北原白秋「彼岸花」 詩集『雪と花火』より | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

    彼岸花


懀い男の心臓を

 

針で突こうとした女、

 

それは何時(いつ)かのたわむれ。

 

 

昼寝のあとに、

 

ハツとして

 

けふも驚くわが疲れ。

 

 

懀い男の心臓を

 

針で突こうとした女――

 

もしや棄てたら、キツとまた。

 


どうせ、湿地(しめじ)の

 

彼岸花

 

蛇がからめば

 

身は細(ほそ)る。

 

赤い湿地の

 

彼岸花、

 

午後の三時の鐘が鳴る。


    北原白秋 詩集『雪と花火』一九一六年刊

 

 

 


◆初版 詩集『雪と花火』早稲田大学図書館データベースの、

 244ページに掲載されています。
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko03a/bunko03a_00283/bunko03a_00283.html