風船乗りの夢
くさむら
夏草のしげる叢から
ふはりふはりと天上さして昇りゆく風船よ
籠には旧暦の暦をのせ
はるか地球の子午線を越えて吹かれ行かうよ。
ばうばうとした虚無の中を
雲はさびしげにながれて行き
草地も見えず 記憶の時計もぜんまいがとまつてしまつた。
どこをめあてに翔けるのだらう
さうして酒瓶の底は虚しくなり
まぼろし
酔ひどれの見る美麗な幻覚も消えてしまつた。
しだいに下界の陸地をはなれ
愁ひや雲やに吹きながされて
知覚もおよばぬ真空圏内にまぎれ行かうよ。
がすたい
この瓦斯体もてふくらんだ気球のやうに
ふしぎにさびしい宇宙のはてを
友だちもなく ふはりふはりと昇つて行かうよ。
◆『定本 青猫』より
前半、後半の軽快でリズミックなところと、
虚無と倦怠の中間部からなる。
これもスケールの大きな曲となっている。
作曲は「仏陀」とおなじ石渡日出夫。