今宵の月、
厚い雲間に隠れて・・・
萩原朔太郎<およぐひと>は
「たましひは水のうへの月つきをみる。」と。
『月に吠える』1917年刊に載っています。
心臓には「こころ」、
瞳には「め」のルビ。
初版では四行が1ページに置かれ、
ページをめくると
「およぐひとのたましひは水みづのうへの月つきをみる。」
この最終行、ページの真中に置かれて。
<およぐひと>
およぐひとのからだはななめにのびる、
二本の手はながくそろへてひきのばされる、
およぐひとの心臓(こころ)はくらげのやうにすきとほる、
およぐひとの瞳(め)はつりがねのひびきをききつつ、
およぐひとのたましひは水のうへの月つきをみる。