

ドイツ兵の上衣はマーシャが踏み付けるブーツの靴跡でどす黒く汚れ、口から血を吐いていました。

繰り返し踏み付けている内に男の胸部の踏み応えが無くなり、骨がバラバラに砕けたようでした。

銃を振り上げた彼女は殆ど息の無い男の額にトドメの一撃を加えました。

「エイッ!」

“グシュッ!”

男の頭は無残に砕けて陥没し、マーシャはやっと我に返って男の体から降りたのです。

マーシャが4人目のドイツ兵を惨殺した頃に、少女達による集団リンチも終わったのでした。

「スカッとしたわね、わたし達!」

笑いながらマーシャの方に歩いてくる女子達。

冷静さを取り戻したマーシャは4人の女子偵察兵と負傷した4名の男性兵士を連れて自軍陣地に戻るのでした。

若干20歳で体重がわずか55kgのクリミアの少女がドイツ軍歩兵小隊を壊滅させるのに要した時間はわずか10分程でした。

この日の戦闘でマリアが殺害したドイツ兵は合計15名でした。

その内11名は銃撃による射殺で、残りの4名は彼女の撲殺によるものでした。

残りの歩兵小隊の隊員8名は捕虜になっていた女子兵士4名によって殺害されました。

 

その後、マーシャは7月12日にドイツ軍の激しい攻撃の中で負傷し敵の捕虜になります。

女性捕虜が収容されるラーフェンスブリュック収容所で3年間を過ごした彼女は1945年5月8日に米軍によって解放され故郷のクリミアに戻ったのです。

大戦生き残ったマリアはレーニン勲章とメダル「ゴールドスター」を受勲しソビエト連邦の英雄の称号を授与されました。

戦時中の軍服姿のバイダさん

戦後、受勲した当時のバイダさん

 

 

 


 

 

 

 

 

 ロシア少女兵シリーズもいよいよ後半に入ってきました。

本日は、ロシア女子だけの戦闘機隊、爆撃機隊を取り上げます。

その前に、ロシア女子達の多大なる戦果について考察してみたいと思います。

これまで取り上げてきました、ロシア女子達の活躍ぶりたるや凄まじく、ハリウッド映画のランボーの少女版のようです。

短期間の内に数百名のドイツ兵を殺害した少女達ですが、特に女子狙撃兵の活躍ぶりは目を見張るものがあります。

私も今回のシリーズを書くためにかなりロシア系のサイトを閲覧して情報を集めました。

そこで分かってきたことがあります。

狙撃兵のメインの任務は敵の進撃を食い止め、味方の撤退の為の時間を稼ぐという事に尽きます。

パブリチェンコさんが活躍したオデッサやセヴァストポリの闘いは正にそういうものでした。

敵の進軍を食い止める為の狙撃は狙撃兵にも戦死するリスクが高くなります。

ドイツ軍も躍起になって狙撃兵を排除しようとするからです。

こういう状況ではクラウディアさんが答えていたように狙撃は1日1発で、戦果は1日1名でしょう。

ですがロシア女子の狙撃兵はこういうシビアな任務とは別に“狩り”に出かける任務が頻繁にありました。

彼女達が大勢のドイツ兵を撃ち殺し、スコアを稼いだのもこの“狩り”だったのです。

独ソ戦中盤の1942年頃はドイツ軍の支配地域がかなり広範囲にありました。

なので、狙撃女子達が狩りに出掛けると、数キロ以内にドイツ兵のグループと出くわす事が頻繁にあったらしく、

時としてドイツ兵達は陣地を構築していたり、食事を取っていたり、洗濯をしていたり、水汲みの途中だったりと全く無防備な状態でした。

彼女達はそんな場面では絶好のポジションを決めた後に3~4名なら全滅させ、

10名以上ならできるだけ殺して撤退というパターンだったようです。

こういった狩りはドイツ軍にしてみれば、かく乱され心理的にとても嫌だった事でしょう。

このシリーズに登場する女子達は一人で数百人のドイツ兵を殺しまくった訳なのですが、このような“女の戦士”は

女性兵士の中でも本当に一握りの人達だったのです。

独ソ戦で戦死したドイツ兵は390万人です。

この数を見れば前線でいかに消耗品のように撃ち殺されていった兵士が大勢いたのかということがよくわかります。

これに対して、ソ連軍の戦死者は1500万人以上ですから、実はロシア兵の方がドイツ軍の4倍も殺されていたのです。

ソ連軍には他国では考えられない“督戦隊”という部隊が存在していました。

退却してくる味方の兵士に無理矢理戦う事を督促する部隊なのです。

何をするのかといえば、撤退してきた味方の兵士を撃ち殺すのです。

ソ連軍のマニアの知人によれば、この督戦隊の機関銃掃射によって殺されたロシア兵の方がドイツ軍によって殺されたものより

も多かったというのです。

そうであれば、ドイツ軍兵士の犠牲者の4倍というのもうなずけます。

 

さて、本日登場するのは女子だけの航空部隊です。

実は私が学生の頃買った“出撃!魔女飛行隊”というブルース・マイルズ氏著書の作品が私の女性兵士との最初の出会いでした。

当時は女性だけの戦闘機隊や爆撃機隊という興味深い内容にとても刺激を受けました。

そして今回のシリーズの為にもう一度この本を読み返してみました。

あらためて面白そうなエピソードがありましたので、ロシアサイトからの引用や資料も織り交ぜてご紹介致します。

 

1941年10月に有名な女性パイロットのマリナ・ラスコヴァの呼びかけによって集められた約400名の女子によって

編成されたのが以下の部隊です。

第586女子戦闘機連隊(YAK1型30機)

第587女子爆撃機連隊(Pe-2型爆撃機30機)

第588女子夜間爆撃機連隊(Po-2型複葉機30機)

この588部隊が後に有名になった、“夜の魔女”と呼ばれてドイツ軍を苦しめた部隊なのです。

また、586戦闘機連隊には女性エースパイロットのリリア・リトヴァクさんがいました。

彼女は戦友のエカテリーナ・ブダノワさんと共に後に男性の部隊に転属し活躍します。

 

ロシア女子が初めてドイツ空軍機を撃墜したのは1942年9月のヴァレリヤ・コムヤコワさんでした。

サラトフ上空にて、敵の爆撃機編隊を発見した彼女は射撃しながら編隊を分散させてから、

1機のユンカースJuー88に命中弾を喰らわします。

燃え上がるエンジンの炎を追って機関砲の長い連射を浴びせ続け、炎の塊になるまで執拗に追い続けました。

翌日、墜落現場からの報告によれば散乱した機体のそばにドイツ空軍パイロット4名の死体が散らばっていました。

西部戦線から参加していたベテランパイロットたちでした。

彼女の執拗な銃撃に落下傘での脱出もできなかったようです。

そんな有り様を聞いた彼女はひどく動揺していたようです。

女性初の撃墜を果たしたヴァレリヤ・コムヤコワさん

 

女子戦闘機隊はスターリングラード戦線でのドイツ軍爆撃機への攻撃とドイツ軍地上部隊への攻撃が当初の主な任務でした。

ドイツ軍地上部隊への攻撃について当時20歳の少女クラウディア・ブリノワさんの回想より

 

「わたし達は、ドイツ軍への地上掃射攻撃を命じられました。」

「これはわたしにとって初めての事でした。」

「この任務では超低空航法の腕の見せ所で、素早く300mまで上昇して敵の位置を確認するんです。」

 

「いるいる、たくさんいるわ!」

「わたしの獲物たち!」

「急降下に入って機首と射線を車輛隊列に真っすぐに向け続けなければなりません。」

「わたしの足は方向舵ペダルを左右に蹴り続けるんです。」

「そして、狙いをつけて・・」

「発射ボタンを押すの。」

「エ~イ!!」

“ドドドドドドドドドドドドドッ!”

「機関砲と機銃の曳光弾がナチスの戦車やトラックや兵士の群に吸い込まれていくんです。」

“ズヴォーン!”

“ヴォヴォーン!”

「次々に爆発する戦車やトラック!」

「ドイツ兵どももバタバタと薙ぎ倒されていく~!」

「もう、やったね!」

「いい気分、爽快だわ!」

「やつらの長い長い隊列に、わたしは弾切れになるまで正義の弾丸を浴びせ続けました。」

「全弾撃ち尽くすまでの20秒程がホント、最高の気分だったわ。」

「このわずか20秒がわたし達にとっての至福の時間なの。」

「どんな感覚かって?」

「わたし達の履いているブーツで・・、」

「地面のアリの行列を踏み潰す感覚かしら。」

「もちろん、わたしに踏み潰されるのはアリさんじゃなくて、ナチスの奴らよ。」

「この闘いは、わたし対やつら。」

「やつらは戦車に装甲車に兵員輸送トラックに大勢のドイツ兵ども。」

「あれだけたくさんいても、たった1人のわたしの方が圧倒的に有利なの。」

「わたしはやつらの上空から、狙いをつけて指で軽く発射ボタンを押し続けるだけだわ。」

「奴らの抵抗は可哀想なくらい、ホント無力だったわ。」

「一回の掃射で何人殺したかですって?」

「100人?200人?その位かしら。」

「戦車やトラックは少なくとも十数両は爆発して炎上するの。」

「数秒前に爆発した車両の炎と黒煙の中を突っ切って飛ぶ爽快感!」

「たまらないわ!」

「ある時なんか、兵員満載のトラックと隊列組んで歩いてるドイツ兵どもを集中的に掃射してやったの。」

「わたしの撃ち込んでる弾丸が無数の土煙を上げて、辺り一面にいた人影がバタバタと薙ぎ倒されていったわ。」

「あの時、わたしが味わった高揚感と爽快感は忘れられません。」

「地上はわたしの撃ち込んだ銃弾で燃え上がる車両と無数の死体とでホント、地獄だったのよ。」

「そんな光景をゆっくり眺めるわたしは、満足気に笑いながら帰途につくの。」

「わたしが撃ち殺したやつらを可哀想だなんて思った事は一度もありません。」

「むしろ、もっと破壊して殺したいっていう感じだったと思います。」

女子戦闘機隊のクラウディア・ブリノワさん(当時20歳)

 

戦闘機からの機銃掃射は絶対有利な位置からの攻撃ですから、相手に与える損害も甚大で

地上から撃ち返すライフルや軽機関銃の弾は本当に無力なのです。

この頃、女子エースパイロットの21歳のリリア・リトヴァクもJu88爆撃機を初撃墜しました。

リリアはその後も活躍し12機のドイツ軍機を撃墜しました。

女性エースパイロットのリリア・リトヴァクさん(上)と11機撃墜のエカテリーナ・ブダノワさん(下)

 

また、クルスク戦車戦の時にはタマラとリサの2人がドイツ爆撃隊ドルニエDo-17とユンカースJu-88合計42機の編隊と遭遇します。

 

「タマラ、あれって鳥の群れかしら?」

「あれは、ドイツ軍よ。」

「すごい数だわ。」

「よ~し、やってやろうじゃないよ!」

「いくわよリサ!」

「わたし達は敵の数は気にせず、狙いを定めて銃弾を浴びせました。」

「ソレ~!」

“ドドドドドドドドドッ!”

「わたしとリサの最初の一撃で1機づつ火を噴かせました。」

「彼らは墜落して地上で爆発したわ。」

“ヴォヴォーン!”

“ヴォーン!”

「やったね!」

「次よ、次!」

「わたし達は急上昇してから2回目の銃撃を加えました。」

「エ~イ!」

“ドドドドドドドドッ!”

「短い連射でまた1機炎に包まれたわ!」

「やるじゃん、わたし!」

「リサも更に1機火だるまにしてやるのが見えたわ。」

「その瞬間・・、」

"ババババッ!"

「やられた!」

「わたしの機が被弾して降下し始めたんです。」

「仕方なく、わたしは落下傘で脱出しました。」

 

「タマラの機が墜落するのが見えました。」

「わたしは悲しみと怒りが入り混じって湧きあがり、敵機に銃弾を浴びせ続けました。」

「コノヤロ~!」

"ドドドドドドドッ!"

「わたしの銃撃は敵の機銃手や乗員を撃ち抜きました。」

「それでも、撃墜はできず・・。,」

「わたしの機もオーバーヒートを起こして不時着することになったんです。」

「残念だわ!」

その日の内に“女子戦闘機パイロット2名でドイツ軍爆撃機隊42機に殴り込み、4機撃墜!”というニュースが世界に流れました。

ドイツ爆撃機2機撃墜のタマラ・パミャトニクさん(上)と同じく2機撃墜のリサ・スルナチェフスカヤさん(下)

 

またクルスク会戦に参加したガリア・プルディナはこんな風に回想しています。

「恐ろしいほど狭い空間に多くの戦闘機が入り乱れていました。」

「わたしは乱闘の輪からちょっと離れ、高度を上げて下の方を眺めました。」

「わたしの獲物がいました。」

「わたしは急降下して、メッサーシュミットの下に潜り込みました。」

「そして敵の腹に短く機関砲を撃ち込んだんです。」

“ドドドドドッ!”

「ほんの一撃で火の玉になりました。」

「わたしは、爆撃機と輸送機を1機づつ撃墜していましたが、戦闘機は初めてでした。」

「わたしは、わたしが殺した男に対して可哀想だなんていう感覚はありません。」

「でも、爆撃機を攻撃している時に機銃手の顔立ちが見えたんです。」

「その時は、わたしが銃弾を撃ち込んでいる相手も人間なんだと強く感じました。」

ガリア・プルディナさん

 

第586女子戦闘機隊の戦果は4419回出撃し125回の空中戦を行い合計38機のドイツ軍機を撃墜しました。

これにリリア(12機撃墜)とブダノワ(11機撃墜)の23機を合わせると61機撃墜でした。

地上への掃射攻撃でドイツ軍に与えた損害は計り知れないものだった事でしょう。

リリアさんとブダノワさんは共に大戦中に戦死しています。

 

女子の爆撃機隊はどうだったのでしょう。

第587女子爆撃機隊は昼間の爆撃任務についていました。

爆撃目標は主にドイツ軍地上部隊の集結地点や駅、弾薬庫、港、砲兵陣地などでした。

昼間の爆撃でしたので戦闘機の護衛付きで比較的安全な状況での任務だったようです。

こちらの部隊は1134回出撃し980トンの爆弾を投下し、数多くのドイツ軍施設を破壊しました。

また機銃手の射撃によってドイツ軍戦闘機を6機撃墜しました。

しかしこの連隊は終戦までに15機が撃墜され21人の女子が戦死しています。

 

そして“夜の魔女”として有名になった第588女子夜間爆撃機連隊です。

この連隊の活躍ぶりはアマゾンプライムビデオでも見られます、「ナイト・スワローズ」という映画で

戦闘描写が比較的忠実に描かれています。

連隊で使用されていた機体はPo-2という複葉の練習機で、武装は貧弱で機銃も無く(大戦後期には旋回機銃が装着されました)

パイロットの護身用の拳銃だけで、搭載する爆弾も90kg爆弾が4発でした。

時には小型の爆弾を後部座席のナビゲーターが手で投げ落とす事もあったようです。

最高速度がわずか160kmのこのか弱い飛行機はその弱点を利用してドイツ軍に多大な損害を与えました。

離着陸の距離が短いため、敵の数キロ圏内で道路や野原を使って離着陸し、ゲリラ的な爆撃を行っていました。

地上の偵察隊と連携してあらかじめチェックしてあるドイツ軍の集結地点へ暗闇の中を飛んでいき、

目標地点でエンジンを切って滑空し照明弾を落としてから爆撃するという戦法でした。

米軍の大型爆撃機によるじゅうたん爆撃とは真逆のピンポイントでの無駄のない爆撃でした。

敵の施設や戦車や車両、兵士たちを狙って正確に爆砕していたので、ドイツ軍兵士の損耗は大きかったのです。

 

爆撃隊パイロットのマリナ・チェチュノワさんの話です。

「わたし達は、暗闇の中で地上に敵の気配を感じました。」

「照明弾を落とすと大勢の敵兵や車両が目に入りました。」

「爆弾は合計4発で、2発づつ投下するんです。」

「今よ!」

「投下レバーを引くわたし。」

“ヴォーン!”

“ヴォーン!”

「わたしの背後で凄まじい爆発が起こりました。」

「敵のトラックが爆発し、10名程のドイツ兵が火だるまになってもがいているのがチラリとみえました。」

「やったね!」

「思い知ったか!」

「わたしはエンジンを掛けて上昇し、再びエンジンを切って滑空し2回目の爆弾投下を実行しました。」

「それっ、もう1発よ!」

“ヴォヴォーン!”

「今度は2発同時に爆発しました。」

「装甲車が吹っ飛んで、もう1発はドイツ兵の群れの真ん中で炸裂したみたいでした。」

「旋回しながら、わたしの戦果を確認すると・・。」

「燃え上がる敵の装甲車に、体を吹き飛ばされて散らばった十数人のドイツ兵の死体が見えました。」

「ホント、いい気味だわ。」

「わたしは満足そうに微笑みながらその場を離れました。」

マリナ・チェチュノワさん

 

ドイツ地上軍相手にやりたい放題の“夜の魔女”ですが、1943年8月に手ひどい目に遭います。

彼女達の執拗な爆撃による損害にたまりかねたドイツ軍は夜間戦闘機を配備し待ち構えていました。

メッサーシュミットBf110によって次々と撃墜されていく夜の魔女達。

この日、彼女達は4機撃墜されて8名の女子が戦死しました。

 

戦隊ナビゲーターのソフィア・ブルザエワさんの話です。

「わたし達にとって、それは正に悪夢でした。」

「さっきまで元気に敵をやっつけていたわたし達の仲間8人が、今はいないのです。」

「わたし達は、ナチスへの憎しみと怒りがますます激しく燃え上がりました。」

「ドイツ軍を攻撃するたびに、憎しみを込めて爆弾を落としたり投げつけたりしてやりました。」

「大戦後期になると後席に旋回機銃が装備されたんです。」

「ナビゲーターのわたしは、後席で機銃手も兼ねていました。」

「爆弾を投下した後で急上昇すると、わたしの視界にドイツ軍部隊が入ってきました。」

「爆弾が命中して炎上している車両の周囲に大勢のドイツ兵がいたんです。」

「わたしは、ドイツ兵どもに機関銃の照準を合わせて狙いをつけたんです。」

「そして情け容赦なく引き金を引きました。」

「許さない!」

「皆殺しよ!」

「それ~!」

“ドドドドドドドドドッ!”

「旋回機銃で地上のドイツ兵どもを面白いように狙い撃ちしてやりました。」

「憎いドイツ兵達が、わたしの撃ち込む銃弾でバタバタと射ち倒されていく様は、ホント快感でした。」

「爆弾投下直後でホッとしていたのか、わたしの銃撃に慌てて逃げ惑うドイツ兵達。」

「逃がさないわ!フフッ。」

"ドドドドドドドッ!"

「わたしの視界に入る地上は、ドイツ兵の死体で埋め尽くされていました。」

「撃ち殺すのが、こんなに楽しいなんて・・。」

 

「わたしは怒りと憎しみで、人を殺す事への感覚が完全に麻痺していたんだと思います。」

 

「その後もわたしは、旋回機銃での掃射で大勢敵兵を撃ち殺したり、時には手榴弾の束を彼らに投げつけてやったりしました。」

「わたしがドイツ軍に与えた人的損害はかなり大きかったと思います。」

ソフィア・ブルザエワさん

 

女子夜間爆撃機隊のイリーナ・シュコリナもある時、地上でとても恐ろしい体験をすることになります。

1942年8月の事です。

ドイツ軍の急速な進撃により撤退しなければならなくなった連隊。

イーラ(イリーナ)と整備士のソフィヤ・オゼルコワの2人は修理が必要な機体があったので飛行場に残ることになりました。

ところが敵の戦車が接近してきた為に、やむなく機体を焼却して本隊合流の為徒歩で退避することになってしまいました。

2人で自軍へ戻る途中で避難民と退却中の友軍の隊列と出会います。

イリーナ・シュコリナの回想より

 

「ソフィヤ、わたし達、かなり敵に押されてるんだわ。」

「味方もひどい状態ね。」

すると上空からストゥーカ急降下爆撃機が襲ってきました。

「ソフィヤ、伏せて!」

“ヴォーン!”

“ヴォーン!”

“ドドドドドドドドッ!”

避難民も友軍の兵士も爆弾に吹き飛ばされて、機銃掃射でバタバタと打ち倒されていきます。

幸い2人は土手に伏せていて無事でした。

わずか数分の間に敵機によって引き起こされた地獄のような光景でした。

「わたし達、空から敵に襲われるのは初めてでした。」

「これって、わたし達がいつもドイツ軍相手にやっている事と同じなんだよね、と思いました。」

「目の前で撃ち殺されていく人達を見て、わたし達はショックを受けました。」

そして、空襲を経験した後、彼女達は隊列と別れて自軍飛行場のある方向に進みます。

「わたし達、軍服のまま敵兵に出くわすとマズいかも。」

「そうよねえ、ソフィヤ。」

「わたし達は、途中で立ち寄った農家で民間人の服を分けてもらいました。」

「ただし、まだ先が長いのでブーツだけは履いたままでした。」

「悪路の中を歩いてきたので、わたし達のブーツは泥々に汚れていて、はた目には分からないと思いました。」

しばらく歩いていると、サイドカーのドイツ兵2名とばったり出くわしてしまいます。

「彼らはバイクの修理中で、最初は民間人の服装のわたし達に全く無関心でした。」

「よかったわ、このまま・・。」

「そう思った瞬間、」

何を思ったのかイーラの方にやって来るドイツ兵。

「1人のドイツ兵がわたしの顔にいきなり手を掛けてきました。」

「ドイツ語で何やらもう1人の男に叫んでいます。」

「その兵士は辺りに誰もいないか確かめているようでした。」

「わたし達、ヤバいかも?」

「わたしの顔を覗き込んできたドイツ兵が、わたしを道路の溝に追いやり、もう1人も戻ってきました。」

「今だわ!」

「撃つのよ、ソフィヤ、撃ちなさい!」

「わたしは、ソフィヤに叫んだけど・・。」

「彼女は慌ててしまって・・。」

「その時、わたしの手はコートのポケットの拳銃に伸びていました。」

「拳銃を引っ張り出したわたしは、背後のドイツ兵に銃口を向けて安全装置を外したんです。」

「そして、彼の顔に向かって射ち込みました。」

“パン!”

「彼は声も立てずにのけぞって、眼の辺りから血を噴き出して倒れました。」

「やった!」

「ソフィヤの銃はポケットの中で引っかかっていたみたい。」

「もう1人のドイツ兵は恐怖で引きつった顔になって、背中のマシンガンのバンドに手をかけていました。」

「わたしはこの男にも1m程の距離から胃袋の辺りに2発撃ち込んでやりました。」

「コイツめ!」

“パン!”

“パン!”

「彼は何か叫んで倒れ、ヘルメットが脱げて綺麗な金髪と整った顔立ちが現れました。」

「やっと銃を取り出したソフィヤが、もがき苦しむ彼の頭に1発撃ち込んだんです。」

「死になさい!」

“パン!”

「2人のドイツ兵は手足を広げて道端に転がっていました。」

「わたし達はひどい吐き気をこらえられませんでした。」

「ドイツ兵にトドメの1発を撃ち込んだソフィヤは少し呆然としていました。」

「わたしは、彼らが死んだか確認するために彼らの脇腹の辺り、そして顔の頬の辺りを優しくブーツのつま先で突ついてみました。」

「ちょっとごめんなさい。」

「コイツら死んでるわ。」

「コイツらの死体とバイクを隠さなきゃ。」

「わたし達は草むらに2人の死体を引きずっていき、サイドカーも分からないように隠しました。」

「わたし達、今まで夜間爆撃で大勢の人を殺してきたけど・・。」

「こんな近い距離で、目の前で・・」

「相手のあごひげが見えて、汗の臭いを感じる程の距離で人を殺しちゃったんだ。」

「2人共わたし達と同じ20歳位の若者でした。」

「しばらく、ショックで喋れないわたし達でした。」

そんな経験をした2人でしたが無事に自軍の飛行場に3週間かかって戻る事ができました。

ドイツ兵2名を射殺したイリーナ・カシュリナさん(上)とソフィヤ・オゼルコワさん(下)

 

第588女子爆撃機連隊の最終戦果は23672回出撃し3000トンの爆弾を投下し、26000発の焼夷弾を投下しました。

そして17か所のドイツ軍集結地点を破壊し、軍需貨物列車9編成、2ヶ所の駅、26ヶ所の軍需倉庫、12ヶ所の燃料タンク

176両の戦車や装甲車、兵員輸送トラック、86ヶ所の砲兵陣地、11ヶ所のサーチライト施設を破壊し811ヶ所の火災と

1092ヶ所の爆発を発生させました。これらの爆撃によって殺害されたドイツ軍兵士は推定で1万人以上に達していました。

これらの戦果に対して連隊の被った損失は28機撃墜され、23人の女子が戦死しました。

 

 

第586女子戦闘機連隊で使用されていたYAK1型戦闘機

第587女子爆撃機連隊で使用されていたPe-2急降下爆撃機

 

第588女子夜間爆撃機連隊で使用されていたPo-2複葉機

 

以下に女子飛行連隊の女子達のユニフォームの写真もご紹介します。

普段の服装は青い制帽にカーキ色のジャケット、赤いストライプの入った青い幅広パンツにロングブーツスタイルです。

搭乗時には飛行帽に制服の上からツナギの飛行服を着て、手には黒い革製のロングタイプの手袋をはめていました。

 

第587女子爆撃機連隊の隊員                      

第588女子夜間爆撃機連隊の隊員                    

第588女子夜間爆撃機連隊のナディア・ポポワさん

第588女子夜間爆撃機連隊のナディア・ポポワさん

 

第588女子夜間爆撃機連隊の隊員                 

 

第588女子夜間爆撃機連隊の隊員達

(冬用コート着用)