萩原朔太郎「仏陀」をうたう  @風のまち音楽祭 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。


朔太郎






    仏陀 あるいは世界の謎
                         
                         萩原朔太郎

赭土の多い丘陵地方の

さびしい洞窟の中に眠つてゐるひとよ

君は貝でもない 骨でもない 物でもない。

さうして磯草の枯れた砂地に

ふるく錆びついた時計のやうでもないではないか。

ああ 君は「真理」の影か 幽霊か

いくとせもいくとせもそこに坐つてゐる
                    みいら              
ふしぎの魚のやうに生きてゐる木乃伊よ。

このたへがたくさびしい荒野の涯で

海はかうかうと空に鳴り
おほつなみ
大海嘯の遠く押しよせてくるひびきがきこえる。

君の耳はそれを聴くか?
くをん
久遠のひと 仏陀よ!








◆朔太郎の第二詩集『青猫』より
  1923年・大正12年刊。
  後年詩を入れ替え、『定本 青猫』として刊行。


◆曲は石渡日出夫による。
 スケールの大きな曲。