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蛸の力つねに無常はぬれている 大谷 清
蛸はその体内にみつみつと<力(エネルギー)>を
内包しているよう。
腕(足?)力で岩場や砂地、もしや高層階でも
あの吸盤を駆使してゆきそう。
通過した後はぬれぬれと濡れて。
日常も非常も、むろん無常すらも。
この蛸、そして萩原朔太郎「死なない蛸」をおもう。
ある水族館の一隅に忘れ去られた蛸がいた。
餌も絶えてなく、ついに自分の足を一本、
また一本と食べ、さらに内臓すらも食べ尽す。
そこには「或る物すごい缺乏と不滿」が残存する、と。
深深とぬらぬらと底知れぬ蛸の力。
ほら、そこに蛸が!