三島由紀夫の作品、
どれと決めがたいのですが、
戯曲『サド侯爵夫人』を。
全3幕。
無垢と怪物性、残酷と優しさをもつ
サド侯爵の出獄を、
と20年間戦い続けた
貞淑な妻・ルネ夫人。
が、フランス革命の後、離別する。
「この真実を、謎を、論理的解明を」と三島は言う。
サド夫人・ルネは貞淑を、
夫人の母親モントルイユ夫人は法・社会・道徳を、
シミアーヌ夫人は美徳を、
サン・フォン夫人は悪徳を、
ルネの妹アンヌは無邪気と無節操を、
召使シャルロットは民衆を。
舞台にはこの6人の女たちが登場し、
磨き抜かれた言葉、
セリフが激突して、
イデエを、ドラマを構築してゆく。
劇的な緊迫感、圧倒的な朗読劇です。
日本国内のみならず海外でも上演され続け、
英訳はドナルド・キーン、
仏訳はマンディアルグ。
昭和40年度芸術祭賞演劇部門賞受賞作品。
三島の最高傑作というだけでなく、
「戦後演劇史上最高傑作の戯曲」と評価されている由。
河出書房新社 1965年刊。
序:澁澤龍彦
跋:三島由紀夫
箱入りなので、経年の焼けは箱だけで、
ロココ調の装幀の本はうつくしいまま♪
劇場ではルネを松村英子、小川真由美、玉三郎で。
サン・フォン夫人の楠侑子、
モントルイユ夫人の南美江が忘れられません。
フランスのルノー・バロー劇団の来日公演、
フランス語での『サド侯爵夫人』を
草月会館で観たことも印象的。