俳句を読む Ⅲ  @金子兜太主宰誌 「海程」490号 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

この句を取り上げました。

字数は225字。



 
  
  蛸の力つねに無常はぬれている       大谷 清
 


蛸はその体内にみつみつと<力(エネルギー)>を

内包しているよう。

腕(足?)力で岩場や砂地、もしや高層階でも

あの吸盤を駆使してゆきそう。

通過した後はぬれぬれと濡れて。

日常も非常も、むろん無常すらも。

この蛸、そして萩原朔太郎「死なない蛸」をおもう。

ある水族館の一隅に忘れ去られた蛸がいた。

餌も絶えてなく、ついに自分の足を一本、

また一本と食べ、さらに内臓すらも食べ尽す。

そこには「或る物すごい缺乏と不滿」が残存する、と。

深深とぬらぬらと底知れぬ蛸の力。

ほら、そこに蛸が!