金子兜太「存在者」
2017年3月25日刊 (藤原書店)。
題字はもろん兜太筆の雄渾な書。
装幀も墨が迸ったように力強く、
そのエネルギーがこちらに飛んでくるよう。
「存在者とは「そのまま」で生きている人間。いわば生の人間。
率直にものを言う人たち。これが人間観の基本です。
存在者の魅力を確認したのは戦争です。
私は二十五歳から二十七歳まで南方のトラック島で
海軍施設部の隊におりました。
そこは存在者の塊のようでした。
その愛する人たちがたくさん死んでしまった。
私自身、存在者として徹底した生き方をしたい。
存在者のために生涯を捧げたいと思っています」。
金子兜太「朝日賞受賞記念講演」より
この朝日賞受賞記念講演から「存在者」の
本つくりが始った、と編者の黒田杏子。
兜太の鼎談ありスピーチあり、
丁重にまとめてある。
兜太初学のころの「成層圏」のことは
あまり目にしたことがなく、うれしい。
目次をご覧ください。
充実の内容がここに。
◆存在者とともに――編者はしがきにかえて 黒田杏子
第1章 存在者の俳句作品
ふるさと秩父/年明ける/被曝福島/東国抄/日常
第2章 存在者として生きる
存在者として生きる 平和の俳句――第12回「みなづき賞」受賞記念ライブトーク
〈鼎談〉金子兜太+いとうせいこう+加古陽治(司会)
死者とともに走る
戦争体験語り続ける
人間って善いもんだ――トラック諸島で見た修羅場
声の存在者 “Der" Existenz
金子兜太を作曲する――『少年1』(2016/17) 伊東 乾
第3章 金子兜太かく語りき
わが俳句人生
金子兜太自選五十句/金子兜太略年譜
鶴見和子さんのこと――「偲ぶ会」でのスピーチ
姐御としての鶴見和子さん/献杯と祝杯と
第4章 兜太を知る
兜太さんへの手紙
情熱と、綿密さと 深見けん二
秩父のおおかみ 星野 椿
厳しく、あたたかい眼で 木附沢麦青
人間・兜太さん 橋本榮治
それでもの 横澤放川
「生きもの」として アビゲール・フリードマン(中野利子訳)
一人の俳人として 櫂 未知子
いつも隣に マブソン青眼
土の香り立つ 堀本裕樹
子馬のように 髙柳克弘
俠気の系譜 中嶋鬼谷
兜太三句 井口時男
第5章 昭和を俳句と共に生きてきた
青春の兜太――「成層圏」の師と仲間たち 坂本宮尾
兜太の社会性 筑紫磐井
第6章 存在者の日常
兜太さん 三つの俳壇活動 黒田杏子
存在者兜太さん 長寿の秘訣――ゆったり生きる ふだんの暮らし
黒田杏子+金子眞土+金子知佳子
あとがき――感謝のことば 金子兜太
あとがき 黒田杏子