読物記 一 柳生新陰流
ここ数年は、津本陽、綱淵謙錠、五味康祐 各先生の作品を
少しづつ楽しませてもらっています。
持っているほとんどがだいぶ前に発表された作品だけど、数年前に剣豪小説の
オムニバス的な本を見つけたのがきっかけで先生方の作品を少しづつ集めて読んでいます。
で今日 読み終わった本がこれ。
五味先生の作品はじっくり読まないとわからない文章がたまにあるけど
本当に面白い。
剣豪小説の醍醐味はやはり立合いの場面が、いかに緊張感溢れる描写かに
尽きるという気がします。
刀剣を持った主人公の気持ち、生死を賭けた息遣いを目の前の情景のように伝えてくれる。
特に普通の人には行き着けない名人の境地をいかに伝えるか、これはどの先生の作品も
独自の世界観によって表現されている。
この作品は柳生石州斎から宗矩、兵庫介、柳生十兵衛は
もちろん、一族で一番の遣い手と言われていた
柳生連也厳包の知られざる一面を丁寧に伝えてくれる。
江戸柳生と尾張柳生 どちらが真の柳生新陰流なのか・・・
しかし他の先生同様、五味先生は実はタイムマシンを持ってて
こっそり現場を覗きながら書いてるのかなと思ってしまうほど
登場人物の表情、言葉に出さない空気まできちんと伝わってくる。
意外なことにこの作品を読み進んでいくと
柳生一族よりも周辺の人物にまつわるエピソード、十兵衛の生き写しと言われた
秘蔵の弟子の小夫浅右衛門、連也の傅役だった高田三之丞など
伝わる僅かな資料からもその底知れぬ強さに感心させられてしまう。
新陰流を封じる古陰流の存在など昔の資料を丁寧に作者なりの
解釈で謎を読み解く楽しさも満載。
後半の、強すぎた悲劇と言われる連也のことについては
作者の特別な思い入れ溢れる筆に引き込まれてしまいます。
連也の生母(父は兵庫介利厳)があの勇将 島左近の娘で、連也は幼少の頃は
島新六として育ってきたことなど関が原後の色々なお話が
そこには複雑に絡み合っている気がして少年時代から興味深い。
連也の晩年の三つの謎も作者の解釈は説得力充分です。
登場する剣豪達が一体どのくらい強かったんだろうかと思うのはもちろんだが、
一体どのくらいの鍛錬をしたらそんな境地まで辿り着くのだろうかと
思ってしまいます。
現代人には到底たどり着けない境地だろうけれど、
ものが溢れていない時代の人のほうが凄いところに行っていたことは確かかもしれない。
塚原ト伝、上泉信綱から数百年発展していく剣豪の果てしなき道は
まだまだたくさん読みたい作品があって楽しみ!
PS幕末ものも大好きです!!
テレ朝ドラマ 同窓会


