本日から当ロシア少女戦記シリーズも終盤の残り3回となりました。
その前に、ウクライナ避難民受け入れの進捗状況をご報告させて頂きます。
その後、政府による渡航費や生活費の国費負担の話がでておりますが、前向きに検討という言葉で誤魔化されて一向に具体的な道筋が見えてきません。そんな中、Facebookの“ウクライナの架け橋”というグループサイトにてウクライナ・テイク・シェルターというハーバード大の学生さんが作ったマッチングサイトを見つけ早速私も横浜音楽館として登録しました。翌日TBSテレビから取材協力の連絡があり、一昨日当館で取材ロケとなりました。現状の政府のスタンスや私の基本方針などをインタビューで答え、今日のサンジャポでオンエアされました。中々コンパクトにまとまった編集内容になっていました。当館の事が全国的に流れる事によって在留ウクライナの方からのアプローチがあるかもしれません。 何か進展がありましたら随時当ブログでご紹介してまいります。
さて、本日ご紹介するロシア少女戦士は人を助ける看護兵として従軍していた2人です。
独ソ戦に参加した100万人近くの女子の内、恐らく大半は看護兵や衛生兵だったのではないでしょうか。
ただし、看護兵(野戦病院勤務)や衛生兵(前線で歩兵と行動を共にする)と言っても、銃の扱い方など一通りの戦闘訓練は受けていました。
ですので歩兵に準じていたのだと思います。
最初にご紹介するのはクセーニャ・コンスタンチノワさんです。
彼女は1925年4月18日リペツク州スハヤ・ルブニャ村で生まれました。
そして、彼女はイェレツ市の産科学校を卒業し1941年、ドイツ軍がイェレツ市を占領し、彼女の故郷リペツクに接近し始めたとき、16歳のセーニャは戦線に志願することを決意しました。
彼女は母親にこんな手紙を書いています。
「ママ、憎きナチスが祖国を踏みにじるのをわたしは冷静に見ることができません。」
「許してください、ママ、わたしは、わたしの心に従ってわたしが決めたことをしたいのです。」
1943年、彼女は18歳で赤軍への入隊を許可され、第730歩兵連隊の従軍看護兵として前線に赴きました。
彼女はカリーニン戦線での戦闘で多くの負傷兵を看護しました。
しかし、クルスクでの戦闘でゼーニャは負傷しトゥーラの病院に入院します。
ナチスへの憎しみがますます燃え上がる彼女。
「ママ、わたしは、わたし達の土地に1人でもナチスが残っている限り、家に帰るつもりはありません。」
「わたしは、ナチスをやっつけるために急いで前線に戻ります。」
この時、彼女はすでに“戦功賞”が授与されていました。
そして、1943年9月30日彼女の所属する大隊がスモレンスクで戦っていた時の事です。
大隊は前進の命令を受けましたが、誰かが多くの負傷者のそばにいなければなりませんでした。
大隊長のクレヴァキン大尉は、戦闘任務について説明し、衛生大隊の看護婦が戦死したので、ゼーニャに負傷者のそばにいるように命じました。
しかし、ゼーニャはとても不本意だったのです。
彼女も部隊と一緒に前進したかったのです。
前進命令が下ると、ゼーニャは戦友のラゾレンコを抱きしめて言いました。
「さようなら、わたし達、もう会えないような気がするわ。」
大隊が出発すると、渓谷に残された多くの負傷兵達。
彼らは戦うことはおろか動くこともできませんでした。
ゼーニャは運搬兵に負傷者を荷車に載せて移動するように指示しました。
まだ多くの負傷兵が残されている状態で、およそ100名のドイツ軍歩兵中隊が迫ってきたのです。
その事に気づいた彼女は、荷車の運搬兵に森に隠れるように指示し、自らはドイツ軍を引き付ける事を決意したのです。
「敵は大勢いるわ。」
「わたしはたった1人。」
「でも、わたしは絶対に諦めない!」
「負傷して動けないみんなの為に、わたしは闘うわ!」
そう決意した彼女はマンドリン型サブマシンガンを手に、ありったけの弾倉と手榴弾を看護用のバッグに詰めて接近してくるドイツ軍部隊に向かっていきました。
「落ち着くのよ、わたし。」
「奴らはわたしの存在に気づいてないわ。」
「それ、頑張れ、わたし!」
自らを鼓舞し続ける彼女でした。
味方の負傷兵は皆重傷者で生きている気配も感じさせませんでした。
彼女はできるだけ負傷兵からドイツ兵を遠ざけようと思いました。
「よ~し、こっちの方向から撃ってやる。」
「それっ!」
“バババババババッ!”
前進してきた先頭のドイツ兵に向かって木陰からいきなり乱射した彼女。
5人のドイツ兵が彼女の銃撃で殺されました。
「よし!」
「やつら、驚いたみたいだわ。」
「今度はこっちからよ!」
「それっ!」
“ババババババッ!”
場所を変えて、慌て気味のドイツ兵に銃弾を撃ち込む彼女。
「やったわ、何人死んだかしら?」
「たったの3人か・・。」
渓谷の巧みな地形を利用して場所を変えながらドイツ兵に銃撃を加え続ける彼女。
「よ~し、今度は手榴弾よ。」
「えいっ!」
“ヴォーン!”
“ヴォーン!”
「やったね!」
岩の下にいたドイツ兵の群れに手榴弾を投げつけた彼女。
更に、負傷した兵士にも逃さず銃撃を加えます。
「逃がさないわ!」
「それ~!」
“ババババババババババッ!”
逃げ場の無い狭い場所での2発の爆発とサブマシンガンでの掃射で12名のドイツ兵が殺されました。
「相手は100人位いるのに、殺せたのはまだ20人か・・。」
「もっと暴れなきゃ、わたし!」
「ヤツラはわたし1人だと思ってないはずだわ。」
「わたしを大勢に見せるには、どうしたらいいかしら?」
「そうだわ、手榴弾をたくさん投げつけて、一気に大勢殺せばいいのかも。」
木陰から敵を覗き見るゼーニャ。
見えない敵から銃撃を受けて味方の損害が増え続けるドイツ軍は焦り始めていました。
小柄な彼女が身を隠せる岩場があり、そこから数メートル下に20名程が集結していました。
「あんなにたくさんいる。」
「こうなったら、あいつらを全滅させてやるわ、見てなさい!」
身をかがめながら手榴弾を4つ準備する彼女。
傍らにマシンガンを置いてすぐに撃てる状態にします。
「今だわ!」
「ソレッ!」
“ヴォーン!”
“ヴォーン!”
“ヴォーン!”
“ヴォーン!”
ドイツ兵達の間で次々と炸裂する彼女の投げつけた手榴弾。
4回の爆発で半数以上のドイツ兵が吹き飛ばされ、残りの兵士も破片で負傷して倒れます。
生き残りのドイツ兵達を皆殺しにしようと狙い撃ちにするゼーニャ。
「1人も逃さないから!」
「ケダモノめ!」
「地獄に落ちなさい!」
“バババババババババババッ!”
岩場の上にいきなり立ち上がった彼女は、サブマシンガンを構えて負傷した彼らに容赦なく銃撃を加えました。
「みんな、死んでもらうわ!」
「え~い!」
“バババババババババッ!”
負傷したドイツ兵もすぐ頭上の少女からの情け無用の銃撃に、体中を撃ち抜かれて次々と絶命していきました。
わずか数分の間に20名のドイツ軍兵士が、看護兵の18歳の少女に壊滅させられたのです。
「これだけ暴れれば十分かしら?」
大勢のドイツ兵の死体を残して再び木陰に身を隠す彼女。
機転を利かせたゼーニャの襲撃に、40名の戦死者を出していたドイツ軍部隊はいきり立っていました。
「まだまだ大勢残ってるわね。」
「わたし、もっともっと殺さなきゃ!」
戦死者続出のドイツ軍は岩陰や木の陰に身を隠しながら辺りをうかがっています。
「しぶとい奴ら!」
「こうなったら、もうひと暴れしてやるわ。」
彼女は勇気を振り絞って決意します。
岩陰に残りの手榴弾を見えないように並べます。
そして木の枝葉の裏にサブマシンガンを立て掛けます。
そのすぐ傍らで両手を挙げて立ち上がる彼女。
ロシアの軍帽を被り、お馴染みのカーキ色のジャケットにパンツ、そして黒いブーツを履いた彼女は小柄なあどけない可愛らしい少女でした。
そんな女の子の姿に一瞬気が緩むドイツ兵達。
まさか自分達の部隊に大損害を与えたのが彼女1人の仕業だとは誰も思っていませんでした。
岩陰にいた兵士達は緊張感もなく揃って彼女の方に歩いてきます。
ドイツ兵の表情がはっきりと見える距離まで近づいてきた瞬間でした。
「今だわ!」
足元に立て掛けたサブマシンガンを手に取ると、目の前のドイツ兵の一団に向かって引き金を引く彼女。
「エ~イ!」
“ババババババババババババッ!”
ゼーニャは叫びながら銃口を左右に振って乱射し始めました。
目の前のドイツ兵6名があっと言う間に撃ち殺され、その背後にいた兵士も逃げ遅れて負傷します。
一連射終わった瞬間に岩陰に隠れて並べて置いた手榴弾を負傷して倒れているドイツ兵やその背後に向かって次々と投げつける彼女。
「エイッ!」
“ヴォーン!”
「ソレッ!」
“ヴォーン!”
「コノ~!」
“ヴォーン!”
身動きの取れないでいたドイツ兵達は手榴弾の爆発で次々と手や足を吹き飛ばされて絶命していきます。
岩陰のそばにいた兵士も破片が当たってうずくまる者、仰向けに倒れ込む者、頭を押さえる者、正に混乱の状態でした。
至近距離での爆発に聴力を失って呆然とする生き残ったドイツ兵達の前に現れたのは、弾倉を取り換えたばかりのサブマシンガンを構えた18歳の少女でした。
「死ね!」
“バババッ!”
うずくまる兵士を撃ち殺すと、仰向けに倒れ込んだ兵士の胸の辺りをブーツでしっかりと踏み付けるゼーニャ。
片足で1人を踏み抑えながら、頭を押さえている兵士に向かって銃口を向ける彼女。
「くたばれ!」
“ババババッ!”
数メートルの距離から銃撃された男はヘルメットごと頭を撃ち抜かれてそのまま倒れ込みました。
彼女に踏みつけられている仰向けの兵士は脇腹に破片を食らって出血していました。
周囲に他の敵がいない事を確認した彼女。
彼女は気づいていたのです。
この男が先程ゼーニャが両手を挙げて立ち上がった時にニヤついていた事を。
怒りが沸々と込み上げるゼーニャ。
このドイツ兵に向かって微笑みかけます。
「わたしを見なさい!」
「わたしは衛生兵よ。」
「アラッ、どこが痛むの?」
「ここかしら?」
そういいながら彼の傷口をブーツでグリグリと踏みにじり回す彼女。
「ホラホラァ!」
“ウゥ~!”
男は激痛にうめき声をあげます。
「静かにしなさい!」
苦しむ男を睨み付ける彼女。
ゼーニャのブーツは男の血でべっとりと汚れていました。
「わたし達の国から出ていきなさい!」
“ペッ!”
そういって男の顔に唾を吐き掛ける彼女。
今度は唾で汚れた男の顔を踏み付けます。
そして彼の胸に銃口を向けると、
「死ね!」
“バババッ!”
男を葬るのに必要な銃弾はわずか3発でした。
ゼーニャが辺りを見渡すと17人の死体が転がっていました。
「全部わたしがやったのね。」
怒りと憎しみで我を忘れて敵の負傷兵をいたぶり倒してから射殺した彼女。
「わたし、なんて事しちゃったんだろ。」
「ごめんなさい。」
たった今、彼女が惨殺したドイツ兵に向かってつぶやく彼女。
看護兵が本来持っている負傷者への優しい気持ちが本能的に蘇ってきました。
“バシュッ!”
「アッ!」
前方の岩陰からドイツ兵が撃って来ました。
背後の岩陰に向かって走り出す彼女。
すかさずマシンガンを構えます。
「弾倉、これで最後だわ。」
「手榴弾もあと2つ。」
本来赤軍兵士(特に女性兵士)は必ず自決用に最後の1発は取っておくのです。
しかし、彼女は最後の1発も敵を撃ち殺すために使ったのでした。
ゼーニャは追い詰められ、残ったドイツ軍兵士達が続々と集まってきました。
周囲を完全に包囲されたゼーニャ。
「かかって来なさい!」
「ホラッ!」
“バババババッ!”
「ソレッ!」
“ヴォーン!”
突撃を敢行するドイツ兵。
彼女の最後の銃弾と手榴弾で更に3名が殺されました。
「これまでだわ。」
全弾使い果たし、手榴弾も無くなった彼女は両手を挙げて立ち上がりました。
今度は慎重に取り囲むドイツ軍兵士。
ドイツ軍に捕まったゼーニャ。
負傷したドイツ兵が先程彼女が味方の兵士をなぶり殺しにしたのを目撃していました。
彼はゼーニャに虐殺されるのを何とか免れたのです。
彼女を取り囲んだドイツ兵は総勢40名。
彼女の蛮行は味方兵士の遺体にその痕跡がはっきりと残っていました。
無残に胸を撃ち抜かれて殺害された兵士の腹部から脇腹に掛けて、更に彼の顔までもがブーツで踏みにじられた彼女の靴跡で泥々に汚れていたのです。
また彼女のブーツにも彼のどす黒い血がべっとりと付着していました。
まだあどけない18歳の少女の恐ろしい残虐行為に、怒りの表情で彼女を睨み付ける兵士達。
この後、ゼーニャは所属部隊の情報に関する尋問を受けますが完全無視を続けます。
彼女の完全黙秘はドイツ兵達をイラつかせ、大勢の味方兵士の殺害と面白がって戦友を惨殺した事に激高したドイツ兵達によって、ゼーニャは惨たらしく処刑されたのです。
後に戻ってきた彼女の所属する部隊がゼーニャの惨殺死体を発見しました。
目はえぐられ、鼻は切り落とされ、胸も切り落とされ、体は地面に釘付けにされていました。
彼女の勇敢な戦闘ぶりと惨殺された状況は現場に取り残されていた動けぬ複数の負傷兵達によって伝えられました。
ソ連軍がこの渓谷に戻ってきた後に現場で発見されたドイツ軍兵士の遺体は60名に上りました。
この日の戦闘でゼーニャが殺害したドイツ兵の総数60名(負傷者数名)は18歳の看護兵の少女の戦果としてはあまりにも大きく、そして彼女の支払った代償は彼女自身の惨たらし死だったのです。
クセーニャ・コンスタンチノワは、1943年10月3日にスモレンスク州ラスポピー村の共同墓地に他の242人の兵士と一緒に埋葬されました。
戦後彼女はソ連邦英雄の称号が与えられ、英雄広場の記念館には、彼女の肖像画がブロンズで飾られています。

私服姿のゼーニャさん

あどけない少女のゼーニャさん

軍服姿のゼーニャさん

ブロンズ像で飾られたマシンガンを構える軍服姿のゼーニャさん
第7回シリーズ2人目の女の戦士はマリア・カルポヴナ・バイダさんです。
彼女は1922年2月1日、クリミアの農家で生まれました。
19歳の彼女は積極的に赤軍に志願し、まずは医療の勉強をして看護コースを卒業しました。
そして1941年12月マリアはセヴァストポリの防衛戦に参加していました。
彼女は看護兵として数十人の赤軍兵士や将校の命を救いました。
そして上級軍曹になった彼女は偵察部隊への異動を申請します。
彼女がこの特殊な任務に志願したのは、ロマンスからではなくナチスをとても憎んでいたからなのです。
彼女は強く俊敏で射撃の腕前も良かったのです。
特務隊に入ったマリアは敵の背後に回って様々な情報を司令部に伝えます。
1942年6月マリアは3名の兵士を連れて偵察に出かけました。
彼女に同行したのは中年男性のアナトリーと若い男性兵士のミハエル、そして18歳の歩兵女子のリアでした。
彼らは前線で部隊から1人はぐれたドイツ兵の伍長を発見します。
「手を挙げなさい!」
ふいに物陰から現れたソ連軍偵察隊に成す術もなく降伏する伍長。
マリア達は彼を司令部まで連行しなければなりませんでした。
後ろ手に縛られた捕虜は指揮官がまだ若い女性兵士だと理解し激しく抵抗します。
大柄なこの捕虜を引きずっていくのはかなり厄介でした。
更にドイツ語でわめき始める始末でした。
すると若い女子のリアがたまりかねて激しい口調で怒鳴ります。
「うるさい!」
「いい加減、黙りなさい!」
そんな伍長の襟首をしっかりと掴みながら引きずっていくマリア。
抵抗を続ける捕虜はまた叫びます。
その瞬間でした。
“バシュッ!”
若いミハエルが喉元から血が噴き出して倒れました。
狙撃されたのです。
「伏せて!」
“バシュッ!”
更にもう1発が今度はアナトリーの足を貫通します。
撃ってきたのはマリア達のいた道路の反対側に放置されていた焼け焦げた車両の物陰からでした。
ちょうどマリア達の少し後方を歩いていたリアからはこの一瞬の光景が狙撃したドイツ兵と共に丸見えだったのです。
「ザケンジャネ~!」
“ババババババババッ!”
怒りに任せてサブマシンガンを2人のドイツ兵に向かって乱射するリア。
マリア達を狙っていた彼らは、左方向からいきなりリアの銃撃を受けてあっさりと射ち倒されました。
「ざまあみろ!」
ドイツ兵2名を撃ち殺したリアはたった今戦死したミハエルの元に駆け寄ります。
「ミーシャ!」
泣き叫ぶ彼女。
凄まじい形相で立ち上がると、座り込んでいた捕虜の顔面に泥で汚れたブーツの靴底をヒットさせて蹴り倒したのです。
“ヴァスッ!”
「全部アンタのせいよ!」
“ドスッ!”
“ドスッ!”
“ドスッ!”
リアに蹴り倒された男は仰向けの状態でひっくり返り、ヘルメットが脱げてしまいます。
完全に無防備な状態の彼の横腹にリアは激しくブーツで蹴りを打ち込み始めました。
リアのブーツのつま先が男の脇腹に食い込みます。
情け容赦のない強烈な蹴りを打ち込む彼女。
「コノヤロ~!」
“ドスッ!”
4発ほど強烈な蹴りを浴びせると、今度はサブマシンガンの銃口を彼の胸元に向ける彼女。
「わたしに、殺させて下さい!」
いきり立つリアの肩にそっと手を載せるマーシャ(マリア)。
「あなたの気持ちはよくわかるわリア。」
「でも本部では彼の情報を待ってるの。」
「解るわね。」
優しくささやきかけるマーシャの言葉に銃口を下げるリアでした。
銃をゆっくり下ろした彼女。
やっとのことで起き上がったドイツ兵。
リアは自分の口元を彼の顔に近づけます。
“ペッ!”
男の顔面に口に溜めた痰唾を吐き掛けるリア。
「いい気味だわ!」
そうつぶやくと18歳の少女は勝ち誇ったように立ち上がりました。
みじめな姿で座り込むドイツ兵の伍長。
彼の顔はリアの靴跡でどす黒く汚れ、額からは白く濁ったリアの唾が滴り落ちていました。
後ろ手に縛られた彼は汚れた顔を拭う事もできず、うつむいたままでした。
マーシャはそんな彼に近づくと、ポケットから白いハンカチを取り出して泥と唾で汚れた彼の顔を優しく拭き取ってあげました。
「これで綺麗になったでしょ。」
「わたしの部下がやり過ぎたわ。」
「ごめんなさいね。」
マーシャの優しい口調に男は小さな声で
「ダンケ(ありがとう)」と答えました。
その後、この捕虜はおとなしくなり素直にマーシャに従いました。
本部に戻ったマーシャは捕虜の抵抗に起因する味方兵士2名の死傷の責任を追及され営倉3日(禁固刑)を言い渡されます。
しかし、その1時間後に本部に呼び出されたマーシャ。
ガンとして口を割らない捕虜の尋問に手を焼いた情報将校は、試しに捕まえたマーシャに尋問させることにしたのです。
先程18歳の女子に殺さるそうになったところを救われた彼は、マーシャの顔を見るとホッとした表情になり、彼女に対して情報を素直に話し始めました。
この伍長の情報は貴重なものでドイツ軍の防衛ラインに関するものでした。
捕虜を完全に掌握したマーシャに司令部は感謝の意を表しました。
1942年6月
セヴァストポリ近郊のドイツ国防軍歩兵連隊の兵士23人が死亡した現場から、非常に興味深いドイツ語の報告書がアーカイブスで見つかったのです。
シュタイナー特務准尉は23体のドイツ兵の死体が様々なポーズで横たわっている場所を調査しました。
殺害された兵士は全員、1939年から軍務に就いている経験豊富な兵士でした。
19人の兵士は複数の銃弾によって死亡していました。
その内の1名は体中に多くの打撲婚や蹴られた靴跡があり、複数名によるリンチにあった可能性を示唆していました。
3人の兵士と1人の将校は頭部が陥没し、ひどく殴られて死亡ていました。
その内の1体の兵士は頭部の致命傷になる激しい殴打の跡がありました。
さらに彼の肋骨は完全に砕かれ、胸部には激しく踏み付けられた靴跡がくっきりと残されていました。
結論として優勢な敵軍による突然の奇襲により小隊全員と隊長が殺されたということになりました。
そして、この出来事について、アーカイブスの文書は何を語っているのでしょうか。
ドイツ軍の全司令部は、もし本当のことを言われても、おそらく信じられなかったでしょう。
ナチスの小隊を壊滅させたのは、砲弾で傷ついた若い20歳のクリミアの少女マリア・バイダだったのです。
1942年6月7日、ドイツ軍によるセヴァストポリへの3回目の攻撃が始まるとマリアは前線に偵察に出ました。
彼女の中隊の弾薬は不足し、彼女は戦死した敵兵から武器を調達しなければならない状態でした。
ドイツ軍の砲撃が激しさを増し、マリアは頭と右腕に負傷し、脳震盪を起こして意識を失ってしまいました。
彼女は夜になると我に返ります。
その時、ドイツ軍が防衛線を突破してきました。
マリアは人知れず森を抜け、殺されたドイツ兵達からサブマシンガンを2丁奪い、壕の跡地を通りかかりました。
この廃墟の中では味方の中隊の生存者の兵士8人の尋問が行われていました。
酷い拷問を受けたのか負傷して動けない男性兵士4名とその傍らにこれから尋問を受けようと待つ若い女性兵士4人が見えました。
味方の兵士8名はマーシャの向かって左側に固まっていました。
右側には合計23名のドイツ軍兵士と指揮官の将校が立っていました。
そんな状況をとっさに理解しどうするか判断したマーシャ。
「敵は23人、わたしは1人。」
「どうしようかしら?」
「しかも、味方は4名負傷しているし・・。」
「でも4名の女子はみんな無事だわ。」
「こうなったら、こうするしかないかも。」
彼女はドイツ兵から奪い取った2丁のMP40短機関銃を左右の肩からぶら下げて構えます。
マリアは廃墟になった壕の斜面の上方で彼らをうかがっていました。
ちょうど味方の捕虜達とドイツ軍小隊を見下ろす状態だったのです。
いきなり立ち上がったマーシャは向かって左側の味方の兵士達に向かって叫びます。
「みんな、伏せて!!」
その言葉と同時にドイツ軍小隊に向かって2丁のサブマシンガンで銃撃を開始した彼女。
「ソレ~!」
“ババババババババババババババッ!”
「コノ~!!」
“ババババババババババババッ!”
ドイツ兵達を見下ろしながらの銃撃乱射は、狙う必要もなく体を彼らの方に向けるだけでその弾幕が次々とドイツ兵達を薙ぎ倒していきました。
「面白いくらいにバタバタと倒れていくわ!」
不意を突かれたドイツ軍小隊はあっという間に11人が撃ち殺され、残りの12名も銃弾を浴びて、のけ反る者や屈む者、倒れ込む者などすぐに反撃できる者はいませんでした。
「今だわ!」
「奪うのよ!」
捕虜になっていた女子4名が一斉に薙ぎ倒されたドイツ兵に襲い掛かり銃を奪い取ります。
ドイツ兵の半数はマーシャによって撃ち殺され、残りの兵士もみな負傷した状態でした。
そんな彼らに襲い掛かった少女達は、立ち上がろうとする者や、銃を取ろうとしている兵士の顔や胸を激しく蹴り上げます。
「コノヤロ~!」
"パコ~ン!"
「エイッ!」
"パカーン!"
一挙に形勢が逆転して勢いづく女子兵士達。
蹴り倒したドイツ兵達が銃を握れないように手の平をブーツのカカトで強か踏み付けてグリグリとニジり回します。
「こうしてやるわよ!」
「それそれっ!」
兵士達の手は靴底の泥と血にまみれていて、とても彼女達に歯向かう事など出来ない状態でした。
生き残りのドイツ兵達の手を踏み潰して動きを封じ込めた女子達は、奪い取った銃を手に拷問を受けた味方の兵士の復讐を始めるのでした。
「よくもやってくれたわね!」
「ホラッ!」
“バシュッ!”
「こいつもやっちゃいなよ!」
「くたばれ!」
“バシュッ!”
まだあどけない20歳そこそこの女子兵士達は1人また1人と撃ち殺していきます。
「今度はわたしにやらせてよ!」
「いいわよ、やっちゃいな。」
「舐めんじゃないよ、わたし達を!」
“バシュッ!”
「いい気味!」
一番動けそうな兵士から殺害していく少女達。
4人目になると面白がって笑いながら引き金を引きます。
「地獄に落ちな、ふふっ!」
“バシュッ!”
「こいつら、まとめて殺っちゃおうよ!」
負傷して虫の息の2名を抱き起す女子達。
2人の女子がそれぞれの男のヘルメットを脱がせて髪の毛も掴んで首を固定します。
「いくわね!」
“バシュッ!”
“バシュッ!”
ライフル銃を構えた女子が男達の顔に1発づつ撃ち込みます。
「ケダモノどもめ!」
「ざまあ見ろ!」
更に負傷したドイツ兵を見つけた女子はライフル銃を構えながらこの男に微笑み掛けます。
「この辺かしら?」
“バシュッ!”
腹部に銃口を押し付けて引き金を引く彼女。
「アッハッハッ!」
「まだ生きてるのかよ?」
「しぶといね。」
“バシュッ!”
今度は別の少女が男の頬に銃口を押し当てて撃ちました。
「ふふふっ、コイツの顔、台無しだね!」
「トドメ刺しちゃいなよ!」
“バシュッ!”
「やったね!ふふっ。」
「みんな!コイツまだ生きてるよ!」
立ち上がって銃を取ろうとしている兵士に気付いた女子が囃し立てます。
「ザケンナヨ!」
“スコ~ン!”
男が取ろうとした銃を蹴り飛ばす少女。
4人の女子達が男を取り囲んで見下ろします。
悪意に満ちた少女達のまなざしに恐怖するドイツ兵。
「わたしを見なさい!」
“ペッ!”
1人の少女が男の顔に向かってツバを吐き掛けました。
すると、他の女子も一斉に男に向かってツバを吐き掛け始めました。
「やっちゃえ!」
“ペッ!、ペッ!”
“ペッ!、ペッ!”
“ペッ!、ペッ!”
ツバまみれになった男の顔をいきなりブーツで蹴り上げる少女。
「このやろ~!」
“パコ~ン!”
それを合図に全員が男の上半身や顔に容赦なくブーツで蹴りの連打を浴びせます。
「エイッ!」
“ドスッ!”
“ドスッ!”
“ドスッ!”
「分かったかよ!」
仲間の男性兵士に対する拷問が女子達の怒りに火を付けたのです。
「今度は、みんなで踏み躙ってやろうよ!」
「ホラホラッ!」
散々蹴りつけた後は負傷した男の体を踏みまくる少女達。
「コイツ、ここ怪我してるよ。」
銃創のある右肩にブーツの靴底を擦り付ける少女。
「あらっ、可哀そうに?」
「わたしが、たっぷり泥を塗り込んであげるわね。」
「アッハッハ!」
「痛がってるわ、コイツ、ふふっ!」
痛みで顔を歪めるドイツ兵を見て黄色い声をあげて笑い合う女子達。
「わたし達を怒らせると、こうなるのよ!」
男の顔も肩も胸も腹部も、まんべんなく女子達のブーツがニジり回し、彼の軍服は彼女達の靴跡でどす黒く汚れていました。
「わたし達、タップリ可愛がってあげたかしら?」
「このくらいでいいかも。」
4人の私的制裁に絶命寸前のドイツ兵。
「そろそろトドメよ!」
「楽にしてあげるんだから。」
「ありがたく思いなさい!」
“バシュッ!”
「ふゥ~、片付いたわ!」
少女達が敗残兵をなぶり殺しにしている間にマーシャは白兵戦を演じていました。
「コノヤロ~!」
彼女はマシンガンの弾を全弾撃ち尽くすと、1つの銃を捨て去りもう1つの銃をこん棒のように振りかざします。
「くたばれ!」
“グシュッ!”
中腰になっていたドイツ兵の額の辺りを狙って、銃の台尻で思いっきり殴りつける彼女。
男は声も上げずに倒れ込み、即死状態でした。
更にもう1人のドイツ兵がマーシャに掴み掛かってきました。
「何すんのよ!」
「エイッ!」
“ドスッ!”
とっさに身をかわして男の腹を蹴り上げるマーシャ。
そして
「食らえ!」
“バスッ!”
今度も銃の台尻を男の顔目掛けて打ち付けます。
もんどりうって倒れた男は二度と動きませんでした。
そして2人の兵士がマーシャに襲い掛かります。
幸い2人とも負傷していて動きが鈍くマーシャの敵ではなかった。
「エイッ!」
“カコーン!”
1人の男にも先程と同じように銃の台尻をブインと振り回しながら渾身の力で打ち込みました。
一瞬男の頭部が歪んで見えました。
台尻が当たった瞬間に男の頭蓋骨は打ち砕かれ、体が一回転して大の字に転がりました。
「死んだわね。」
「こいつで最後だわ。」
残ったもう1人の男がマーシャの肩を掴もうとした瞬間。
「ホラァ!」
身をかわして男の背後に回るとそのまま押し倒した彼女。
ひっくり返って仰向け状態から立ち上がろうとしたのを見て、
「エイッ!」
“コ~ン!”
思いっきりブーツのつま先で蹴り上げます。
再び仰向けに倒れた男の胸の辺りに飛び乗ると、そのまま両足で飛び跳ねたのです。
「エイッ!」
「エイッ!」
「ソレッ!」
彼女のブーツが男の体に着地する度にソールの部分が胸部に食い込みます。
更に片足を軸にもう片方の脚のブーツの踵を胸に打ち付けるマーシャ。
「エイッ!ソレッ!」
「これでもかっ!これでもかっ!」
普段冷静な彼女に何がここまでさせるのか・・。
ドイツ兵の上衣はマーシャが踏み付けるブーツの靴跡でどす黒く汚れ、口から血を吐いていました。
繰り返し踏み付けている内に男の胸部の踏み応えが無くなり、骨がバラバラに砕けたようでした。
銃を振り上げた彼女は殆ど息の無い男の額にトドメの一撃を加えました。
「エイッ!」
“グシュッ!”
男の頭は無残に砕けて陥没し、マーシャはやっと我に返って男の体から降りたのです。
マーシャが4人目のドイツ兵を惨殺した頃に、少女達による集団リンチも終わったのでした。
「スカッとしたわね、わたし達!」
笑いながらマーシャの方に歩いてくる女子達。
冷静さを取り戻したマーシャは4人の女子偵察兵と負傷した4名の男性兵士を連れて自軍陣地に戻るのでした。
若干20歳で体重がわずか55kgのクリミアの少女がドイツ軍歩兵小隊を壊滅させるのに要した時間はわずか10分程でした。
この日の戦闘でマリアが殺害したドイツ兵は合計15名でした。
その内11名は銃撃による射殺で、残りの4名は彼女の撲殺によるものでした。
残りの歩兵小隊の隊員8名は捕虜になっていた女子兵士4名によって殺害されました。
その後、マーシャは7月12日にドイツ軍の激しい攻撃の中で負傷し敵の捕虜になります。
女性捕虜が収容されるラーフェンスブリュック収容所で3年間を過ごした彼女は1945年5月8日に米軍によって解放され故郷のクリミアに戻ったのです。
大戦生き残ったマリアはレーニン勲章とメダル「ゴールドスター」を受勲しソビエト連邦の英雄の称号を授与されました。
戦時中の軍服姿のバイダさん

戦後、受勲した当時のバイダさん