初夏や出埃及記五分ほど 掌
(エジプト)

ネトレプコ、の歌うレオノーラ、
壮絶なドラマティコのソプラノが劇場に響きます。
1幕の男装、隠者とっている4幕、
地味な衣装ですが、華があります♪
ちょっとヴィブラート強くなった、と感じますが、
その声、その歌唱、その演技は
役の人間をくっきりと造型しています。
プレチオシルラのベルジャンスカヤ、
「ラタプラン」の射るようなまなざしで歌い切り、
合唱ともに凄い迫力。
アルヴァーロのジェイド、テノールがよく伸びて印象深い。
ネトレプコ相手役として渡り合っていました。
カルロのテジエは高めのバリトン。
修道院長のヴィノグラードフの深々とした声。
演出はレオ・ムスカート
ストーリーの読み替えはなくて、
4幕を時代別の戦時下の設定にしている、とか。
オペラでは18世紀の戦時中。
血が流れたり、銃をかまえた兵隊たちなど
実にリアルで、胸がつまります。
美術も全体に灰色、各場は回り舞台で。
なんといっても指揮シャイーの音楽の推進力がすごい!
序曲からぐいぐいと惹きこまれ、
緊張感に満ちたヴェルディの音楽があふれています。
オペラのなかでは歌手を活かして♪
<出演>
・レオノーラ:アンナ・ネトレプコ
・ドン・カルロ:ルドヴィク・テジエ
・ドン・アルヴァーロ:ブライアン・ジェイド
・カラトラーヴァ侯爵:ファブリツィオ・ベッジ
・プレチオシルラ:ヴァシリーサ・ベルジャンスカヤ
・修道院長:アレクサンドル・ヴィノグラードフ
・フラ・メリトーネ:マルコ・フィリッポ・ロマーノ
<合唱> ミラノ・スカラ座合唱団
<管弦楽> ミラノ・スカラ座管弦楽団
<指揮> リッカルド・シャイー
<演出> レオ・ムスカート
収録:2024年12月7日 ミラノ・スカラ座(イタリア)
北村薫『リセット』新潮社 2001年刊
四半世紀前ですか!?
『スキップ』『ターン』に続く
北村薫「時と人」シリーズの第3弾。
人の一生が、想いが、不完全にリセットされ、
幾たびか、巡り合う。
太平洋戦争の末期、戦後をとおし、
交錯してゆくふたつの生命、二つの想い。
そこに流れる獅子座流星群。
本の紹介にはこうあります。
<愛し合う男女がいかにしてそれぞれの想いを
伝えあうかを巡る物語である。
遠く、近く、求めあう二つの魂。
想いはきっと、時を超える。
『スキップ』『ターン』に続く《時と人》シリーズ第三弾。
「——また、会えたね」。
昭和二十年五月、神戸。
疎開を前に夢中で訪ねたわたしを、
あの人は黄金色の入り日のなかで、
穏やかに見つめてこういいました。
六年半前、あの人が選んだ言葉で通った心。
以来、遠く近く求めあってきた魂。
だけど、その翌日こそ二人の苛酷な運命の始まりの日だった
流れる二つの《時》は巡り合い、もつれ合って、
個の哀しみを超え、生命と生命を繋ぎ、奇跡を、呼ぶ。>